整合騎士達と捻くれ者のソードアート   作:ゆっくりblue1

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早くアリスとイーディスに絡ませたくてこうなりました。アリスとイーディスは同じ歳と言う設定で上下関係は有りません。今回もお楽しみ頂けると幸いです。


デスゲームの始まり

城廻先輩と一色が持ってきた依頼を終えた後、奉仕部の空気は戻るかと思いきや険悪な空気ではないが、まだ空気が重かった。分からない、雪ノ下のあの言葉を聞いてから俺が奉仕部にいる意義、何をしたいのかがわからなくなった。

 

 

「分かるものだと思っていたわ・・・・」

 

 

あの言葉が頭の中から消えてくれない。一体雪ノ下が何を俺、俺達に望んだのか。俺は部屋の中でベッドに寝そべって考えていた。あの方法が俺にとっては最善だった。そう、『俺にとっては』。あの後も由比ヶ浜が空気を良くしようと奮闘してくれたが、ほとんどが空回りだった。前なら俺を罵倒していた雪ノ下だが、今ではそれもなくなった。

 

 

嬉しいことの筈なのに、俺は素直に喜べなかった。小町にも『理由』を貰って今まで行動とは別の事をした。雪ノ下と由比ヶ浜に否定された解決方法でなく、誰も不幸にならない手段を取った。なのに空気は良くなるどころか、更に重くなった。

 

 

「何なんだよ一体・・・はぁ・・・」

 

 

浮かんだ考えを何度も思考し、自分の中で咀嚼しては否定しを繰り返す。やがて何度も同じ考えと結論に行き着き、苛立ったため、俺は一度身体を起こした。そして自分の部屋に置いてある大きめなダンボール箱に視線を移した。

 

 

ダンボール箱の中を開けると、入っていたのは今年発売された世界で史上初の仮想空間フルダイブ体験型ゲーム〈ソードアート・オンライン〉のソフトと専用機器のナーヴギアだ。1万人の数量限定で、抽選で当たってしまった物だ。そして今日の土曜がゲームサービスの開始日で、午前12:00から始まる。

 

 

「・・・・息抜きにやるかね。今はって11:55分かよ。準備するか」

 

 

俺は急いで必要な手順を踏んでプレイの準備を整えた。キャリブレーション?とか必要か?と疑問に思うものもあったが気にしなくて良いだろ。そして頭にナーヴギアを被って、ベッドに横になる。どんなものなのかと俺にしては珍しく昂った気持ちになっていた。此処に彼奴等がいたら・・・・いや、考えないでおこう。そしてカウントが10秒になった。

 

 

10・・・

 

 

9・・・

 

 

8・・・

 

 

7・・・

 

 

6・・・

 

 

5・・・

 

 

4・・・

 

 

3・・・

 

 

2・・・

 

 

1・・・

 

 

そして俺は静かに呟いた。

 

 

「リンク・スタート」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、広がるのは野原だった。俺は辺りを見回して、自分の身体である設定したアバターを見る。そしてゆっくり動かす。そして感嘆の声を洩らした。

 

 

「すげぇ・・・」

 

 

暫くそうしていたが、とりあえず移動しよう。と決め、走って進む。完全に現実世界での身体の感覚だ。肌を吹き付ける風も、気温も踏み込む地面の感覚も全てが本物だ。茅場晶彦は凄いと心から思える。そしてふと、止まって右手を横に少しスライドする。するとメニュー画面が出現して《ステータス》などが映った。プレイヤーネームは《Yahato》ドイツ語の8のアハトの『ハト』八幡の別読みであるヤハタから『ヤ』を取って、『ヤハト』と付けた。そして《装備》をクリックして、今の自分の持ち物を確認する。武器は片手剣の初期装備《スモールソード》回復アイテムは初期の回復ポーションが5個か。通貨は0コル。レベルはもちろん1だ。

 

 

完全に俺は初心者なので『βテスター』ーーー抽選1000人限定にソードアート・オンラインを体験出来る機会があり、その体験をした人の事ーーーの戦い方や行動を見れたら良いんだが。えっ、普通に聞いたら良いじゃないかって?エリートボッチの俺にリア充がやるような行動が取れるわけないだろ。

