今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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四十九話 伝承

 私の名前は野口夏子。何処にでもいる普通の華の女子高生である。

 

「銀堂さん、黒田君ならダイジョブだよ」

「で、でもニュースに……」

「先生も言ってたけど黒田君って言ってなかった訳だし、先生が風邪で休んでるって言うんだから大丈夫だよ。命に別状とかはないだろうし、今日の休みの原因は風邪だよ」

「風邪ですか……でも、でも、でも風邪が悪化してそこから……」

「大丈夫だって。黒田君体丈夫そうだし」

「大丈夫でしょうか……電話もできないですし……」

「知ってる人から聞けばいいんじゃない? 男子とかなら知ってそうだけど……」

「そうですね……誰か連絡先知ってる人は……」

 

 彼女は教室の男子達を見渡した。知ってるのは佐々本君かな? けど、銀堂さんも聞きづらいかもしれないし、ここは私が行こう。

 

「私が聞いてくるよ」

「ええ!? いいんですか!?」

「これくらいならお安い御用だよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 さて、佐々本君に聞かないとな。私は席から立ち、佐々本君の下に向かった。彼は本を読んでいた。

 

「佐々本君」

「ん? なんだ?」

「黒田君の連絡先を持ってるよね?」

「ああ、知りたいのか?」

「まぁ、そんなとこ」

「……ほれ」

「ありがとう」

 

 彼はスマホに連絡先、電話番号、メールアドレスを表示した。両方を私の携帯に保存する。これで任務完了!!

 

「それじゃ、ありがとう」

「おう」

 

 ふー、親切だな……親切で感謝すべきなんだろうけど読んでる本がエロ本でなかったら素直に感謝できたんだけど何か複雑な感情になった。

 

「銀堂さんスマホ出して。連絡先教えるから」

「ありがとうございます」

 

 彼女はスマホに連絡先を登録すると早速長文を打ち始める。カタカタカタカタ……な、長くない? 初めてのメールなんだから軽くな感じでいいのでは?

 ちょっと”心配だから連絡したよ♡”くらいで良いと思うのだが、彼女のはかなりの分量だろう。……一体何を書いて……。

 

 気になった私は背中越しにコッソリと彼女のスマホを拝見する。

 

 

『おはようございます。急で申し訳ないのですが十六夜君の容態が心配なのでご連絡させていただきました……

 

 おっ! 最初の掴みは最高だね! 丁寧で簡潔に述べているがそこに相手を思う優しさが垣間見える。うーん、いいね!! 銀堂さん良い感じだよ!! 

 

 どれどれ続きを……

 

『朝のニュースあれは十六夜君ですよね? 一体何があったんですか? 大丈夫なんですか? それともこれは私の考え過ぎなんでしょうか? 本当に風邪で欠席したのでしょうか? だとしたらお見舞いに行きましょうか? おかゆ作りましょうか? おでこ冷やしましょうか? それとも両方できない理由で欠席なのでしょうか? だとしたら私にできることは何ですか?……』

 

 中盤がダメだ!! ハテナマーク何個あるの!!?? 急に!! 急に質問攻め!! これは怖いよ!!

 

「ストップ、銀堂さん」

「な、何ですか? 今忙しいのですが……」

 

 彼女はスマホを隠すように胸に押し付けた。やっぱりそこら辺は恥ずかしさがあるんだね。思い人に送るメール内容を見られたら恥ずかしいのは分かるけど、このままではダメだ。私がしっかりと中止しないと。彼女が隠したスマホ、そのままスマホが埋もれて完全に見えなくなりそうだ。おっと脱線した。

 

 

「流石にそれはダメ」

「何がですか?」

「重すぎるよ、そのメール」

「え? メールは重くないですよ?」

 

 彼女はスマホをフリフリと振った。いや、確かにメールは重さとかは無いんだけど、そういう意味じゃないんだよ。銀堂さん……。

 

「あ、そういう事じゃなくて。何ていうか、そのメールだと相手に余計な負担をかけちゃうってこと……なんだ」

「え? このメールでは……ダメなんですか……?」

「えっと、相手を思いやる気持ちは感じることができて凄くいいんだけど……何というかオーバーヒートしてると思う」

「お、オーバーヒート?」

「もっとフランクな感じって言うか親しみを感じれて、それでいてあんまり長くない感じがいいんじゃないかな? 初めてのメールのわけだしいきなり長文を送り付けるのも何か……ね?」

「これでも大分抑えたのですが……夏子さんが言うならそうなんですね……」

「あ、それで抑えたんだ……」

 

 彼女は再びカタカタとスマホに文字を打ち始めた。彼女の素直さが良いところなんだよね……さて、どんな感じになったかな?

