今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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百七話 サンタさんは居るって言うけど其れは心の中に限る

 とある日の彼の自宅でアオイちゃんがソファに座りながらゲームをしている。僕と火蓮ちゃんとコハクちゃんがそれをのぞき込むように観察。何やら銃を使ったスマホでするゲームなんだけど……

 

「あの、アオイ先輩凄すぎません?」

「そう? えっへん……」

 

 

指の動きの滑らかさと言うか……銃で何百メートル先から狙撃する彼女はまさに審判の神。

 

「エイム、ガバッタ……」

「英無ガバッタ? それはどういう意味ですか?」

「照準がズレた的な感じ……」

 

「アオイ、最近ゲームよくやってるわね」

「うん、無課金だけどソシャゲも始めた」

「課金はするんですか?」

「うーん……ソシャゲは沼だから……考え中かな……」

「確かに沼と聞きますね」

「うん、でもそういう人たちがいてくれるからあーしが無課金でプレイできる。感謝感激、を忘れずにプレイしていこうと思っているところではある」

 

 

コハクちゃんと火蓮ちゃんがアオイちゃんに質問しあいながら彼女の裁きを見ていく。

 

 

「す、っごいんだけどアオイ……」

「ただの伏せキャン」

 

 

彼女はそのまま一位になった。いや、凄すぎるんだけどと皆で話していると彼女が今度は皆でゲームしたいと言い始めた。

 

「皆でゲームしたい……」

「いいですね。やりましょう。実は私テレビゲームの浦島太郎電鉄に興味あったんです」

「浦鉄ね」

「そうです。是非、皆でやりましょう!」

 

 

と言うわけでテレビゲームの皆でやる奴(四人)をやることになった。彼は買い物で居ない、また、メルちゃんは研究室に引きこもりの為にこのメンツ勝負である。楽しくできるかと思っていたのだが……

 

 

「ちょっと!! ボンビー様を私にばっかり押し付けるのやめてくれません!!??」

「たまたまよー嘘じゃないわよー」

「嘘つかないでください! 今の距離ならどう考えても萌黄先輩に押し付けるべきでした!」

「あ、なんかごめん……」

 

 

総資産がアオイちゃんが100億越え、コハクちゃんと火蓮ちゃんがボンビー様の擦り付け合いで底辺争いになりごちゃごちゃ展開になったのでゲームを変えることに。

 

「やっぱり、皆で協力するゲームにすべきだった……」

「ヘリオですね」

「コハク、今回は喧嘩なしよ」

「わかってますよ。一緒に頑張りましょう」

 

 

うんうん、やっぱり皆でゴールを目指す系の奴の方が良いよね! と思ってコントローラーを持ってテレビ画面に映るステージをクリアしていくはずだった。

 

コハクちゃんの操るキャラが穴を飛び越えようとした時、たまたま火蓮ちゃんのキャラも飛び越えようとしており……火蓮ちゃんがコハクちゃんを踏んでしまい……コハクちゃんのキャラが落ちてコハクちゃんがゲームオーバー。

 

「あ、ごめん……今のはわざとじゃないのよ……」

「今のは? と言う事は先ほどのはわざとなんですね?」

「いや、本当にごめん……その、次から気を付ける……」

「いいですとも」

 

 

彼女は笑顔でそう言ったのだが次の場面で彼女は亀の敵を踏んづけてそれを纏めて火蓮ちゃんに投げた。

 

「ああ!?」

「あ、すいません。手が滑りました」

「いや、明らかにロックオンしてなかった!?」

「たまたまですよー嘘じゃないですよー」

「いや、棒読みが過ぎる!!」

 

 

まぁ、そんなこんなで一応一区切りはついたのでゲームは終了した。

 

 

「ごめんね……なんか、変な感じにしちゃって……あーしが皆でやりたいって言ったから」

「そんなことないわよ。なんだかんだで楽しかったからまたやりましょ。今度は十六夜とメルも呼んで」

「そう? 楽しかった?」

「愚問ね。コハクも萌黄もそうでしょ?」

「はい! とっても楽しかったです!」

「オフコース!」

 

「なら、よかった」

 

 

と、良い感じにまとまったところでアオイちゃんがそう言えばと話を切り出す。

 

 

「そう言えば、もうすぐクリスマスだね」

「そうですね。クリスマス……デート、プレゼント交換、パーティー、わくわくしますね」

「魔術学院の出来損ない、第23巻でドラマCD特別版発売だから楽しみね」

「クリスマスになるとケーキの予約をしなくちゃね!」

 

 

確かにもうすぐクリスマス。学校でもクリスマスに近づくにつれて話題がチラホラと上がり始めている。この話し合い、ちょっと女子会っぽいとテンションが上がっていると……アオイちゃんが爆弾をまた落とした。

 

 

「今年はサンタさんに何をお願いしようかな……」

「「「ん?」」」

 

え? ちょっと待って、と三人で顔を見合わせてしまった。いや、ピュアなのはもちろん知っている。いや、女子高生だよね。しかも二年生で今年……17歳……だよね?

