整合騎士達と捻くれ者のソードアート   作:ゆっくりblue1

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今回は現実世界での動きです。そしてボス戦ですが、長くなりそうなので序盤から大幅にカットしました。期待していた方には申し訳ありません。次回は超低クオリティの戦闘描写になります。


現実

んんっ・・・・・朝か?日の光が目蓋越しに見えて眩しい。そして何か柔らかいものに触れてるような・・・一体何だ?

 

 

俺は疑問に思いながらもゆっくりと目を開く。すると目の前には一面肌色だった。そして何か吐息が聞こえるが何なのかが分からない。ん・・・何だこれ?

 

 

何かも分からないので迂闊に動く訳にもいかず、視線だけを動かすとそこには完全に予想外の光景があった。

 

 

「んんっ・・・・すぅ・・・すぅ・・・」

 

 

何故か隣で白いワンピースを着たアリスの寝顔があったのである。・・・・ちょっと脳内のキャパシティを超えたわ。何これどうなってんの?俺は若干、否かなりテンパって目の前に映るアリスの顔から目を逸らして反対側に顔を向けると。

 

 

「・・・・・すぅすぅ・・・・」

 

 

反対側にはイーディスがいた。・・・・何でこうなったんだ?昨日は俺はアリス達と話していて途中で寝てしまった筈。俺は昨日の事を思い出して思考がほんの僅かに冷静になった時、俺の右横で寝ているアリスが目を覚ましたようで声を掛けてきた。

 

 

「・・・・・おはようございます、ヤハト。よく眠れましたか?」

 

 

「・・・・あ、ああ、眠れはしたんだがな。如何して2人が隣で寝ているのか説明をくれないか?」

 

 

俺が若干テンパりながらもそう聞くと、アリスは寝起きなのかとろんとした柔らかい瞳で俺を見据えた。鼓動が速くなった気がするが、態度には出さないように努める。そしてアリスが静かに言った。

 

 

「昨日、貴方が部屋で眠った後に私達は部屋に戻ろうとしたのですが、貴方の事が心配だったので此処で就寝させてもらいました」

 

 

どうやら心配を掛けていたようだ。アリスの言葉にどう返せばいいのか考えているとアリスは俺の頰を触れる。俺は驚いて身を硬直させるが、アリスは頰を撫でながら完全に目を覚ましたのか、凛とした瞳を向けてゆっくり言った。

 

 

「・・・ヤハト、絶対に独りで抱え込まないでください。何かあれば私達が支えますから」

 

 

俺はその言葉に戸惑いながらも頷くと、アリスはふっと微笑んで頷き返して身体を起こして立ち上がると未だ寝ているイーディスを起こし始めたので俺も身体を起こして立ち上がると装備を着て、顔を洗いに洗面所に行った。

 

 

この世界では顔を洗わなくても目脂といった汚れは付いていないので顔を洗う意味はないのだが、習慣になってるので洗いに行く。習慣となった動きは、それが些細であってもそうではなくても中々抜けないものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ・・・」

 

 

授業に身が入らない。先生に当てられた時も気が付かない場合が多くなった。同級生の友達からも心配されているのだが、言ったところで何かが変わるわけではないので、何でもないと言って話題には出さない。

 

 

お兄ちゃんが《ソードアート・オンライン》に閉じ込められてから1カ月が経った。最近、奉仕部の方でも一悶着あって色々と悩んでいる様子だったお兄ちゃんが修学旅行の事で色々あったんだろうなと思って事情を聞き出そうとした。

 

 

しかし、如何しても話そうとしなかったお兄ちゃんに食い下がり、その結果喧嘩となった。そして喧嘩となって双方共に口数が減ってしまった。そのまま日々は過ぎていき、ある時期になってお兄ちゃんがまた悩んでいる様子だったのでやはり普段は家でダラダラして休日には子供番組を見たり、ラノベを読む時、たまに『フヒッ』と気持ち悪い声を洩らしてしまう兄だが、やはり自分にとっては唯一無二のお兄ちゃんなので私は喧嘩した状態から仲直りしてお兄ちゃんに話を聞いた。

