セキュリティ絶対突破するマン.EXE 作:エターナルマン.EXE
口調は現実のネットユーザーではなく作中のネットユーザーにしていますので、想像される掲示板形式とは雰囲気が異なるかもしれません。
タグに掲示板形式を入れるのが嫌なので機能は使わず書いています。
正午に昼食を取り、またも眠気がやってきたところで、PETに繋がれたゲーム用コントローラーを握る。
ベータを操り、インターネットの奥へ。遠方への道を塞ぐセキュリティを軽々とすり抜け、さらに奥へ。
ニホン科学省が廃棄を決定した旧エリア。インターネットから繋がる機器へのリンクは、ほぼ全てが新たなエリアに移設され、廃墟となったここは、科学省の管理を完全に離れ、アウトローやネット犯罪者のナビが跋扈する無法地帯となった。
……と、科学省の公式発表ではそういうことになっているのが、この通称"ウラインターネット"である。
オフィシャルや
それゆえに、ここまで来ることができ、かつ腕自慢のネットバトラーは、ウイルスを狩ってチップデータやジャンクデータ――ものによっては科学省で換金できる――を手に入れようとする。
だが、1度の戦闘に全神経を集中し、じっくり慎重に戦い、それでも
そんな魔境で渡が行うのは、一方的な狩りだった。
戦闘が終わるまでの所要時間は5秒前後で並。10秒かかれば大きなタイムロス。それが渡に見えている世界だ。
チップデータやジャンクデータが、ベータ内の一時ストレージに続々と蓄積されていく。更に、これを国内ではなく国外で売ることによって、渡は10億ゼニーという大金を稼ぐことができる。
(これをほんまにできてまうのが、この世界の恐ろしいところやな。
ほとんどの国が貨幣をゼニーで統一しているため、為替などの手間も必要ない。前世の経験と子供の吸収力をかけ合わせ、この世界でのウイルスバスティングを瞬く間に極めた渡だからこそ可能な芸当。
少なくともこのウラインターネットにおいて、誰よりも速く、多く、稼いでいる。
だから、狙われる。
ウラインターネットから出ようと、浅いエリアを移動していたところ、一体のナビが立ちふさがった。
「よう、オマエがベータだな?」
ウラインターネットにおける、オーソドックスな戦闘用カスタムを施されたナビ。アーキタイプの製作者が"
「はい、僕がベータですが」
(邪魔すんなや)
「見てたぜ。すげえバスティングテクニックじゃねえか。たんまり稼いでるんだろ?」
「まあ、今日はそこそこですね」
「ちょっとだけ分けてくれよ。馬でスっちまって、今月ピンチなんだ。ヘヘ、いいだろ?」
「イヤです」
(おうかかってこい)
「だったら、テメーをデリートして頂いてやるぁああ!!」
(いらっしゃいませ!)
気勢よく叫び、右腕を
本来地面を叩いて出た衝撃波で広範囲を攻撃するための大鎚が直撃した場合、その威力はタフな大型ナビでも――一国の王室が保有するような超ハイエンドでさえ――大打撃となる程。
「ぐべえっ」
「さようなら」
(ざっこ)
故に、並の相手では一撃必殺。打撃と同時に体内から衝撃波が拡散し、粉々になった後、光の粒子になって消える。
たまに腕試し目的でやってくる骨のある相手の場合、避けるか、特異な耐久寄りカスタムで耐えて反撃を狙うが、このヒールナビはただのチンピラであった。
消滅した跡に残るデータの残骸を漁る。
(一時ストレージの中身は……たったの
こうしてウラで活動する渡は、ウラインターネットの数少ない安全地帯に存在する掲示板でも、熱斗と出会う以前から語り草であった。
……
308:NO NAME
花金だってのに元気すぎだろ
どんだけ稼ぎたいんだ
309:NO NAME
今日の実況配信は長持ちだな
カメラ係もウイルスバスティングの腕が上がって来たんじゃねーか?
