今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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感想ありがとうございます!!

返信できなくてすいません……ただモチベに物凄く役立ち助かっています。誠にありがとうございます


五十一話 遭遇

 町役場に到着した。役場の場所はあのおばあさんから聞いていたため道に迷うことはなかった。

 夏が過ぎ去った後とは言え、走り続けたので汗が吹き出してくる。

 所内ではクーラーが効いていたので涼しい……と言うか肌寒いくらいだ。まぁ、汗をかいていたからこれくらいがちょうどいい。

 

「あの、町長さんっていますか?」

「えっと、どのような御用ですか?」

「町の伝承について聞きたくて」

「ああー、確かに詳しいですねー。少々お待ちください」

 

 中年くらいの男性職員は奥の部屋に入って行った。町長は時間をくれるだろうか。事前に連絡しておいた方がよかったかもしれないな。と言っても、会わないという選択肢はなかった。そう考えれば強引ではあるが押し掛けるのも悪い手ではないかもしれない。……数分待つと中年男性が戻ってきた。

 

「一応、許可は貰いました。ただ町長はかなり気難しいお方なので……そこら辺はご容赦ください」

「はい」

 

 町長室に入る。歴代町長の写真が壁の高い位置からこちらを見下ろしていた。豪華な装飾が施された木製の広い机。来客用のソファーに腰かけている気難しさ全開のおじさんは、立ち上がる気配すら見せない。

 

「お前が町の伝承について聞きたいという若者か? しかし、この町の伝承をそう簡単に余所者に……」

「伝承と言うより”夢喰い”にあった時の対処法が聞きたいのです。あ、これ饅頭です」

「ふん、こんなもので釣ろうとは片腹痛い」

 

 と言いつつ饅頭を自分の隣に置いた。

 

「さて、”夢喰い”についてだが……」

 

 話が早くて助かる。小言を言われのはあまり好ましくない。

 

「五百年以上前の存在でありこの町に信じている者はいない。例外はいるがな……この妖怪は象の姿をしており、人の中に潜り精神に大きな負荷をかける」

「対処法はなんですか?」

「陰陽術で封印が無難だな」

「使えません。他には」

「うむ、これはかなり難しい方法であるが……」

「気にせずどうぞ」

「うむ、”夢喰い”は人の精神を汚染する。だが自身の夢を自由自在に操作できれば退治することができるかもしれん……」

「夢ですか……」

「夢の中の経験は現実には百パーセント反映はしない。しかし、悪夢を何回も味わえばそれは精神に大きな影響を与える。嘗ての人たちも植物人間のようになってしまった」

「確かに夢も多少現実に影響はありますね……」

 

 前に銀堂コハクに刺された夢を見たとき目が覚めると思わずお腹を擦ってしまった。あのおばあさんの言っていた通り、やっぱり夢でしか対策できないのか……。

 

「だが、それは妖怪でも同じこと。限りなく現実に近い夢が人間の精神に大きな影響を与えるなら妖怪の精神にも影響があってもおかしくない」

「な、なるほど?」

「私が知るのはここまでだ」

「どうしたら夢を操れますか?」

「それは……私にはうまく説明できないな」

「……それでもいいです」

「……強烈で明確で鮮明なイメージが必要だ」

「?」

「私より詳しく説明できる者がいる。ここからは、この町に住む陰陽師に聞くと良い」

「ええ!? いるんですか!?」

 

 だったらそいつに封印してもらえば全部解決じゃないか!! まぁ、まだ妖怪がバッドエンドに絡んでると決まったわけではないが陰陽師がいれば百人力だ。

 

「しかし、その陰陽師は大分気難しい」

「そうですか……」

 

 気難しい人多くないか、この町。

 

「私から連絡を入れておこう。そして手土産にはサバの味噌煮を持っていくと話がしやすいだろう」

「はい、ありがとうございます」

「今時、こんな昔の伝承を聞きに来るとは珍しい。この町の住人ですら興味など微塵も持たないのだが……」

「もの好きなんですよ。それでは失礼します。ありがとうございました」

「後これを持っていくといい」

「これは?」

「悪しき者が近づいたときに反応する宝玉だ」

「は、はぁー。これが?」

「そうだ。持って行け。伝承といったものに関わるときは注意した方が良いからな」

「ありがとうございます」

 

 

 見た感じただのビー玉だ。しかし、貰えるものは貰っておこう。この人良い人だなぁ。

 

 その後、俺は陰陽師の末裔の住所を教えてもらい部屋を辞した。時刻はすでに三時になろうとしていた。そろそろ彼女は学校を出るはずだ。下校中に一度接触を持ちたかった。陰陽師に会うのは明日の午前中にしよう。