 

 

お兄ちゃんは奉仕部に生徒会選挙のことで依頼が来て、雪乃さんが立候補してしまい、奉仕部の関係が崩れてしまうことを恐れていた。結衣さんも敏感に察知してそうさせないように動いてはいるみたいだが、著しくないのでお兄ちゃんはどうしたら良いのか相談しにきたらしい。いや、正確にはお兄ちゃん自身が動くに値する理由が欲しかったようだけど。普通ならそれは自分自身で見つけなきゃいけないのだが、過去に色々あった所為か、物事に対して何か裏があるのでは?と常に疑って理屈や理由を探してしまうスタンスになったお兄ちゃんは行動するのにも理由を求めてしまう。ただ、こうしたいからと、自分自身の願望を出すことを恐れてしまったのだ。

 

 

紆余曲折があって生徒会選挙の依頼が解決したようだが、奉仕部の空気は重いままでお兄ちゃんの様子も余裕がない。お兄ちゃんにとってあの空間は自分自身を許容してくれて自然体でいることができる空間だった。あの空間を今の兄が喪ってしまえば中学のあの頃以上になってしまうだろう。

 

 

しかし、考えてみれば小町達にも原因はある。勝手に休日に予定を入れて千葉村へ連れて行ったり、義姉ちゃんと騒いでは雪乃さんや結衣さんと一緒にお兄ちゃんを振り回していた。お兄ちゃんが優しいだけで本当は嫌だったかもしれない。

 

 

それに雪乃さんや結衣さんも少しはっきりしていない。お兄ちゃんにあれ程のダメージが残るような言い方をしてしまったら仲が崩壊してしまうのも頷ける。結局修学旅行の原因を聞いてないので原因を知りたいところだ。

 

 

そうして身の入らない間々授業を終えて、お兄ちゃんの入院している病院に面会に行く。お父さんもお母さんもなるべく様子を見に来ているようで、偶に一緒に行くことがある。いつもお兄ちゃんを放っておいているが、本当はお兄ちゃんのことを大切に想っていてゲームの中に閉じ込められたことを知った時は2人とも泣いていた。

 

 

お兄ちゃんの病室に入る。お兄ちゃんは今も目を覚ます様子もなく横たわっている。1カ月が経ったからか少し痩せているように見える。私はお兄ちゃんの隣に椅子を置き、お兄ちゃんに話しかける。

 

 

「お兄ちゃん、今如何してる?もうクリスマスも近いよ。雪乃さん達にはもう会えた?」

 

 

語りかけてはお兄ちゃんの手を握って、生きていることを確認するようにしている。ちゃんと手に血流が回っていてじんわりと暖かい。

 

 

「・・・・・早く、帰ってきてよ。お兄ちゃんがこのままだったら受験にも集中出来ないよぉ・・・・・」

 

 

嗚咽を堪えて言っていると、ノック音が鳴った。看護師さんだろうか。そして入ってきた人物を見て言った。

 

 

「・・・・陽乃さん」

 

 

「・・・・・今良いかな?小町ちゃん」

 

 

明るい様子はまるで消え去ったかのような様子で挨拶する元気もないのか、儚くて仄暗い微笑みを向けて来た。

 

 

今回の事で1番ダメージが大きかったのは陽乃さんと平塚先生だった。ナーヴギアを雪乃さんや結衣さん、戸塚さんや沙希さん達といったお兄ちゃんの知り合いに配ってゲームさせてしまったから。死地に送り込んでしまったと自責の念に駆られて、陽乃さんは3日間、部屋から出て来られなかったらしく、何も喉を通らない状態だった。平塚先生も相当参ってしまっていて、実家に帰って休養を取っている。そして陽乃さんは外には出られるが、全く覇気がなく、目にも隈が出来ている。

