セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 誤字報告ありがとうございます。あれは多分ドリームビットです。大切に育ててあげてください。

 タイトル変えました。どうでもいい話ですが、ロックマンエグゼのタイトルから「バトルネットワーク」が取れるのは「4」からです。これも「3」で一区切りってことが感じられるポイントのひとつですね。

 原作の登場タイミングで得票数が変化するという事実が浮き彫りに。
 次の機会があればもう少しうまくやる必要がありますね。
 とりあえずアンケートは締め切りました。この段階でダブルスコアはもうどうしようもないので……

 思いの外長くなりました。


24話 デカオ家電を買う

 青い空を流れる白い雲。そこへ届こうかという超高層ビルが立ち並ぶ。その密度は、一体どれだけの建物が日照権を得ているのかと心配にさせるほど。

 それらを縫うように敷設された超高度ハイウェイを、3機のスーパーマシンが駆けていく。遠目には、赤、緑、黒の点が線上を進んでいるように見える。

 ハイウェイには壁がないが、いずれも巧みなコーナリングで線上にしがみつき、急激な減速と加速を繰り返し、誰よりも速く、誰よりも先へと争っていた。

 

 ほぼ直角の曲がり角に差し掛かった時、それは起きた。緑のボディに黄色のラインが入り、エンジンがむき出しになった凶暴そうな大ぶりの車両に、白と赤で二重に縁取られた黒い車両がぶつかる。

 落ちれば数百メートルは真っ逆さまという状況で、躊躇いは一切見られなかった。意図的な追突――攻撃だった。

 

「ちっ、邪魔だ!」

 

 ガツンガツンとぶつかってくる黒いマシンを振り払おうと、黄色のマシンが猛回転。回転に巻き込まれた黒いマシンが弾き飛ばされ、コースの外に放り出された。

 

『スピネル選手、コーナーで仕掛けたがコースアウト! 返り討ちに遭ってしまったァ~! これで残るマシンは2つ。最終ラップは、ジーン選手とマッハ選手の一騎打ちだ!』

 

 都市上空を飛ぶ楕円形の飛行船に吊り下げられたようなもの、あるいは高層ビル壁面が丸ごとそうなっているもの。都市のあちこちに浮かぶ立体映像モニターに、反撃の瞬間が映され、合わせてMCの実況音声が流れる。

 

「待ちやがれ!」

「……!」

 

 黄色い危険重量級マシン――マッハ機がコーナーを抜け、エンジンから工事現場もかくやという轟音を響かせて加速する。向かう先には、赤と白のツートンカラーのバイク――ジーン機。

 プロテクターやフルフェイスヘルメットこそ身につけているが、ほぼ生身といっていい状態で、この狂気のハイウェイの内側をキープしている。よそ見することも、振り向くこともない。

 加速したマッハ機がジーン機の後ろに迫る。白い線の立体映像――ゴールラインもまた、それぞれの視界の中で大きくなっていく。

 

「今だああっ!」

「!!」

 

 マッハ機とジーン機が接触するという瞬間で、それぞれ、何かを仕掛けようと身じろぎし――

 

 ――全てが闇の中に消えていった。マシンたちも、コースも、街も、空も、光も、音も。

 

 

……

 

 

 WWW壊滅からおよそ一週間後、土曜日。

 

「ああーーっ!?」

 

 大柄でたらこ唇の少年、大山デカオが、胡座をかいてコントローラーを握ったまま叫ぶ。その視線の先には、何も映さなくなったテレビ。

 デカオの横で、その大声に渡がビクッと震えた。デカオは立ち上がってずんずんと詰め寄り、テレビをバンバンと叩き始める。

 

「このヤロっ! 今オレさまが勝ってたろうが!」

「あー……」

 

 後ろから渡がテレビを観察する。突如映像が切れたテレビは、映像を映してこそいないが、電源が切れたわけではなかった。

 

「デカオくん、寿命です。バックライトは生きてますが、画面に色を出す部品がダメになってます」

「なに!? そ、それじゃ修理か?」

 

 テレビにバンッと手をついたままの姿勢で、デカオが振り向く。

 

