今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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感想、誤字報告ありがとうございます。


八十五話 二人はチョロインではない

「無理」

「無理です」

 

 

その日、俺は二人の愛しき女性に告白をした。しかし、あっけなく振られてしまった……俺が何故ハーレムを思いついたかそれは一日前に遡る。

 

 

『どうすればいいんだ』

 

俺は悩んでいたんだ。そんな時、我が母からの一本の電話が……そこで俺は相談したんだ。

 

二人の女性から好意を向けられ、そして俺も両方死ぬほど好きだと

 

 

『二人が好きなら両方付き合えばいいんじゃないかしら? 家族になりたいなら養子縁組とかあるわけだし。十六夜、愛に溢れなさい』

 

 

その時、納得した。一人を選ぶ必要はない。ハーレムエンドでいいじゃないかと、俺がどちらも百パーセント愛せばいいんじゃないかと。

 

 

――愛に溢れよう

 

 

俺には心理学を使って彼女達を落とすとかできない。本心を言い続けてアタックするしかないんだ。ハーレムを作りたい。それが俺の目標となった。

 

しかし、彼女達は納得しない。

 

 

「どうして!! こんなに好きなんですよ!!」

「いや、普通にダメでしょ」

「私もダメだと思います……社会通念的に」

「そんなもの破りましょう!! 二人が好きなんです! 頼みます!!」

「「……」」

 

 

 

床に頭をこすりつける。二人から冷めた視線が降り注ぐ。しかし、諦めきれない。

 

 

 

「火蓮先輩だって、コハクさんは嫌いじゃないですよね!?」

「ええ、まぁ、コハクは嫌いではないのかしら? 唐突に名前呼びはやめなさいよ……て、照れちゃうじゃない……」

「じゃあ、皆で手を取りましょう!!」

「……十六夜。もし、私が十六夜以外に彼氏がほしいって言ったらどうする?」

「そんな……そんなの嫌に決まってるじゃないですか!!! 俺を殺す気ですか!?」

「そうよね! そういうことよ!」

「確かに言いたいことは分かります!! でも、二人が好きなんです!! 控えめに言って二人ともエッチしたいんです!! デートの時は二人で両側から挟み込んで欲しいんです!!」

「全然控えてないじゃない!!! モロに言ってるじゃない!!! ダメ!!! 断固として嫌!! そもそも私が付き合ってあげるって言ってるような物なんだからそれで我慢しないさいよ!!!!」

「我慢できない……二人共好きなんです!」

「っ! もういい、最低!!」

 

 

火蓮は部屋から出て行ってしまった。くっ、ハーレムへの道は険しいか……

 

「コハクさんはどうですか!! 俺は君が好きなんです。でも火蓮先輩も好きです。だから二人とも彼女にしたいんです!!」

「そうですね……まずいきなり下の名前呼びに物凄い感動をしています……それと個人的に付き合って欲しいと言われたのは素直に嬉しかったです」

「じゃあ、付き合ってください!」

「嫌です」

 

彼女は笑顔でバッサリ切った。ああ、その笑顔も好きなんだ。

 

「だって、あんなにアピールした結果が……二股したいって何か面白くないです……」

 

少し、ぷくっと頬を含まらせて腕を組んで胸を強調……ではなく不機嫌さを強調する。こ、こうなったら泣いて同情してもらおう。汚い手だが仕方ない……

 

「ごめん。でも君が好きなんです。心が叫んでいるんだ。二人と付き合いたいって……ううっ、」

「……そんなウソ泣きしてもダメなのはダメです。二股は許しません」

 

 

一瞬でばれた。

 

 

「そこを頼みます!! 俺は君ともっとイチャイチャしたいんです。エッチもデートもしたいですよ!!」

「……エッチしたいんですか?」

「どうしようもなくしたいです!!」

「デートは?」

「勿論!」

「イチャイチャも?」

「愚問です!!」

 

そういうと彼女は俺のベッドに座って少し色気のある笑顔をする

 