 

 

私達は会話もなく、近くのカフェに行って席に着くと、陽乃さんがメニューも頼まずに話し始めた。

 

 

「小町ちゃん、今回貴方の知り合い全員があの世界に閉じ込められてしまったでしょ?」

 

 

「はい・・・・」

 

 

「それで、私達雪ノ下家もソードアート・オンラインとナーヴギアの開発に関わってるから手を尽くして外部からの侵入でログアウトさせようとしているんだ。その過程でゲームの中の様子を見ることが出来たの」

 

 

私はその言葉に思わず、本当ですか!?と立ち上がって聞いた。陽乃さんは頷く。店員さんがこっちに来て注意してきたので、すみませんと恥ずかしくなりながら、もう一度席に座ると陽乃さんは話し出す。

 

 

「それで比企谷君は今も無事に生きていて、小町ちゃんは意外に思うだろうけれど彼はゲームの攻略をしようとしているんだ。しかもレベルはトップクラスでね」

 

 

その言葉に対して私は意外には思わなかった。お兄ちゃんは嫌々と面倒臭い様子を見せながらもやる時はきっちり結果を残すからだ。お兄ちゃんが行動する時はやるべき目的がはっきりしているときだ。私は何処か嬉しく思いながら、ふと気になったことを聞いた。

 

 

「お兄ちゃんの事は分かりました。それで何ですけど、雪乃さん達とは一緒に行動していないんですか?」

 

 

「うん、一緒に行動するどころか一度も接触することすらないかな。雪乃ちゃん達は混乱状態から抜けるのが遅かったのか攻略には参加してないし」

 

 

無理も無い。ゲームの中で死ぬと現実世界の自分自身も死ぬなんて、こっちと全く同じだ。いや、モンスターと戦う事になるのであっちの方がもっと怖いはずだ。陽乃さんは続けて言った。

 

 

「それに、雪乃ちゃんは良いんだけどガハマちゃんが1週間前まで引き篭もっていたから、かなり出遅れてるみたい。隼人達のグループの中にも最近までモンスターと戦うことが怖くてフィールドに出られない子が居て戦わない期間が長かったから」

 

 

雪乃さん達の詳細な動きは分からないけど、グループのメンバーの中に1人でも精神が参ってしまっている人がいると何かの拍子に崩れて、そこからグループが瓦解してしまう可能性は十分にある。だからそれを避ける為に戦う機会を少なくしていたのだろう。

 

 

それにしてもお兄ちゃんと雪乃ちゃん達の空気が悪いとはいえ一度も接触すらないとは思わなかった。それにお兄ちゃんは1人で行動していたのだろうか?いくらお兄ちゃんが1人が好きだとしてもこのゲームは完全に初心者なので誰かと一緒に行動していると思うんだけど。陽乃さんにお兄ちゃんと行動を共にしている人がいるか聞いてみる。

 

 

「比企谷君と共に行動している人は2人だね。しかも2人共女性で初日から行動を共にしているみたい」

 

 

「それは本当ですか!?」

 

 

私は驚き、事実かどうか再度陽乃さんに確認する。陽乃さんが頷くので驚きが隠せない状態のままで私は考える。お兄ちゃんが女性と、しかも2人もいる状態で行動している?余程の事がなければ、あの兄のことだ。美人局とかなんとか言って逃げるはずだ。そうでなくても今のお兄ちゃんは雪乃さん達とギクシャクしていて、人と行動を共にすることはし難い状態だ。私はその2人の女性について聞くが、陽乃さんは首を横に振った。

 

 

「流石に個人情報までは政府とかから緘口令が敷かれていて未だ掴めてはいないんだ。でも、少なくとも比企谷君はリスクリターンの計算は正確だから大丈夫だと思うよ?」

 

 

「まあ、うちの兄はヘタレですからね・・・・」

 

