今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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百二十一話 ハーレムになっても

 その日、俺は遂に全員と付き合うことになった。前世から好きだった魔装少女達。正直に言うと嬉し過ぎる。

 

 火蓮から言われたことで一時的に覚醒モードに入ってしまった。冷静に考えると俺ってヤバいと思うが今更だな。

 

「えへへ、ダーリン……」

 

ソファに座っているとクロコが右手に絡みつくようにくっついて顔をほころばせている。

 

銀堂クロコとは銀堂コハクのトラウマなどに魔力が流れ込んでできた人格。体格は中学生くらいの銀堂コハクでたれ眼で、髪が紫がかった黒のような色、瞳はピンクと黒が混じった魅惑的な色。若干のロリ感があり、大変人気のキャラクターだった。本来のストーリーでは仲間になるのに大分時間がかかる。

 

コハクと自分をどうしても比べてしまい、さらに信じられない自分が嫌でしょうがないのだ。でも、彼女は信じたいと思っているし、新しい自分で居たいと思っている。俺は銀堂コハクと銀堂クロコ。

 

同じ存在だとは思わない、似ているだけだから。そう知っているから。それと伝えた。本来なら、四人と関わって行くうちに少しづつ仲間意識が芽生えてその間は冷酷な感じなんだが……まぁ、そんなこと気にしても今更しょうがないよね!

 

クロコはコハクと似てしまう部分があるが、クロコだけの良さも沢山ある。さっき彼女に言った事もあるが、それ以外だと甘えん坊だと言う事、一人だけ中学生と言う事。甘えん坊と言うだけで可愛いと前世のネットでは評判。

 

中学生と言うだけで、なんかいいとネットでも評判だった。他の四人が高校生だからと言うのもあるんだが中学生と言う属性が際立つのだ。まぁ、クロコは高校生としてこれから生活するのだが、一応、中学生くらいの精神と身体という設定なので……

 

何か良くね? という意見が殺到。後半出て来たにも関わらず一気に人気が急上昇。SNSでもしばらくは彼女一択だった。

 

さらに、これは利点かどうか分からないのだが、いや俺にとってはいいのだが……クロコは魔装少女五人の中だとダントツで性欲が強いらしい……勿論、本来のストーリーで彼女の変なシーンとかは一切なかった。ただ、ファンブックに彼女の彼氏になった人は大変……? と書いてあったのは覚えている。

 

甘えん坊、中学生、性欲強い、垂れ眼がエロい……属性が多すぎる……と俺は、いや全国の魔装少女ファンは思った。だが、それがしっかりと纏まっているのだ。魅力的に見えて仕方がないのだ。

 

「ダーリン」

「どうしました?」

「今日、一緒にお風呂入りたいのです……」

 

 

眼をウルウルさせているが瞳の奥が獲物を逃がさない肉食動物のようになっていた。お風呂に一緒に入ったら一体全体、どんなことになるのか……

 

以前の俺ならここでアタフタして、拒んだかもしれない。しかし、開き直った俺は

 

「俺も入りたいです!」

「じゃあ……そのまま互いに洗いっこして……しちゃいけないこと一緒に……」

 

ああ、可愛い、艶がある可愛さ、心がぴょんぴょんするんじゃあー。このまま18禁のような展開になるかもしれないと心の中で準備と期待とか色々していると

 

「あーしも一緒に入りたい」

「入りましょう!」

「僕、も……」

「もう、全員で入りましょう!」

 

 

何という勢い任せと思うが俺は行き当たりばったりで行くと決めた。だから、少し残念そうな顔をしているクロコにハグをする。

 

「うぴッ!」

「クロコさんを蔑ろになんて俺は思っていないです」

「わ、分かっているのです……」

「それならよかったです」

「ううぅ、急に来られると恥ずかしいのです……ねぇ、ダーリン」

 

 

彼女は皆に聞こえない様に耳元で囁くように話しかけてきた。

 

「クロコはもっと特別な事したいのです……」

「よし、ヤリましょう!」

「声が大きいのです!!!」

 

 

 

しまった、可愛くてつい声を荒げてしまった。そこで、さらに俺は周りからの視線に気づく。皆ジト目を向けたり、頬を膨らませたりしていた。

 

