今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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 感想、誤字報告ありがとうございます!!

これからもよろしくお願いします。

全然関係ない事ですが……最近始めたプリコネが面白い……



五十三話 観光2

ここまでの時系列

 

”一日目”(黄川萌黄を救った次の日)

 

十六夜達の女子校監視

<同時刻>銀堂コハクと夏子の絡み

    火原火蓮と黄川萌黄の絡み

    銀堂コハクと夏子のメール創作

  ↓

 

十六夜にメールが到着。(おばあさんに邂逅してうっかり忘れる)

 

<十二時頃>

 

十六夜の女子高監視交代。図書館で調べもの。

『魔装少女』のイチャイチャ。(黄川弄り)

 

<午後二時過ぎ>

 

十六夜が町長と話す

十六夜が急いで女子高に戻り片海アオイの尾行、犬を撃退(勘違い)

 

<放課後から夜中>

 

そのまま観光案内。

占い師と情報交換

 

 

”二日目”

 

<午前中>

 

占い師を見て年齢詐称疑惑、片海の登校に付きまとって軽くキレられる

     ↓

十六夜が陰陽師と話す。

     ↓

『53話のスタート地点』 十六夜side

     ↓

店員さんの神サポート(二日目の皆ノ色町放課後。52話)

 

――大分時間軸がごちゃごちゃしてる様な感じがしたのでまとめておきました……

申し訳ございません。大変読みづらかったと思います。

 

今後ともよろしくお願いいたします。

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 彼女の監視を始めてから二日目。時刻は午後三時過ぎ。片海アオイが下校する時間だ。今朝の登校で不機嫌にさせてしまったことを謝らなければならない。学校の前で黙って腕を組み壁に寄りかかりながら彼女を待つ。

 

 校門から出て行く女子高生からレーザーポインターを浴びせられながら堂々と待つ!!

 

 暫くすると女子高生たちが潮が引くように一本道を開ける。その一本道を無言で通るのは片海アオイだ。クソ、可哀そうじゃねぇか。だが俺が行った所で解決しないどころか益々マイナスな印象を与えてしまうだろうしな……。

 

「また居るし」

「いや、その、今日も観光案内お願いしたく……」

「昨日で全部終わったんだけど?」

 

 彼女は少し不機嫌そうな雰囲気を醸し出して一人で帰路を歩いて行く。俺は彼女の隣を歩いて庇うようについて行く。

 

「それ、やめろって言ったよね?」

「す、すみません」

「謝るくらいなら止めて欲しいんだけど?」

「すみません。無理……です」

「あっそ」

 

 そこから彼女は何も言わずスタスタ歩いて行く。心苦しいが守護霊ポジで東西南北に気を配る。

 

 大分、怒らせてしまったかな……今までもそういう事はあった。俺が変な目で見られるのは別にいいんだが、彼女達が嫌がることはしたくない。

 はぁー、強い『超能力』とかがあればと何度思ったことか……。

 

 

 彼女と共に歩いていると、赤いランドセルを背負った子が泣いているのを見かけた。小学校の低学年ぐらいだろうか。

 転んで擦りむいたのか、膝から僅かに血が垂れている。

 

 

「うわぁぁぁん! 痛いよぉぉぉ!」

 

 それを見た瞬間、彼女は疾風のようにその子の傍に駆け寄る。懐から簡易医療セットを取り出し、消毒、そして絆創膏を貼って手早く処置をした。俺も一瞬過ぎて反応ができなかった……。

 

「これでいいよ」

「あ、ありがヒぃ、め、目が怖いよぉぉ!!」

 

 女の子は再び泣き出してしまう。彼女は驚かなかった。まるでそう言われると分かっていたようだ。

 小学生の女の子は逃げるように走り去ってしまった。お礼くらい言わせたかったが、彼女がそれを望んでいない。

 

「……」

 

 彼女は再び歩き出す。

 片海アオイはオッドアイで目つきが悪い。そのせいで昔からよく人を気後れさせてしまう。

 親切にしても感謝が返ってくることは少ない。だけど彼女はそんなことは関係ない。自分が傷ついても誰かを助けることに躊躇しない。

 