 

 

『ハロー! 十六夜君! 体調大丈夫? めっちゃ心配です! どんな感じか秒で連絡してね!』

 

 

 うーん、OUT! いや、素直さは良いんだけどこれはダメだよ!? ハローって!! 秒で連絡!?

 

「ダメダメダメ!!!!」

「ふぇ! きゅ、急に大声を上げないでください!」

「いやだってOUTなんだもん!! なんで恋愛事になるとポンコツになるの!?」

「ぽ、ポンコツ!? ひ、酷くないですか!?」

「もう、私が一から教えるよ!」

 

 私がそこそこのメールを打った。

 

「こ、こんな感じでいいのですか? 連絡は何時でもいいというのは……私はすぐにでも返信が欲しいのですが……」

「相手を気遣わないとね。一応、病人なんだから」

「そ、そうですね。十六夜君は大変かもしれないんですよね」

「そうそう、あんまり黒田君に負担をかけないようにしないとね。それを踏まえて相手を心配するのが大事だと私は思うな」

「成程です。……十六夜君は大丈夫でしょうか……」

 

 彼女は悲しそうに顔を歪める。それだけ心配なのだろう。私的に全然大丈夫な感じがするんだけどな……。

 

 

「まぁ、私は黒田君はぴんぴんしてるような気がするんだけどね」

「え? そうなんですか?」

「勘だよ。あくまでね。だから絶対と言うわけではないんだ」

「そうなんですか……でも、夏子さんの勘はよく当たりますからね。この間も株の上昇と下落をピシャリ当てましたし」

「アハハ、偶々だよ。でも、将来は投資家にでもなろうかな! なんてね?」

「良いと思いますよ。似合ってます」

「うーん、投資家が似合うって女子高生的にどうなんだろう?」

「あ、す、すいません。悪い意味ではなく良い意味の投資家です」

「ごめん、ちょっとからかっただけだから気にしなくていいよ」

「び、ビックリしたじゃないですか! もう!」

 

 何か、彼女が急に元気になった気がする。一体どうしてなんだろう。

 

「銀堂さんさっきより急に元気になってない?」

「え? ああ、そうですね。心が軽くなりました。先ほどまで心配でどうにかなりそうだったのですが……夏子さんが大丈夫って言うならきっと大丈夫なんだろうなって思ったので……」

「そ、そう?」

「はい、だって、その、なんていうか夏子さんは信用できるって言うか……なんていうか、信用と言うか、信頼できる……その、と、友達ですから……」

 

 急に可愛いな。おい。入学当初彼女は他者との壁を作っていた。そこから黒田君とかかわることで少し緩和された。

 

 彼女の恋のサポートということで少しだけ親密度を得た。毎日、色々恋の話をしているうちに私たちの距離が縮まっていくのは感じていた。でも、本人からこうやって信頼しているという言葉をかけてくれたのは……嬉しいな。

 

「えへへ、そっか友達か」

「は、はい」

「可愛いなもう!」

「きゃ!」

 

 私は彼女に抱き着いた。すっごい良い匂い、きっといいシャンプーとかリンスとか使ってるんだろうな。髪もサラサラでべたつきとか一切なし。

 

「な、なんですか?」

「可愛いから抱き着いたんだよ」

「す、するにしてももっと、こう事前に言ってください! 本当に心臓に悪いんですから!」

「分かった!」

 

 私達友達の親密度がさらに上がった!!

 

 そんな朝のひと時。

 

 

◆◆◆

 

「我たちはいつまでここで見張っておればよいのじゃ?」

「強いて言うなら災い(ディザスター)を回避するまで」

「唐突な厨二キャラ……」

 

 俺達は車内から学校を監視していた。時刻は九時近い。目につく所にはもう生徒の影はない。

 

「もういいじゃろう? 校内に入るのは確認できたわけじゃ。放課後から監視を再開すれば」

「いや、もしかしたら学校にテロリストが来るというありがちな展開の可能性がある。その場合はこの車で校内に突撃しないといけませんから待機しましょう」

「ありえんわ!! そして困るわ!! これ我の車!! と言うか最悪が起こるのはもっと先と言ったであろう!! 休憩じゃ!! 休憩じゃ!」

「……確かに休める時に休まないといけませんね」

「そうじゃろう、そうじゃろう。もしもの時に万全でなければ実力は発揮できないものじゃ」

 

 占いによるとバッドエンドはまだ先。ここで体力を使いすぎるのも確かに良くない。

 

