今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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 私事で騒がしてしまい申し訳ありません。何分今年の五月から創作活動を始めたもので不慣れな部分が多く……今後ともよろしくお願いいたします。今回は完全に私に非があります。気を付けていきます。

 因みになのですが当作品は私にとって三作品も作品になります。一作品目はあまりに酷すぎたために直ぐに消しました。二作品目はまぁまぁ、可もなくと言った感じです。気になる人は他サイトで一読ください……いないと思いますが……

 私は書籍化を目指しているので皆様のご意見をこれからも聞かせていただけると幸いです。長文失礼しました。


七十二話 スタート

 彼女達を泊めた日の夜、俺は新たに作られた訓練室で魔装を展開して訓練を開始していた。魔力によって作られた特殊な部屋であり広さは通常より何十倍もある。家の一角に扉を付けそこをくぐると此処に来ることが出来る。

 

「いきなり飛ばし過ぎるのは良くないで」

「いえ、大丈夫です……」

「そうか……ならワイも頑張らなあかんな……」

 

 彼女は訓練室を出て行く。きっと研究室に向かったのだろう。

 

「感触をしっかり掴んでおきたい……これからの為にもな」

 

 彼女達への負担を少しでも軽減するために俺は頑張らないといけない。特に彼女達は高校生、学業に支障を出させない。だからこそこっそりと訓練をしなくてはいけないのだ。深夜に訓練をしてるとすれば優しい彼女達は気を遣って止めるか、一緒にやると言い出すだろう。それはいけない。負担がかかるし何より、お肌に悪い。彼女達の絹のような肌を荒れさせるなんてことがあれば……それは全裸で土下座物だ。

 

 

 さて、何となくジャンプやら剣を振っているのだが今使っているのは黒い刀だ。

そして黒色のローブを纏っている。他にも要求した数種類の魔装が出来上がっている。

 

 優秀な彼女が一晩もかからず仕上げてくれた。

 

 

魔装にはそれぞれ『魔装技』と言う必殺技のような物があり直接的な攻撃力を持つものからサポート的な幻惑まで様々だ。

 

 そして、一つの魔装で出せる『魔装技』は三つまでであるため使い分けも重要だ。

 

 今夜は眠れるか分からない。その日俺はひたすらに訓練をした。

 

 

 

◆◆

 

 次の日、俺は自身のベットから起きる。しかし、眠気が取れない……顔には出さない様に下の階に降りていく。

 

 後、二週間は夏休み。『ストーリー』では夏休み中のイベントは残り二つ。一つは魚雷人の襲来、そして学校の七不思議探索である。

 

「おはようございます十六夜君。ご飯できてますよ」

 

 あれ? まさかの髪型三つ編みスタイルですか? 可愛いじゃないか。服装は我が母の普段着でただのTシャツ。だが銀堂コハクは朝から素晴らしい。

 

「おはようございます。すいません朝から」

「いえ、これくらいは……あの、どうですか? この感じは……」

 

彼女は僅かに三つ編みに触れた。色気が凄い。

 

全く……朝から眠気を覚ましてくれるとは……全く……最高じゃないか……朝から彼女を拝めるとは。ここは紳士的かつ大人の雰囲気で褒めようじゃないか

 

 

「と、とても似合ってますね。しゅ、しゅばらしです」

「あ、ありがとうございます」

 

つい噛んでしまった……朝だからな。口の動きが芳しくなかった。決してドキドキして緊張したわけではない。

 

食卓には卵焼きとみそ汁、白米、漬物。いかにもと言った健康食だ。

 

「「「「「「頂きます」」」」」」」

 

全員で食べ始める。まさかこんな朝ごはんを食べられる日が来るとはと内心感動している俺なのだが片海アオイが全員に話しかける。

 

