セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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書いてる側としてもどうすればいいのかと悩んでいるポイントで、ここで詰まってしばらく書けなくなるかもと思っていましたが、どう通すか思いついた時にめちゃくちゃ笑いました。
意外な便利さを発揮していく。


11話 電戦前夜に浮かぶ影

 渡はこまめにメールをチェックする習慣をつけているが、骨董品屋での一件以来送られてくるようになったみゆきのメールに困惑していた。

 

 みゆきからのメールは、ごく短い。頻度も多くなく、長い返信を強要されるわけでもない。

 内容が、簡単すぎて意図のわからない質問や、そもそも何を言っているかわからなくて返信の際に困る話などで、"まさか、メールを通して心を読まれているのか?"と思ってしまうような、不安になるものばかりなのが問題だった。

 

 一度、骨董品の相場情報をくれないだろうか、と頼んでみたことがあった。

 翔が蒐集するような骨董品の相場は移ろいやすく、実際に売り買いする人間や、そこにコネのある人間でなければ追いかけることができない。

 だから、実際に商いをしているみゆきから話を聞いて、翔のおつかいの参考にしようと思ったのだが、

 

「店に来れば教えてあげる」

 

とだけ返されて、それ以上何も言えなくなった。

 今生では女性の知り合いができたのはこれが初めて(プライドは一方的に知っているだけなので知り合いではない)のことだったが、経緯や現状を踏まえて、渡としてはあまり歓迎できたものではなかった。

 

 あの日から数日。渡の悩みはそれだけではなかった。

 

 水道局の事件が解決した折、氷川が科学省のツテで熱斗をオフィシャルML(メーリングリスト)に受信のみで登録させたのだが、その後に熱斗に届いたメールの内容に有用なものはないとの判断で無視していた。

 しかし、熱斗からメールで"アクアプログラムが盗まれた"という事実を知らされて、渡は頭を抱えた。色綾まどいを早期に行動不能にし、そのままオフィシャルへ引き渡したのは、アクアプログラム奪取の阻止も目的の一つだったのだ。

 

 (誰がやったんや? あの日、内部におった人間は相当限られとるはずや。予備の人員がこっちと同じように隠れとったんか? それとも、タイミングをずらして侵入したんか? "事件は収束した"と油断した隙を狙う作戦? ……わからん。しかし、これで猶予がなくなってもうたんは確かや)

 

 究極のプログラム。ファイア、アクア、エレキ、ウッドの名を冠する4つ。アクアプログラムの奪取を阻止することでWWWの手元に4つを揃えさせないというのが、渡の算段だった。

 1つでも欠けていれば、WWWは終末戦争の引き金を引くことができない。

 

 (ファイア、アクアはもう盗られた。ウッドも、ゲームの通りならずっと前に盗られとるはず。エレキプログラム奪取の作戦は絶対に来る。でも――夜はあかん)

 

 渡はエレキプログラム奪取の作戦の内容も、いつ実行されるかも知っている。

 官庁ビルの地下レストランで行われる職員参加の立食パーティー。官庁の重要人物も集まるそこを封鎖し、更に空調による換気を停止させることで、酸欠に追い込んで一網打尽……という手だ。

 職員参加の立食パーティーの日時。それは科学省HP(ホームページ)を探せば見つかった。

 

 水道局の事件から数日後の夜7時。もし介入すれば、メトロで移動する時間も考えると帰宅は早くて9時から10時。

 ごまかしの効かない時間である。そして、既に日数的猶予がない。

 

 渡には、両親に戦いのことを打ち明けるつもりはなかった。だから悩む。

 行かなければ、ゲームの通りにことが運んで、熱斗がWWWの企みを破るかもしれない。しかしそうならなければ、熱斗やその両親を含み、多数の死者が出る。

 行けば、ほぼ確実に阻止できる。だから、本来は行くべきであり、悩んではいけない。渡も、頭では理解していたが、決断に至れていなかった。

 

 渡はこの世界において大きなアドバンテージを持っているだけで、ヒーローが如き気概を心に宿しているわけではない。だから、人の生き死にに比べれば些事だとわかっていても、ふと足を止めてしまう。

 

 それでも渡が水道局の事件に介入できたのは、人が死ぬのは避けたいという人並みの正義感と、仕損じれば怪我ではすまない闇討ちの計画を実行できるだけの、用意周到さと自信があってのことだった。

 

 突如、オマケ程度の機転が渡の頭上に電球を浮かばせ、その表情を苦渋に満ちさせた。

 渡は急いでメールを書いて送り、返事を待った。

 