「修理……より、買い替えた方がよさそうです。判断はお任せしますが」

「ぬぬぬ……」

 

 デカオが腕を組んでテレビを睨むが、テレビはうんともすんとも言わない。やがて眉を八の字にして、今までより小さな声で渡に話しかける。

 

「なあ渡、お前を友達と見込んで頼みがあるんだけどよ……」

「お父さんに訳を話せば、ちゃんと後でお金は振り込んでもらえるでしょう。後で返してくださいよ」

「当たり前だ! 友達に金をせびるようなヤツはオトコじゃねぇ!」

 

 拳を握って力説するデカオに、渡は苦笑した。

 

「……それじゃ、電気街にでも行きましょうか」

「おうよ!」

 

 ゲーム機をそのままに、デカオと渡は大山宅を出て、雨の中メトロ駅へ向かった。

 行き先は、電気街駅。

 

 

……

 

 

 デンサンシティ、電気街。名前から受ける印象とは違い、店が並ぶ通りではなく、街そのもののことを指す。

 行政が直々に"電気街"と定義したここは、名実ともに電気の街。街のどこを切り取っても、電気に関する専門店ばかりが見えるだろう。

 表通りでは新製品入荷や高価買取を掲げる看板がピカピカ光り、一歩路地に踏み込んでみれば、ジャンクショップや機械部品の販売店が顔を見せる。

 

 秋原町に住むメイル、デカオ、やいとは、いずれも両親の都合で一人暮らしを余儀なくされている。

 デカオの場合、両親は離婚しており、親権を持つ父親と弟のチサオはアメロッパで暮らしている、という事情があった。

 生活費は仕送りを受け取っているが、このように大きな買い物をすることは基本的に考慮されていない。テレビの代金を実際に受け取れるのも、インターネットの国外エリアからの送金となると時間がかかる。なので渡は、まずテレビを買ってから、後で説明して代金を受け取ろうという話をしたのだった。

 

 デンサンタウンも休日の人通りは多いが、電気街はそれ以上だ。電気街は同じものを扱う店ばかりであり、店をはしごして最安店を探す者も多い。そういった人々が用事を済ませるまで長時間街をうろついているおかげで、この街は実際の来訪者数よりも賑わって見える。

 今日は雨が降っているので比較的マシだが、それでも行き交う傘同士がしょっちゅうぶつかり合う。

 

 渡とデカオが向かったのは、電気街の表通りにおける最大規模の店舗、ジョーモン電気・デンサンシティ電気街店。ジョーモン電気は、日本全国に支店を持つ大企業。基本的に、ここで買い物をすれば外れはない。

 

「おい、渡、あれ見てみろよ」

「ん?」

 

 見れば店先に、"ネットワーク犯罪対策推進キャンペーン実施中! ウイルスバスティングに成功した方は全品20%オフ!"と書かれたのぼりが置かれている。運のいいことに、割引キャンペーンが行われているようだった。

 

「このデカオさまのバトルテクニックが家計の助けになる時が来るとはな。行くぜ渡!」

「いや、テレビを選ぶのが先ですからね? 手ぶらでカウンターに行っちゃだめですよ?」

 

 腕まくりしてあらぬ方向へ行こうとするデカオ。そのごつい肩に渡が下から手を掛けて止める。

 

「わ、わかってらぁ!」

 

 店内に置かれた家電は色とりどり。僅かに青みがかった蛍光灯に照らされた真っ白な空間で、渡は少し肌寒さを感じた。のしのしと自信満々に歩いていくデカオの後についていくと、早くもデカオは買う物を決めたようだった。カウンターで渡す商品IDカードを手に取って振り向いたデカオの後ろに、赤い"格安"の文字が見えた。

 

「よし、カウンターに行くぞ!」

「もう決めてしまったんですか?」

「テレビなんてどれもそんなに変わんねぇだろ」

(えーっと……)

 

 テレビの詳細が書かれたプレートに、渡がさっと目を通す。

 この世界は科学が発展しているが、ネットワークに重きを置いており、全てにおいてSFマンガのようになっているわけではない。

 テレビに関しても、今後どんどん薄型の液晶テレビが台頭して行くのだが、今はまだブラウン管テレビがあちらこちらで見られる。といっても、調子が悪ければプラグインしてメンテナンスを行うこともできる、この世界らしいハイテクさを備えているのだが。

