セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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世界観の補完回です。比較的長いです。
飛ばしても多分無問題ですが、アンケートもあるのでそちらにご用の方はスクロールしてください。



10話 ヒグレヤで学ぶバトルチップ経済

"不要なバトルチップを指定枚数入れると、ランダムなバトルチップが1枚排出される"――

これまでありそうでなかった、バトルチップトレーダーなる抽籤機だ。略称はチプトレ。

考案者は日暮闇太郎(ひぐれやみたろう)という自営業の男性で、自身もバトルチップコレクターが高じてショップを開くに至っている。

 

チップショップ"ヒグレヤ"には、お金を出してチップを買う用はないが、不要になったチップをくじ引きで処分しに来た、という客もよく来る。

光熱斗などは、特に頻りにやってくる。

 

ちょうど今日も、熱斗は溜まったチップを突っ込もうとやってきたのだが、店に入ると、店主の日暮と話し込む渡の姿が見えた。

熱斗に何も言わず秋原町までやって来ることは度々あったが、その時も結局向こうから熱斗に接触して来るので、このように姿を見かけるのは初めてのことだった。

 

「お、熱斗くん。いらっしゃいでマス」

「こんにちは、光くん」

「こんにちはー」

 

チプトレを回すのに店主へ確認を取る必要はないのだが、気になって、熱斗は二人の方へ歩いていった。

 

「何の話してたの?」

「チップの相場の話でマス。コレクターとして、ショップのオーナーとして、アンテナを張るのは大事なことでマスからな」

「最近、海外産のチップが値上がりしてますから。余計に動向から目を離せないらしくて」

「チップの値段が上がるの? なんで?」

「……」

「……」

 

渡と日暮は顔を見合わせると、互いに頷いた。

 

「いい質問ですね。こちらへどうぞ」

 

疑問符を頭の上に浮かべた熱斗を店内のトレードスペースに誘導し、パイプ椅子に座らせる。日暮はその対面に座り、渡はその隣に座った。

 

「え? え?」

「熱斗くん……高いバトルチップは、なぜ高いんだと思うでマスか?」

「そりゃ、強いとか、レアだからとかじゃないの?」

「50点、ってところでマスな。流石熱斗くん、算数のテストに比べてこっちの方が理解度が高いでマス」

「そ、その話はいいでしょ! だったら、残りの50点はなんなのさ!」

「"レアなチップ"とはどういうチップか、ということを説明できていれば100点でマス」

 

熱斗の目が点になる。

 

「レアなチップとはどういうチップか……? レアって、珍しいってことでしょ?」

「手に入りにくいチップは珍しい、珍しいから高い。ざっくり言うとそんなところですが、ここは友達としてひとつ、講義しましょう」

「講義って、勉強かよ!?」

「まあまあ。熱斗くんも、ネット商人が売っているチップがやけに高いと思ったこと、ありませんか?」

「そりゃ、あるけど……」

「それが不当に高いのか、本当に価値があって高いのか。見抜けるようになれば、お小遣いの節約にもなりますよ」

「う、うーん……じゃ、聞こうかな」

 

いつになく目を輝かせる渡を前に、熱斗は"やっぱりいいや"とは言い出せなかった。

 

「手に入りにくいチップは高い。では、どのようなチップが手に入りにくいチップなのか。それをご説明しましょう」

 

渡が肩掛け鞄からノートと筆記具を取り出し、ノートを机の上に開いて書き込んでいく。

 

「ひとつ、危険なウイルスのデータで作られたチップ。ウイルスを倒すと残骸データからチップデータを生成できることがありますが、強いウイルスは倒せる人が少ないですから、当然チップを作りにくい」

「それはわかるよ。同じようなウイルスでも、強いやつの方が強いチップになるから、高いのは納得いくし」

「ひとつ、危険なエリアのウイルスのデータから作られたチップ」

「……それって、"危険なウイルスの~"ってのと何が違うんだ?」

「では、極端なたとえ話をしましょう。四角いメットールがいたとします」

 

ノートの上に、被り物をしたウイルスが1体描かれる。通常は丸い工事用メットのはずが、箱の蓋のような四角いものになっている。

 

「強さは普通のメットールと同じで、一般のオペレータとナビでも簡単に倒せるくらい弱いです。生成できるチップ……仮に"シカクメット"としましょうか。それも、普通のメットガードと大差ない性能のチップです」

「それじゃ、シカクメットの値段も普通のメットガードと変わらないんじゃ?」

「でも、シカクメットの値段はものすごく高いんです。なぜならその四角いメットールは――」

 

メットールの周囲に、青い剣士(スウォータル)が続々と現れる。現状熱斗が戦ったことのあるウイルスの中で、最上級の強さを誇る種類だ。

 

「このように、強いウイルスばかりいるところに生息しているからでマス」

「そっか、四角いメットール自体は弱くても、そもそも見つけるのが大変なんだな」

「はい。では次ですが、倒しづらいウイルスのデータで作られたチップです」

「倒しづらいって、強いんじゃなくて?」

「戦わずに逃げてしまうウイルスですね。短時間で決着をつけられないと、倒してチップを生成することができません」

「そんなのいるの!?」

 

未知のウイルスの話に、熱斗はにわかに沸き立った。

 

「熱斗くんほどの実力者なら、いずれ出会うはずでマス。ちなみに、手に入るチップは実用性も高いと評判でマス」

「そっかー……見てみたいなあ」

「まあ、ウイルスの話はここまでにして」

 

