今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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七十八話 答え合わせ

 俺は焦っていた。

 

今までにない。予想外の出来事。

 

覚悟はしていた。何かがきっかけで本来の出来事とは違った事が起きるのではないかと……だからこそ片海アオイだってこの町に呼んで仲間に加えた。

 

 だけど、『中盤』に出てくる敵がまさか『序盤』に出てくるなんてそこまでのイレギュラーなんて起こりうるだろうか。

 

 『崩壊世界』……中盤に出てくる『四天王』であるライオンが使う権能。

 

 その世界では自身以外の者に呪いをかけ魔力を使えなくするという能力で、単純な方法では絶対に勝てない。

 

 片海アオイが転校してきた後、『中間パワーアップ』をした後に本来なら戦う相手なので勝てたがこの時点では絶対に勝てない。

 

 

 

 

 

――しかし、俺は一つの必勝法を直ぐに思いついた。

 

 

 

 

先ず、ライオンの性格は自信家で非道で相手を弄びそして殺す。最悪な敵だ。命乞い、戯言何をしても最後には絶対に殺し相手の苦しむ顔を何よりも好む。

 

そう、だからこそ。隙がある。

 

先ずは、敢えて逃げまどう。只管に。そして人型の影。あれはライオンが作った(しもべ)。相手の性格からして絶対に使ってくると思った。それで相手を疲労させて、ひたすらに疲労させてそして最後には希望を失わせて殺す。相手の性格からその程度は想定できた。

 

 ずっと、逃げて、逃げて逃げ続けた。そして、遂にライオン本人が現れた。ずっと何処かで見ていたはずだ。逃げる俺達を見下しながら、それが飽きたので遂に殺す判断をした。

 

 だが、追いつめていたのは俺の方だった。

 

 この世界。維持するには魔力を消費している。それが長ければ長い程消費量は大きい。そして人型の影も魔力を使う。ずっと俺は魔力を使わせる事だけを考えていた。魔力は魔族にも怪人にもあり、強さに直結する。防御力、攻撃力、権能、全てに精通している。それで先ずは攻撃力、防御力をダウンさせる。

 

 だが、それだけでは足りない。所詮、丸腰では動体視力が下がり動きなど見えるはずはない。これを使い、ダメージを与え防御をする。

 

 

――だが、それだけでは足りない。所詮、丸腰では動体視力が下がり動きなど見えるはずはない。いくら奮闘してもそこで終わり。

 

 

 普通ならの話であるが……

 

 俺は違う。昔から『魔装少女』を読んでいる。何度も、何度も。

 

 当然、この敵が出てくる時も……その内にあることに気づいた。

 

 明確な表記は『ストーリー』にも無かった。だが、確かにあった。

 

 

 

 

 このライオン、独特の癖が……

 

 

 

 

突進してくるときは右足を下げる。

 

右手を上に振り上げる時は中指が僅かに動く。

 

左手を右に振るときは舌を一瞬出す。

 

蹴りは僅かに踏み込み地面に土の山ができる。

 

連撃は呼吸を整え全身の筋肉が大きくなり圧迫する。そこから俺を中心として、右、下、左、上、右、左、最高で六連撃。

 

それ以上はせずに一旦下がる。

 

さらに、挑発に弱く一度決めた相手以外に手を出さない。

 

防御、来る場所が分かるならそこに()()()()()()()()。来る場所が分かるならそこに向けて銃を()()()()()

 

無論、博打。もしかしたら、間違いの可能性もあった。その不安もあった。しかし、同時に守らなくてはいけない人が居る。俺が退いたら今の彼女は誰が守るのか。それを考えたら絶対に退けない。

 

そして上手くいく気もしていた。これは理屈じゃない。勘に等しい。

 

俺には幸運もある。だから大丈夫。

 

そう決めて向かって行った。

 

 

魔力の消費によって攻撃力を下げた事でシールドで防ぐことが出来、防御力を下げたことで銃でも貫通できた。

 

これが素の状態ならシールドが壊され、銃による攻撃も筋肉を貫通しなかっただろう。

 

俺だからこそできた裏技ともいえる。

 

 

それによってピンチを切り抜けたのだが……彼女が……

 

 

「フン、別にあれくらい一人で片づけられたから。十六夜が勝手にやっただけだし、お礼なんて言わないから!」

 

まぁ、別にお礼を求めた訳じゃない。それにライオンも彼女が本来なら討伐するのだから、彼女の言ってることも間違いじゃない。

中間パワーアップを終えた彼女はライオンに『崩壊世界』に連れてこられそこでライオンを倒す。

 

あそこを何度も読んだからこそ勝てたと言える。

 

そんなことを考えていると……世界に光の粒子が溢れる。この世界の主が居なくなり俺達は元の世界に戻れるだろう。灰色の世界が崩壊していく。

 

色のない世界の植物、荒野。そこに僅かに色がともったような達成感を得た。

 

――足が震える。手が震える。死をここまで間近に感じたことは初めてだ。

 

