今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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五十六話 閉幕1

 彼が休んでからもう一週間近くたつ。土日休みを挟んでも彼は学校に来ない。一体どんな用事が……

 

「ねぇ、萌黄」

「どうしたの?」

 

今、僕に話しかけてきたのは同じクラスで結構仲がいい女子生徒。徳川冬美(とくがわふゆみ)ちゃん。緑髪、黄金の瞳で顔も可愛い僕の推しの一人。

 

「うち、パパから美味しいラーメン屋の割引チケット沢山貰ったんだよね。それでさ、毎日食べ過ぎて流石に飽きが来ちゃってだからもしよかったら貰ってくんない? 結構おいしい所だから。行って損はない場所だし」

「いいの? 貰えるなら折角だし貰おうかな」

「店主は拘りの強い女大将だって。スープとか麺にはもう凝りに凝ってる」

「へぇー、美味しそうだね。しかも女大将って言うのがいいね!」

「割引チケット三枚あるから。はい」

 

彼女は僕に割引チケットを三枚差し出す。使用期限は一週間か……

 

「味は保証する」

「ありがとう」

 

 

三枚か……誰か……あ! 折角だし二人を連れて行こう。二人は偶にぎすぎすしてるけど偶に仲良さげだし、そう言うときの二人は見ててほのぼのするんだよね。よーし放課後、女子三人でラーメンだ!!

 

こういう機会があれば仲良し度が上がるかもしれないし。

 

 

しかし、この時の僕は知らなかった。まさかラーメンのスープが水の様に薄くほぼ無味になるなんて……

 

◆◆◆

 

放課後、ホームルームが終わり帰りの為に身支度を整えている彼女を僕は早速誘う。

 

「ねぇ、火蓮ちゃん。美味しいラーメン屋行かない?」

「ラーメン屋? うーん、どうしようかな?」

「すっごく美味いらしいんだ。ネットの評判もいいんだよ」

「へぇ、そこまで言うなら行ってあげても良いわよ」

「それじゃあ、コハクちゃんも誘おう」

「アイツ誘うの? だったら行かな……」

「行くよ。ほら行くよ!」

「ちょ、腕引っ張るんじゃないわよ」

 

 

ふぅー、無理やりにでも誘うことが出来たぞ。フフフ、僕もメンタルが強くなって来たな……。彼ほどじゃないけどね……

 

 

次に誘うのはコハクちゃん。火蓮ちゃんはちょっとむくれ顔。教室に迎えに行くと、ちょうど彼女が出てきた。

 

 

「コハクちゃん」

「萌黄先輩……とお邪魔虫ですか」

「名前すら覚えられないなんて脳、大丈夫?」

 

火蓮ちゃんは挑発するように頭をトントンと叩く。そこから互いに青筋が浮かび雰囲気が悪くなる。

 

あわわわわ、ぼ、僕が止めないと……

 

「コハクちゃんラーメン屋行かない!?」

 

彼女達の間に立ち二人の壁になる。それなのにコハクちゃんは僕の体から僅かに顔と手を出して火蓮ちゃんを指さした。

 

「そこのぺちゃぱいも行くんですよね?」

「ああ!? 何、ねじ切られたいの!?」

 

火蓮ちゃんの、た、タブーに触れただけでなく。そこから更に高度な煽りを入れてくるなんて……

 

火蓮ちゃんも声がどす黒くて女の子の声とは思えない。

 

「私行かない! ビッチと一緒にご飯なんて食べたくないし」

「誰がビッチですか!? 私は乙女です!!」

「別にアンタなんて一言も言ってないけど心当たりがあるようね」

「っ!! この、アマが……」

 

二人の背中には何かが見える。コハクちゃんには白いトラ。火蓮ちゃんには

不死鳥(フェニックス)。ゴゴゴゴゴゴと互いの守護霊の様な物が激突するようなイメージが……

 

と、止めないと……

 

「二人とも落ち着いて……仲よくしよう?」

「無理」

「無理です」

 

何でそんなところだけ気が合うんだろう? お互いにそっぽを向く。不仲感が半端ない

 

 

「せ、折角ラーメン屋の割引券が三枚あるんだ。これは行かないと損だよ!!」

「私そこの豚が行くならパス」

「っち、私はそこのさらし巻き女が行かないなら行きます」

「そ、そんな……せ、折角……」

 

