セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 1が終わるまでに10万字行かなそうでびっくりしています。いろいろ端折ってるので当然かもしれませんが。


18話 穏やかな別離

「おいおい、渡。なんで泣くんだよ。お前は勝ったんだぞ。それも完勝じゃないか」

「……こっちはええねん。兄ちゃんは、なんで平気なんや。負けたんやぞ」

「そうだな。アイロニーはもう保たない。これからバックアップをPETにロードしても、明日には間に合わないだろう。でもいいんだ。どうせ俺は最初から、逃げるつもりだったんだからな」

 

 そう言う二階堂の言葉は、戦う前と同じ軽い調子で、悔しさや怒りといったものは感じられなかった。

 

「逃げる……?」

「高跳びだよ。WWWが勝っても負けても、ニホンにはいられなくなる。研究は外国で続けるさ」

(外国に受け皿があるんか?)

「それより、アイロニーのデータをサルベージしてみろ。まだ手品のタネが残ってるはずだ」

 

 言われた通り、渡は倒れたアイロニーを漁る。するとジャンクデータに混じって、"(ディナイアル)アーマー"という名前のプログラムが抽出された。

 

「Dアーマー……」

「ワイリー博士は、4つの究極のプログラムをひとつにして究極のウイルスを作った。けどその前に、俺も究極のプログラムの一部をコピーして組み合わせて、戦いに使える形にしたんだ。そいつを組み込むだけで、ナビやウイルスの攻撃で受けるダメージは半減する」

(ほんまにアーマーやったんか。しかし、無属性オーラを持つ(ドリーム)ウイルスに対して、弱点属性のない(ディナイアル)アーマーって、なんかできすぎた感じやな)

 

 同じプログラムを親とする、同じような名前の被造物たちに対し、渡は疑いのような念を持った。誰を、というわけでもなく、強いていえば運命に対する念だった。

 

「ただ、コピーできたのがほんの一部だったから、やっぱり不完全でな。疑似人格プログラムに干渉して拒絶反応を起こし、普通のナビには装備できない。俺やお前のナビには関係ないが」

「それで"拒絶(ディナイアル)"か」

「ああ。間違っても隣近所に配ったりするなよ? 目も当てられないことになるぞ」

 

 データを抜き取られたアイロニーの消滅が加速し、その姿が電脳世界から消えた。

 渡はコントローラーを置き、袖で顔を拭う。脅威は去り、緊張が解け、渡は深呼吸した。少し落ち着いた。

 

「さて、渡。後はお前の好きにしたらいい。お前ほどの力があれば、俺よりずっとデカい夢を持つことも許される。お前が貪欲に学んできたのは、きっと何か、思いもよらないようなことをするためだと思う」

「そんなもん、ないよ。今は健康に長生きさえできたらええ」

「そうか? まあ、お前が言うならそれで――ん?」

 

 二階堂が渡以外のどこかへ意識を向け、言葉を切り、数拍無言になった。

 

「どしたん?」

「……ボンバーマンがやられたか。すまん渡、お前をWWWサーバーに通してやるつもりだったが、経路が途絶えた。とはいえ、アドレスを手に入れたなら光祐一郎がなんとかするだろうが」

 

 ボンバーマンは、倒されたならWWWサーバーへ繋がる道を断つために自爆するよう命令されている。渡がアイロニーと戦い始めた頃、熱斗も同様にボンバーマンと戦い始めていた。

 

(熱斗はもうやったんか)

 

 自身の介入なくして事が進んでいると知り、渡の頬が緩んだ。

 

「……最後に忠告しておくぞ。渡、俺がWWW構成員だってことを親父さんに話せ。渡には勧誘目的で近づいたんだ、ってな」

「……え?」

「このまま何もせずにいると、後でオフィシャルに俺との繋がりを疑われるぞ。そうなる前に親父さんに話をして、明日、秋原小学校校門奥にある校長像の中に入れ。改札があるが、簡単に突破できる。メトロでWWWの研究所まで行くんだ。WWWと表立って敵対すれば、疑われることはない」

 

 寝耳に水だった。渡は、終始身を隠して、あくまで熱斗を助けるだけの立場を取るつもりだった。二階堂の忠告は、それを固く禁じるものであり、渡はしばし呆然とした。

 