 

 

そして武器を装備して周りに敵モブがいるかを確認する。とりあえず走って人がいるところまで行ってコツを盗み見するか。そして敵モブとのエンカウントに気をつけながら移動する。

 

 

そうして暫くすると、ある2人組を見つけた。黒髪イケメンアバターに赤髪の陽キャのアバターがいた。黒髪イケメンが赤髪に戦い方を教えているようだ。相手はイノシシの《フレンジー・ボア》と言う敵モブだった。赤髪は動き回るモブに翻弄されているのか、攻撃が全く当たってない。

 

 

「全然攻撃が当たんねえよぉ、キリト」

 

 

「そりゃあそうだろう、MMOなんだし。カカシじゃないんだからな。クライン、ソードスキルはモーションだよ」

 

 

黒髪イケメンのキリトと赤髪陽キャのクラインとやらの漫才みたいなやり取りを聞いていると、重要な事を聞いた。モーション、溜め状態みたいなもんか。クラインはその言葉を聞いて、モブを落ち着いて見据える。そして敵モブは突進してくるので、剣を構える。そして突進攻撃に合わせるようにキイィンと音と色が加わった剣を振るう。その攻撃は敵モブの顔に当たると、敵モブは横に倒れ伏して青いポリゴンエフェクトとなって発散した。

 

 

クラインは成功した事を喜んで、キリトはこのモブがスライムレベルの雑魚だと言うとクラインは落胆していた。当たり前だろ。レベル1で倒せるボスモンスターなんているわけが無い。まぁ、知りたかったことは知れたしさっさと別の所に移動しようかね。移動するときにキリトと目が合った気がするが気の所為だ。うん、気の所為。そして移動していく。

 

 

 

 

 

 

 

そして移動して、敵モブとエンカウントする。そしてさっきの事を参考に敵モブの攻撃を落ち着いて見据えて回避したら攻撃直後は硬直するのでその隙にソードスキルを叩き込む。

 

 

「ふっ!」

 

 

そして攻撃が当たり、HPバーが削られていくのでそれを繰り返す。そして最後の一撃を入れると、敵モブは青いポリゴンエフェクトになった。回避はしていた為、こちらのHPバーは満タンのままだ。

 

 

「こんな感じか。・・・・もうちょいやって完全にコツを掴むか」

 

 

俺らしくない積極的な姿勢に自分自身で驚く。柄にもなく興奮しているみたいだな。そうして敵モブをポップするところに移動していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狼型の敵モブの爪での切り裂きを潜り抜けるように回避して、懐に入り込んで片手剣横垂直斬りソードスキル《バーチカル》を放って倒す。レベルアップのファンファーレが鳴り響く。俺はステータスにステータスを上げるポイントを振り分ける。筋力性と敏捷性などが主で、俺は1:4で敏捷性を優先している。耐久が不安だが敵モブの攻撃が当たらなければ良いので優先して上げる。かなりハイペースでやっていたせいか、5時間くらい経って、レベルは4まで上がっていた。途中から急所ばかりを狙って攻撃していてほぼ1撃で仕留めていたからだ。しかしポーションも3個使い、武器もイエローゲージからレッドになりかけている。

 

 

「とりあえずコルは稼げたから武器とポーションだけ買ったらログアウトするか・・・・ん?」

 

 

ふと、横を見ると、何やら敵モブに囲まれている2人のプレイヤーがいた。何とか捌いているが、ジリ貧になっていっている。といっても俺には関係無いのでそのまま街に向かって走り出す。どうせログアウトするし、何よりこれはゲームだからやり直しが効くしな。

 

 

「・・・・・」

 

 

そんな思いとは逆に俺の足は止まる。おい、俺には関係ねえんだからほっといた方が良いだろ。安直な正義感で首突っ込んで後悔するって学んでるだろうが・・・!俺が首突っ込んでも良くなるとも限らないし、身の丈にあった行動が最善なんだよ。そしてプレイヤーの1人に敵モブの攻撃が直撃した。そしてゲームとは分かっていても恐怖してしまったのか、か細い声で言った言葉が俺の耳に届いた。

 

 

「誰・・・か・・・・」

 

 

「・・・!!」

 

 