どうしようかなぁ。ここままだと二人が不仲のままになってしまう……一人ラーメンも寂しいし……でもチケットもあるし……

 

こ、こうなったら

 

 

「ふぇぇぇん、二人が喧嘩するよぉ、えーんえーん」

 

 

秘技『嘘泣き』。その場でしゃがみ込み手を目元に当てて泣いたふりをする。やったことないけどなんかうまく言っている感じがする。

 

「も、萌黄泣かないでよ!」

「そ、そうですよ。私達のこれは、あれ、ですよ。じゃ、じゃれ合いッていうか。

ねぇ?」

「そ、そうそうただのじゃれ合いなのよ。だ、だから泣かないで?」

 

二人が気遣い、そして火蓮ちゃんは頭を子供を宥めるようにナデナデ……グへへへ幸せ……ってそんなこと考えてるわけじゃないよね。僕って意外と演技の才能が!!?? いけないまた脱線した!!

 

「ひっく、二人が仲悪いから……」

「ほら、私達仲悪くないですよ!!」

「そうよ。見て見て」

 

二人は肩を組む。上半身は凄く仲がいい。しかし、下半身、特に足が互いに踏み合っている。

 

「足が仲悪いよぉ」

「「ううっ」」

 

すると二人は互いに踏むのを止めてイライラしながらも笑顔を浮かべる。

 

「ほら、今度こそ……仲いいわよ」

「ぐぐ、ええ、仲いいですよ」

「よし、それじゃあラーメン屋行こう!」

 

僕は一気に立ち上がりラーメン屋の方向に向かってビシッと指を差す。そして、その方向に歩き出す。

 

 

「……なんか上手く丸め込まれたわね……」

「とんでもない演技でした……」

 

後ろから何か聞こえるような気がするが気のせいだよね? 

 

 

 

◆◆◆

 

 

「此処ですか?」

「ふーん、結構目新しいお店なのね」

 

外装だけでもかなり最近できた感じが良く分かる。店内に入るとカウンターとテーブル席がある。僅かに空いた席が複数。

 

「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」

「三人です」

「カウンターとテーブル席どちらがよろしいでしょうか?」

「テーブル席でお願いします」

 

フフフ。こっちの方が二人のかわいい顔が良く見えるからなんだよね! テーブル席では僕が二人に向かい合う。隣あわせの二人は何処か変な感じが……

 

「それじゃあ、注文しよう!! もう二人ともそんな険悪な感じじゃ他のお客さんも気にしちゃうからダメだよ!」

「そうね……取りあえず注文を。はい萌黄」

「ありがとう」

 

 火蓮ちゃんが僕にメニューを渡してそして自分の分を取って眺める。このお店メニューは二つある、だが火蓮ちゃん側にメニュー、調味料が置いてある為コハクちゃんが何もできない。火蓮ちゃんはメニューを一人で見て隣のコハクちゃんには見せない。

 

「見せてくださいよ」

「ああ、これも美味しそう」

「無視しないでください!!」

「プイっ」

「もう見せてください!!」

「いーやーだー」

 

二人で取っ組み合いのようになってしまう……。

 

「ほらコハクちゃん僕の見せてあげるから、ね?」

「流石萌黄先輩! 胸だけでなく器も大きいんですね! それに比べて何もかも小さいこの人は」

「嗚呼!?」

「ストップ、ストップ。周りから見られてる!!」

 

かなりの大声で言うと彼女達は一旦落ち着いた。そしてなんとか注文を終えることに成功する。その時も色々あったけど……

 

『私は豚骨ラーメンお願いします』

『ぷ、共食い』

『この人はお子様ラーメンでお願いします。ほら体つきも言動も幼いでしょう?』

 

店員さんが物凄く困ってたなぁ……ラーメンが来るまで何の会話をしようかな。二人は何も話さないし僕が会話を回さないと。

 

「火蓮ちゃんは最近のおすすめラノベはある?」

「うーん、『魔術学院の出来損ない』は年がら年中お勧めだけど……最近はね、『最弱賢者の無双英雄譚』とか?」

「そんなのあるんだ……最弱なのに無双なの? ちょっと矛盾してる感じがするんだけど?」

「最弱イコール最強って意味だから問題ないわ」

「へぇーそうなんだ。そんな隠れた意味が……えっとコハクちゃんは最近ハマってる事とかある?」

「料理でしょうか? フランス料理に興味が出てきまして」

「へぇー、フランス料理……凄いね」

「普通ですよ」

 

火蓮ちゃんの場合は今まで触れてこなかったジャンルだからあんまりついて行けない、コハクちゃんの場合はジャンルが突き抜けているから上手く合わせられない。二人とも個性が強いな。そこが良いんだけどね。

 

 

「お待たせしました。豚骨ラーメン、キムチラーメン、味噌ラーメンになります」

 

店員さんがラーメンを持ってきてくれた。良い匂い。ちょっと夕食には早いけど問題ないよね?