「……兄ちゃんがWWWやったばっかりに、こっちも隠れてられへん立場になった言うんか」

「謎のネットナビ・ベータのオペレータも、これで明るみになっちまうわけだ。ごめんな」

 

 二階堂の語り口は変わらない。冷蔵庫のプリンを勝手に食べてしまったかのような、日常のそれと変わらない重さの謝罪だった。

 渡もようやく、それに合わせられる程度には落ち着いてきていた。

 

「ごめんで済んだらオフィシャルはいらんねん」

 

 いつもの調子が戻ってきた、と思ったのか。二階堂はふっと笑った。

 

「……もう、通信のロスタイムも終わりそうだ。忘れるな、秋原小学校の校長像だぞ。余裕ができたら、いつか連絡するよ。元気でな」

「兄ちゃん……」

 

 渡が、"そちらこそ元気で"とも、"逮捕されてしまえ"とも言えず、言葉を選べないまま。

 ナビが完全にデリートされた二階堂は、電脳世界への通信経路を失い、その声が途絶えた。

 

(……全部が終わるまで隠し通して、目立つつもりはなかった。明日はもう何もせんと、熱斗には気兼ねなくヒーローになってもらうはずやった。ベータのオペレータとして身元が割れたら、今後どうなるかわからん。でも、こうなったら兄ちゃんの言う通りや)

 

 PETを置き、手紙を持って席を立つ。自室を一歩出れば全ては渡の事情など関係なく、居間に行くと、翔はソファに寝転んでテレビのバラエティ番組を見ていた。

 

「お父さん」

「ん? ……渡。目え赤いで。どうした?」

「これ、さっきの手紙や」

 

 渡は翔に手紙を渡し、必要なことを取捨選択して話した。熱斗がWWWと戦っていること、それに手を貸したこと、手紙の主が二階堂で、WWWの幹部だったこと。明日、WWWの計画が最終段階に達し、それを阻止するためにデンサンシティへ行くこと。

 体を起こした翔は真剣にそれを聞いていた。気疲れその他が入り混じった声で話す渡の声をよく聞くために、途中でテレビを消した。渡が話し終えると、翔は手紙を横にやり、渡の前に屈んで視線の高さを合わせ、両肩に手を置いた。

 

「なんで黙ってそんなことしとったんや、なんてことは言わん。渡は賢い。お前の人生をお前自身で決められる。そんな中で、よく打ち明けてくれたと思うし、WWWと戦う勇気のあるお前を誇りに思う。よく……よく、話してくれた」

 

 翔がゆっくりと話す。最後まで聞くと、渡の目からは、一度は収まったはずの涙がぽろぽろとこぼれてきた。

 渡は言葉にできなかったが、WWWと戦ったという最大級の秘密について、前向きに捉えてもらえたことが嬉しかった。そして、まだ他の数々の秘密を、これからも隠し通していかなければならないことが、後ろめたかった。

 

「哲生くんのことも辛かったやろ。こうして話してくれたんも、きっと、戦うより勇気の要ることやったんやろ。……お母さんにはおれから(はなし)しとくから、お前はいっぺん寝とけ。落ち着いて腹減ったら、飯食いに降りてきたらええ。な?」

 

 渡が頷くと、翔は目を細め、渡の頭をぐしゃぐしゃと撫でた後、一回軽く叩いた。

 

「よし! ほな、行き」

 

 渡は水分を摂ってからまた部屋に戻り、ベッドに潜り込んだ。何も考えないように努め、夜まで眠った。




 11話のアンケは次話投稿時に確定します。
 13話アンケで「(増や)せ」を選んだ方は、14話後書きのチェックをお願いします。
 (展開に関係する意見の募集です)

 アンケ経過が中々面白い。上三段の分布はそこそこ意外です。きれいな昇順か降順になると思っていました。
 先延ばしが少ないのは予想通りでしたが、盲信が割と多い辺りがとても怖い。何か特殊な趣味をお持ちの方が多いんでしょうか……?