 

私は欲しい情報を貰って整理して考える。雪乃さん達と一度も接触すらないなんて、それどころか知らない2人の女性と行動しているとは流石の小町も予想していなかった。話しを一度区切ってコーヒーを注文して、コーヒーを飲んで一息ついた後、陽乃さんが再度話し出す。

 

 

「そういえば小町ちゃん、修学旅行で何があったか聞いた?」

 

 

「・・・・いえ、殆ど聞いてません。やっぱりお兄ちゃんに何かあったんですね」

 

 

陽乃さんは、私の答えを聞くとお兄ちゃん達の修学旅行の出来事を話し出す。お兄ちゃん達が受けた依頼、振られない告白の支援、グループの現状維持。そしてその上でのお兄ちゃんへの雪乃さん達からの解消法否定。まあ雪乃さん達に何か言われて落ち込んでいたのは察しはついてた。私は長考する。お兄ちゃんの方法を考慮して、雪乃さん達の言動を知って、グループの依頼者の依頼を吟味して。

 

 

そして私はゆっくり陽乃さんに言った。

 

 

「・・・・・・お兄ちゃん達は依頼を受けるべきじゃなかったですね。元はと言えばグループの恋愛事情ですし、結衣さんも応援したいのは分かるけど、この依頼は絶対に受けない方が良かったです。最初に依頼してきた戸部さんも恋愛に関して振られない告白の支援とかふざけてんのかと思いますし。海老名さんって人もグループの現状維持を関係の無いお兄ちゃんや雪乃さんに頼むなって思います。葉山さんに至ってはリーダーなら自分で責任を持てって言いたいです」

 

 

「お兄ちゃんは何でもかんでも1人で抱え込みすぎだし、雪乃さんも出来ることが殆ど無い事が分かっていた筈なのに結衣さんに流されて受けちゃいけないのに受けるし、結衣さんは受けたのは自分なのに殆ど何も出来ないでお兄ちゃんの解消法を聞かずに否定してしまうし」

 

 

お兄ちゃんの嘘告白で動揺して言ってしまったのも分かるし、どんな思いで言ったとかも想像出来る。そんな方法を取ったお兄ちゃんも悪いとは思うけど、でもそもそも依頼に反対していたお兄ちゃんを振り切って受けた依頼だ。それを受けた雪乃さんと結衣さんはお兄ちゃんが如何してそんな方法を取ったのかを最初に聞くべきだった。最初から否定してはいけなかった。

 

 

「もしも依頼を無事に終えてたらどうなっていたんでしょう・・・・」

 

 

私はやがて呟くように言うと陽乃さんはカフェの外を眺めながら言った。何処か落胆してつまらなそうな声で。

 

 

「・・・・多分、遅かれ早かれこうなってたんじゃ無いかな?生徒会選挙で比企谷君は修学旅行の時と同じような方法を取りそうだもの。まぁ、取らなかったにしても今まで通りにはいかなかったと思うなぁ」

 

 

何で、そう言い切れるの?何で、そんなにあの3人の関係を淡々と怒ったような或いは憎んだような言葉を言うの?私は陽乃さんの言葉に驚きと僅かな怒りを抱きながら聞き返した。

 

 

「・・・・・どういうことですか?」

 

 

「それはね、あの3人は互いに依存し合っているからだよ。雪乃ちゃんはガハマちゃんと比企谷君に、ガハマちゃんは雪乃ちゃんと比企谷君に、そして比企谷君は雪乃ちゃん達と言うよりは奉仕部で作られた空間に、かな」

 

 

「・・・・でもそれはある程度だったら仕方ないことじゃないですか?」

 

 

私の抵抗じみた言葉を陽乃さんは私の方に向き、覗き込むようにして見る。私は心臓を絶対零度の手で鷲掴みにされたように身体を硬直させる。まるで指1本ピクリとも動かせない。陽乃さんの瞳の深淵にあるどろどろした何かが蠢いていた。そしてゆっくり、何処までも平坦な声で、だけれども何処までも冷たく言った。

