おじさん(童貞)魔法使いになっちゃった 作:サトシ16852
毎日のようにこの街を散歩しているため、この街の知らない場所はほとんどないと思う。それを確かめるために自分で地図を作ってみた。既存の地図を見るのではなく、自分で見たものを自分で作る楽しさというものがある。
地図を作ってみると都市部はほとんど埋まっているが一部空白のままである。確かこの部分は森の様な場所だった気がする。今日はそこへ行ってみることにしよう。
この森は街の端のほうにあるため結構歩くことになってしまった。魔法使いになってからあまり疲れたことはないがここまで歩くと精神的に疲れてくるのはやはり歳を取ったからだろうか?
何だかんだで森についてしまった。あまり考えずにきたけれども普通の靴で大丈夫なのか?泥だらけになってしまうかもしれない、そう思ったが魔法を使えば一瞬で綺麗にできることに気づいた。
もう靴の心配はしなくていいのどんどん森の中へ進んでいく。さっきまで明るかった筈が今では薄暗い。
ここまで来てふと思ったが、猪とか熊とかいるかもしれない。あまりにも深い森だから動物がいても不思議ではない。
今こそどんな魔法があるのかアニメや映画、小説を読みまくった成果を見せる時。いくぞ初の探知魔法発動
うわ、気持ち悪い。脳に直接情報が入ってきて変な感じがする。この魔法ダメだ。視覚化する魔法に変えた方が良いな
それはいいとして、さっきの魔法で確認した感じ大きい動物はいないようだが、なぜか人の反応が三つもあった。こんな森の中で人がいるとは思わなかった。キャンプかな?もしかしたら遭難してるのかもしれないと思い急いで向かう
反応があった場所の近くまで来たらひらけた場所に出た。そして正面には物凄い立派なお城があり自分の目を疑った。遭難ではなかった
何故こんなところに立派なお城を構えているのかとても気になった。食糧を買いに行くときなんか特に
内装とか見てみたいな。中の人に聞いてみよ
お城の正面に移動し、インターホンがないか探してみたが特になかったので、大きな扉を軽く叩いてみる
しばらくすると赤目のキリッとした感じの赤目の外国人メイドさんが警戒しながら出てきた。本物のメイドさん?マジ?初めて見た。てかすげー美人
「どうぞお入りください」と言いながら扉を押さえてお城の中に入れてくれた。
中に入った瞬間、見た光景にあまりの感動に絶句してしまった。
正面の大きな階段、天井の絵、ホコリ一つない綺麗な大理石の床の上に真紅のカーペットこんなに綺麗な物を見たのは初めてだった
カーペットの上を歩こうとしたが自分の方が結構泥に汚れていることに気づき、すぐさま魔法で綺麗にした。念には念を入れこれ以上ないほど綺麗にする。なんか緊張してきた。軽い気持ちで見に来ただけなのに
こちらを待たずにどんどんと奥に進んでいくメイドさんに気づき、追いかけようとするも、この綺麗なカーペットの上を歩くのは気が引ける。ただ進まないと内装が見れない
意を決して一歩を踏み出す。足の裏に伝わる柔らかな感覚を感じ彼女を追いかけた。自分の足跡がついていないかを気になりすぎて何度も後ろを確認したのは言うまでもない
歩いている途中メイドさんと話をしたけれど、警戒されてあまり話してくれなかった。悲しくなってきた
しばらく後ろを歩いていると綺麗に装飾された扉の前に着いた。そこにはもう一人メイドさんがいて「こちらで城主がお待ちです」と言って扉を開けてくれた。三人しかいないはずなのに二人メイドさんか。怖いおじさんじゃなきゃ良いけど、と思いながら取り敢えずお礼を言って中に入る。
そして待っていたのはヒゲの生えた怖いおじさんではなく可愛らしい女の子だった。これには自分の目が点になっり固まってしまった。想像していたことと正反対だし
いきなり失礼なことを聞いてしまって彼女を怒らせてしまったけれど謝ったら許してくれた。彼女のりょうしんはすでに他界してしまったらしく、正真正銘の城主だそうだ