「えへへ、そうですか、そうですか。私としたいと? ほうほう、フムフム。今、キスしたいですか?」

「していいんですか!?」

「貴方が私とだけ付き合うと言ってくれたらしたいこと全部していいです。どんなことでもいいですよ? ここで今すぐ私を押し倒して……一緒にニャンニャンしても……」

 

そういうと彼女は服のボタンを三つほど開けた……前はチキンになってしまったけど……正直今すぐしたいくらいだ。

 

「ごめん、俺は二人とも彼女にしたい。でも今ここでエッチもしたいんだ!! だから今すぐ彼女を持つことを認めてくれ! そして愛を深めよう!」

 

そういうと彼女はパパっとボタンを閉めてベッドを立つ。

 

「じゃあ、全部お預けです」

「そ、そうですか」

「まぁ、デート位ならしてあげてもいいですよ?」

「明日にでも行きましょう!」

「ああ、でも、どうしよっかなぁ? 二股したいなんて言う十六夜君はちょっとなぁー……」

 

彼女は弄ぶような視線と仕草をする。彼女にならそう言った視線を向けられるだけで嬉しい。もっと向けて欲しい!! しかし、ここはデートをしたいと言う。

 

「俺は行きたいです。君が何よりも好きだから。そんな君と行くデートは俺にとって宝物になるに違いないから、行きましょう!!」

「はうっ、そ、そんな真っすぐ言われたら……て、照れちゃいますよ……し、仕方ないですね。で、デートに……」

「あと、君とデートしてハーレムを認めさせる位、好感度を上げたいです!!」

「……何でそういう事言っちゃうんですか……やっぱ行きません」

「そうですか……」

 

 

彼女はベッドから立ち上がり部屋のドアに手をかける。

 

「むぅ、私だけならすぐにでも返却不可で貴方のものなのに……」

 

 

去り際に彼女が言った。ハーレムは直ぐには認めてはくれない。しかし、これから必ず認めてもらおう。俺は愛に溢れたから。

 

 

改めて誓う、俺は二人を彼女にする

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 何よ……二股? ハーレム? 馬鹿じゃないの? あんなに好きって言ったのにダブルヒロイン路線は無いわよ。本当に馬鹿。バカバカバカバカ!!

 

 

 ああ、でも素直に好きって言ってくれたのは嬉しかった。あんなに真っすぐな愛を向けてくれる人は一生出会えないだろう。すぐにでも私は付き合っても良かったんだ。ハーレムとかふざけたことを言わないのであれば……

 

 え、エッチだって……してあげても……っていうか三人でエッチしたいとか普通言う!? デートで両側から挟まれたいとかどんな願望!?  嗚呼、もう、どうしてこうなったのよ……

 

 とにかく、絶対にハーレムは認めないんだから!

 

 

 

◆◆

 

 

 えへへへ、あんなに愛を囁いてくれた彼を初めて見た。えへへ。ちょっと調子に乗ってからかってしまったがそれでも彼はあんなにグイグイ来るなんて……なんて嬉しい! 今まで彼はこう言った事に積極的ではなかった。だから、私からグイグイいっていた。でも、正直私からすれば少し不満でもあった。十六夜君から愛を囁いて欲しかったからだ。でも先ほどはあんなに愛を……だが、正直二股とか認める気はない。

 

 

 確かに愛は伝わってきた。物凄い程に……あそこまで私を愛してくれる人は現れないだろう。しかし、彼は火蓮先輩も好きだと言う。

 

 それは知っていた。だから、決着を付けようとしたのに……物凄い覚悟を持って決戦に挑んだのに……

 

 

『俺、銀堂コハクも火原火蓮も両方好きです!!!!!!!!!!!! 二人共俺の彼女になってくださあぁぁぁぁぁぁぁぁぁいい!!!!!!!!!!!』

 

 

 

――どうしてこうなった……

 

 

 私が好きならそれでいいじゃん!! そのまま二人で手を取ればいいじゃん!! しかも、あんな堂々と言うなんて……もっと申し訳なさそうに言って欲しい物。いや、どちらにしても認めないけど。

 

 

 はぁ、これからどうなるんだろう……でも、彼から来てくれるならこの関係も悪くない……かな?