「あのさ、あーしは両親と面と向かって話さないといけないから一旦今日帰るね」

「あれ? アオイちゃん許可貰ったって言ってなかった?」

「そうなんだけど一回話がしたいんだって」

「まぁ、両親からしたら心配よね……いきなり同居って言われても……私は秒でオッケーが出て今日にでも荷物が届くんだけど……」

「それはそれでちょっとどうかと思うけど……まぁ、あーしは一旦帰るから……」

「寂しくなるね……アオイちゃんが帰っちゃうなんて」

「いや、直ぐに帰ってくるから」

 

 引っ越しとか家庭事情とかいろいろあるだろうし。こういうのは仕方ない。

 

「十六夜君、私はお母様もお父様も了承をくれたので……今日にでも引っ越し業者の人に頼もうと思っているのですが……大丈夫ですか?」

「はい」

「僕も……今日引っ越し業者に頼もうかな。大丈夫?」

「勿論です」

「えっと、十六夜……私はもう頼んじゃったんだけど……大丈夫?」

「ダイジョブです」

「多分だけど一週間ぐらいで荷物が届くと思うけどあーしは大丈夫?」

「何の問題も無いです」

 

傍から見たらラノベ主人公かよと思えるな。美女と同居とか……まぁ、力を一か所に集めさらに絆を育むためにはこれが最善だ。

 

朝ごはんを食べ終える。この後は特にこれといった予定はないため訓練をしたい。勿論彼女達にも多少してもらいたい所ではある。

 

『ストーリー』でも訓練はするがそこまでするわけじゃない。勿論彼女達に大幅な負担をかけるつもりはないがある程度を毎日積み重ねることはしなければならない。

 

「この後、食休みしたら一回訓練室行きませんか? 魔装の慣れとか大事ですし」

「そうね……ステータスアップは基本だもんね」

「あーしは午後帰るからそれまでなら」

 

と言うわけで食休み……メルと彼女達はソファーに座り俺はダイニングの方の椅子に座る。流石にあの中に入るのはちょっと緊張する。

 

それにしても……俺の知ってるあの感じ……彼女達とメルが並んでいる……感慨深いものがあるな。ソファーに座るメルと彼女達を眺めてそんな心境になっているとニュースに俺が映っていた。

 

『敵か味方か。女か男か。変態か紳士か。謎の黒戦士現る!!』

 

 

痛い、どうやら永遠(フォーエバー)がトレンド一位らしいが……勘弁してくれ。テレビに映る俺はあっさりと怪人ドラキューレを倒す。

 

今後も魔族は様子見だがドンドン怪人を送り込んでくるだろう。そして今日の午後にも……無論、速攻で倒すがな……。

 

その後三十分ほど食休みをして訓練室に向かう。

 

「それじゃあ、魔装を展開してくれや。色々レクチャーするで」

 

 

彼女達は魔装を展開する。こんなことを考えるなんてどうかしているんだが可愛い。火原火蓮のセーラー服って足がもろ見え……ミニスカなので……ついチラ見してしまう。後、片海アオイの和服って肩が出てるからつい見てしまう……

 

「……十六夜……見すぎよ……恥ずかしいからちょっと控えて。後アオイの肩も、萌黄の足とコハクの胸もね」

「あ、すいません」

 

皆ちょっと顔が赤い……そしてすべてバレていた俺も恥ずかしい。こんなことで出鼻を挫いてしまうなんて気を入れなおさないといけない。

 

 

「それじゃあ、先ずは軽くジャンプの反復練習からいこうや」

 

全員で軽くジャンプを始める。皆、中々コツを掴めないが俺だけはスムーズにジャンプ、そこからの空中で一回転。等々器用に出来る。

 

 

「十六夜君、凄いですね……」

「いえいえ、これくらい」

「流石ね……」

「ちょっと出来過ぎじゃない? 隠れて訓練でもしてたんじゃないの? 凄い事には変わりないけど」

「やるじゃん」

 

ちょっとだけのドヤ顔。まぁ昨日訓練してたしな。いや、今日もか。

 

「うーん、やっぱりまだまだやな。魔力量が凄くてもまだ扱いきれていない感じがするで。先ず魔力を感じ取って体中で練り上げ強化したい所に纏う……これを全身にしたり一部にしたり使えるようになるとあんさんたちは絶対ムテキやで」