 

 

「えっと、アオイ先輩……その、サンタさんとはどういう意味で使っているのですか?」

「え? そのまんまだけど……毎年、世界に子供たちにプレゼントを届けてくれる。サンタさんって意味」

「えっと、サンタさんって……その……」

「んっ?」

「あ、いやなんでもないです」

「そう? あ、手紙出さないといけないから便箋探してくる」

 

アオイちゃんが部屋から出て行くと……三人で審議に入る。

 

「これは……どうしましょうか?」

「うーん、こういった事も友達として言ってあげるべきじゃないかな?」

「そうね。偶にはビシッと言う事も必要かもしれないわ」

「そうですね……ここは、三人で……」

「「いや、それは後輩の仕事」」

「えええ!? 急に!?」

 

どうやら火蓮ちゃんも僕と同じ意見のようだ。これには理由がある。それはアオイちゃんがピュアすぎて言いづらいのだ。

 

家でもそうなのだが、教室で特にそう感じることがあった。この間の休み時間、僕と火蓮ちゃんの席の方にアオイちゃんが心配そうな顔でやってきた。

 

 

『ねぇ……』

『どうしたの?』

『火蓮もいい? 今までで一番とんでもない悩み相談がある……』

『ん? どうしたの?』

『あの……その……ううッ、ウッ……』

『えッ!? ちょ、ちょっと何で泣くのよ!?』

『アオイちゃん!?』

 

 

彼女が急に涙を流すから何事かと思って背中をさすりながらゆっくり話を聞くと

 

『さっき、変なメールが来て、このメールを十人以上に広げないと、あーしをッ呪うって、ヒック、でも、皆に広めたくなくて、グスンッ……どうすればいいかな?』

『ダイジョブよ。私も同じ経験があるから』

『え? ホント?』

『そうよ。それでも怖いならそのメール私に送って。二人ならなんか心の負担が減るでしょ?』

『ありがと。でも、こんなメール送りたくないから……』

 

チェーンメールが怖いと言う理由で悩んで泣いてしまったらしい。しかも、皆に広めたくはないという善意と板挟みで。これだけじゃない。次の日には……

 

 

『コメント欄の続きを読むって押したら、チャンネル登録しないと今日の夜にあーしを呪うって……グスンッ……』

『ダイジョブよ。ただの嘘、何ともないから。私もそういうの何回も来たけど全部無視したわ』

『え? ホント?』

『僕もそう言うの偶にあるけど何もしなくても何ともないよ』

『良かった……チャンネル登録はしたくなかったから……』

 

 

 

 

 もう、本当にピュアで汚れを知らない。眼の奥がキラキラして澄んでるんだ。もし、もしだ彼女にそんなこと言って悲しい顔されたらと考えたら何も言えない。だけど、アオイちゃんのことも考えるとしっかり知って欲しい。だから、どうしてもコハクちゃんに白羽の矢が立つことになってしまう。

 

 

 

 

「あの、これは私達三人で……その……」

「いや、これはコハクに任せたいのよ。うん」

「そうなんだよね。うん」

「え、あ、その、一人はそのぉ~、気まずいと言いますか……ここは三人で協力して!」

「応援するわ。頑張って! 頼りになる後輩のコハク!」

「僕も背中を温かく見守るよ! 頼りになる後輩のコハクちゃん!」

「………………」

 

あ、こいつらどうやっても私に押し付ける気だ。という目を彼女は僕たちに向ける。すると彼女はちょっと頬を膨らませた後に髪を耳に掛けて雰囲気を変えた。一気に雰囲気が変わってかなり驚いた。可愛さがあるいつもの彼女から大人で色気のある女性に。

 

 

 

「コホン、えっとぉ、私だけだと不安だなぁ、先輩達も一緒にしてほしいなぁ……」

「「くッ……可愛い……」」

 

 

 

そうやって、両手の指を組んで胸元に置いて首をかしげる。眼をいつも以上に見開いて、声のトーンを変えて甘えた声。耳の奥から神経全体に響いて、背筋が逆立つように思えた。

 

 

「コホンって咳払い辺りから雰囲気作ったわね……言いたくないけど、可愛い……ずるいわね後輩って……」

「ずるいよね。後輩って……」

「……後輩一人に押し付けようとする先輩お二人もずるいと思いますが……」

 

 