 

 デカオが選んだのは、今使っているものと比べれば新しいが、最新というわけでは決してない……といった位置のブラウン管テレビだった。

 このような大型家電量販店で古めのモデルが取り扱われていることに違和感を覚えた渡が、近くに立っていた店員に話を聞くと、メーカーへの発注の際に型番を間違えてしまったらしく、スペースを空けるために赤字覚悟でとにかく早くはけさせたいということだった。

 話をしている横で待っていたデカオが、痺れを切らせて渡に声をかける。

 

「おい渡、もういいか?」

「そうですね。お待たせしてすみません」

 

 移動し、いよいよカウンターで購入手続きという段。

 

「こちらのテレビが1点ですね。ただいま、ネットワーク犯罪対策推進キャンペーンというものをやらせていただいてまして、当店が用意したウイルスの駆除に成功された場合、全品20%オフとなるんですが、いかが致しましょうか?」

「もちろんやるぜ!」

 

 デカオは力こぶを叩き、威勢よく宣言した。若い女性店員は営業スマイルを崩さず、カウンターの裏から金属製のマグカップを取り出した。どういう機能がついているのか、全体的に分厚く、プラグイン用の端子がついている。

 

「こちらのマグカップにプラグインしていただき、ウイルスバスティングを行っていただくことになります。制限時間はございませんが、ナビのHPが半分以下となった場合には強制プラグアウトプログラムが起動いたします。また、そのプログラムがあるため基本的には安全ですし、いつでもプラグアウトでのギブアップが可能となりますが、万が一デリートされてしまった場合、当店は補償いたしません。それでもよろしいでしょうか?」

(早口やなこの店員さん。できる!)

「おうよ! このデカオさまとガッツマンにかかれば、どんなウイルスだろうと瞬殺だ!」

『瞬殺でガス!』

 

 デカオが取り出したPETからも威勢のよい声がした。

 

「かしこまりました。では、こちらの端子にプラグインの方お願いいたします」

「プラグイン! ガッツマン.EXE、トランスミッション!」

 

 間違えて壊さないだろうな、という渡の懸念をよそに、デカオは普通にプラグインした。

 

 マグカップの電脳の中は狭い。単純な機能しかないのか、プログラムくんの数も少なく、彼らは予めウイルス避けの鉄格子を挟んだ向こう側に避難しているようだった。

 鉄格子は緑の噴流推進鳥(キオルシン)3体に何度も体当たりされてなお歪まないが、中にいるプログラムくんたちは怯えている。

 

 プラグインしてきたガッツマンの体は通常のネットナビより一回り大きく、重機を思わせる黄色と白のカラーリング、角張った頭部からせり出した下顎。"ゴツい"という言葉がとにかく似合う。渡は、ただでさえ狭い電脳世界が、より狭く見えるような気がした。

 3体のキオルシンが、プラグインしてきたガッツマンに気付いて回頭する。尾の部分が光り始めた。

 

「ガッツマン! タイミングを合わせろ!」

「ガッツでガス!」

 

 ガッツマンが右拳を引いて構える。3体のキオルシンが光を爆発させ、突進を開始した。

 

「今だ! ガッツパンチ!」

「ガッツ!」

 

 連なって飛ぶキオルシンのうち先頭の1体が、渾身の拳打を受けてバラバラのジャンクデータとして飛び散った。2体目が続いた時、デカオがチップデータを送信する。メットガードだ。

 横で見ている渡が、片手で口を覆う。

 

(ちょっと無理があるな。そもそもガッツマンに合う戦法でもないやろ)

 

 ガッツマンを守る黄色の盾が展開される……途中、そこにそのまま突っ込んできたキオルシンが、ガッツマンに衝突する。

 

「ぐわーーっ!?」

「ガッツマン!」

 

 盾の展開は中断され、キオルシンはガッツマンのHPを削りながらその体を貫通し、宙返りして元の位置へ向かう。ひるんだガッツマンは偶然3体目の突進を避ける格好になったが、体勢を整える頃には、残り2体のキオルシンがまた正面から突撃してきていた。