ノートに線を引いて区切る。

 

「ここからは特殊なチップの例です。まず、ナビチップを含む個人制作のチップ。特定個人が作る以上、数は少ないですし、直接そのナビやオペレータを探して手に入れるのも難しいわけですが」

「手に入れにくいから、高いんだよな?」

「ところが、ピンキリなんですよ。これまた極端な話、何もカスタムしていない市販品ナビから作ったテキトーなナビチップなどでは、何の価値もありません。最低でも、とても強いチップであること。ナビチップなら、加えて有名なナビであることも必須条件ですね」

「じゃあさ、もしロックマンのナビチップを作っても全然売れないわけ?」

「知り合いならともかく、商売で知らない人に売るのは無理でしょうね。もし作ったら下さい」

「あ、それはアッシも欲しいでマス!」

「えっ? う、うん……」

(なんで?)

 

売れないと言う日暮や渡からロックマンのナビチップを要求され、熱斗は不思議がった。

日暮は友人として、渡はファンとして、あれば欲しいと常々思っていたのだった。

 

「そして最後。最初に話があった、外国産のチップです」

「外国でしか手に入らないから、ニホンでは珍しくて高いってことだよな」

「その通り。しかし、もう少し細かい話をしないと、熱斗くんの疑問は解消されません」

「オレの疑問?」

「どうしてチップの値段が上下するのか、です」

「今までの話からすると……チップを落とすウイルスがいなくなったとか、出てくる場所が変わったとか、作る人がいなくなったとか?」

「おお……!」

 

熱斗の回答に、日暮と渡が感嘆の声を漏らす。

 

「おっ、もしかして正解!?」

「今回は違います」

 

渡に期待を裏切られ、がくっ、とずっこける熱斗。

 

「でも、そういった要因で値段が変わることは実際にあります。見事な推理でした」

「うんうん、友達として鼻が高いでマスよ」

「そ、そう? へへ……」

「では、答えですが……僕と日暮さんがしていたのは、"外国のチップが高くなった"という話でしたね」

「そーいや、そんな話だっけ」

「この場合、ポイントの一つとして、国内に持ち込みやすいかどうか、が挙げられます。簡単に持ち込めれば、国内で数が増えて価値が下がる。そうでなければ、数が少なく価値が上がる」

「値段が上がったってことは、持ち込みにくくなったってこと?」

「その通り。さて、なぜでしょうか?」

 

渡はそこで言葉を切り、思考を促す。

 

「えー、わかんねーよ」

「持ち込みにくくなったのは最近から、というのがヒントになりますね」

「最近……?」

「そう。原因となる出来事については、実は熱斗くんもよくご存知です」

 

熱斗は考える。最近起きたことで、熱斗がよく知ること。

しばらくして、まさか、と思いながらその単語を口にする。

 

「……もしかして、WWWとか?」

「正解!」

 

渡がパチパチと拍手する。正解したはずの熱斗は、驚きの表情で固まっていた。

 

「そう、WWWの活動によって国間の移動ルールがより厳しくなっているんです。現実世界でも、電脳世界でも」

「電脳世界でも……」

「国内外を行き来するリンクのパスコードは、その多くが一度無効になり、より厳しい条件で再取得するように通達されています」

「より厳しい条件でって、それで再取得できなかった人は……」

「自国のチップを他国で売る、といった商売もできなくなります。WWWによる間接的な被害といえますね」

「はぁー……」

 

WWWといえば、目的を達成するために危険な事件を引き起こす組織。多くの市民はそういう理解でいて、熱斗もそうだった。

それだけに、"チップの値段が上がったのはWWWのせい"という話に筋の通った理屈があるのには、ただただ感心することしかできなかった。

しばし呆けた後、気付く。

 

「……結局、なんでそんな話してたんだ? 渡ってチップコレクターだっけ?」

「そうではありませんが、個人的なツテで得た情報を共有していました。熱斗くんの話では、日暮さんはショップ経営自体始めて間もないということでしたから、少しでも力になりたくて」

「ツテって、外国に友達でもいるのか?」

「それはアッシも何度も聞いたでマスが、いつも笑顔で――」

「秘密です」

「――って言うばっかりで、何も話してくれないんでマスよ~~」

(お父さんにも言えんホンマに秘密の話やからな。お外で喋れるわけあらへん)

 

話は終わりだと、渡がノートと筆記具を片付け、伸びをして。

 

「そういえば熱斗くんは何をしに? 買い物ですか?」

「えっ? ……あれ、何しに来たんだっけ?」

「もう! チプトレ回しに来たんでしょ!」

 

熱斗が忘れた用件をロックマンが再確認する。

 

「そうだった!」

「なるほど。レアなチップが出るといいですね」

「ああ! レアチップについて勉強した今なら、レアチップを出せる気がするぜ!」

(なんでやねん)

(そんなわけないでしょ!)

 

こうして、なんでもない一日が過ぎていく。

次の戦いの日がすぐそこへ迫っていることを、その輪の中で渡だけが知っていた。




胃もたれするんじゃないかというくらいコテコテの説明回でした。どうなんでしょうね、こういうの。どなたかアドバイス下さい。
それはそれとしてアンケート設置。
8~9話のアンケートも生きているので、まだの方はお願いします。

渡の恋愛要素

  • とてもいる
  • いる
  • どちらともいえない
  • いらない
  • すこぶるいらない
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