「む、難しいですね……」

「そう簡単にはいかないのが普通やで。これは感覚と言うかイメージが重要やし、更なる魔力を引き出すには強い感情も必要。まぁ、魔力の扱いは一朝一夕では出来ないのが普通なんやけど……」

「だったらなんで十六夜はあんなに魔力操作が上手いのよ」

「何と言うかオーラが鮮明で落ち着いてるね。彼」

「引き出してる魔力量も段違い……」

「さ、さぁ? なんであそこまで出来るんかワイにも分からんわ……いくら何でも一晩でここまでなるもんか? あり得んやろ……」

 

 

どうやら俺の魔力操作は凄いようだ。察してはいたのだがな。しかし、皆からの怪しみの視線が……ここは惚けておくか……。

 

「え? 俺って凄いんですか? 全く気づきませんでした」

「滅茶苦茶気づいとるやん。何やそのムカつく言い方……」

「十六夜が……俺なんかやっちゃいました? みたいなこと言ってる……」

「惚けるの下手すぎじゃない?」

「十六夜君は嘘が苦手ですから」

「二秒でわかる嘘」

 

どうやら上手く誤魔化せたようだな……。

 

 

さて、俺が何故ここまで魔力の引き出しと魔力操作が出来るのかというと、一つは想いが強いという事。俺は彼女達を守りたい、その為にはどんなことでもする覚悟がある。異常なほど強い想いが異常なほど多い魔力を引き出している。

 

そして二つ、何故操作ができるのか……それは嘗てヒーローに憧れていた時代に遡る必要がある。

 

 

嘗ての俺は勝手に筋肉に力を入れて魔力がここに集まっている!! とか高台に登り多大な風を感じて風を纏うとか、風を魔力に変換して吸収しているとか、座禅を組みイメージで勝手に魔力を透明感のある清らかなオーラとして想像したりしていた。

それぞれの経験がこの世界の魔力操作にピッタリとハマったのだ。

 

イメージでしていた魔力と言う概念。魔力を感じるようになっても嘗て感じた風のように纏い、力を入れ操作し、吸収、そして一切揺らぎのない清らかな精神統一。

 

それが俺の魔力操作を完璧にした。

 

 

「十六夜君、何かコツのようなものがあるなら教えてもらいたいのですが……」

「え?」

「そうね。教えなさい」

「うん、コツの一人占めはダメだよ」

「あーしにもお願い」

 

……どうしたものか……『ストーリー』では戦う内に何となくで経験が積み重なっていくのだが……この特殊なコツを話して魔力操作が出来るようになるなら……。

 

 

「えっと風を纏うというか」

「どういうことですか?」

「えっと、こう……吹き荒れる風を全身で受け止め……それを腕とか全身に貼ってバリアにする感じと言うか……他にも座禅を組んで精神統一とかすると良いイメージができるかもしれません……。イメージをしてそこから感覚をつかむというのが一番だと思います……。筋肉に力を入れてそれで魔力が集まっていると仮定してみるとか……じ、自分に合った方法を試すのがいいかと」

「成程、イメージから……十六夜君は凄いですね……どうしたらそんな方法が思いつくんですか?」

「……えっと。その……」

「コハク、十六夜をそれ以上痛めつけないで……十六夜、ありがとう。試してみるわ」

「あ、えっと、こ、個性的だけど凄くためになる良い話だったよ……ね? アオイちゃん?」

「そだね……」

 

生暖かい視線で見られた……。

 

 

◆◆

 

 

 訓練の後、昼食を済ませて片海アオイを送る為に駅へ向かう。バス停で彼女が帰るバスを待つ。

 

 他愛ない話をしているとバスが来る。

 

 

「それじゃあ、またね」

「ううっ、すぐ戻ってきてね」

「泣かなくても……まぁあんがと」

「アオイ先輩、寂しくなりますね……」

「いや、だから直ぐに戻ってくるから……あんがと……」

「一日しか一緒に居なかったけど結構アオイの事好きよ……またね……」

「あのさ、直ぐに戻ってくるって言ったよね? そこまで溜めて言う必要ないって……あんがと、またね」

「寂しかったらワイにいつでも電話してええんやで」

「もう突っ込まない……でもあんがと」

 