310:NO NAME
逃げるのがうまくなっただけだろ
311:NO NAME
あっ
312:NO NAME
映像が切れたな……冥福を祈る
>>309、オマエが余計なこと言うからだぞ
313:NO NAME
長い海外出張から帰って来て、珍しく伸びてると思ったら
実況がどうのカメラがどうの
オフィシャルの話してねーじゃねーか!
314:NO NAME
オフィシャルじゃないが、面白いヤツが来るようになったからな
ウラの奥でウイルスを狩りまくった後、外国へのリンクをスーっと抜けていくんだ
だから多分外国のヤツ
315:NO NAME
奥ってどこだよ
316:NO NAME
今日はこの辺だ
[画像を開く]
317:NO NAME
あそこまで入れるヤツ自体少ないから、追いかけて実況するのも難易度が高い
出張野郎も腕に自慢があるならオレたちにエンターテイメントを提供してくれていいんだぜ
318:NO NAME
この掲示板まで来るのがやっとのオレには無理そうだ
しかし、強いのに悪口を書かれないのはなんでだ?
ここはウラだぞ?
319:NO NAME
ケンカ売ったヤツがみんなデリートされたからだよ
キャノン系どころかショットガンもかすりゃしなかった
強いやつには巻かれるのもウラ人情さ
320:NO NAME
それでいてヤツのガイアハンマー3は当たる……
321:NO NAME
そもそもガイアハンマー3なんて手に入らねえよ……
店に置いてあったとしたらいくらすんだ?あれ
322:NO NAME
そういえばウラのネット商人には流れてこないな
323:NO NAME
じゃあコレクションしてるのか?
あんなにたくさん要らないだろ
324:NO NAME
自分の国で売ってるんだろ
国外の強いウイルスから取れるチップとなりゃスゲー値段がつくからな
325:NO NAME
だからチップデータの売上だけで相当な金持ちのはず
……という話も、もう何百回目だろうな
326:NO NAME
じゃあ土下座して頼めば、強いチップの1枚くらい恵んで貰えるんじゃねえか?
327:NO NAME
無視されたぞ
翻訳プログラムはちゃんと起動してた
328:NO NAME
本当にやったのか……
329:NO NAME
しかしだっせーデザインにカスタムしたもんだな
やっぱ金持ちはどこかヘンなんだろうな
オレの方がマシなゲージュツ的感性ってものがあると思うぜ
330:NO NAME
それ、間違っても本人には言うなよ
……
狩りを終え、モニタを見続けてしょぼしょぼする目をこすりながら、戦果を確認する。
(ぼちぼちやな。まだ欲しいもんないし、これも換金したら全部寄付してまうか)
帰ってきた父・翔と食卓につき、母の作った夕食に手を付ける。
「渡、退屈しとらんか? どっか行きたいとかないか?」
「んーん、大丈夫」
「そうか。何かあったら遠慮せんといつでも言いや」
「うん」
変わったことがない限り、毎日変わらない会話。
それでも、翔と鏡子は満足していた。
「ごちそうさま」
さっさと食べ終え、食器をシンクに入れると、冷蔵庫から小さな紙パックの野菜ジュースを取り出し、飲み干す。
「風呂入るよー」
「おう、ええでー」
屋敷の浴室は広い。カギを閉め、床の上で軽いストレッチとトレーニングを行う。体を強くするためではなく、健康を維持するための運動。
汗をかいてもすぐ流せるのが便利というのもあるが、なにより、子供っぽくない習慣としても度が過ぎているそれを両親に知られたくなかった。
入浴を済ませると、再びデスクに向かう。PETやコントローラーには触れず、マウスとキーボードでPCを操作し、メールを開く。
(届いとるな)
熱斗のメールに返信し、二階堂から届いたメールの添付ファイルを開く。教材ファイルだ。
家庭教師として渡のもとへ来ることはなくなったが、今でもこうして教えを請うている。
(今日の課題はなんやろなっと)
それから午後10時半過ぎに勉強を切り上げ、歯を磨いて床につく。忙しくも充実した一日の終わりである。
ベッドの中で渡は、将来の夢に思いを馳せる。
(長生きしたいなぁ……)
今明かされた渡の夢。
ベータについての説明は次回、二階堂の話で。
10話にアンケートがあるので、まだの方はよろしくお願いします。