 

「「「頂きます」」」

 

スープを一口、美味しい。二人も満足げの表情で箸がドンドン進むようだ。美味しい物を食べているときはみんな幸せになるんだなぁ。なんかこの雰囲気が好きだ。

 

 三人で夢中で食べていると店内にあるテレビに生中継番組が映っていたので何となくだが目を向けてしまった。

 

『今、海原町のお祭りに来ています』

 

「海原町ってどんな町だったかしら?」

「自然豊かで特に海がきれいで有名な観光地でもある場所ですよ」

「あの町は祭りの時期が随分早いんだね。夏まではもうちょっと時間あるんじゃない?」

「確か、夏祭りではなく伝承をもとに催された祭りらしいので時期はあんまり関係ないらしいですよ」

「何でそんなこと知ってんのよ」

「なんとなくで全国を調べてた時期があるんです」

「す、凄いね……そんな時期があるなんて……」

 

三人でテレビを見ながら感想を漏らし会話が弾む。僕も二人もラーメンは大分食べ終わっている為テレビに意識がいく。

 

 

『沢山のカップルが居ますね。インタビューしてみましょう。すいません』

 

キャスターの人が男女のカップルに話しかける……………………嘘……

あわ、あわわわわわわわっ。か、彼が居る……しかも隣に知らない僕好みの女の子。

 

ふ、二人は……恐る恐る二人を見ると

 

「「……………………」」

 

二人が無言になったぁ! ええええ!!?? ここに来てこんな感じになる!? 折角、ラーメン屋に来て三人で楽しく会話していい雰囲気だったのにこ、こんな結末になる!?

 

と言うか学校休んで女の子と祭りって不良!? 不良なの!?

キャスターの人がインタビューを見知らぬ女の子に……

 

『お二人は出会って何年ですか?』

『一週間前に出会ったばかりだけど……』

 

ええええ!? つまりこの一週間学校休んでナンパしてたの!!?? 馬鹿じゃないの!? どうするのこの空気!? 

 

「あ、えっと、そ、そっくりさんも居るんだね。アハハハ」

 

自分で言っててこんな苦しいいい訳はない。二人も一切話さないし。胃が痛くなってきたよ。

 

その後、僕たちは特に会話することなく解散した。僕も慌て過ぎて割引チケットを使うのを忘れ帰りに薬局に寄ることになった。彼には後で損害賠償を請求しようと心に固く誓った。

 

 

◆◆◆

 

 

 昨日の深夜自宅に帰ってきたのだが疲れが大分溜まっていたためすぐに眠りについてしまった。今日からは学校に行かなくてはならない。

 

 遂にモブか……モブである俺のモーニングルーティンは朝ギリギリに起きて適当に朝食を済ませ欠伸をしながら登校する。

 嗚呼、平和だ。気分が良い。彼女達に恩返しがしたいという気持ちが一番でそれを成し遂げられたことも嬉しい。

 

「勇者だ」

「おい、勇者が居るぞ」

「勇者十六夜だ」

 

コソコソ話している皆ノ色高校の生徒達が何やら俺を”勇者”と言っている。学校を一週間丸々休んだからか……?

 

それにしても久しぶりだな学校行くの。鼻歌交じりに通学路を歩いていると後ろから肩を叩かれた。振り向くと火原火蓮。

 

「おはようございます」

「……」

 

あれ? 聞こえなかったのか?