「分かりました。では休憩しましょう」

「だったら海鮮!! 海鮮丼食べに行こうなのじゃ!!」

「ええ、いいですよ。自由時間の間ならですが……」

「ん?」

「現時刻は九時。そして学校が終わるのは大体三時だからお先に昼の十二時まで休憩してください。俺はその間も監視を続けます」

「ええ……? まぁ、いいんじゃが……」

「安心してください。俺の休憩時間は殆ど取りません。貴方が戻ってきたら多少トイレに行くくらいです」

「ええ?」

「車は持って行っていいですよ。海鮮丼食べてきてください。ただ、食中毒とかは気を付けてくださいね」

「あ、うん。分かったのじゃ。何故監視を続ける? 最悪はもっと先だと言ったであろう?」

「確かにその通りですね。しかし、今現在最悪に関する情報がない以上少しでも情報が欲しい。もしかしたら何気ない日常にヒントがある可能性がありますので監視は続行すべきかと」

「今、相手は校内にいるのじゃが……」

「ええ、そこだけは本当に残念です。透明化の『超能力』でもあれば四六時中側にいるのですが……しかし、そんな『超能力』は無い以上できる限りでするしかありません。本当なら校内に入りたいのですが通報されてしまう可能性がある以上外で待機するしかない……ということです」

「そ、そうか。普通にとんでもないことを言っておるな……まぁ、我は少し休憩させてもらおうかの」

「はい、どうぞ」

 

 彼女はここまで運転をしてくれた。疲れが貯まっているだろう。休息を与えるべきだ。三時間だが。

 

 俺は一旦車から降りて校門の前の陰で待機する。ここ女子高だからな。男がいるだけで怪しまれても不思議ではない。

 

 占い師の車が見えなくなるとスマホに連絡が届いた。

 

 うーんと、あっ火原火蓮からだ。えっと、なになに……ああ、彼女もか……ニュース匿名の意味が……。

 

 携帯が再び振動した。今度は銀堂コハクからか。彼女は……おお、普通に風邪の心配だな。まぁ、二人に心配かけたくないし、実はぴんぴんしてて海にいると正直に言うしかないな。

 

 とりあえず二人には早く返信して何か監視とヒントを……

 

「おや、見かけない子だね」

「あ、どうも」

「観光かい?」

「ええ、まぁある意味観光ですかね」

 

 年配の女性だ。地元の人だろうか。うーん、この人に何か聞いてみるか。何か怪しい集団とか狂人とかがいないか。

 

「あの、この町ってどんな感じですか?」

「良い町だよ。事件なんて滅多に起きない平和そのものって感じだよ」

「はぁ、なるほど。何か怪しい人とかは居ないですか?」

「あまり聞かないね」

 

 下手人は地元民ではない……のか? それとも火原火蓮のバッドエンドの坂本典礼みたいに、本性を隠している? 

 

 色々想定する方が良いかもしれないな。

 

「それじゃあ、最近何か変わった事とかはないですか?」

「うーん、特に無いねぇ。ああ、でももうすぐお祭りがあるよ」

「それはどんな祭りですか?」

「この町に古くから伝わる陰陽師を奉るお祭りなんだよ。昔々にこの土地に大きな災いを齎した”夢喰い”という妖怪がいてね。それをとある陰陽師が封印したことに人々が感謝を示すために催しを何かしようというのが始まりなんだよ」

「……そんなことが……」

「ほほほ、今時こんな話を信じる若者はいないから伝承が忘れられつつあるんだけどね……」

 

 これはバッドエンドに関係するかもしれない。ifストーリーは物語なのだ。作者が意味ありげな伝承を話の筋に絡めても不思議ではない。意味もない可能性もあるが、俺はこの町について全く知らないので念のためもっと詳しく聞きたい。

 

「その伝承もっと詳しく聞きたいのですが」

「ほほほ、物好きな若者だね。ただ申し訳ないけど私もそういう伝承があるということしか知らなくてね。細かい部分は分からないんだよ」

「そ、そこをなんとか」

「そんなに知りたいのかい? この町の図書館に古い文献があるから見てみるといい、それとここの町長はこういった事に詳しいから聞いてみるといい」

「そうですか。ありがとうございます」

「ほほほ、私も久しぶりに面白い若者にあえて楽しかったよ。ありがとう」

 

 そう言うと、おばあさんはその場から歩いて行った。サンバイザーをしながら歩いているから散歩でもしていたのだろう。あのおばあさんが言っていた”夢喰い”何か不吉な予感がする。

 

 この町の伝承も詳しく調べた方が良いかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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