セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 いきなり数字が増えて何事かと思ったら、その他原作週間とか日間に載っていたようです。
 ありがとうございます。ついでにウラランクの存在を思い出しました。

 長くなったので分割です。


16話 許されざるもの

 官庁ビル停電事件の翌日、朝。

 オフィシャルとは別口で、熱斗も既にWWWサーバーの在り処を探り始めた頃。

 渡はそっとみゆきの腕の中から抜け出し、1階で支度と書き置きをして、出ていった。入り口の引き戸は、不正に施錠しておいた。

 

 (実感ないなあ。外の景色はなんも変わらんのに、明日は大一番か)

 

 人目も憚らずあくびをし、目元をこすって脂を落とす。土曜の朝だけあって、大通りもまだ静か。

 終末戦争の引き金に指がかかるまで、あと1日。

 今日の間に熱斗はWWWサーバーへの道を見つけて門番ナビ・ボンバーマンを倒す。そして得た手がかりから明日、現実世界のサーバーの位置を突き止めるだろう。

 

 (自宅待機かなあ。ブルースの時に念押したし、安易に頼っては来んやろうけど)

 

 だが明日、ドリームウイルスを完成させたWWWはテレビ放送をジャックして犯行声明を流す。そうなれば、表向き無関係である渡は、自宅でおとなしくしていることを余儀なくされる。

 ロックマンとブルースの戦いを見て、彼らがドリームウイルスに負けることはないという確信がある渡は、ここからは何もしないつもりだった。

 

 メトロを乗り継ぎ、コートシティへ。鍵を開けて家に上がると、居間の翔が渡に声をかける。

 

 「おかえりー。なんや手紙届いとったで。差出人の名前書いてへんかったけど」

 「手紙? どこ?」

 「そこのテーブルや」

 

 テーブルの上には、白い封筒がひとつ。宛名に"七代渡様"とあり、それと親展の他には何も書かれていない。

 渡は何も考えずに素手で封筒を破り、中身を取り出す。中身は折りたたまれたプリント用紙で、ごく短い文章が印刷されていた。

 

 "ネットナビ・ベータのオペレータに告ぐ。下記エリアへ来い。WWWより"と。

 指定されているのはウラインターネットの奥深くで、渡の数ある狩場のひとつだった。

 

 「渡、お泊まりはどやった? なんかええことあったか?」

 

 手紙を見て、渡は頭がくらくらした。手紙を開いたまま固まり、視界が回っているように錯覚した。が、それも一瞬のこと。

 

 「……ええことってなんやねん。普通に遊んで帰ってきたよ」

 「えー」

 「えーやないよ。ほんまそういうこと()うんやめてーや」

 

 少し間ができたものの、翔の追求を斬り捨て、渡は自室へ戻っていった。急ぎ、インターネットにベータを送り込む。

 

 (どうやってベータとこっちを繋げたんや? クリームランドから話が飛んだオフィシャルにもバレてへんのやぞ。情報を引き出そうにも、引き出す場所がないはずや)

 

 寄り付くウイルスは全て鎧袖一触し、そのエリアまでたどり着くのにそう時間はかからなかった。

 

 (熱斗やロックマンを拷問にでもかけるか? いや、それもないやろ。そんな事態になっとったら、どっかしらからオート電話が飛んできよるはずや。……うん?)

 

 そこには、渡の知らないナビがいた。

 金属光沢を纏う、銀色の人型ナビ。両前腕の外側からは湾曲した刃が生え、脛からは正面に向かって棘が生え、胸や肩は鋲打ちの板金装甲が貼り付けられている。顔は、真っ黒なバイザーと細かい穴の開いた板金マスクのせいで全く見えない。

 じっとしていたそのナビは、ベータが来ると、そちらの方を向いて話し始めた。

 

 「手紙は読んでくれたようだな。私の名はアイロニー」

 「……要件は? 脅迫ですか?」

 

 ベータを通して話す渡は、慎重に言葉を選んでいた。既にWWWに捕捉されているという大きすぎるリスクと、たった今思いついたひとつの仮説のためだった。

 

 「違う。勧誘だ。君さえこちらに来れば、WWWは計画を完璧に成し遂げる。そうすれば、ワイリー様は君の望みを叶えてくださるだろう」

 「あなたの望みはなんです?」

 「私の今の望みは、君を仲間に引き込むことだよ」

 「WWWの計画が成就したとして、あなたは何を得るんですか?」

 「……普通ではなし得ない悲願が叶う。とだけ言っておこう」

 「……」

 

 銀色のナビ、アイロニーが放つ一つ一つの言葉を反芻し、思考する。

 渡はそれに結論を出し――オペレータ音声をオンにした。

 