 

 

 でも、二股は断固拒否!

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

何やら、食事の雰囲気がいつもと違う。今晩のディナーは麻婆豆腐。アオイちゃんは麻婆豆腐が好きらしいから食事当番である僕が作った。

 

コハクちゃんが元気そうな感じがするのは良いんだけど二人が彼の取り合いをしない。いつもなら食べて、食べてと言う感じなのだが……

 

すると彼が立ち上がりカッっと目を開いた

 

 

「どうして、あーんしてくれないんですか!?」

 

 

……どういう状況? 二人に対して言ってるようだけど二人は何とも言えない目を向ける。

 

 

「してくださいよ!」

「いやよ」

「嫌です」

 

逆になっている! 何がどうなったんだ!? アオイちゃんもどうしたどうしたと視線を向けている。メルちゃんは寝たふりを始める。

 

 

「どうして!?」

「二股撤回したらしてあげてもいいわ」

「そうです。ついでに私を選んでくれたらいくらでもしてあげます」

「なっ! だ、だったら私を選んだら仕方ないから、いくらでもしてあげる所存であるわよ!!」

 

二股? その辺の事情は良く分からないがコハクちゃんに対抗するように火蓮ちゃんは恥ずかしそうに大胆発言。しかも、ちょっと表現がオカシイ。

 

 

「二人とも……お願いします! あーんをしてください!」

「ダメ」

「やりません」

 

二人共キッチリしてるな……いつものデレデレの感じとは違う。二人は彼にはチョロい感じがしてたがそうではないらしい。

 

 

「……火蓮先輩!!」

「しない」

「コハクさん!!」

「しません」

 

いつの間に名前呼びになっていたんだろうか? 距離が近いのか遠いのか……良く分からないけど。一つだけわかるのは彼が悪いと言う事だ。絶対二人に何か言った。

 

彼はしてもらえないことが分かると自分で麻婆豆腐を食べる

 

 

「美味い」

 

 

ふーん、美味しいんだ。へぇー。……作ったのは僕だけどね……

 

 

「美味いよ。でも、やっぱりあーんしてほしいです」

「二股とか言ってるうちはしてあげないわよ」

「そんなに、彼女が複数がダメですか?」

「ダメ、絶対」

「でも、この想いは本物です。二人に恋してしまった。どちらを選べなんてできません」

「……十六夜、社会通念的に考えて。ダメよその考えは」

「そのふざけた社会通念を一緒にぶち壊しましょう!!」

 

 

彼と火蓮ちゃんが向かい合って話す。火蓮ちゃんは頭を抱えてどうしてこうなってしまったんだろうと言う感じ。大体、分かった。彼がコハクちゃんと火蓮ちゃん両方に告白したんだ。それでこんな訳の分からない現状に……

 

そして、彼の言葉に僕とアオイちゃんは突っ込んでしまう

 

「いや、社会通念は壊しちゃダメッしょ」

「ふざけてるのは君だね」

 

 

彼と向かい合う火蓮ちゃんだが一向に二股は認めない。痺れを切らした彼は火蓮ちゃんの肩を掴む。

 

「ひゃい」

 

彼に肩を掴まれたことで彼女は顔を赤くして上ずった声を出す。ああ、てっきり二股行動で幻滅したかと思ってたけどしっかりまだ好きなんだ

 

「俺とデートしてください!」

「な、にゃんでしゅって」

 

噛みすぎ。可愛い。

 

 

「デートして俺の良さを知って欲しい、そして好感度を上げて二股を認めさせたい!!」

 

前半は良いけど、後半を言うのは馬鹿なんだよなぁ

 

「くっ、離して。デートなんかしない!」

「ふふふ、すると言うまでこのままですよ!」

「へ、変態。それと痴漢もいいとこよ!」

「俺貴方とデートに行きたいんです! 好きだから! 絶対に俺の彼女になって欲しい!」

「にゃ、にゃにいってんの!!」

 

食卓で何をやっているのかな? あーあ、コハクちゃんの目つきが……アオイちゃんも……

 