 今回もアンケがあります。後書きはめちゃくちゃ長いですが展開関連の意見募集とかはないので、アンケにご用の方はスクロールしてください。

 そろそろ「1」が終わるので、キャラの話でも。暇つぶしになれば幸いです。

~キャラの話 二階堂哲生&アイロニー~
 二階堂がこういう役回りになったのは、まずオリキャラは最小限にしたいという方針があって、その上で「主人公の日常を補強するために、原作にいない知り合いが欲しい」「主人公の有能設定を補強するために師匠が欲しい」「主人公のための敵が欲しい(いないと原作がイージーになっただけの世界だから)」という3つの望みを一挙に解決するためでした。兄兼友人兼師匠兼ライバル、みたいな。ポジション盛り盛り。

 当初はウッドプログラム編(林業プラント編)を追加して、ヒノケンやエレキ伯爵と同じようなWWW幹部の一人ってだけのつもりだったんですが、そもそも原作でウッドプログラムが超早期に回収されていることに気付き、ボツに。
 出すタイミングを考えた結果、次の案はWWWメトロ駅の門番として出して熱斗と二人で倒させるというものでしたが、WWWのテレビジャックが行われた後だと本文中の理由で渡が動きづらく、ボツに。メトロ駅の電脳内はトロッコとトラップを使ったあみだくじ的ギミックを設置する予定で、捨てるにはそこそこ勿体ないものでした。後述の通りアイロニーは鉄ナビなので、鉄道と鉄をかけたステージでもありました。本当に勿体ない。
 で、そもそも考えている間にストーリーが進みすぎて、「今から出るタイミングってボンバーマンと並行してしかないのでは?」ということで、急遽出ることになりました。ちょうどボンバーマン編の展開で渡をどう動かすか悩んでいたので、渡りに船でした。投稿が遅れた理由です。

 二階堂がWWW団員として活動することになった動機は概ね本人の弁の通りで、人間の暮らしを便利にしたいという気持ち、人間の暮らしを侵蝕する電脳世界を否定する気持ちがあります。暗い過去とか渡の才能(※厳密には違う)への嫉妬とかそういうのはなく、兼任ポジションの多さに対してキャラ付けは薄味だと思います。

 もうちょっとだけでも二階堂に思い入れを持ってもらえるような話を序盤に入れるべきだったと自分でも思うのですが、日常回のネタが思いつかなかったのと、オリキャラ同士でただの日常回やっても読む方は面白くないのでは、というのがありました。前者9後者1くらいで。

 ナビの「アイロニー」という名前は、「ネットナビの生きる場所を壊すためのネットナビという皮肉な存在だから」という由来から二階堂がつけました。ネットナビを道具と言い切りつつ、そこそこ凝り性かも。
 メタ的には皮肉を意味する英単語ironyと、鉄を意味する英単語のironをかけてます。二階堂の名前が哲生なのも鉄とかけてます。
 当初は名前を「メタルマン」「アイアンマン」「アイロンマン」のどれかにする予定でしたが、全部ボツになりました。理由は恐らくお察しの通りです。

 「心のない高性能ナビ→戦闘マシーン」ということで外見も、全身が鉄、全身が凶器、というイメージで、とりあえずトゲと刃物を生やしました。膝の奥の手は飛び出しドリルの予定だったんですが、後々脛に棘を生やすことになってボツになり、膝から何が出るかは結局決めていません。ひょっとするとビームかもしれません。

 「ベータと同じβ版ネットナビである」という設定がついたり外れたりし、最終的に外れました。セキュリティ破りと戦闘に特化している、ベータと似たようなナビ、という点だけは最初に決まりました。ライバルということで。

 ナビとしての純粋な性能はベータを大きく上回ります。ベータが弱い(古い)のと、アイロニーが強い(カスタムされている)のとで差は大きいです。その上からDアーマーを着てるので、オペレータが互角なら絶望的な相手になります。
 Dアーマー抜きだとヒノケンやエレキ伯爵と同程度ですが、DアーマーありだとNo.1幹部のマハ・ジャラマより強いです。ラスボスクラス。

 あっさり負けて退場しましたが、二階堂の出番はこれっきり、なんてことにはなりません。忘れた頃に出てきます。

 ※下記アンケの結果に関係なく、外伝作品のストーリーはやります。

(18話)PoN、GP、4.5、LoNについて(「知ってる」はプレイ経験に限らず、ググったり動画見たりも含みます)

  • キャラも話もだいたいわかる
  • 半分くらいわかる
  • キャラはわかる
  • 全然知らない
  • 作品の存在すら今知った
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