 

 

あそこは腹をくくっていた。全てが終わり一気に体に負担がかかる。息をしていることが嬉しい。こんなに素晴らしい事なのかと錯覚する。恐怖からの解放。それが俺に喜びを与える。

 

 

 

 

――だけど、それ以上に彼女を守れてよかった。只管にただ只管にそう思った。

 

 

 

 

今後もここまで大きなイレギュラーが起こるのだろうか……そう思うと一刻も早く『アルテミス』に行かなくてはならない。ついでに『占い師』にももう一度占って貰おうかな……

 

そんな事を考えていると彼女が話しかけてくる。

 

「わ、私でも勝てたから、て、手柄を譲っただけだから……」

 

しかし、彼女の異様なこのツンツン具合はなんだろう。勿論、本心からこんなことを言っていないのは分かっている。

 

顔はもう、リンゴのように真っ赤である。熱でもあるのかと思う位真っ赤である。そして、チラチラ俺を見てはそっぽを向く。偶に目が合うとそっぽを向く。

 

腕を組んで強気でツンツンな彼女。確かに彼女はツンツンしているツンデレ属性を兼ね備えているのは『ストーリー』でも見ていたので分かってはいるが……しかし、だとしてもここまでツンツンするのは見たことがない。

 

いや、ツンツンではないかもしれない。怒っているのかもしれない

 

おんぶしたときに……胸の感触を感じて少し幸せに感じたことに怒っているのかもしれない……

 

俺の予想では普通に『ありがとう』とか、『さすいざ』とか言われると思っていた。しかし、言わずに怒っているという事はもしかしたら……そうかもしれない。

 

徐々に世界が光によって支配され俺は考え中のままその世界は消えて俺達は元の世界に戻った。

 

 

◆◆

 

 

とある作者の部屋。冬と言う事もあり女性は袢纏を着てコタツに入り作業をしていた。コタツ机の上に資料を広げ只管に万年筆を走らせる。

 

しばらく、その作業をすると一旦休憩をしてテレビをつける。

 

『ストーリー構成に避難殺到』

『嘗ての栄光を穢すな』

『このように今、ネットでは完結した人気作品の発売した新たなるストーリーに対する非難が殺到しています。作者、そして出版社に対する不満が強まっている現状です』

 

女性はため息をつき、テレビを回す。そして、再放送のドラマを見ながら餅を食べる。そこに彼女のスマホに電話が掛かってくる。

 

『はい……私です』

 

女性は力なくも返事をしてそこから会話へと発展させる。そしてスマホから聞こえてくる知らせに驚きつつ歓喜もした。

 

『そうですか……発売中止……プロットは練り終わったのですがそれでは仕方ないですね。はい……はい……それでは」

 

 

クツクツと彼女は笑う。机に置いてあった書いていた原稿用紙を破りごみ箱に捨ててプロットが書いてあるノートもゴミ箱にダンク。その後、羽を伸ばすように背筋を伸ばしてコタツに入りドラマを見た。

 

彼女が見たドラマはハッピーエンドと言う内容だった。

 

『やはり、ハッピーエンドが一番だね……』

 

『もうすべて終わったのだから好き勝手やらして貰おうかな? 救済の物語を作るくらい別に問題は無いだろう?』

 

その後、彼女は再び新たなるノートを出しプロットを練り始める。プロットを考えているときが一番楽しいのだ。

 

『折角だから()()()()()()でも入れてみようか。発売はしないがネットに挙げるくらいしても問題はないよね?』

 

誰に聞くわけでも無く彼女は呟き、ただただ子供のように笑った。その後、何時間も思考にふける

 

そして、遂にペンを持ちノートに主人公の名前を書く。

 

『そうだね……この救済の物語の主人公の名前は()()()()()とでもしておこうか』

 

◆◆

 

 

「大丈夫でしょうか、大丈夫でしょうか……」

「コハクちゃん落ち着いて……」

「でも、でも、嗚呼、お願いだから戻ってきて……お願い、お願い、お願い」

 

二人が連れていかれてから僕たちは一度彼の家に戻っていた。僕たちの雰囲気は重くて、とてもじゃないがこのまま居られない。

 

もし、このまま二人が帰って来なかったら皆バラバラになるかもしれない。そう思ってしまう。アオイちゃんは一言も発しないが動揺しているのは言うまでもない。

 

 

特にコハクちゃんは正直見ていられない。火蓮ちゃんの事も心配してるんだろうけど、それ以上に彼が居ない事で精神に大きな負荷がかかっている。

 

メルちゃんも色々調べているが一向に彼と火蓮ちゃんがどこに居るかは分からないようだ。

 

早く、戻ってきて欲しい……寂しいよ……

 

二人共大事な人なんだ。火蓮ちゃんは孤独から救ってくれた。彼は手を伸ばし続けてくれた。

 

どうか、どうか、どうか……戻ってきて。

 

 

そう願う僕の瞳からは涙が零れた。

 

 

 

 

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