――いいなぁ、あんなに愛を囁いてもらって……

 

 

「一回だけ! 先ずは行って見ましょう! 好きなんです! 世界で一番! そんなあなたとデートに行きたい! 好感度稼ぎたい!」

「あ、あ、で、でも……しょ、しょうがないわね。そこまで言うなら、一回だけよ」

「ありがとうございます! 明日行きましょう!」

「明後日。いくなら……明後日」

「分かりました!」

 

食卓で口説かないでくれるかな? あと、火蓮ちゃん、顔真っ赤でニヤニヤし過ぎ……

 

「はぁ、しょうがないわね。取りあえず私は一旦別室に行ってくるわ」

 

 

火蓮ちゃんは食器を片付けるとリビングを出て行った。絶対、美容院の予約と服装選びだね。

 

 

あと、コハクちゃんはどうするの? 不機嫌マックスだけど

 

 

「コハクさんもデート行きませんか!?」

「つーん」

 

あら、可愛い。コハクちゃんの『つーん』。

 

「いつ行きますか!?」

「つーん。私はつーん状態ですから話しかけても無駄です。二股さんとは話しません」

 

え、このニヤニヤを誰か止めて。コハクちゃんを見ているとニヤニヤが止まらない。

 

「可愛い。貴方は可愛い! こんな人を彼女に出来たら俺はきっと幸せだ! だから付き合ってください!」

「つーん」

「その、つーんも可愛いです。最高です。もっと見たいです!!」

「つ、つーん。つーん、つーん」

 

ああ、ダメ! 豆板醤と甜麺醤と唐辛子を入れて辛めに仕上げた麻婆豆腐が甘ったるくて仕方ない!!

 

 

なにこの可愛さ!? しっかりつーんをやりつつ、何だかんだ彼のリクエストに応える。女神か!?

 

「ちょっとあざとい感じで」

「つーんぅ♪」

 

おい、止めろ!!

 

「甘えた感じで!」

「つーーん♡」

 

見てるこっちが辛い。吐血するぞ!!

 

 

「ねぇ、萌黄」

「どうしたの?」

「この麻婆豆腐めっちゃ甘いんだけど……何で?」

「仕方ないよ! こればっかりは!」

 

コハクちゃんも彼に褒められて嬉しそう、二人でイチャイチャしないでよ!!!

 

 

「可愛すぎる! ヤバいよ。コハクさん! もっとやってください!」

 

 

この後の麻婆豆腐はパフェより甘かった。

 

 

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 どうしましょう!! デートだ!!! 服はどうしよう!? 髪型も整えないと!!!

 

 

 色々昨日は悩み過ぎたわね……疲れた。しかし、デートはしっかりとした感じで行きたいスタイル。先ず私が来たのは美容室である。

 

 

「どんな感じにしますか?」

「えっと、整えてください……」

 

インドア派の私は美容師さんと目を合わせるのが意外と苦手だったりする。鏡越しで目が合うのも苦手だったりする。

 

基本的に私は家でアニメとか見るのが主流だし、いつも千円カットだった。そんな私が美容室に通うにようになったのは……十六夜のせい。もう、私は千円カットから美容室にクラスチェンジしたのよ!!

 

もっと可愛くなって意識してもらおうと思って……なのに二股って!!

 

 

美容師さんは私の長い髪を少し切り、話しかけてくる。女のイケイケの女の人。コミュ力高そうね。

 

 

「お客さん、あんまり切らない方が良いんですか?」

「はい、それだとアニメで一期から二期になるときに作画が急に変わって違和感あるみたいな感じになりますから。素の私でいたいのであまり切り過ぎない感じでお願いします」

「良く分かりませんが、分かりました……」

 

 

ツインテールは私のトレードマーク。十六夜もツインテールが好きだと言っていた。これを崩すことはしない。

 

「それにしてもお客さん可愛いですね。さぞやモテるでしょう?」

「えっと、どうですかね……あんまりそう言った経験は……ないです」

「ええ、本当ですかぁ?」

 

 