彼女は何故か俺が魔法使いだと知っていたようで魔術師さんなんて呼ばれた。もしかして彼女も魔法使いなのだろうか?聞いてみたが怪訝な顔をしながら違うと言われた。
魔法と魔術は違うらしい。魔法は根元とか言うよくわからないものに到達したものだけが使用できるものらしい。素人の人間が使えるようなものじゃないから、あなたの使っているものは魔術だって言っていた。初めて知ったな、そんなこと
彼女、イリヤと言うらしいが俺の知識のなさを知り魔術について様々なことを教えてくれた。大半のことはよくわからなかったが魔術師はこの街に結構いるらしい。
魔術師の家系の生まれであるらしく幼い頃から英才教育を受けてきた彼女は人間とホムンクルスのハーフらしい。ホムンクルスってのは人造人間。ハーフだから成長しないらしい。大きくなったら絶対に美女になるのに残念
暫く世間話ををしていたらメイドさんが紅茶とお菓子を持ってきてくれた。何というか年中麦茶を飲んでいる俺にとってお上品すぎて少し困惑したものの紅茶もお菓子もとても美味しかった。お菓子作りでも始めてみるか
話をした後にお城の中を見せてもらった。
すごかったです(小並感)
もう外は真っ暗だ。そろそろ帰る事にした。ディナーまでご馳走してもらたのでお返しの品を送ろうと思ったけれど良いもの持ってたかな?そういえば宝石に魔術を込める魔術しがいるって言ってたな。それにしよう
宝石は持っていなかったから魔術で生成しよう、形は身に付けられるやつのがいいかな?子供だしブレスレットでいいか
魔術はバレちゃいけないみたいだから、彼女にバレないように鎖型の鉄に生成した宝石を埋め込み魔術を込める。魔術師は危ないみたいだから身代わりみたいな能力を付けとけばいいだろう。
渡したらイリヤちゃんは受け取ってくれたけど、今思うとおじさんが生成した結晶とかいう汚い物を渡してしまった気がする。よく受け取ってくれたな
メイドさんに送り迎えをしてもらってお城を出る。振り返ると明かりのついたお城が見えて、昼には見えなかった一面を見ることができた。
帰りは暗いから歩かずに魔術でワープして帰る。けどその前にいつもの橋からの景色が見たくなったので橋にワープ
いつもの橋に移動して夜景を眺める。さっき見たアインツベルン城に比べたら見劣りしてしまうがこの平凡な夜景が大好きだ
明日は公園で桜ちゃんとお話しする約束したしそろそろ帰るか
◼️
この街に来て一年ほどたち、私はいつもと変わらない毎日を過ごしていた。前回の聖杯戦の続きをするために私はここに来た。ただ聖杯戦争は始まらない。他の魔術師を殺すように教育された私にはこの平穏な変わらない毎日がつまらなかった
自室のベットにうつ伏せになりながらある人物の事を考える。衛宮士郎。私の父である衛宮切嗣が養子として育てた義理の兄弟であり最後の家族。切嗣が私を捨てて養子として育てた人間にとても会ってみたい
そんな時、何処からかわからないけれど確実に見られていると感じた。まるで心臓を鷲掴みにされたような感覚に陥る。この城には魔術対策の結界を張ってある。それを突破してくるなんて只者じゃない
冷や汗をかいていると、が扉を勢いよく空いた。
「大丈夫ですか!」
「大丈夫よ、セラ。ただの索敵魔術みたい。それにしてもいきなりアイツベンルンに魔術を仕掛けるなんて、とんだ命知らずね」
「ええ、ですが御相手は相当の手練と見た方がいいでしょう。この結界を突破する魔術の使い手ですから」
動揺するセラ、それも仕方のないことかもしれない。アインツベルンの結界を破るほどの手練れなら、聖杯戦争も始まってすらいない状態で仕掛けてくるなんて愚行を犯すとは思えない
あまりにも理解不能な相手の行動に私たちはとりあえず城の中から周囲の警戒を行った。
しばらくすると一人の男性が森から走って出てきた。
「ねぇ、セラ?あれが魔術師?」