と言うわけでアオイちゃんがサンタさんに送る便箋を取ってリビングに戻ってくる。ただただ、純粋に彼女は

 

「皆も一緒に書こう」

「あ、そ、そうですね。その前に、その……何と言いますか……ねぇ!? 火蓮先輩!?」

「え、私!? ……あのさ、サンタさんってどうやって私達にその、プレゼントを持ってくるのかな?」

 

 

火蓮ちゃんが遠回しに穏便に済ませる方向で行くようだ。

 

 

「手紙北極に送って、そしたらサンタさんは分身して全部の手紙チェックして、火星にあるおもちゃ工場に発注して、それを届けてもらった後に分身体と一緒に世界に配って回る……」

「あ、そんなアグレッシブな感じなのね」

「っておばあちゃんが言ってた」

「そ、そうなのね……あのね、その、サンタさんはねッ!」

「火蓮も手紙書くでしょ?」

 

彼女は無垢な瞳で火蓮ちゃんを見る。僕にはわかる、きっと火蓮ちゃんは今、悩んでいる。言うべきか言わざるべきか。今時、サンタを信じる女子高生なんていないだろう。正直、これがバレたら、バカにされることだってあるかもしれない。そこを僕たちは危惧している。

 

でも、言えない、言っていいのか分からない。こんな無垢な子に……そう悩んでいると、リビングのドアが開いた。

 

「あ、ただいまです。買い物から戻りました……」

「おかえり、クロもサンタさんに手紙書く?」

 

 

彼女が彼にそう聞いた。僕たち三人もそこからどうなるのか分からず意識を集中させる。彼は言うのか、合わせるのか、答えが僕たちにも分からない。彼はどうするんだ

 

 

彼はちょっと考える顔になって……

 

 

「書きます!」

 

 

元気よく彼は返事をしてかき始めた。買い物の荷物を置いて彼女と一緒に書いた。これが正解なのかどうなのか僕にはわからない。でも、きっと言った方が良いんじゃないかと思う。彼女が周りから馬鹿にされることがあったらと思う。

 

 

「あーし、お風呂入ってくる」

「お先にどうぞ!」

 

アオイちゃんがお風呂に向かった時にコハクちゃんが彼に聞いた。火蓮ちゃんも気になって、僕も気になって四人でダイニングの席につく。

 

 

「あの、十六夜君……サンタさんのことあれで良かったのでしょうか?」

「……正直言うと俺、サンタさん居ないって言おうかと思ったんです」

「そうなんですか?」

「はい。だって、多分世界中で本気で信じてるってアオイ先輩だけだから。高校生でサンタ信じてるって馬鹿にされると考えたら言ってしまった方がいいかなって。でも……夢って見てる時が一番楽しいんですよ。それがどんな夢でも見てる時が一番、楽しい。きっと、いつか覚めてしまうけど、その時までは夢を信じて欲しいなって思って……もし、それを馬鹿にする奴が居たらぶっ飛ばせばいいだけの話で、絶対に馬鹿にさせなければいいなって……」

「……」

「でも、多分言った方が良いとも思うから。()()()()()()()()()()()()()。でもあのアオイ先輩の眼を見たら、昔を思い出して、キラキラした夢を見ててほしいって思ったんです。いつか、覚めるその日まで」

 

 

 

――超、カッケェ……

 

 

「なんて、ちょっとカッコよく決め過ぎましたかね!? ああ、恥ずかしい!! こう、やっぱり俺みたいな未だに夢から覚めても覚めきれてない奴を厨二って言うんでしょうかね!? いや、ハッズいな、俺……」

「とても良いと思います。十六夜君らしいその考え方……」

「あ、ありがとうございます。でも、俺のが正解って訳じゃないので……言った方が良いって言うのも間違いじゃないと思います……から、うん、まぁ、難しいですね。何と言えばいいのか……」

「そうですね。両方正解なんでしょうね……だから、難しいんですね……」

「深いわね……なんか、自分の中に新たな価値観が生まれた気がするわ」

「そうだね……」

 

 

何というか、ちゃんとフォローされた気がする。彼は僕たちの話でも聞いたのかな、いや、どう考えてもさっき帰ってきたし……偶然かな?

 

 

 

「十六夜って本当に根っからの馬鹿真っすぐね。まぁ、嫌いじゃないけど……」

「あ、ありがとうございます」

「むぅ、私だってそう言う所が好きなんですからね!」

「ありがとうございます!」

 

 

 

僕も……そういうところが……いや、何を考えているんだろう。僕は。皆が幸せになればそれでいい。僕は二の次で良いんだ。ここにこうやって居れるだけで満足でここに居られて楽しいのも皆のおかげだから。

 

 

僕はもう、沢山貰ってる。だから、遠慮しないと……皆を優先しないと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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