セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 プレイ済みでも何の話をしているかわからないかもしれません。
 10話くらい読み進めれば違和感はなくなると思いますので、よければお付き合いいただければと思います。


「バトルネットワーク ロックマンエグゼ」編+過去編
-X話 あるいはつけもの


西ニホンにおいて、古風を観光のウリとする都市――コートシティ。

そのとある屋敷、薄明るく広い寝室に、突如として声が響き渡る。

 

「お疲れ様でしたぁ!」

 

パソコンに接続された携帯情報端末・PET(パーソナルターミナル)……に更に接続されたゲーム用コントローラを、少年はその言葉と共に放り出した。

椅子の背もたれと肘掛けに体重を預け、天井を仰ぐ。長時間パソコンに向かっていた少年は目がしょぼしょぼするのを感じ、目元を指でこする。

モニタにいくつも表示されているウィンドウの1つ、銀行口座のページが視界の端に映り、大きなため息をつく。

口座名義には少年の名前、"七代渡(ななだいわたる)"とある。その預金額は、実に10桁に達していた。

 

「よ~~やく10億ゼニーか。リアルタイムやとこんなにかかるんやな。ゲームとちゃうとはわかっとったけど、飛び級したったのに時間カツカツってなんやねん」

 

画面の中、電脳世界には、大昔の人が考えた未来人を思わせる、今どきでは滑稽とも言えそうなデザインの人型――疑似人格プログラム"ネットナビ"が直立している。

本来オペレータたる渡と対話する存在でありながら、その言葉に対してうんともすんとも言わない。

 

(あー、もう夜かあ。飯食うんもめんどくさいな。寝る前に戦利品の出品もしたらんと……)

 

やや間を置いて、ピピピ……と、PETのアラーム音が鳴り、椅子の上で液状化しかけていた渡は正気を取り戻した。

PETを手に取り、届いたメールを開く。

 

(三通も来とるわ。一件目は……予備校の宣伝、削除。二件目は……兄ちゃんか。なになに)

 

『渡へ 送付してもらった実験結果の確認ができた。なんとか、修士卒論も目処が立ったといえるだろう。これでしばらく余裕ができたから、今度一緒に飯でも食いに行こう。 二階堂哲生(にかいどうてつお)より』

 

(研究はうまく行っとるみたいやな。しかし、家庭教師が生徒にたかるのはマジでどうにかならんのか……で、三件目。よし、熱斗の定期メールやな)

 

東ニホンに住む小学生、光熱斗(ひかりねっと)。数年前にインターネット上でネットナビを通じて知り合った。

年齢が同じで、趣味も合い、今の所仲のいいメル友をやっている。

 

("hasso(はっそー)へ。今日はどんなことがあった?オレは学校でデカオとネットバトルを……"いつものやな。テキトーに返しとくか)

 

眼精疲労に目を細めながらも、渡は近況をしたため始めた。

 

『光くんへ。僕は今日も一日中家で勉強とゲームばかりしていました――』

 

 

……

 

 

同日の深夜、ニホンから海を越えた、遙か北。

インターネット分野で他国に遅れを取り、それが原因で経済的にも衰退しつつある小国、クリームランド王国。

 

その政府の中央データベースに直結するネットワークに侵入した影が一つあった。また、対して立ちはだかる影も一つあった。

 

「我が国の最高セキュリティを全てくぐり抜けてきたとは……そなたは何者だ」

 

後者、巨岩のごとき体躯の重装騎士型ネットナビが誰何し、

 

「クラッキング郵便です。お手紙とナマモノをお届けに上がりました」

 

前者、全体的に細長いシルエットの人型ネットナビが答える。

 

「このナイトマンが守る、クリームランドの中枢と知っての狼藉であろうな!」

「お届けまでに25分頂きました」

 

ナイトマンはすぐさま左腕の先端からトゲつきの鉄球を発射。サイズは実に、直径が侵入者の身長と同じかそれ以上。

侵入者はそれを横っ飛びでかわし、右腕を光の剣へと変化させる。

 

「バトルチップか。少なくとも野良のナビではあるまい、どこの者だ」

「クラッキング郵便です。印鑑かサインをお願いいたします」

 

ナイトマンに向かって駆け出す侵入者。対して、ナイトマンは最初の位置から動かない。

 

(うつけめが。それがしのストーンボディに、ただのソードなど通じぬわ)

 

特定の性質を持たない攻撃によるダメージをほぼ無効化する体質、ストーンボディを利用して、反撃の準備に移ろうとしていた。

侵入者が跳躍し、素早く剣を振りかぶる。が、タイミングが早すぎて、空振りに終わる。

 

「かかったな、喰らえ!ロイヤルレッキング――がああっ!?」

 

ナイトマンが再び左腕に力を込め、鉄球を振り回そうとした、その出掛かりで。

空振りした勢いに任せて一回転した侵入者が、両手に握った緑色の大鎚で右肩を粉砕していた。

ストーンボディの防御を貫く特別な性質"ブレイク性能"。この緑色の大鎚、バトルチップ"ガイアハンマー3"は、それを持つ内のひとつだった。

 

(腕ごと、だと!これまでここを守り抜いてきたワタシが、このような得体の知れぬナビなどに!?)

「開封後は早めにお召し上がりください」

 

侵入者は持っていたハンマーで続けてナイトマンを打ち据える。一撃ごとにナイトマンの体が砕け、とどめと思われたその時、ナイトマンの姿が光となって消えた。

 

「……不在か?」

 

身構えて左右を見回す侵入者の前に、通話ウィンドウが現れる。その主は、目元に果てしなく深いクマができている少女。

病に臥す両親に代わって自国と民のために激務をこなす現王女、プライドその人だった。

 

「クラッキング郵便です。お手紙とナマモノをお届けに上がりました」

 

間髪入れず、侵入者が再び業務応答を開始する。少女はその内容を一切心に留めず、ナイトマンに代わって意思疎通を試みる。

 

「ナイトマンはプラグアウトさせました。まずは話し合いましょう。あなたの要求はなんですか?」

「時間を稼いで通信経路を閉じても無駄ですよ。25分の間に、バックドアをしこたま用意しましたから」

「!?」

「お手紙とナマモノ、確かにお届けしました。サインは結構です。またのご利用、お待ちしております」

 

侵入者もまた、ナイトマンと同様に姿を消した。

侵入者がいたところには、文書データが1つと多額の現金(キャッシュ)データが残されていた。

 

 

数日後。クリームランド王国政府は、姿も国籍も明かさないという1人のインターネット分野アドバイザーを、更にリモート勤務を条件に雇い入れた。

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