 

「おはようございます?」

「……おはよう! 十六夜!」

 

やっぱり聞こえなかっただけか。彼女は僅かに空いた間があったが満面の笑みで挨拶を返す。

 

「あ、返事遅れてすいません。わざわざ送ってくれたのに」

 

休んですぐに彼女からメールが来たのに返せなかったことは俺のミスだからしっかり謝罪しないとな。

 

「……うんうん! 大丈夫よ! だって十六夜も色々()()()()()みたいだし……ね?」

「あ、はい。そう言ってもらえると……助かります……?」

 

何か彼女の雰囲気がいつもと違うような……男子三日会わざれば刮目して見よと言う言葉もある。それは女子にも適用するのか? 気のせいかもしれないけど……

 

 

「ねぇ、十六夜、ちょっとこっちに来てもらってもいい?」

「あ、はい。でも学校が……」

「いいじゃん、だって散々サボったんだから。それにほんのちょっとだけ……()()()()()?」

「は、はい」

 

 

なんか悪寒が……気のせいか? 彼女について行くと人通りが少ない路地裏のような少し暗い場所。そこに入ると彼女はいきなり俺の胸倉をつかんだ。

 

「あ、あの、どうかしたんですか?」

「フフフ、どうかしたんですか? ですって? おかしなことを言うのね? まだバレてないとでも思ってるんだ」

「え?」

「十六夜、海に行って何してたか正直に言ってごらんなさい。怒らないから」

 

彼女はそう言いながらも俺の足に穴をあけるのではないかと言わんばかりにグリグリと踏みつける。どういう事?

 

「えっと、観光してました……」

「ヘぇー、それはそれは楽しかったんでしょうね? 女の子をナンパして女の子を観光するのは……」

「な、なんか勘違いしてないですか? それと足がちょっと痛いんですけど……」

「あ、ごめーん。勝手に足が動いてぇ。自分でも止められないのぉ」

「あ、そうですか……」

「で? あの女は誰?」

「だ、誰の事ですか?」

「まだバレてないと思ってるんだ? あのテレビに出てた青髪の女は誰だって聞いてるんだけど?」

 

……テレビ……テレビ……あっ!! あのキャスターの時のインタビューか!!??

 

「それ違います!! あの人は偶々会ってそれで観光案内してもらって、そのお礼に祭りで奢っただけで!?」

「嘘つき。お似合いカップルってテレビで言ってたんだから……誰の為にツンデレ演じてると思ってんのよ……偶に本心で言う事もあるけど、馬鹿みたいに勘違いしないでとか言ったりしてんのも十六夜がその感じが良いって言うからやってんのよ……それなのに十六夜は……また女の尻追いかけて……最近は美容院とか行って髪整えて貰って綺麗にツインテールを纏める方法とか聞いて……料理も勉強して……ブツブツぶつぶつ……」

 

 

や、ヤバい。物凄い長文……目が怖いし声も低い。ヤンデレ……じゃあないよな? ……色々誤解があるからしっかり解かないと……

 

「火原先輩!! 本当に誤解なんです。あの青い人とは友達ですけど恋人ではないんです!! 本当に神に誓います!!」

「証拠は?」

「ないですけど……俺の目を見てください。嘘ついてるように見えますか!?」

「……見えないけど……」

「じゃ、じゃあ信じてくれますよね!?」

「でも……」

「実は先輩の事は一時も忘れていなくてお土産も買ってきたんです!」

「ほ、本当?」

「はい、どうぞ!!」

 

彼女にお土産であるお饅頭を献上する。メールの返信は忘れたけど……一時も忘れてないという事にしておこう……ぐぐ、仕方ないな……これは。あんまり嘘はつきたくないけど……

 

「……これ?」

「そ、そうなんです!」

 

し、しまった。あんまりいいお土産じゃなくて火原火蓮があんまりこれと言った反応を見せない。可愛いストラップとかの方が良かったかなぁ? でも家族で食べれると思ったんだけど……

 

「先輩の家族で食べて欲しくて」

「…………はぁ~、まぁ、ギリギリ及第点……平常点込みで……」

「そ、そうですか」

「信じるわよ。青女とは何ともないって」

「は、はい、友達です」

「そう、なら学校行きましょう」

「はい!」

 

 

セーフ。何がセーフか良く分からないけど……この調子で行くと銀堂コハクまで……俺は久しぶりに胃が痛くなるのを感じた。

 

「十六夜!」

「?」

「仕方ないから一緒に学校行ってあげる。感謝しなさい!」

「そうですね。では、ありがとうございます」

 

そういう彼女の顔は満面の笑みでちょっと恥ずかしそうだった。彼女と一緒に登校するのは久しぶりかもな。

 

そして、彼女はやっぱり可愛いな、おい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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