「もう、全員一緒にハグしましょう!」

 

 

いや、言ってることがクズ過ぎるな、俺は……

 

 

◆◆

 

「私もなのですがクロコがもっと皆と仲良くなりたいみたいなのでどうしたらいいでしょうか?」

 

コハクちゃんの声が寝室に響いた。彼女はクロコちゃんの腕を引いている。そして、二人を見守るように寝室のドアを少し開けて彼が暖かい目を向けているという訳の分からない展開。

 

「呼び方を親しみのある感じにしたら?」

 

火蓮ちゃんがとんでもない適応力で何事も無いように提案をする。

 

「……どうすればいいのですか?」

 

クロコちゃんが恐る恐る聞く。未だに僕たちを接するのは慣れていないようだ。

 

「取りあえず、私達をお姉さま呼びにするってのはどう?」

「……火蓮お姉さま?」

「これ、いいわ、これ!」

「あーしもお願い」

「アオイお姉さま?」

「ほぁぁ! 最高、あーし妹欲しかったから……グッジョブ」

「僕もお願いしてもいいかな?」

「萌黄お姉さま?」

 

うん、凄く可愛い! 最高。この部屋をのぞいている彼も心がぴょんぴょんしている表情。

 

彼女の首をかしげながらのお姉さまは心に凄く来る。実は妹が欲しいなと思っていた時期がある為、さらにドストライクである。火蓮ちゃんもアオイちゃんも満足そうである。

 

「この感じだと十六夜はお兄様って呼ぶ感じになるのかしら?」

「いえ、ダーリンはダーリンで行きます」

「そう……流石なのです。お兄様聞いてみたかっただけど……まぁ、仕方ないわね」

 

 

火蓮ちゃんが彼がお兄様と呼ばれない事に残念そうな顔をしている中、コハクちゃんがクロコちゃんに私もお姉さまと呼んでアピールをする

 

「あの、私、私もお願いします」

「……コハクお姉さま?」

「おおおお、こ、これはいいですね……妹ですか……そう言えば、クロコのことってお母様とお父様に報告した方が良いのでしょうか?」

「それは……分からないのです……そもそも、クロコが二人の子供だとは……」

 

 

少し、複雑そうな雰囲気になりそうになったとき、襖の外から此方を覗く存在である彼がいきなり介入してくる!!

 

「二人の子供です! クロコも銀堂家ですよ! 俺が保証します!」

「だ、ダーリン、カッコいい!」

「い、十六夜君、カッコいい!」

 

 

眼がハートで恍惚な表情の二人。チョロイン……ではきっとないんだろう。それに確かに見れば見るほど姉妹のように見えてくる。

 

「では、クロコ今度の休みに報告に行きましょう」

「はいなのです」

 

なんて説明するんだろう……妹ができましたって? それをいきなり言われる親ってどういう心境なんだろう……。まぁ、嬉しい事には変わりないのかな?

 

その後少し話をした後に、彼の方を向いてクロコちゃんが笑顔で言った。

 

 

「ダーリン、もう私は大丈夫ですから、自室で今日は休んでほしいのです。寒いのに見守ってくれてありがとうなのです」

「いえ、まだまだ見守って」

「クロコはもう、大丈夫なのです」

「そうですか? 困ったらいつでもスマホで呼んでください!」

「はい!」

 

 

いつまでも彼に見守っては居られないという彼女の意思が感じ取れる。彼もそれを感じたのだろう、彼女がここから頑張ろうとする、自分から、自分だけで信じようとする意志を。

 

だから、彼は自室に戻って行った。

 

 

「えっと……こんなことを言うのはあれだけど……私達全員十六夜に誑し込まれたのよね?」

 

 

火蓮ちゃんがいきなり、とんでもない事を言う。

 

「火蓮、その言い方はどうかと思う……」

「だって、そうじゃない。誑し込まれてハーレムになってるんだもん」

「……否定できない」

「これから、私達は恋人仲間って奴になるかしら? だとするなら、何かルールとかつけるべき?」

「「「「……」」」」

 

