今の所、世界の命運は俺にかかっている   作:流石ユユシタ

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九話 バスケ

 昨日は点滴が終わると家に帰った。基本的に家では一人なので気にしない。怪我したことは親にも連絡が行っていたが親は現在出張に行っているので見舞いには来られなかった。

 

 しかし、見舞いに来なかったからと言って悪い親じゃない。俺が体調に問題ないと連絡したので来なかっただけである。

 母と父は、両者共にエリートだ。父は有名企業の社員。母は弁護士で何処かの法律事務所に勤務してるらしい。

 

 現在は昨日の怪我を庇いつつ、学校に向かっている。銀堂と一緒に登校しようかと思ったが既に彼女は出かけていた。ストーカーはまだ先のはずだが、念のため彼女を学校まで送ろうと思ったんだができなかった。連絡先も知らないので仕方ない。

 

「痛、クソ、打撲って結構痛いんだよな……」

 

 右足、右腕、左足、左腕それぞれが所々痛い。痛みに顔を歪めながら校内に入って行く。不良に絡まれたという噂は広まっているようで、ちょくちょく見られる。

 

 教室のドアを開けて中に入る。クラスメイト達はざわめきだした。一番最初に俺に話しかけてきたのは佐々本だ。席に座りながら

 

「十六夜。大丈夫か?」

「大丈夫だ」

 

 自身の席に向かいながら返事をする。佐々本は俺の前の席なので、自然と会話を続けられる。クラスメイト達は俺と話したことがないからどう話していいか分からないようだが、何やら心配してもらっているように感じる。

 

「昨日はわざわざありがとうな」

「大したことじゃないから別にいいよ」

 

 

 ある程度の事情は昨日話したので特にいまさら言う事はない。その後は他愛もない世間話的な事をして過ごした。

 

「ホームルームを始める。席に着け」

 

 六道哲郎が入ってくると全員が席に着く。色んな意味でこの人は影響力が凄い。これには脱帽だ。

 

「黒田、大丈夫か?」

「はい。おかげさまで」

「そうか。皆知ってると思うが黒田は怪我をしている。何かあれば手を貸すように」

  

 

六道哲郎。いや、六道先生が素晴らしい神対応をしてくれる。強面フェイスだが彼はいい人以外の何者でもないと再認識した。

 

 

「大丈夫か?」

「大丈夫十六夜君?」

「ありがとう。でも大丈夫だから気にしなくて大丈夫ですよ」

 

 ホームルームの後はクラスメイト達の心配の嵐だった。本当に六道先生の影響力は凄いな。元から心配はしてくれていたのだろうが、いきなりこんなに口に出して気を使ってくれるとは。

 

 やはりあの人には人を動かす才能があるんだな。流石『血列団』の頭候補だった人だ。

 

 六道哲郎。本名、龍島哲郎。次期『血列団』の頭を務めるはずだった。彼についての話は『原作』丸々一巻で紹介されたのだが、六道哲郎は教師になりたいという夢があり、その為に次期頭を断ったのだ。彼の兄弟にその座を譲って。

 

 『血列団』はヤクザ。ヤクザと聞くと悪いイメージばかりだが、そんなことはない。彼らは怖いがいい人たちの集まりだ。全員龍の入れ墨が入っていて怖いが……。

 『ストーリー』では六道哲郎について描かれた物語の内容は今の俺と似た境遇の子が関わってくる。

 

 確か、Bクラスの男の子の話だ。不良に目を付けられ金品などを取られ、暴力を振るわれるのだがそれを閃光の如く六道哲郎が解決。

 

 

 そこで彼の正体が明らかになった。今まで少し強面教師だと思っていたが、実は最強ヤクザ関係者という俺tueee的な展開に読者は胸を熱くしたことだろう。

ずっと作者は、六道哲郎と言う人物をブラックボックスの如く隠していた。

 

 彼が不良をぼこぼこにするシーンは、カッコよかった。最後に彼の背中に入っている龍の入れ墨を披露。それで、相手に『血列団』の関係者ということを分からせて。

 二度とうちの生徒に関わるなと背中で語り、不良を逃がす。

 

 いじめられていた男の子だけが、その正体に気づくという王道的な展開で物語を締めた。

 

 これ『魔装少女』だよね? と思わず表紙を確認した俺は正常だろう。だって、普通に主人公の如くカッコいいことをしてたのだから。でも、マジカル感一切なし。

 

 主人公である銀堂コハクなんてほとんど出なかった。まぁ、今思えば『魔装少女』ってタイトルに書いてあって、ラノベの表紙に六道哲郎が描いてあったのだから、その時点でこの巻は普通ではないと気づくべきだった。

 

 つまり、六道哲郎は幼き時から尋常でない場所で育った裏の世界の主人公と言える存在なのだ。そんな彼の人気投票は高いに決まっているが……。

 佐々本より下だ。何故か分からないが佐々本には絶対勝てない。順位一つ違いの時もあるが、結局勝てないのだ。

 

 まぁ、佐々本が人気の理由も分かるがな。

 

 

 