 役場の外に出るとーー

 

「おや、町長から話が聞けたようだね」

「あ、どうも」

「ほほほ、次は陰陽師かい?」

「ええ、行くなら明日になりますが」

「ほほほ、頑張りなさい」

 

 おばあさんはそのまま歩いて行ってしまった。

 

 この時、慌てていた俺は気付かなかった。俺が陰陽師に会いに行くことを彼女は知らないはずだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 時刻は二時五十分。僅かに息を乱しながらも車内で監視を始める。

 

「何か変化はありましたか?」

「ないの。いたって平和じゃ」

「そうですか……」

「お主は何か掴んだのか?」

「少し気になることがありました」

「ほぉ、それは?」

「夢喰いという妖怪がいるそうです。それが何か関係あるのかまでは分かりませんが」

「妖怪か……我も見たことはないがいないという確証もない……か……」

「占い師が存在するんですから妖怪もいても不思議ではないです」

 

 というかこの世界には妖怪が実在する。『ストーリー』にはあんまり出てはこなかったが……。

 

「しかし、かと言って妖怪が関わると言ったわけではないともいえるの」

「ええ、だからこそ今回は何としても守護霊ポジにつかないと」

「?? まぁ、ほどほどにの」

「ええ」

 

 数分待つと女子高生たちが続々と校内から出て帰宅していく。そこに一人ぽつんと歩く片海アオイ……。

 

 彼女は控えめに言ってボッチだ。

 

 そして、見た目は結構強めだが、内心はかなり可愛い。例えば好きな物はシンデレラ、ぬいぐるみ、スイーツ。趣味は散歩、スポーツ、料理。

 意外と友達が欲しいと思っていたり、相手に強く当たってしまうことを気を揉んでいたり、オッドアイを気にしていたりする。

 

 お化けが苦手だったり寂しがり屋だったりと黄川萌黄と重なる部分も多い。しかし、黄川萌黄と違って彼女は感情を表現するのがとんでもなく苦手だ。

 

 そんな彼女をこれから尾行しなくてはならない。しかも、車に乗りながらでは守護霊ポジにつけないので俺一人で行かなくてはならない。

 

「それじゃあ、一旦俺は歩いて尾行するので何かあったら迎えお願いします」

「うむ」

 

 俺は車から出て片海アオイの後をつける……。

 

◆◆◆

 

 彼女は一人で帰り道を歩く。今このポジションよりは守護霊ポジに行きたい。

 どうやって話しかけようか……どうやって仲良くなろうか……。

 

 彼女の前に一匹の野良犬が現れる。ワンワンと吠えてグルルルルと威圧する。彼女は僅かに驚き一歩下がる。ここで俺にあるビジョンが見えてしまった。

 

 噛まれる→感染症にかかる→死亡→バッドエンド

 僅か一秒で俺は先を見通した。ここはあの犬を撃退しないといけない!!

 

「危ない!!」

「きゃ!」

 

 彼女の前に慌てて立つ。野良犬と向かい合う。

 

「くっ、大丈夫ですか!!」

「え? あ、え?」

「急いで逃げてください!!」

「……いや、ただの犬なんだけど……」

「細菌を持っている犬かもしれません」

「変わってんね。アンタ……この犬この辺りじゃ結構有名な犬だから大丈夫。吠えて人ビビらせるけど何もしてこないから」

「どうですかね。今日に限って噛みついてくるかもしれません」

「このままアンタが威圧をやり続けたら噛みつくかもね。とりあえずその犬は大丈夫だから。あーしも昔から知ってるし、そもそもこの犬、飼い主いるからケアとかはばっちりだよ」

「ガチですか?」

「がち」

 

 何だよ。ビビらせやがってただの犬かよ。こいつはバッドエンドに関係なさそうだな。そもそも犬に噛まれれてから始まるバッドエンドって……なさそうだな。

 どの話にも共通するが、やっぱり過度な演出があったりする。犬に噛まれるって言ってみれば地味だよな。ふぅー、とりあえず何てことなくて良かった。

 

 さて、偶然ではあるが違和感がなく彼女との初対面を果たすことができたと思う。

 この機会を逃したくない。そのまま何もせずに別れたら次に声をかける口実がなくなってしまう。

 

 彼女は友達を欲しているから友達的な感じで……近づこう……言い方悪いな。親しくなろう。うん。

 

 いつの間にか犬は去って行った。

 

「あの犬知らないってことはアンタこの辺の者じゃないでしょ」

「ええ、まぁ……」

 