 

 

「・・・・・ある程度じゃないから駄目なんだよ。特に雪乃ちゃんの場合は。雪乃ちゃんの本質は依存だからね。1番マシなのはガハマちゃんかなぁ。だけどあの子も我儘だから・・・・」

 

 

「比企谷君は雪乃ちゃん達には本当に勿体無いよ。もしもあの子が私と同い年だったら絶対に、ぜーったいにーーーーーーーーーーーー逃がさないのに♡」

 

 

雪乃ちゃんは見限っちゃったんだから。と陽乃さんは笑いながらそう言った。私は思わず身ぶるいしてしまった。この人は本当に3日間引き篭もっていた陽乃さんなのか?家族、それも妹に向ける言葉ではなかった。同じ人間とは思えない。お兄ちゃんが陽乃さんを魔王と言っていた理由がわかった気がする。

 

 

私はそれ以降コーヒーを唯、喉に流し込む作業をして会計(陽乃さんの奢り)を済ませた後にそのまま家に帰って行った。雪乃さん達のお見舞いに行く余裕は今の私には有りはしなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー『死』ーーーーーについて考えたことはあるだろうか?

 

 

寿命での衰弱死や病気での死、或いは事故や事件に巻き込まれたことによる死、そして自決による自害の死。幸福、喜び、安堵、悲しみ、憂い、哀れみ、焦り、諦め、憤り、怒り、憎しみ、恐怖、嫉妬・・・・・様々な感情が見え隠れするだろう。

 

 

そしてそれを感じる人間は残された側の人間だ。先に逝ってしまった人間には決して分からないものだ。そして残された人間には少なからず影響があった人間が死んだ時、どんな影響があるか。良い影響か悪い影響か、それともーーーーーーーー

 

 

パリィンとガラスが割れたような甲高い不快な音がなる。普段ならそこまで不快に思わない音でも・・・・今回だけは・・・身の毛がよだつほど身体が不快感を示した。

 

 

「・・・・・ッ」

 

 

「・・・・・ディア・・・・ベル・・・・」

 

 

思わず、息を飲んだ。呆気ない死を証明する音と青いプログラムの残骸、こうも呆気なく死を迎えると思い知らされる。何も残らず、生きた証があったのかどうかも定かではない程曖昧に感じる。最初から何もない。死体、其処で死んだという証明する視覚情報がない。覚悟していた筈なのに肝心なところで身体が動かなくなる。

 

 

そして俺は恐怖という感情がせり上がる。此処で死ぬという恐怖。残された家族へ何も言えずに、何も残せずに死んでしまう恐怖。彼奴等に此処にいたかどうかも知られないで消えて青いポリゴンエフェクトに還るかもしれないという恐怖。

 

 

恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖恐怖ーーーーーーーーーーーーー

 

 

目の前が歪み、剣を握っているのか離しているのか、立っているのか座り込んでいるのか、表情が動いているのか動いていないのか、身体のあらゆる所がぼやけて何も感じない。感じられない。

 

 

『君、不真面目で最低だね』

 

 

『君が傷つくことを痛ましく思う人間がいることにそろそろ気付いた方がいい』

 

 

・・・・・・・・何も、感じない。

 

 

『どうしてそんなやり方しか出来ないんだッ』

 

 

・・・・・・・・何も、動かせない。

 

 

『・・・・小町が相談に乗って上げようと思ったのに、もう勝手にすれば?』

 

 

・・・・・・・・何も、思えない。

 

 

『貴方のやり方、嫌いだわ』

 

 

『もっと人の気持ち、考えてよ!』

 

 

・・・・・・・・・・・・・もう、何も聞こえない。何も見えない。

 

 