 

此処は俺も何か気の利いた感動的なセリフを言うべきだろうか……みんな結構いい感じの事言ってるし。

 

「片海先輩。別れは寂しいですけど人は巡り合うものですから離れても心は……」

「からかってるでしょ? 怒るよ?」

「あ、すいません」

「……またね」

 

あれ? 俺だけあんがとが無かった。ちょっと寂しい……。

 

 

彼女はバスに乗って帰って行った……そして時刻は大体一時……次なる怪人が出るのは昨日同様アウトレットモールの頭上に三時。皆で帰るという話だったのだが俺だけ離脱する。

 

「あ、ちょっと買いたいものあったんだ」

「え? それでしたら一緒に」

「いえいえ、皆さんはお先に帰っていてください。これ家の鍵です。それでは!」

 

俺はその場から離脱しアウトレットモールの方に向かう。序盤は俺だけで十分だ。彼女達は魔装に慣れるまで戦う必要はない。

危険からは避けて欲しい。

 

 

◆◆

 

「十六夜君。何か隠してる感じがしますが……」

 

コハクちゃんは話してる途中で一旦思いつめたように押し黙った。私達三人はどうしたのかとコハクちゃんを見る。

 

「それより……十六夜君から……合鍵を託されてしまいました……こ、これは一種のプロポーズでしょうか!?」

「違うわよ」

「違うで」

「違うと思うな」

「いえ、きっと十六夜君からの遠回りのメッセージなんです。結婚してほしいという!!」

「違うわよ」

「違うで」

「違うと思うな」

 

 

この後、コハクちゃんを宥めるのに三十分はかかった。

 

 

 

◆◆

 

 

アウトレットモールの頭上に大きな穴が開く。暗く大きな穴。現代人たちは例の化け物だとそこから逃げ始める。そこの近くにいる者たちも急いで離れる。

 

 

そして、その大穴から半魚人のような体つきでバチバチと電気を帯電している化け物が……。

 

「きゃーー!」

「ば、化け物だ!!」

「逃げろぉぉぉ」

 

悲鳴、悲鳴。そして大穴から飛び出した魚雷人。

 

「イエーイ!! 俺は速いぜ!! 逃げても意味ないぜ!!」

 

悲鳴のある方向に向かい人間の負の感情を引き出そうとするが一人だけ逃げ遅れた男の姿が見える。服は一般的で前髪が伸びて目が見えない。ギャルゲーの主人公のような奴。

 

「ひぃいいい。助けてくれ!!」

「おお!? 逃げ遅れか!? もっと悲鳴を聞かせろ! 俺の放電で感電死させるぞ!!」

「うわぁぁぁあああ!もう、駄目だぁ……お終いだ……」

「クハははは!! それでいい、ギャハガギャ!!」

 

唐突に男の手から刀が顕現し魚雷人を突き刺す。懐から緑の血があふれ出す。

 

「き、貴様……何者……」

 

その言葉の瞬間、男の周りに魔法陣のような物が展開しローブを被っていた。怪しげな男、一体何者なのか。

 

「フッ、他愛もない」

 

刀を引き抜くと今度は黒色の極球体を男が作り出す。懐に刀を刺され多大なダメージを追った魚雷人は動けない。

 

あの黒い球体を受けたら自分は死ぬ。魚雷人は死を覚悟した。そして苦し紛れに呟く。

 

「ク、そ。スタートさえしたら俺は一番速い……はず……なのに……」

 

 

それは死を覚悟しても速さの主張。相手への精一杯の威嚇でもあった。それを聞いたローブ男は……呟く。

 

「スタート出来たら……なんて考えてる時点でお前は俺より遅い」

 

魚雷人は黒の極球体に飲まれた。そして跡形もなく粉々になる……。

 

成敗完了(ジャッジメント)……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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