 物凄く睨まれているように感じるが、本人にはそんなつもりはない。目つきの悪さ、オッドアイ、強い言動は、彼女のコンプレックスなのだ。恐らく心の中では気を遣っている。落ち着いた雰囲気で彼女は会話を続けた。

 

「何でここに来たの?」

「観光です」

「ふーん、一応礼は言っておいたげる。サンキュー」

「いえ、勘違いなので……お礼を言われるほどでは……」

「だとしても庇おうとしたわけだし」

「そうですか。ではどういたしまして」

「…………」

 

 彼女は鋭い目を向けた。片方は前髪に隠れており両目を見ることはできないが、彼女の目には少しの色が含まれている。

 

「えっと何か?」

「アンタ、ビビんないの?」

「何にですか?」

「いや、あーしの目とか……」

「ビビらないです」

「そ……」

 

 ああ、そういう事か。彼女は中学校の頃にこの辺りに引っ越してきた。前の学校でも今の女子高でも目つきが悪いことで驚かれたり周りが自分を遠ざけるから俺の反応は新鮮なのか。

 

『ストーリー』でも最初は皆ノ色高校の生徒達に驚かれるが、『魔装少女』銀堂コハクや火原火蓮、黄川萌黄は物怖じせず受け入れるんだよな。そこから友情が生まれる。

 距離を置かないだけで、こちらが想像する以上に彼女は嬉しいのかもしれない。

 全く、こんな可愛い子を遠ざけるとは見る目がない。目つきが悪いくらい大した問題じゃない。そこが良いとすら思う。オッドアイもチャーミングだ。こんな彼女が酷い目に遭うなんて絶対に避けなくてはならない。どうやったら彼女と共に……

 

 はっ!! 良いこと思いついたぞ。観光案内してもらおう。それなら情報収集しつつ彼女を守れる。一人で出歩かれるより観光案内と称して一緒にいる方が良い。彼女の予定には問題ないはずだ。『ストーリー』によると、彼女の両親は共働きで家にいないし、彼女は放課後を趣味の運動に費やしている。

 彼女は趣味で習慣的に散歩したり走ったりする。その習慣は彼女が幼いときからずっと続いている。今日も放課後は運動をするはずだ。

 

 しかし、派手に町中を動き回るのは抑えて貰おう。彼女の運動神経はかなりのものだ。素の身体能力も高い『魔装少女』でも彼女のランニングについて行けるのは黄川萌黄だけだ。そのとき銀堂コハクと火原火蓮は横腹を抑えてダウンしていた。

 

「あの、俺この町の事全然知らないので宜しければ案内してもらえませんか?」

「え? マジ?」

「あっ、ナンパじゃないですよ?」

「いや、そこは疑ってないけど……初対面なのにかなりグイグイ寄ってくるなって」

「人の縁を大事にするのが信条なので初対面とか俺には関係ないんですよ」

「…………ふーん、初対面でも関係ないね……人の縁を大事にすると……」

「はい」

「あーしに頼むなんてね……物好きもいるもんだ……」

 

 片海アオイは自分をかなり卑下するときがある。自分に友達は出来ないとか、避けられるのは自分が悪いとか。俺は彼女の良いところを沢山挙げられる。だがこういう時の彼女は嫌いだ。

 

「あんまり自分を卑下しないでください。貴方は魅力的ですよ。かなり!! かなり!!」

「……」

「あっ、ナンパじゃないですよ?」

「いや、そこは疑ってない……まぁ、いいよ。案内してあげる」

「お願いします」

「一回家帰って荷物置いてからでいい感じ?」

「良い感じです」

「そ……じゃ一旦あーし家に帰るからここら辺で待ってて」

「いえ、ついて行きます」

「マジ? バリグイグイ来るじゃん……」

「あっ、ナンパじゃ」

「それはもういい。……うーん……まぁ、いいか。それじゃ面白いものないけどついてきたら?」

「そうします」

 

 彼女はゆっくり歩きだした。俺は彼女について行く。これで彼女の側にいることができる。

 俺の言動に違和感を持たれるかもしれないが、追い払われるほどでもないだろう。今までも大分強引だったわけだし。気にする事じゃない。しかし、これで彼女の現住所が分かることになる。

 よっしゃ、自宅把握したぜ!! ……俺変態みたいだな……いや、大丈夫だ。今回で最後。彼女達を救うまでは泥をかぶると決めたんだ!!

 

 片海アオイを救ったら真っ当な人間になるぞ!! ストーカーもしない。無理にキスを迫ったりしない平凡で真面目でただの傍観者。ただのモブ。

 

 彼女達を救ったら普通になると俺は誓った。

 

 

 

 

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