何も、何も何も何もナニモなにもナにも・・・・・・・・ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

『貴方を知りたいのです』

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・何も感じない、何も出来ない、何も動かせない、何も聞こえない、何も見えない筈なのに。

 

 

 

 

 

 

 

『こっちから行く事にするよ』

 

 

 

 

 

 

何かが入り込んでくる。真っ白か真っ黒かも分からない目の前に金色の長髪と灰色の長髪が見える。そして蒼い瞳と紅い瞳がこっちを見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

『『未だ終わってないでしょう(よ)』』

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・俺に期待なんてすんな。お前らを守ることは出来ねえよ。

 

 

 

 

 

 

 

『自分で自分の身は守ると言ったでしょう?』

 

 

『それよりもヤハト君は前を向いて、闘って欲しいんだけど』

 

 

 

 

 

 

 

 

前を向いて闘え、とか強者の理論だろう。俺みたいな陰湿で、卑怯で、最低なぼっちには無理だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『陰湿で、卑怯で、最低なやり方でもいいです。貴方のやり方でやって下さい』

 

 

『前を向いて闘えるなら、それでも良いんじゃない?私達は君を否定しないんだし』

 

 

 

 

 

 

 

 

良いのか・・・・?そんなやり方でも・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

『ええ』

 

 

『うん』

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・分かった。陰湿で、卑怯で、最低なやり方でやってやる。ヒーローなんざ俺には力不足で出来ねえし、この状況を切り開けるご都合主義みたいな力もないが、せめてヒール役は担ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒールと言う配役は俺の、比企谷八幡の、十八番なのだから。ぼっちの俺なりに抗わせてもらうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朧げな感覚が鮮明になってきた。脚に、腕に、剣を持つ手に力が入ってきた。目の前の敵ーーーーー《イルファング・ザ・コボルドロード》を泥々と濁った瞳で睨みつけるように見据える。それと同時に深紅の瞳で俺達プレイヤーを睨め付け、腹の底から雄叫びを上げた。

 

 

『グルガアアアアアアアァァァァッーーー!!!』

 

 

未だ戦いは終わってない。俺は今も茫然としているキリトの前に立つ。それにキリトは反応した。

 

 

「ヤ・・・・ハト・・・?」

 

 

「茫然と突っ立ってるだけなら引っ込んどけ。邪魔だ」

 

 

「そ、それh「突っ立ってる間に他の奴らもディアベルの二の舞になるぞ?」ッ!」

 

 

「お前はディアベルに託されたんだろ?凄え自分勝手な頼みだがな」

 

 

ボスに単身で突っ込み、レイドの連携を崩して、そして今現時点でこの場を混乱と恐怖の渦中に突っ込ませて死んでいったディアベルに、ボスを倒してくれ。と自分では無理だからその役目をキリトに押し付けた。

 

 

「そんな役目は俺はごめんだね。だから俺のやり方であの敵を倒す」

 

 

そうしてキリトに振り向く。キリトはゆっくりと立ち上がって剣を握る。そして俺の腐った眼を力強く見返して言った。

 

 

「俺も、死にたくないから・・・・生き残りたいから、闘う。闘って、勝って元の世界に帰るんだ!」

 

 

そして俺の横に並び立つ。するとその更に隣に紅いフーデットケープのフェンサー、アスナが、そして俺の左隣りにグレーのフーデットケープから覗かせる金髪蒼眼の少女、アリスと灰色の髪の紅眼の少女、イーディスが立った。

 

 

「私も闘う。パーティーだし」

 

 

「仲間を支えるのがパーティーですからね」

 

 

「支えるけどあんまり無茶はしないでよー?サポートが大変なんだから」

 

 

ボスを見据えながら言う女性陣に苦笑しつつ、俺はキリトに視線をやる。キリトは頷いて深呼吸をした後、力強く宣言した。

 

 

「・・・行くぞッ!」

 

 

そう言った瞬間に俺達はボスに向かって全身全霊を掛け、駆け出した。

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