俺は走り出した。今の自分が出せる最高速度で敵モブに迫り、片手剣刺突ソードスキル《レイジスパイク》を敵モブに放ち、吹き飛ばして周りにいる敵モブも巻き込んで吹き飛ばす。急な出来事に囲まれていたプレイヤーは茫然となる。戦闘中にジッと突っ立ってたら死ぬぞ。現に未だプレイヤーに狙いを定めた状態の奴が攻撃を加えようとしている。俺は人生で1番声を張って言う。

 

 

「ボーっとすんな!攻撃が来てるぞ!!」

 

 

俺の声を聞いてハッと我に返ったプレイヤー達は迫り来る攻撃を何とか回避した。俺は1匹1匹確実に急所を突いて一撃で仕留めていく。あと3体か。そして何とか調子を戻したのか2人も冷静に攻撃を加えていく。そしてついに最後の1体を倒した。

 

 

「・・・・はぁ、終わった」

 

 

俺は周りに敵モブが湧いていないことを確認して息を吐く。何度か攻撃が掠っているのでイエローゲージ寸前まで減っていた。もう働きたくねぇな。と思っているとプレイヤーが声をかけてきた。

 

 

「あの、わざわざ私たちを助けてくれてありがとうございました」

 

 

その声に振り向くと、金色の長髪蒼眼の美少女と暗めのイエローブラウン色の長髪を縛った紅眼の美少女がいた。集中していて気付かなかったが女性アバターだったのかよ・・・・。金髪の少女は俺に頭を下げてお礼を言った。紅眼の少女も頭を下げて言った。

 

 

「貴方のお蔭で死なずにすみました。本当にありがとうございます。何かお礼します」

 

 

「いえ・・・勝手に俺が突っ込んで巻き込まれに行っただけなんで。別に礼はいいです」

 

 

「いえ!ゲームとは言え助けてもらったのにお礼をしないなんてことは出来ません。何かお礼をさせて下さい」

 

 

俺は別に恩を売るために助けたわけではないので遠慮したのだが金髪少女は真面目なのか引き下がらない。紅眼の少女も意見を譲る様子は見せない。俺は立ち去ろうと動くが、さりげなく回り込まれる。俺は頭を悩ましたが、ログアウトすれば良いや。と思い、メニュー画面を開いてログアウトボタンを探す。しかしーーーーーーーーーー

 

 

「・・・・ログアウトボタンがない?」

 

 

思わず呟くと、2人も俺の言葉でメニュー画面を開いて見てみる。やがて驚いた様子で言った。

 

 

「本当ですね」

 

 

「何で・・・?」

 

 

サービス初日にこんなバグとか運営は何を考えてんだ?こんな致命的なバグ残したまま売ったら大問題だろ。俺はそう考えていると、急に鐘の音が辺りに響く。

 

 

「何だ?」

 

 

俺はすっかり夕焼け色に染まった草原を見渡して警戒する。2人も周りを気にしている。すると急に青い光に身体が包まれた。俺だけじゃなくこの場にいる全員が。

 

 

「うおっ!?」

 

 

「「えっ!?な、何!?」」

 

 

そして青い光に俺達は包まれ、この場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青い光が消えて思わず瞑ってしまっていた目を開いた。目に入ってきたのは街の広場だった。辺りを見渡すと大量の人がいた。多分SAOサーバー全員を集めている。ふと、隣から声がした。

 

 

「こんな数のプレイヤーを集めて一体何をする気なのかしら?」

 

 

「運営側が全員をこの場でログアウトさせるのではないですか?」

 

 

さっきの2人も一緒に転移してきたようだった。俺は少し驚きながらも顔には出さずに周りを観察する。この場にいる全員が混乱している。俺は()()()()()()()見つけて瞠目した。

 

 

運営側の説明があるとほぼ全員が信じている。しかし10分経っても説明どころかアナウンスすらなく、プレイヤー達は苛立ちと不安の声を挙げ始める。俺は直感的に嫌な予感を感じ始めた時、突如空が紅く染まった。

 

 

「な、何だ!?」

 

 

「何これ!?」

 

 