――そこに俺は憧れたんだ

 

 だけど、彼女が傷つかない訳じゃない。顔には出さないが寂しさと切なさを感じている。だから彼女は自己評価が低い。こんな自分だから仕方ないと達観している。

 自分の良さに気づくのは『魔装少女』として仲間達と戦うようになってからだ。この時点の自己評価はまだ低いまま。

 

 出会って間もない俺が何を言っても彼女に響かないかもしれない。だけど伝えたい、彼女に彼女自身の凄さとカッコよさを。

 

 

「あの」

「何?」

「さっきの片海さんの行動めっちゃカッコ良かったです」

「は? 何それ? 変な気とか使わないでくんない?」

「使ってないです。それと片海さんの眼。俺めっちゃ好きです!!」

「……マジでムカつくから黙ってくんない?」

 

 彼女は鋭い目つきでこちらを睨む。今までとは違う明確な怒気をこちらに向けていた。からかわれていると思ったのだろう。

 

「俺は真面目です。本気で貴方はカッコかわいい!!」

「……馬鹿にされてるのは分かった」

 

 俺の言う事が気に障ったんだろう。彼女は猛スピードで走り俺から離れていく。

 

 し、しまった。俺の足では彼女に追いつけない!! 

 クソ。クソ!! ミスった!! 俺はなんてことをしてしまったんだ!! もし、このまま俺が居ないところでバッドエンドが起こってしまったら……ま、不味い……。

 俺も走るが彼女には追いつけない……………。

 

 

 追いつけない…………。

 

 

 

――という展開は容易に想像できたので彼女の腕を掴んで走れないようにした。

 

 

「は? ちょ、離してくんない?」

「貴方が疾風のように走って逃げられたら捕まえられないので」

「いや、逃げんよ。何でそんな発想してんの?」

「何となくです。そんなことより俺は貴方の行動も貴方の眼も素晴らしいと思います」

「はぁ~、この吊り上がった目が? 子供に泣きながら逃げられるオチの行動が?」

「はい。貴方の子供を救った行動はカッコいい以外の何ものでもないんです。誰かを救うために迷いなく走る姿に感服しました。自分が傷つくことを顧みずひた走る貴方が俺は好きなんです!!」

「……会って二日目で言うセリフじゃないと思うんだけど……長年付き添った幼馴染に言う位のセリフだと思うんだけど」

「そんな細かいことはどうでも良いですよ!! 今は!!」

「あ、うん。そんな強気で来る?」

「つい、気持ちが昂ってしまい……申し訳ございません」

「そんなしみじみ謝らなくてもいいんだけど……」

「次に片海さんの眼ですがカッコよさの中にも優しがあって、偶に恥ずかしがる時に目がぐるぐるする感じとかオッドアイも味があって俺は好きです。眼が欲しいくらいです!!」

「え? ごめん? 感動の感じを出してるところ悪いんだけどツッコミどころ多すぎてちょっと良く分かんない感じになってるんだけど……まず何であーしがオッドアイなの知ってるの? 髪で隠してるんだけど……後、あーしのこと前から知ってる感じがするんだけど?」

「知りません。貴方の事は昨日初めて知りました。オッドアイは昨日偶々、一瞬だけサラッと見えました」

「ふーん。ま、どうでもいいけど。こんな目にそんな感想を持つとか物好きだね……」

 

 彼女の自己評価がまだ低いので俺は彼女の肩を掴み目線を合わせた。もっと語らなくてはなるまい。

 

 

「これはダメじゃね? 流石にポリスでしょ?」

「”こんな目”っていうのが納得いかないんですよ。もう、これは一時間位語るしかないですね……」

「語るって会って二日の相手の目を一時間語れるのってどうかと思うけど。後、肩離してくんない? マジでポリス呼ぶ」

「フッ、俺は警察に連絡させないですよ。肩を掴んでるからあまり自由に動けないでしょうし、それに携帯を出したとしても取り上げて民家にでも投げ込めばいいだけですから」

「マジでちょっとアンタヤバいと思う」

「クク、そんなこと……言われても傷つきませんよ……今更、ですから……」

「バリバリ萎えてるじゃん」

「クク、そんなことは置いておいて語りますよ。一時間」

「ええ? マジでなんなん?」

 