「わかりません、、こんな所に一般人が入ってくるなんてあり得ないはずですが、彼の服装は魔術師と言うよりも健康を気にしてウォーキングをしている一般人にしか見えませんね」
そう、とても魔術師とは思えなかった。
開けた場所に出た彼は私たちの城を見ると唖然として立ち止まってから何故か安心したようで、しばらくすると城の周りを回り始めた。
いまだに敵の行動が理解できない。周囲を回っているだけで魔術で陣を書いているわけでもなく、ただ様々な角度から城を見ていた。
一周回った後、彼はどんどんと城に近づいてきて、私たちは敵が仕掛けてきたのかと思って身構えていると扉を叩かれた。それも壊すためではなく呼び出すための
これには、皆が肩透かしを食らった。律儀にもノックをしてきたのだ
「どういうことでしょう?まさか彼は私達を倒しに来たわけではない?」
「狙いは分からないわ、けれどもあんな律儀にノックされたらこちらも出迎えるべきね。セラ、私は客室で待つから彼を連れてきて」
「よろしいのですか?」
「イリヤ、私も反対」
「セラもリズも心配しすぎよ、もし彼が何かしてきても人間が私たちに敵うはずがないじゃない」
こう言ったけれど私は少しこの状況を楽しんでいた。いつもと変わらない平凡な毎日に飽きていた私はこの不測の事態に胸を躍らせていた。
「、、、わかりました」
渋々私の言うことをきいてくれたセラは扉をノックした彼の元に向う。そして私は客室へ向かった
私は言われた通り、いきなり現れた男性の元へ向かう
戦闘タイプではないがホムンクルスある私に人間では敵わないだろう
扉の前に着くと私は覚悟を決めて扉を開いた
「え、外国人?えっと、、ハロー、ナイストゥミートゥー」
あまりにも間抜けな挨拶に困惑してしまった。慌ててあまりにも下手な英語で挨拶をしてきたら誰でも困惑するだろう。しかもアインツベルンの本拠地はドイツである。英語がわかない訳ではないが彼の挨拶はあまりにも滑稽だった
「日本語で通じます」
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしそうに笑う彼はまるで少年のような笑みだった
「本日のご用件は?」
「えーと、このお城の中を見てみたいのですが、よろしいでしょうか?」
「中ですか?」
思わず聞き返してしまう
「はい、偶々この城を見つけて周りを見ていたんですがとても良いデザインだったので内装も見てみたいと思ったんですよ」
私は確信した。彼はおそらく一般人だ。こんな魔術師は存在しない。ただ万が一ということもあるので警戒は解かない
「わかりました。どうぞお入りください」
「良いんですか?ありがとうございます」
「その前に、この城の主人があなたと会いたいそうなので客室までご案内いたします」
城の中に入り私は彼の前を歩く。
何故か後ろから足音がしないので振り返ると、ゆっくりとカーペットに足を乗せて自分の足元をチラチラと見て足跡が付いていないかを確認していた。
少し歩くと慣れたのか私の後ろにぴったりとついて話しかけてくる
「メイドってお休みとかあるんですか?」
「ありません」
「え、ブラック?」
「違います」
「掃除とか買い物とか大変じゃないですか?」
「いいえ」
何故こんなにも下らない質問ばかりするのだろうか?適当に返事をして歩いていると客室に着く
「ここで城主がお待ちです」
扉を開けて彼が入れるようにする
「ありがとうございました」
彼がそう言って中に入った後扉を閉めた。
「あの人、どんな感じだった?」
扉の隣にいたリズからの質問に私はこう答えた
「わかりません」
本当に変わった人間ですね
しばらく待っていると扉が空いた。
そして開いた扉から入ってきた人間は一度も見たことがない男。変わらない毎日にはいるはずのない人間が目の前にいる。
「ようこそアイツベルン城へ、歓迎するわ魔術師さん」
あなたは一体何者なの?