そんなプレイヤー達の声が響く。そして広場の中央のオブジェクトから巨大なフーデットケープを着た人型のNPCが現れた。運営側の奴か。プレイヤー達は戸惑いながらもやっと説明があると安堵の混ざった声を洩らした。しかし、やっとログアウト出来ると思っていたプレイヤー達の心を絶望の淵に叩き落としてくるとは思わずに。

 

 

「SAOプレイヤー諸君。私の世界へようこそ」

 

 

渋い男性の声だった。この異常事態に場違いな程の落ち着き、そして機械を思わせる抑揚のない声に思わず背筋がぞくりとした。そして続けて言った。

 

 

「私の名前は茅場晶彦。現在、この世界をコントロール出来る唯一の人間だ」

 

 

茅場晶彦。その名前を聞いた瞬間プレイヤーたちに再び動揺が走ったが、当の本人は意に介す様子もなく話を続ける。

 

 

「プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気づいていると思う。しかしこれはゲームの不具合ではない。繰り返す。これはゲームの不具合ではなく、ソードアートオンライン本来の仕様である。・・・・・諸君はこのゲームから自発的にログアウトすることは出来ない」

 

 

何でもないことのように語る茅場晶彦。淡々としたその口調に、俺はかえって茅場晶彦の狂気を感じていた。

 

 

「また、外部からのナーヴギアの停止、または解除による強制ログアウトもありえない。もしそれが試みられた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる」

 

 

雰囲気に呑まれ静まり返っていたプレイヤーたちが、話が続くにつれてざわついてくる。俺は理性を総動員して冷静に状況を分析しながら耳を傾ける。

 

 

「しかし残念ながら、警告を無視してナーヴギアの解除を試みた例が少なからず存在し、既に213名のプレイヤーがこのソードアートオンラインの世界から、そして現実世界からも退場している」

 

 

そう言って、茅場は空中に幾つかのウインドウを出現させた。そこにはナーヴギアによる死亡者のニュース映像が流れている。両手で顔を覆って泣き崩れる少女と、それを支えながらも涙を流す母親が映っていた。茅場の発言が単なる狂言ではないことを否が応でも理解させられてしまう。三つ編みを一本に結び纏めた金髪外国人の少女もいた。その少女も泣き崩れている。そんな映像に横から声が聞こえた。

 

 

「セルカ・・・!」

 

 

そしてその横に映った人物が涙を流しているのを見て俺は目を見開く。茅場は続けて言った。

 

 

「だが諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。様々なメディアが繰り返しこの事実を報道したことを鑑み、これ以上ナーヴギアの強制解除による被害者が出る可能性は低くなったと言っていいだろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま2時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他準じる施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心してゲーム攻略に専念してほしい」

 

 

ざわめきはさらに大きくなり、多くのプレイヤーが茅場に対して抗議するべく喚きたてていた。しかし茅場がそれを取り合うはずもなく、そいつは悠然と語り続ける。

 

 

「諸君がこの世界から解放される方法はただ1つ。この始まりの街の存在するアインクラッド第1層から第100層までの迷宮を踏破し、その頂点に存在するボスを撃破してこのゲームをクリアすることだけだ」

 

 

そんな言葉にプレイヤーは、出来る訳がないだろ!と口々に言う。しかし淡々と次の言葉を言う。

 

 

「最後にプレイヤー諸君にプレゼントを渡す。アイテムストレージに入っているので出してみると良い」

 

 

困惑しながら俺を含めた全員がアイテムストレージに入っているアイテム《手鏡》の欄を確認して押した。そして手鏡を手に持つと、鏡が光り出し、身体を包んだ。

 

 

そして光りが止んで、眩しさで瞑った目を開く。そして手鏡に自分の顔が映った。そして驚きの声が周りから上がり、俺も、そしてその隣からも呟きが洩れる。

 

 

「・・・・・現実世界の俺の顔になってるじゃねえか」

 

 

「アバターの顔じゃなくなってる・・・!?」

 

 

「姿を戻して何をするつもりなの・・・!?」

 

 

いつも朝見る目の濁りとアホ毛が特徴的な顔に戻されていた。2人もこっちを見たようで目を見開いて驚きの声を挙げた。

 

 

「「貴方、目が濁って(ますね)るわね!?」」

 