それは僕だけでなく皆が気にしていたはずだ。恋人になったけどそれは自分だけではない。皆仲良く、五等分にでもしてルールを設けるのか、無法地帯にするのか、僕としてはルールを設けたい……

 

 

「えっと、僕としては……エッチな事はき、禁止にしたいかな? 性に乱れた生活ってあんまりよくない気がするし……」

「? 具体的にどんなこと?」

「キスとか」

「そうだね……キスは結婚式までしちゃいけないもんね」

 

あ、僕キスしてる……アオイちゃんはそう言った知識がないから大丈夫だと思うけど、残り三人はちょっと心配。

 

「……そうね……肌にも悪いって効くし、やり過ぎはダメよね。癖になってもあれだし、十六夜も全員相手にしたらとんでもないことになっちゃうし……」

「……そうですね。私も禁止で良いと思います。健全な生活が一番です」

「……お姉さまたちに同意なのです」

 

 

こいつら……全員ルールなんて気にするつもり無い!! 抜け駆けしようとしてる!! 僕がしようとしてたのに!! ルールを設けて、見えないところでポイント稼ぎまくってやろうという僕の作戦が……見えない所なら皆からの嫉妬とかもないし、秘密ってなんかいいからそうしようと思ってたのに……

 

 

そ、そっちがその気なら僕だって容赦しない。どこかしらでぜえったい抜け駆けしてやる……今度、三学期は球技大会とかあるし、何が何でも……おおっと、こんな暴力的思考はいけない……

 

「萌黄、他には?」

「そうだね……抜け駆け禁止とかかな? ほら、もう僕たちは彼女で争う必要とか無いわけだし」

「…………分かった、あーし、ヌケガケシナイ……」

 

 

うううぅ、アオイちゃんも抜け駆けしようとしてる。眉間にしわがめっちゃ寄ってるんだよ……嘘つくなんて今までしてこなかったんだろな……

 

 

彼女になってもバチバチな牽制が止むなんてことは無かった。絶対、誰かしら抜け駆けするという意識を互いに持ちながらその日は張り付けた笑顔で眠りにつく。

 

まぁ、これが僕たちの日常だから……仕方ないか……

 

 

 

◆◆

 

 

「付きましたよ。十六夜君」

「やっぱり立派ですね」

「やっぱり?」

「あ、何でも無いです」

 

 

 ダーリンとコハクお姉さまと一緒にお母様とお父様に挨拶に来た。クロコは銀堂家だから産んでいないとはいえ妹だと言う理由。さらに、ダーリンはクロコとコハクお姉さまを嫁に欲しいから挨拶に来たらしい。

 

 

 流石です。ダーリン。と言うしかない言動。この人のおかげで最近自分のことが誇らしく、銀堂クロコに慣れている気がしている。

 

 劣化ではなく、個としての成長。ダーリンがそう接してくれるから周りも私をそうやって見てくれる。きっと、ダーリンがいなかったら暫くは銀堂コハクと銀堂クロコは同じ存在として見られていたかもしれない。

 

 この人にどんどん惹かれているのが分かる、コハクお姉さまの記憶があるからと思ってしまった瞬間もあった。だから、この想いが偽物なのではないかと感じた時もあった。だけど、それは違うと断言できる。

 

 だから、こうやって彼の腕に絡みついて少しでも意識してほしいから女を凄い意識させる。コハクお姉さまの反対の腕に絡みついている。ここまで来るのに周りからの嫉妬の視線が強かった。

 

 ダーリンが嫌な思いをしてしまうかと思ってやめようかと思ったがそれすらも、嬉しいらしい。開き直りが凄いと感心する。

 

 

 さて、暫くすると大きな白い家からお母様が出てくる。

 

 

「久しぶりですね。十六夜さん、コハクさん……えっと、そちらの方は……」

「お母様、それは家の中で……」

「分かりました。それとそれとして、人前でそのようなはしたない真似は慎んだ方が良いと思いますよ」

「「す、すいません……」」

 

クロコとコハクお姉さまがお母様の雰囲気に圧倒され、ダーリンから離れる。そのまま家の中に入って行き、リビングに入る。ソファにはお父様が座っていて、クロコに視線を向ける。