「えっと、君のお父さんかお母さんは何処かな?」
「なんでそーなるのー!」
「うわっ」
「私よ!私がこの城の主人!両親はもう死んじゃったから私が正真正銘の城主なの!」
「、、ごめん」
いけない、つい頭に来て叫んじゃった。相手もドン引きしてるじゃない!
「ま、まあ良いわ、寛大な私は許してあげる。感謝しなさい」
「うん、ありがとう」
ノータイムでの返事?彼プライドがないの?変わった人間
「ところで俺のこと魔術師って言ってたけど何でわかったの?もしかして君も魔法使えたり?」
魔法?
「貴方もしかして魔法と魔術の違いを知らないの?」
「え?違うの?」
呆れた。そんな知識もなくアインツベルンの結界を破るほどの魔術を使ってるなんて
「誰に魔術を教わったの?」
「誰にも教わってないけど、気づいたら勝手に使えるようになってた」
「それはいつ頃からかしら」
「えっと、先月くらいかな」
「ふざけないで!それが本当なら魔術師なんてそこら中にいる事になるじゃない!」
「ご、ごめんなさい」
嘘をついているわけではなさそうね。その方がおかしいけれど
「貴方、素人みたいだから教えてあげるけど魔術はそう簡単ににできるものじゃないの、自分の一族が数十世代もかけて少しずつ成果をだしていくもので、たかが先月使えるようになったからってそんなに使えるものじゃないわ」
「それに魔法なんて夢のまた夢ね。覚えたての魔術師が魔法なんて使えるわけないわ」
「ヘェー、そうなんだ」
こっちは存在自体認めたくないような輩だと言っているのに、本人はこんな適当な返事をしているけれど、私の話をちゃんと聞いているのかしら?
「君達の他には魔術師はどの位いるの?」
「今この街には主に三つの勢力があって、私たちアインツベルンに遠坂、そして間桐、その他にもいるけれどそこまで大きな力はないわね」
「アインツベルンにトオサカ、マキリね、覚えた」
本当に何も知らないみたいね。と言うかまず相手の目的を聞かなきゃいけないじゃない。
「本当は最初に聞きたかったけど、貴方、何のためにこの城に来たの?」
「えーと、今地図作ってるんだけど、この森の方を書いてなかったから歩いてて、そしたらこんな大きな城があっだから、せっかくだし中に入りたいと思ったから」
「じゃあ、私たちに危害を加える気はないってこと?」
「うん」
まあ、そんな気はしてたけど
「さらにしても何故地図なんか作ってるの?このご時世簡単に地図なんて手に入るのに」
私は彼の行動を理解できなかった
「楽しいからだよ。歳をとるとね周りのものが美しく見えたり、自分で何かをするのがたまらなく楽しくなってくるんだ。君はまだわからないかもしれないけどね」
彼は楽しそうに言った。子供が新しいおもちゃをもらった時のように
それから、私は彼に魔術士について教えたり、世間話や城の案内、ディナーをご馳走した。
「外も暗くなってきたし、そろそろ帰るよ」
「そう、あなた一人で帰れる?もし駄目そうならメイドが送るけれど」
「大丈夫、一人で帰れるから。そうだ、これ今日のお返しって事で」
そう言って彼は私にブレスレットを渡してきた。私はあまりつけたことはないけれどこれを機につけてみても良いかもしれない。
「気が向いたらここへきて良いわ、あなたの話とても面白いもの」
「ありがとう、気が向いたらまた来るよ。じゃ、今日はお邪魔しました」
私は部屋に戻った後、彼から貰ったブレスレットを眺めていた。綺麗な宝石が埋め込まれていて素敵なデザインをしている
これは証しだ。変わらない毎日から、少しだけ変わり行く毎日への