 そこからは語りつくした。

 

 十分経過

 

「ですから片海さんは二重で、瞳の色は海のようにきれいで……」

「……」

 

 二十分経過

 

「そもそもオッドアイと言うのが魅力に溢れており……」

「そろそろハズいんだけど……」

 

 五十分経過

 

「ですから俺はこの瞳が大好きでその良さを貴方自身にも分かって欲しくてですね」

「も、もういいでしょ? そ、そろそろハズい、マジでそんな褒めちぎらなくても……」

 

 一時間経過

 

「つまり……」

「もう無理!! 聞けない!! 恥ずかしい!」

「フフフ、まだまだ聞いてもらいますよ。肩を押さえていますから耳に蓋をすることもできないでしょう? そして恥ずかしくて眼がぐるぐるしてきていますがこれが可愛くて仕方ないですね」

「や、やめろぉぉぉ!!」

 

 

 結局、一時間半話してしまった。彼女の肩の拘束を一旦解くと彼女は顔を手で覆った。顔はトマトより真っ赤。

 

 

「はぁ、はぁ。マジでアンタヤバい……」

「いや、つい語りたくなってしまったんですよね。貴方の自己評価が低いからそれを見て見ぬ振りができないと言いますか。そんな感じなんですよね。それより悶えてる片海さんは需要があり過ぎてグッズ化したらそれはそれは売れるでしょうね……」

「アンタマジでヤバい。マジでヤバイ」

「それよりどうですか? 良さに気づけました?」

 

 俺は彼女の肩を再び掴んだ。もし、ここで評価が低いなら再び語るしかあるまい。

 

「ここであーしがまた変な事言ったらまた語るつもりってのが目に見えてるんだけど……」

「さぁ、どうでしょう? それよりどうですか?」

「……まぁ、その、なんていうか……意外と……」

「意外と?」

「あ、違う……その……あーしの目って普通に良い所も沢山あるんだなって気付いた……感じ? ……これでいい?」

「正確には良い所しかない。ですがまぁいいですよ。怖がる人は見る目が無いだけです。目が肥えていない人が多くてこの世界は貴方にとって住みづらいでしょうが頑張ってください!!」

「……どんなエールだよ……」

「それより観光案内お願いします」

「昨日で終わったけど」

「二周目に行きましょう」

「……もう突っ込まない……」

 

 

 この後、昨日案内してもらった場所を再び回った。

 

 

 

◆◆◆

 

 あーしは鏡の前で自分の目を眺める。

 左には目つきが物凄く悪い青い目。右には灰色の目つきが悪い目。

 

 ずっと、悪い所しか分からなかった。見てこなかった。

 

 いい所なんて無いと思っていた。

 

 瞳がきれいでカッコいいけど可愛いか……ハッキリ言って彼の言う事はハチャメチャだった。同じことを何回も言ってたし、かなり口下手なんだろう。

 

 だけど、あれは褒め過ぎだ……何? あれ? どんなメンタルしてたら会って二日の女子をあんなに褒めちぎられるの?

 

 通り過ぎる人たちがひそひそ話してたけど彼は気にした様子はなかった。

 

『え? もしかして口説かれてるのかしら』

『今時の子供は大胆ね』

『あらあらあの子顔真っ赤にしてるわ』

 

 周りの目を少しは気にしてほしかった。恥ずかしくて何もできずに永遠ともいえる自分の褒めちぎりを聞かされる。一種の拷問。

 

 アイツめちゃくちゃ変わってる。

 

 …………まぁ、ちょっと嬉しいって思った、あーしも変わってるのかもね……。

 

 

◆◆◆

 

 この町に来てから三日目の放課後、俺は彼女と三週目の観光案内をしてもらっている。

 