 

ドキッとして、ダーリンの後ろに隠れるようにしてしまう。ダーリンは私を宥めるように頭を撫でた。子猫のようにそれに浸ってしまう。

 

「じー」

 

それを羨ましそうに見る。コハクお姉さまも頭もしっかり撫でる、彼女も雌猫のように嬉しがっているのだが、よくよく考えたら両親を前にしてとんでもないメンタルだなと思う、そしてダーリンは銀堂姉妹の扱い方が日に日に上手くなっているように気がする。ダーリンを真ん中にしてソファに座り、向かい合うようにお父様とお母様が座る。

 

 

「これ、つまらないものですが……」

「わざわざすいませんね」

「ありがたく頂こう」

 

いきなり、お土産を渡すダーリン。流石と言うか何というか。流石の域を超えている気がする。

 

 

「それで、コハクさん……そちらの方は」

「私の妹です! つまりお母様とお父様の実の娘です!」

「……はい?」

「コハク、どういうことなんだ?」

 

こんなお父様とお母様は初めて見た。何言ってるんだコイツ見たいな目を向ける。

 

 

「えっと、元は一つだったのですが、魔力がそこに流れ込んでクロコが生まれて、私の妹になったという感じです」

「貴方、分かりましたか?」

「いや、全然分からん」

 

 

案の定、どういうことなんだと言う二人、全く理解できないらしい。そこでダーリンが始めから分かりやすく説明をする。

 

「えっと、先ずコハクさんは最近巷で噂の魔装少女なんです」

「……はい?」

「あの、ニュースでよく訳のわからん銃火器を放つ魔装少女なのか?」

「そうです。それで彼女は魔力が合ってそれが精神の……カクカクシカジーカ」

「なるほど、そういう事なんですね」

「分かりやすい」

 

 

ダーリンの素晴らしい説明で二人は一瞬で全てを理解する。

 

 

「クロコさん、少しこちらに来て貰えますか?」

「は、はい」

 

クロコは緊張して足と腕が同時に出てしまう。だが、お母様の元に向かうと彼女は優しく抱きしめて頭を撫でてくれた。

 

「コハクさんに似ていますが……少し違いますね……不思議な事ですが貴方も私の娘なのですね」

「お母様と呼んでもいいのですか?」

「ええ、勿論です。こんな可愛い娘なら大歓迎です」

「お、お母様……」

「俺撫でていいか?」

「も、勿論です。お、とうさま?」

「素直に読んで構わんぞ」

 

お父様も私の頭を撫でる。私は二人に子供のように甘えてしまった。私は私。コハクはコハク。二人にも認められてそれが嬉しくてたまらない。ふと、コハクお姉さまとダーリンが気になったので目を向ける。

 

 

「私も甘えたくなりましたー。十六夜君、ぎゅー」

「あ、ありがとうございます」

 

 

二人が何かイチャイチャしているのが気に喰わない。

 

 

「お母様、コハクお姉さまはダーリンを監禁しようとしていましたと妹の私は報告するのです」

「ほう? それはそれは……コハクさん?」

「あ、そそそそそれは……でも、クロコも監禁を助長しようとしていたと姉の私は報告します」

「クロコさん?」

「ひぃぃ、そ、それは……」

 

 

互いに足を引っ張り合いをしてしまった、人を呪わば穴二つと言う言葉が頭に浮かぶ。

 

「血は争えんか……これからも頼む」

「はい! それでも二人を俺は愛します! だから娘さんたちを俺にください!」

 

隣ではいきなりダーリンが土下座をしてお父様に懇願する。

 

「ふむ……娘二人が良いなら俺は……」

「あと、このことも考慮に入れ欲しいです! 俺にはあと嫁が三人います!」

「少し、考えさせてくれ。それとそのことを詳しく聞きたいんだが……」

「はい! もう全部言います!」

 

 

潔過ぎなのです。ダーリン。この後お母様には物凄い怒られました。お尻ペンぺん姉妹揃てされました。ダーリンはめちゃくちゃ懇願して私達を嫁にする権利を貰いました。

 

めでたしめでたし……?

 

 

 

 

 

 

 


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