セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 13話のアンケートで「(増や)せ」を選んだ方は、14話後書きのチェックをお願いします。
 ウソをついて投票した人ばっかり、というのが事実だと辛いので、ご協力お願いします……
 (この意見募集は急ぎではないので、じっくり考えてからでも大丈夫です)


15話 対価

 みゆきの骨董屋は2階建てで、1階は店舗、2階は住居スペースとなっていた。

 2階の広さは40平米弱で、床の間のある和室だ。階段を上がって右手に小さなキッチンがあり、その足下も板張り。押入れの引き戸の他にもう一つ引き戸があり、その先にトイレ・浴室らしきドアと洗濯スペース。

 

 (そんで洗濯機は小型で……おっと)

 

 開いた引き戸の奥、洗濯カゴが視界に入り、そっと目をそらす渡。

 

 家具は小さな冷蔵庫がキッチン横にある他、上等そうな木のデスクと椅子が一組あり、それらの下には緑色のチェアマットが敷かれている。デスクの上にはパソコンが1台。そして床の間に空気清浄機(壺ではなく普通のデザイン)と、壁上部にはエアコン。

 

 (置いてあるもんだけ見るとワンルームやな。一人暮らしで無趣味やとこうなる、って感じ。スペースがだだ余りや)

 「……お腹は空いてる?」

 「5時前に外で少し食べてきたので、それほど」

 「なら、先にお風呂にしましょう。あるものは好きに使っていいから、先に入って」

 「わかりました。お借りします」

 「明日はよく晴れるそうだけれど。洗濯物、預かりましょうか?」

 

 何でもない顔、何でもない声色で放たれた言葉に、渡も何でもなさそうに返そうと口を開く。

 

 「いえ。起きたらすぐ帰るので」

 「そう……」

 (タチ悪いなこいつ)

 

 鞄から着替えその他を取り出し、洗濯スペースに入って引き戸をしっかり閉め、脱いだものをビニール袋に入れて口を結ぶ。それから浴室の中折ドアを開くと、ぬるい空気が全身を包んだ。

 湯船は既に蓋を外され、湯も張られている。

 渡は内装を見て、ほうと息を漏らした。

 

 (一人用としては広い。湯船は大人でも余裕で足伸ばせそうやし、ええな。蛇口の温度調節パネルは……今はどの家にもあって当たり前なんかな? 外泊が初めてやからわからん。ボトルはシャンプーとトリートメントとコンディショナー……があって、ボディソープはなくて? 石鹸? なんでや)

 

 体を洗い、湯船に浸かる。

 

 「はぁぁー……」

 

 ボディタオルが柔らかめで、渡はあまり洗った気になれなかったが、湯船で全身の力を抜くと、その気持ち悪さもすぐ忘れた。

 

 (究極のプログラムは全部WWWの手に渡ってもうた。まず明日は熱斗とオフィシャル次第やな。ブルースにも勝ちよったし、多分うまくやるやろ)

 

 と、リラックスすること数分の後。

 

 「……渡くん」

 「っ、はい?」

 

 ノックもなく、浴室入り口から突然みゆきが声をかけた。すっかり弛緩していた渡は驚き、水面が揺れて音を立てた。

 

 「……わたしもまだだから、出る時にお湯を流さないで」

 「……わかりました」

 (先に()えや先に! ボケ!)

 

 いい気持ちでいたところに水を差され、渡は内心で罵声を飛ばした。

 

 

……

 

 

 ブオオオオオ!

 

 (うっさ)

 

 交代で入ったみゆきが上がった後、洗濯スペースへ続く引き戸の向こうからドライヤーの音が響き始めた。

 渡が畳の上に転がって携帯ゲーム機で時間を潰していると、騒音は止み、引き戸を開く音がした。

 

 (髪下ろすとこんな感じなんか。……直視せんとこ)

 

 出てきたみゆきの姿を一度見て、渡はすぐ携帯ゲーム機に向き直った。

 

 「……ご飯を作るけれど、渡くんは何か苦手な野菜はあるの?」

 「特にありません」

 「そう。えらいのね……」

 

 近付く気配を感じて、渡が横に四半回転して身を躱す。すると、見上げる形になった渡と、屈んで手を伸ばしたみゆきの目が合った。渡は俯き、携帯ゲーム機をスリープモードにして横に置く。

 