ちょ、ちょっとあんまり急に話しかけてこないでよ!! こっちはあんまりこの陽キャラオーラに慣れてないんだから。あ、鏡越しにで目が合った……気まずい。

 

私って本当はあんまり話さない。本の虫って感じなのよね……十六夜と話すときは結構話しちゃうけど……

 

 

「お客さん、もしかしてデートですか?」

「っ! ……は、はい」

「やっぱり、彼氏さんはきっとさぞやカッコいいんでしょうね」

「……はい、カッコいいです……」

 

 

何よ! だからバンバン話してこないでよ!! こちとら生粋のインドア派なんだって! コミュ力実はそんな高くないんだって!

 

 

「どんな人なんですか?」

「え、えっと。一緒にいると楽しくて、動悸が激しくなって……一見普通だけど、どんなときも一生懸命で、何があっても助けてくれて、私の事が大好きで……優しくて、ちょっとエッチで、笑ってる顔が良くて見てるとこっちまで笑いそうで、とても、素敵な人です……」

 

いや、ハッズ!!! 恥ずかしいぃぃぃ!!! 馬鹿か!! 恥ずかしすぎる!!

 

「大好きなんですね」

「は、はい……」

「そういう人なら貴方を大事にしてくれますよ。私も昔そういう人が居たんですけど二股掛けられてて……」

「そ、そうなんですか……」

「絶対に二股彼氏とは付き合っちゃダメですよ!! そういう人は三股、四股、五股するんですから!」

「そ、そうですか」

 

この人圧が凄いわね……」

 

「まぁ、そういう経験も大事ですけど。ちなみに私はもう既婚者です」

「へ、へぇー、そうなんですか……」

 

いや、聞いてないわよ! 

 

「絶対に二股したいとかいう彼氏はダメですよ、クズで馬鹿で愚かしい、金魚の糞にすら劣ってるんですから」

 

ちょっと、ムカムカシテきた。十六夜はそんなんじゃないわよ……。

 

「下半身で生きてるキノコの親戚何で!!」

 

十六夜のこと言ってるんじゃないわよね? きっとそうなんだろう。十六夜は絶対違う。

 

 

「二股したいとかいう奴は全員クズ! 社会の底辺!!」

「っ! い、十六夜はそんな人じゃないもん!!」

 

 

……美容室にいる、美容師さん、カットされてるお客さん、待っているお客さんは全員私を見た。

 

「すすすすす、すいません。ごめんなさい……」

「は、はい。こちらも色々言い過ぎました」

 

 

この人は悪くないのに大声出して怒鳴ってしまった。申し訳ない……

 

 

 

 

もう、この美容室にはいけないな……迷惑かけたわけだし……。僅かにため息を吐きながらが私は家に帰る。

 

 

 

◆◆

 

 

 

「お帰り! 火蓮ちゃん! 美容室行って来たの?」

「うん、どう?」

「うーん、うーん? あんまり変わってないね……パッと見じゃ分からないかも……」

「まぁ、スタンスを崩したくなかったからそう見えても仕方ないわね。因みに前髪を三ミリ、このツインテールが五センチ短くなってるわ」

「あー、うん、いつも通り可愛いってことだね」

 

まぁ、あんまり変わってなくて見えても仕方ないか。実際私もあんまりわかんないし、整えたという事実が大事なのよ。

 

と、そこへ十六夜がやってくる

 

 

「火蓮先輩! 前髪とツインテールがすこし短くなってますね!」

 

しょ、初見で気付いた……どんだけ、私が好きなのよ!

 

「よ、良く分かったわね」

「そりゃ、挿絵で何万回も……いや、愛に溢れてるから気付きました!!」

「そ、そう」

 

 

前半はちょっと何言ってるか分からなかったけど、まぁ気付いたのは褒めてあげて良くってよ?

 

って、何考えてるんだ私は。平常心。

 

 

「明日はデート行きましょう!」

「そそそそ、そうね」

 

……デートか。初めてじゃない? 十六夜と一緒のデートって。

 

 

――楽しみね……

 

 

僅かに口角が上がった。

 

 

 

 

 

 


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