 今日の午前中は占い師に学校を任せて俺は年配の方たちが通うスイミングスクールやゲートボール場に向かい聞き込みをした。そこで”夢喰い”は特に女性の魂が好きという情報を得ることができた。

 

 そして、我が母からメールが届く。家を空ける言い訳として、母にはちょっと旅行に行ってくると言ってある。メールでは、旅行がどんな感じか気になっているようだ。

 そこで俺はある事実に気づく。銀堂コハクと火原火蓮にメールを返していなかった。急いでメールを返信し謝った。とんでもなく怒っているんだろうなと思ったのだが二人ともそんなことはなかった……。ふぅー良かった……。

 

 さて、メールの件は置いておいて再びこの町について考える。

 

 今の所、何もない。平和過ぎる……やっぱり伝承が関わってくるのかな……。

 

「ここが魚市場ね……三回目だけど」

「そうですか」

「次行くよ」

「はい」

 

 彼女を守るように次の場所に歩き出す。彼女はもう何のリアクションも取らず何も言わなくなった。

 

「そういえば、アンタって年幾つ?」

「今年で十六です」

「年下なんだ」

「そうですね」

 

 精神年齢的には大分俺の方が上だけどね。

 

 片海アオイが転校してくるのは二年Aクラス。火原火蓮と黄川萌黄と同じクラスだ。黄川萌黄がボッチの片海アオイを気にかけて交流が始まる。そこから銀堂コハク、火原火蓮とも関わることになる。

 

「年下の感じがしないんだけど」

「大人の雰囲気出てますか?」

「そういうわけでもないけど……なんとなくそう感じただけ」

「そうですか……」

 

 大人の雰囲気を感じないか……まぁ、仕方ないか。俺は大分ヤバいことしてるしな……。

 

「この町って本当に平和ですね……」

「まぁね。それに空気もいいからランニングとか散歩とかするとスッキリするんだよね」

「確かに気持ちいいですね。空気が」

 

 この日も特に何も起こらなかった。

 段々と不安が強くなる。どうすればいいのか分からない。

 

 しかし、このあと占い師の彼女がようやく真価を発揮する。

 

 

◆◆◆

 

 

 彼が学校を休んでもう三日目。ずっと休みっぱなしで校内も少しざわざわしている。どんだけ海でエンジョイしてるんだろう……。

 

「ねぇ、見て見て十六夜から返信がきたの!」

「ああ、うん、そだね……それもう十回くらい聞いたけど……」

 

 放課後、二人で帰り道を歩きながら話しているのだが……メール返信を何回聞いただろうか? 大体十二時ちょっと前位に届いてそこからご満悦だった。

 

 何だかんだでメールが返ってくるだけで嬉しいとは……チョロすぎじゃない?

 いくら何でも。

 

 今日は放課後の予定が特になかったので、火蓮ちゃんが本屋に寄るのについて行くことにした。二人で歩いていると前方で見覚えのある後姿がスキップしていた。

 

「おーい、コハクちゃーん!」

「はーい、何ですかー!」

 

 ああ、すっごくご機嫌そうだ。可愛いんだけど……。彼女は勢いよく振り返り手をピシッと上に挙げた。

 

「ご機嫌だね。大体何が合ったか想像つくけど」

「えへへ。返事が来たんですよ、えへへ」

「それは良かったね」

「見てください。特に火蓮先輩」

 

 スマホにメールを映し出して僕たちの前に出す。嬉しさを抑えられらずにニヤニヤする彼女は可愛い。そして火蓮ちゃんに見せつけてマウントを取ってやろうという考えも透けているがそれは置いておこう。

 

――火蓮ちゃんがそれを見て鼻で笑った

 

「フッ」

「何が可笑しいんですか?」

 

 あ、雲行き怪しい。火蓮ちゃんが笑った瞬間コハクちゃんから笑顔が消えて目を険しくした。

 

「いやぁ、別になんでもないわ。まぁただ私の方がメールが返信されたのが早かったなって……」

 

 火蓮ちゃんがメールをスマホに映し出して今度はコハクちゃんに見せつける。僕は二人のメールが見える位置に移動して見比べる。

 火蓮ちゃんのメール到着時間が十一時五十九分。コハクちゃんのメール到着時間十二時五分。ああ、これはメンドクサイ展開になってきた。

 

「ううっ…………! フフフ」

 

 一瞬悔しそうにしたかと思ったコハクちゃんが今度は鼻で笑う。何かあったのかな?