 「兄ちゃんやな?」

 「なんだ、バレたのか」

 

 オペレータ音声をオンにしたのは、アイロニーも同様だった。そしてそのオペレータの声は、二階堂哲生のものに他ならなかった。

 そもそもベータのことを知る人間は僅か。熱斗、翔、二階堂のいずれも、何か異常があったという話はなかった。そして渡は、二階堂の夢が科学省では叶えられそうにないということも覚えていた。

 

 「ちょっとヒントが露骨すぎたか?」

 

 二階堂はふっと笑い、軽い調子で続ける。嫌な予想が当たった渡は、自分を落ち着かせようと深呼吸をして、答える。

 

 「そんなことどうでもええねん。兄ちゃん、何でそこまで焦るんや。兄ちゃんの考える新しいネットワークってのは、そんなにすぐ必要なもんなんか? オフィシャルに捕まるような真似してまで?」

 「言い方を変えればな。正しくは、"今あるネットワーク技術は間違っている"ってところさ」

 「……は?」

 「まあ、初めて聞いた人は、みんなそういうリアクションをしたよ。でもな、渡。これは気付いてしまえば簡単なことなんだ。そもそもネットワークって、何のために作られたんだ?」

 「そんなん……生活を便利にするためやろ」

 「そうだ。じゃあ、その生活ってのは、誰の生活だ?」

 「人間やろ。他に誰がおんねん」

 「そうだよ。そうなんだよ! でも現状は違う」

 

 二階堂が、喉を鳴らして笑う。

 

 「なにわろとんねん。何がおかしいんや、何が違う言うんや」

 「だって、おかしくないか、渡。人間のために作られたネットワークなら、何でネットナビが電脳世界に社会を形成してるんだ? 人間の生活を便利にするために作られたなら、その仕事だけしていなきゃおかしいだろ。非合理的じゃないか」

 (……これは)

 

 それは、この世界の根幹を揺るがす思想。

 

 「プログラムくんだってそうだ。ネットナビに続いて単純な機能のプログラムにまで人格が与えられた結果、ファジーな命令入力を受け付けられるようにはなったさ。だが実際の運用状況はどうだ! データを運ばせれば迷子になり、あまつさえ他のプログラムくんといがみ合いさえする。不安定で、不正確。"便利"なんて言葉とは……もはや対極じゃないか」

 (安定して正確さを発揮するプログラム。そしてネットワーク)

 

 それは、あの世界の景色に繋がる思想。

 

 「ネットワークを生み出した光正は偉大だ。でも、ネットナビに人格なんて与えるべきじゃなかった。だって、ネットナビは――道具なんだから」

 

 そして渡は、一度その景色を見たことがある。だから、わかる。わかってしまった。

 

 「……兄ちゃんの考える新しいネットワーク()うんは、"電脳世界のないネットワーク"……!」




 とりあえず「すべて」の方は読了しました。今回の後書きも長い(し展開に関係ある話はない)ので、興味のない方は飛ばしてください。

 ゲームで描かれていない設定もいろいろありますが、その設定に無理や矛盾があったりもするので、取捨選択や調整が必要そうです。少なくとも今ある設定は崩す必要がなさそうで安心しております。
 例えばミステリーデータは採用しません。「オフィシャルがわざとチップ等を道端にばらまいたのが青ミステリーデータ」とか苦しい言い訳すぎて……
 誤植も多く、PoNの情報もなく(LoNは当時未配信)、正直いい出来とは言い難い本です。ないよりはずっといいんですが。

 「デンサンシティいちの大都会」「デンサンシティ郊外」という表現があるので、「~シティ」は都道府県相当でよさそうですね。
 1では県という単語も出てきますが、警察同様なかったことにします。「タウン」と「町」みたいな使い分けの可能性もありますが、1にしか出てないので……
 首都の概念があるかはやはり謎でしたが、デンサンシティが首都相当のようです。デンサン空港がニホンの空の玄関らしいので。

 あと地味に大変なことが書いてあって、クリームランドの衰退に関して「プライドは、それを他の国の妨害だと思い」とあるんですよね。本当に思っただけならとんだ逆恨みに……
 なお、この作品では実際に妨害があったこととします。プライドは現実から目をそらして逆恨みするようなタイプではないと思うので。

 ニホンはアジーナの一部という話が(確か)2のNPCから聞けますが、やはりアジーナは単独の国のようです。
 R国は記述がなく(やはりシャーロでしょう)、Z国は本当の名前も書かれず、原作以上の情報もありませんでした。そのうち正式名称をアンケで決めると思います。
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