 

……

 

 立食パーティー前日の夜。渡はリビングのソファで横になっている翔に声をかけた。

 

 「お父さん」

 「んー?」

 「明日友達ん()泊まりに行っていい?」

 「友達? 熱斗くん言う子か? 仲いい聞いとったな」

 「んーん、また別の友だち」

 「そうなん? 誰さん?」

 

 翔が体を起こし、渡の方を見る。

 

 「黒井ってやつ。熱斗と同じで、デンサンシティの方に住んどる」

 「向こうの親御さんには話通っとるんか?」

 「いや……そいつな、親おらんねん。せやから一人で店やっとる」

 「じゃあ、年上か?」

 「うん。16やって」

 「そうか。……でも、泊まりとなると流石に怖いからな。その子と話させてくれるか?」

 「わかった。電話かける」

 (やっぱこうなったか……用意はしとったけど、絶対かけたくなかったのになあ……)

 

 誰かの家に泊まるという口実で夜を越すのは、最初に思いついたことだった。

 しかし、口裏合わせの相手として、熱斗やデカオなど、秋原町のメンバーは選べない。"なぜ"と問われた場合、答えることができないからだ。

 その点、渡が秘密を持っていることを既に知っているみゆきは、逆に都合のよい存在だった。貸しを作るのは手痛いが、人の命には替えられない。そういう判断を渡はしていた。

 

 翔に言われ、渡が黒井にPETから電話をかける。関係や泊まりに至った経緯なども、予めダミーを考えて共有してある。後は変な気まぐれを起こさないことを祈るばかりだった。

 

 翔にPETに渡し、コール音が止む。二拍ほど置いて、みゆきの声が発せられる。

 

 「……はい、黒井です」

 「えっ!? あ、もしもし。七代渡の父です。うちの渡がお世話になっとるそうで」

 「そうですか、渡くんの。黒井みゆきといいます。こちらこそ、渡くんにはいつも楽しく遊んでもらっています」

 「ええと……女性の方ですよね?」

 「はい」

 「渡が、そちらに泊まる言うてるんですけど。その話()うてます?」

 「はい」

 

 みゆきの回答は淀みなく、"電話対応も慣れたものだな"と、渡は現実逃避気味に考えていた。

 

 「んんー……すんませんけど、渡とはどういう関係ですかね?」

 「友達で、お客様です。骨董屋をしております」

 「ああ、骨董屋! なるほど、それで渡がね」

 「はい。光くんたちと、お友達の誕生日プレゼントを買いに来たことがあって」

 「はいはい! なるほどね」

 

 大いに納得し、頷く翔。

 

 「そんで、その……お泊まり言いますけど、大丈夫なんですかね? 渡は立派な男子ですけども」

 「はい。わたし、人を見る目はありますから」

 「ああ、確かにその商売やってればそうでしょうね。わかりました。すみませんね、いきなり電話かけて」

 「いえ」

 「万が一迷惑をかけることがあるかもしれませんけど、仲良うしてやってください」

 「はい」

 「そいじゃ、失礼します」

 

 翔は電話を切り、ニタニタ顔で渡に向き直った。

 

 「惚れたんやろ?」

 「怒るで」

 「ごまかさんでもええって。どうなんや? 声からすると、かわいいってより美人さんか?」

 「ほんまに怒るで。友達や言うてるやろ」

 「そうは言うけど、同じインドアでも骨董屋の子と渡とじゃ趣味合わんのとちゃうんか?」

 「いや、そうでもないで。一緒に遊ぶのも、見たことない昔のゲームとか出してくれるし」

 「ええー……なんや、残念やな。そっちもマセてるんちゃうかと期待したのになー」

 「それより!」

 

 あらゆる意味で続けたくない渡は、声を張って話の流れを切った。

 

 「明日。泊まってええんか?」

 「ああ、ええよええよ。おれも職業柄、信用できるできへん人間はそこそこわかる。みゆきちゃんは大丈夫やろ。危ない趣味とかありそうやったら、絶交さすところやったけど」

 「そっか。ありがとう」

 「おう。いつも言うとるけど、友達は大事にな」

 (な、なんとかなった……)

 

 数分にもならない間にすっかり疲れた渡は、嫌な汗を流しに浴室へ向かった。




下記アンケートに"わい/ワイ"がないのはアキンドシティ出身との差別化です。
今の今までどれにするか決めきれていないので、いい加減アンケに投げようと。

10話とX3話のアンケートも、未投票の方がいればぜひお願いします。

実は決まってない渡の一人称

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