「おい、十六夜。体育どうすんだ?」

「残念だが見学だな」

「まぁ、そうだよな」

 

 佐々本が俺に気を使ってくれる中、俺達Aクラスは体操服に着替え体育館に居た。一時間目は体育だ。木曜日の一時間目は体育なのだ。意外に、体育ができないというのが残念だったりする。特にこの一年Aクラスで出来ない事が……。

 

 普通体育ができないくらい大したことない。と思うかもしれないが、このクラスは例外である。このクラス体育がガチなのだ。そこまで? ってくらい本気である。

 

 体育教師の指示で準備運動。その後チーム分け。俺はできないが今日はバスケである。体育は男女別れて行い、体育館を半分に分けて両者行う。

 

 体育教師の名前は、七星拓也。ノリが良く、熱い教師だ。この人がいることで余計に体育が楽しくなる。『ストーリー』でも書かれていたが凄く楽しそうだった。だからこそ、できないのが悔やまれる。

 

「いいか! 楽しむのは構わないが勝ち負けにも拘れ! 勝った方にはジュースを奢ってやる!」

 

「「「「「うおおおおお!」」」」」」

 

 このクラス、ノリが凄くいい。

 

 その後チーム分けをし、試合が始まる。このクラス男子は大体十六人なので八人チームを二つ作り、交代しながら試合を行う。七星が審判だ。

 

 

 試合が始まり、片方のチームにゴールが入る。俺は一応応援だけではあるが、今ゴールが入ったチームに所属している。

 

「ヒューーーー。良い流れだよ!」

「まだまだ、こっからだ!!!」

 

 ドリブルしてる生徒が、過度なディフェンスでゴール前で転ぶ。七星が笛を鳴らすと猛抗議。今のは違う。両手を上げ無実を訴える。しかし、七星は首を振る。

 

 それで両チーム騒ぐ。片方は喜び、もう片方はマジかと空を見上げる。

 俺も参加はしているがプレーできないと、何処か疎外感が……。

 

 俺もやりたかったな……。

 

◆◆◆

 

 

 

「うわ~。男子熱いね」

「学校の授業であそこまで熱くなるのって難しいですよね」

 

 体育館のもう半分の方で、私は同じクラスメイトであり後ろの席に座っている

 体育館のもう半分の方で、私は同じクラスメイトであり後ろの席に座っている野口夏子さんと話していた。私達女子の体育はあちらほど熱いものではなく、試合はしているが白熱はしていない。

 

 交代で試合には出るので同じチームになった夏子さんと応援をしながら男子の試合を眺めていた。信用はしていないが、席が近いこともあり、クラス内では一番話すことが多い。

 

「そう言えばさ、黒田君って、天之川高校の不良にボコボコにされたって言ってたけどなんでやられたんだろうね?」

「さぁ? 私には分かりかねますね」

「でもさ、昨日天之川高校の不良が校門で銀堂さんに謝ってたよね? 黒田君の事何か言ってなかった?」

 

 その話はできればしてほしくなかった。気分が悪くなるから。

 

「いえ、何も」

「そうなんだ、うーん、気になる!」

「そうですか? 気にする価値も無いように思いますが?」

「なんか、急に毒舌になったね……」

 

 思わず本音が出てしまったようだ。自然と不機嫌顔になるのを感じた。夏子さんが少し苦笑いをしている。

 

「そんなことないですよ」

「うーん、確かにそんなことないかも!」

 

 チョロい夏子さんは話を戻すように十六夜君を見た。バスケに参加できずに少し残念そうにしているのが見える。

 

「黒田君ってさ、一見普通の塊って感じなんだけど何か普通とは違う感じしない?」

「……それは、何となく感じました」

 

 彼女はチョロいのかそうでないのか良く分からないが、いったん置いておいて私は十六夜君の事を考えた。

 普通、激辛水鉄砲を持ち歩く高校生はいない。そして、不可思議な行動。言われなくても分かってはいたが、改めて言われると再認識する。

 

 ――彼は普通ではない

 

 

「だよね! 雰囲気と言うか、何と言うか良く分からないけど感じるよね?」

「頭がおかしい狂人に近いと思います」

「わお、凄い辛辣。もしかして、黒田君の事嫌い?」

「大嫌いです。彼を見てるだけでイライラしますから」

 

 本音をぶちまけてしまった後、思わず言ってしまったと後悔した。こういう事はあまり言って良い事ではないが抑えられない。

 

「アハハ! 銀堂さんがそこまで感情を出したの初めて見た。まだ入学4日目だけど、この4日間で一番表情が変化したよ!」

「そうですか? なら、それは私がそれだけ彼を嫌っているという事ですよ」

「そうかな? 私にはなんか違う気がするよ?」

 

 ……何やら変な勘違いを彼女はしてるように感じた。嫌い。それ以外の感情はない。

 

「そろそろ、交代の時間ですよ」

「おっ、そうだね! じゃ、男子に負けないくらいに頑張ろうか!」

「それは無理ですよ」

 

 

 私達は同じバスケチームの生徒と交代して、試合に挑む。勿論ほどほどにだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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