 「……やめて下さい」

 「このくらいの年の差なら、不自然なことではないと思うけれど」

 「それほど親しいとは思っていません」

 「友達でも、もっと親しくならないと、してはいけないの?」

 

 みゆきが手を引き、声のトーンは少し落ちた。

 

 「? ……! もしかして、他に……」

 

 はっとした渡が、みゆきの顔を見る。陰りがあった。

 

 「ええ、そう。私には家族もいなければ、友達もいない……」

 (あー。不思議ちゃん扱いの悪い方か……で、いざこうなったら距離の感覚が掴めてへんと)

 「……ごめんなさい。ご飯、すぐ作るから」

 

 数拍置いて、みゆきが立ち上がろうとした時。

 

 「それなら、いいですよ」

 「え……?」

 「親兄弟も友達もいなくて寂しかった、って事情があるなら……」

 「……本当に?」

 

 再び、渡とみゆきの目が合う。今度は、渡は目をそらさない。みゆきの問いに、小さく頷く。

 

 「はい」

 「……そう」

 

 体を起こした渡に近づいたみゆきは両手を広げ、渡をそっと抱きしめた。互いの顎を肩に乗せ合う形になり、渡が目を見開く。

 

 (そ、そこまでは許可しとらん! 密着するなんて聞いてへん!)

 「……」

 

 渡は焦りつつも、みゆきへの遠慮から抵抗はせず。

 みゆきは目を閉じて口元を緩め、小さく、ゆっくり、体を揺る。

 渡は背中の方から、みゆきの声を聞いた。

 

 「……ありがとう……」

 

 その静かな一言には、純粋な感謝の気持ちが込められていた。

 

 

……

 

 

 「どうかしら?」

 

 あの後、気まずそうにもせず()()と普段の様子に戻ったみゆきは、二人分の食事を作った。

 折りたたみ式の小さなテーブルを囲み、渡もみゆきの作った料理を口にしている。

 

 (人参とじゃがいもとアスパラを添えた、ホタテ貝柱のバター焼き。和食の予想が外れたのはまあどうでもいいとして、これは――)

 「――普通、ですね」

 「普通……」

 「自炊生活が長くて、でも料理に特別凝っているわけでもなくて、みたいな」

 (味付けの感じはともかく、美味さに関しては前世で作ってた飯に近いわ。評価に困る)

 

 普通と評され、少し思案したみゆきは。

 

 「……渡くんは――」

 

 と言いかけて、やめた。

 

 「? なんですか?」

 「いえ、なんでもないわ……」

 

 食事と片付けを終えると、既に深夜近かった。レトロゲームがあるという話は本当のことだったので期待していたが、渡は諦めた。

 みゆきは押入れを開け、布団を――一組だけ出した。

 

 「……もしかして、布団足りないんですか?」

 「誰かが泊まりに来ることなんてないもの……」

 

 しれっと言い放つみゆきに、一度は静まった怒りがぶり返す。

 

 (……こいつ……)

 「じゃあ、僕は畳の上で寝ますね」

 「万が一体を悪くしたら、お父さんに言い訳は効くかしら……?」

 「分かってて言ってますよね?」

 「なんのことかしら……ふふ」

 (なにわろとんねんしばくぞ)

 

 みゆきはエアコンの設定温度を下げてから、布団に入って電気を消した。

 

 「おやすみなさい……」

 「……おやすみなさい」

 

 布団の中は狭く、結果として室温は適正だった。




 11・13話のアンケがまだの方はよろしくお願いします。
 また、13話のアンケートで「(増や)せ」を選んだ方は、14話後書きでの意見募集も目を通してくださると幸いです。

~謎アンケ2の項目~
下手→植物のヘタ→柿
ポイズンクッキング→毒
店を出せるレベル→みせ→蝉
普通→経津主命(ふつぬしのみこと。刀の神様)→刀
上手→JAWS→鮫

 ということで、みゆきの料理の腕前でした。毒が比較的ストレートとはいえ、やはりわかるはずがない。
 まあただのキャラ付けなので、上手くなったところで特に何もありませんが……

 柿とか入ってる時点で戦いには関係なさそうなものですが、それでもなお刀が人気なのは、特に裏とか考えずになんとなく投票してるのかな、と感じます。
 いやそれで正しいんですが、もうちょっと票がばらけるような言葉選びを考えるべきでした。精進します。
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