セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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この作品は1話あたり2000~3000字を目安にするつもりだったのですが、最近やけに長くなってしまっていけないなと感じています。
つまり、今回は短めです。


9話 黒い眼差し

(うまくいっとるか確認できへんのが残念やな。まあ、明日の楽しみにしとくかねえ)

 

トイレに行ってしばらく待ってから、姿勢を低くして抜け出し、カウンターでテーブル番号を指定して追加注文と精算を済ませた後。

渡は来た道を引き返し、再び骨董品屋までやってきた。

 

「こんにちは」

「……もう来たのね」

 

他に客はおらず、みゆきは、じっ、と渡の目を見つめる。対して渡はわずかに視線を逸らし、店内の奥へ逃がす。

 

「それで、僕は何をすればいいんでしょうか? 無理そうならやっぱり差額分お支払いしますが」

「あなたは……何者なの?」

「は? 何者? あ、自己紹介か。えーっと、コートシティから来た七代渡です。よろしくお願いします」

「違う……」

 

ふるふると小さく頭を振るみゆき。

 

「あなたのナビの魂は、ここにある骨董品の魂にとてもよく似ている。ネットナビには珍しいこと」

「あー、それは、まあ。僕のナビもある種骨董品ですから、そういうことでしょうか」

(なんでナビの話に飛ぶねん)

「そう。だから輝いているのね。でも、あなたは? わたしより一回り小さい子供のはずのあなたの魂は、既に大人のように形を決めている」

「子供っぽくないってことですか? そのくらい、たまにはあるんじゃないでしょうか」

「どうして嘘をつくの?」

「嘘って……」

(転生者やからか? 中身が大人(だと)わかる言うんか?)

 

七代渡として生まれてから、人付き合い自体が少なかったせいもあり、このように何かを見透かされるのは初めてのことだった。何より、自分の正体を隠し続けなければならない立場として、渡はみゆきの詰問に少なからずショックを受けた。

二の句が継げない渡に、みゆきがさらに問いを投げかける。

 

「それだけではないわ。あなたの魂は力を求め、乾いている……淡いようで、あまりに大きな欲望。一体、その先に何を望んでいるの?」

「……いい加減にして下さい。お金なら払いますから」

「スカルマン」

 

渡はもう、さっさと切り上げて帰りたかった。しかし、みゆきが小さくナビの名を呼ぶと、入り口の引き戸からガチャッという音がした。

顔色こそ変えないが、渡の内心の焦りは徐々に募っていく。みゆきの圧が強くなっていくような気がした。

 

「僕なんか、取るに足らない人間でしょう。ここまでして、取り調べみたいなことをする必要があるんですか?」

「聡いのに。"取るに足らない子供"とは言わないのね」

「……」

 

渡は叱られる子供のように動けず、みゆきの吸い込まれるような眼差しを見返すばかり。

底冷えとは言わないまでも、汗が引っ込むような空気の冷たさを感じていた。

互いに言葉を発さず、数秒が過ぎたところで、みゆきの口元がふっ、と緩む。

 

「……ごめんなさい。大人気なかったかしら。"子供"相手に」

「……」

(皮肉で言うとるんか? "大人げない"とかけとるんか?)

「でも、もういいわ。わかったから」

「……わかった、とは?」

(どっからどこまでや?)

「……」

 

渡の質問に、みゆきは謎の笑みを浮かべるだけで、答えなかった。

 

(……こんなこと想定しとらん。マジの霊能力者かなにかやったんか? 出番が少ない相手やからと、情報の少なさに油断したこっちが悪かったんか?)

 

みゆきが畳敷きから出て、渡のすぐ横へ歩いてくる。

 

「あなたのことを探る必要はなくなったわ。だからこれは、単純な興味……」

「どういうことかわかりません」

「値引きの代わり。あなたの連絡先で手を打ちましょう」

「……嫌――」

 

入り口の引き戸は電子ロックがかかったままということを思い出す。

 

「――とは言えない状況ですよね。いいでしょう」

(ほぼ脅しというか、エウリアンとかとやっとること同じやんけ)

 

お互いPETを出し、連絡先を登録し合って。

 

「ありがとう。これからよろしく――」

「っ」

 

みゆきがそっと手を伸ばし、渡はそれを受け入れるでも弾くでもなく、かわす。

触れてしまえば、本当に何もかも知られてしまうような直感があった。そんなはずはないと思いつつも、半ば生理的な嫌悪から来る行動だった。

 

「もういいでしょう。鍵を開けてください」

「……いいわ。だってもう、わたしとあなたは繋がっているもの」

 

PETを軽く振ってみせ、静かな笑みをたたえるみゆき。解放されるようなされていないような状況に、渡は嘆息する。

 

(なんでボスキャラでもない奴にこんな神経使わなあかんねん……)

「スカルマン」

 

再びナビの名を呼ぶと、引き戸から解錠音がして。

 

「お邪魔しました」

「また、いらっしゃい」

 

渡は出がけに、引き戸を勢いよく閉めた。

 

この日、渡は、父の使いの分の骨董品を買うのを忘れていたのだった。




黒井眼差し。

今回もアンケートがありますが、8話のアンケもまだ生きています。
未投票の方はそちらもお願いします。

今後の内容(票数多い順に消化?)

  • 日暮先生のバトルチップ経済学
  • 渡の一日
  • 二階堂師匠
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