 

「確かに時間は僅かにそちらの方が早いのですが重要なのはメールの内容です。フフフ、私の方が七文字ほどメール文字数が多いんです!!」

「な、なんですって!?」

 

 再び見比べるとコハクちゃん五十八文字。火蓮ちゃん五十一文字。

 

 いや、誤差でしょ。たった七文字くらいで何を言ってるのコハクちゃん……けど可愛いから許す!!

 そしてそれに動揺する火蓮ちゃんどんだけ独占欲強いの? 会ってまだそんな経ってないでしょ? どんだけ好感度上がりやすいの!?

 でも可愛いから許す!!

 

「フフフしかも七には幸運の意味を持っています。つまり七文字多いという事は私に貴方より幸せになって欲しいという十六夜君からの隠れメッセージです!!」

 

 いや、それはない。どんなこじつけでそんな結末になったのか……妄想豊かだな……ちょっと引くくらいとんでもない発想。

 

「な、なな、なんですって……で、でもそんなのただのこじつけじゃない……」

「動揺してるようですね?」

「……ただの偶然にそこまで妄想豊かになるアンタにちょっと引いてるだけよ」

「負け惜しみですね」

 

 火蓮ちゃん信じてる顔してる!! ただのこじつけだよ!! どう考えたらそれを信じるの!! 火蓮ちゃんはしばらく考え込むとハッと何かを思いついたようだ。頭で豆電球が光ったような錯覚を僕はしてしまった。

 

「フフフ、負け惜しみですって? そんなことないわよ!! 結局アンタの言ってる事なんて空想上の戯言。それに比べて私には記録があるわ!! 私の方の返信を優先したっていう証拠がね!! アンタにはその空想を正しいと言える証拠があるの?」

「ううっ、それは……」

「所詮アンタのは妄想、空想、理想。現実には一切関係ない。ただ適当で偶然なピースを集めてたまたま形になった物を喜んでいる子供よ!!」

 

 何か急に立場が逆転した。これを板挟みで見せられている僕の心情を二人には察してもらいたいんだけど……。

 

「で、でもでも私はラッキーセブンという事実が……」

「証拠なし、根拠なし、そんなものは事実がないって言うのと同じなのよ!!」

「そ、そんなぁ~……」

 

 一体僕は何を見せられているんだろう? 論破、論破、論破。二人が論破しあう姿。絵になるがあんまりこの空間にいたくない……。

 

「へへーんだ、先輩に矛を向けるからそうなるのよ。これに懲りたらもう私に逆らわないことね」

「うわぁぁぁん!」

 

 勝利を得た火蓮ちゃんがピョンピョンとウサギのように跳ねる。敗北したコハクちゃんは悔しそうに叫ぶ。

 ここ道の真ん中だから周りを通りすぎる人の目がとんでもないことになってそう……あっ! 通り過ぎる人達全員良い物見たと嬉しそう。

 

 勝利を喜んでコハクちゃんの悔しそうな顔を見て満足した表情の火蓮ちゃんは本屋に向かうために僕に号令をかける。

 

「行くわよ。萌黄本屋に」

「えっ? このままコハクちゃんは放っておくの?」

「放っておきましょう」

「ええ? 流石に放っておけないよ」

 

 コハクちゃんはガックリと肩を落としてブツブツ呟いている……。

 

「妄想じゃないんです……事実なんです……」

 

 これ、どうやって収拾つければいいんだろう? と、とりあえずこのまま放っておけないけど……。

 その後は彼女を誘って三人で本屋に行った。元気な火蓮ちゃんと魂が抜けたコハクちゃん。

 

 二人に気を遣いすぎて胃が痛い……。

 

 本屋で時間を過ごしその場で解散することになったので、僕は帰り道に薬局に寄った。

 

 

 


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