 

「おい、最初に言う言葉がそれか・・・よ・・・・」

 

 

隣の少女達を見ると、俺は思わず目を見開く。アバターの顔パーツは割と少ない為に似通ってしまうので最初は驚かなかったが、アバターの顔より美人って何だよ。雪ノ下以上かも知れない。髪色と瞳の色は同じだが、髪型が少し違っていた。金髪少女は長髪に白いカチューシャ、両サイドの髪は三つ編みになっている。紅眼の少女はスカーフで髪を結んでいる。体型もさっきのアバターよりも抜群なプロポーションになっている。

 

 

「やっぱり全員が元の姿に戻されているようね《アリス》」

 

 

「ええ、そうみたいですね《イーディス》」

 

 

そうお互いを確認し合う2人。金髪蒼眼はアリス、暗めのイエローブラウン色の髪の紅眼はイーディスと言う名前のようだ。見た目からして2人とも外国人か?凄い流暢な日本語を話しているが。そして茅場がまた話し始める。

 

 

「諸君らは今、何故、と思っているだろう。何故茅場晶彦はこのようなことをするのか、と」

 

 

俺はその言葉に神経を集中させた。この大規模なテロ行為を交渉して止める余地があるのではないかと。しかし、そんな希望的観測は次の言葉によって粉々になる。

 

 

「しかし、既に私に目的は存在しない。私が焦がれていたのは、この状況、この世界、この瞬間を作り上げること。たった今、私の目的は達成せしめられた・・・・・」

 

 

満足げにそう語った茅場はゆっくりと広場を一望する。

 

 

「それでは長くなったが、これでソードアート・オンライン正式サービスのチュートリアルを終了とする。プレイヤー諸君、健闘を祈る」

 

 

言い終えると、巨大なアバターは耳障りなノイズを立てながら崩れ去っていった。同時に空を覆っていた紅い表示も一瞬にしてなくなり、霞みがかった夕暮れの空が視界に戻ってくる。しかし不気味な演出が消え去っても、広場を支配する言い知れぬ不安だけは決して消えることはなかった。

 

 

泣き崩れる人、怒鳴り散らす人、座り込んで動かない人と様々だった。俺もそうなってもおかしくなかっただろう。現に足が震えている。しかしこの世界(デスゲーム)に閉じこめられたと知った瞬間、向こうの世界にいる両親と小町の姿が思い浮かんだ。そして恩師である平塚先生の姿。そして映像に映っていた雪ノ下さんが。

 

 

そして先ほど見つけた()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。再び見てみると葉山は皆を宥めているが、女性陣は泣いている。特に由比ヶ浜が声を挙げて泣いている。その光景に思わず手を固く握り締める。

 

 

家族の元へ帰らなければ、彼奴等を生き残らせて無事に帰さなければならない。俺は静かに決意して足の震えを止めた。彼奴等と俺の現状を考えれば関わる訳にはいかない。戸塚に会えないのは寂しいが。

 

 

ふと、周りを見るとこの場を離れていく人が何人かいた。その中に俺がコツを盗み見した奴の装備を着た奴がいた。装備からしてキリトと言う奴だ。クラインと言う奴がいないということは別れたようだ。彼奴は間違いなくβテスターだろう。彼奴を追えば生き残れる可能性がぐんと上がる。俺は後を追いかけようとした時、隣から声が掛かった。

 

 

「待って下さい」

 

 

「・・・・何だ?」

 

 

「私達も貴方に付いて行っていいかしら?足手まといにはならないから」

 

 

そんな言葉に俺は静かに言う。見捨てる選択もあったが、そんな事をすれば小町に、家族に、奉仕部の彼奴等にも顔向け出来ないからな。

 

 

「・・・好きにすれば良い。ただ、面倒は見ないからな」

 

 

「分かったわ。それと、出来ればプレイヤーネームを教えて欲しいんだけど良い?」

 

 

「・・・・・《ヤハト》」

 

 

「ありがとう。よろしくヤハト君」

 

 

「よろしくお願いします。ヤハト」

 

 

そんな言葉に軽く頷き、俺は2人とキリトの後を追いに広場を出た。未だ混乱している彼奴等の事を尻目に。

 

 

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