 

「お、落ち着けガッツマン! もう一度ガッツパンチだ!」

 

 PETを持っていない方の手をブンブン揺らし、指示を出すデカオ。

 

(うーん……まあ、勝てはするやろな)

 

 

……

 

 

「――お買い上げありがとうございました! またのご来店お待ちしております!」

 

 支払いを済ませ、配達及び設置の日時を決めた後、2人は店を後にしていた。

 

「まあ、いいじゃないですか。勝ったんですから」

「ダメだ! あんな勝ち方じゃ納得いかねぇ!」

 

 あの後、ガッツマンはとにかくガッツパンチを繰り出し、キオルシン3体を全滅させた。しかし、1回突進を受けた後は冷静さを欠き、攻撃を避けることを忘れ、タイミングもろくに取れず。

 ガッツマンの耐久性に任せて何度も突進を受けながら、パンチを数打って当てて勝利したという、快勝とは言えない勝ち方だった。

 

「こんなことじゃ熱斗にもお前にもリベンジなんてできねぇな……」

「感覚が麻痺してるだけで、開けた場所でキオルシン3体って、普通に難題ですよ。光くんや僕に勝つことに、どうしてこだわるんです?」

「オレさまは秋原小最強のネットバトラーなんだ。だから、勝てねぇといけねぇだろ?」

 

 当たり前のことを年下に説明するような口調で支離滅裂なことを言うデカオに、渡は呆れて肩をすくめた。

 

「めちゃくちゃですね……というか、それなら僕は関係ないでしょう」

「お前がコートシティに住んでようと、いっつも一緒に遊んで、ネットバトルで勝負してるなら、そんなの関係ねぇんだ! 例え熱斗に勝っても、お前にも勝てなきゃ、胸を張って秋原小最強は名乗れねぇ。違うか?」

「……」

 

 店内では肌寒さを感じていた渡だったが、デカオの言葉を聞いて、胸が熱くなった気がした。

 

「……いや、やっぱり僕は関係ないと思います」

 

 頬を緩ませつつも、その返しはどこまでも冷静だった。デカオにはそれが、挑戦者に対する不敵な笑みに見えた。

 

「こんにゃろ、わかんねーやつだな!」

「いたっ、痛い!」

 

 傘を差したまま、デカオの大きな手が渡の肩を強く叩き、渡が痛みに顔を顰めた。

 

「いいか渡、オトコってのはな――」

 

 

 デカオのオトコ語りは、メトロでの移動を挟んで15分程、絶え間なく続いた。




 後書きがいつも長い気がします。今回は3本立てです。
 アンケートもあるので、ご用の方はスクロールしてください。

①デカオの独自解釈
 今回はデカオ回でしたが、書くにあたって独自解釈がつきました。デカオの両親が離婚している、という点ですね。
 ゲームの都合で親の存在が消されがちなエグゼ世界ですが、ここがこうなったのは意外でした。光家って恵まれてるんだなって……

 判断材料となる事実はこちら。

・デカオの部屋がとても散らかっていること。
・デカオが母親について一切口にしていないこと。(※似たような境遇のメイルとやいとの両親については言及されている)
・父親の仕事の都合で、父親と弟のチサオの2人がアメロッパで暮らしていること。
・チサオはデカオをアメロッパへ連れて行こうとした。

 以下が考察です。

 両親が健在で、父親が仕事の都合でアメロッパに行くというのであれば、ニホンへ仕送りをし、チサオとデカオの面倒を母親が見る、という形でよいはずで、わざわざ兄弟を引き離す理由がありません。あるいはそもそも、一家で行けばよいという話でもあります。
 (よしんばニホンに母親とデカオが残っているというという形だとしても、デカオの部屋の散らかりようと、デカオが母親について一切触れないのは不自然ですし、母親の面倒見が悪いのでなければ、部屋はしょっちゅう掃除されているでしょう)

 また、「3」でチサオはデカオをアメロッパへ連れていくためにニホンに来た後、ホームシックになったという理由でアメロッパにすぐ帰っています。
 どうしてもすぐに戻る必要があるのでなければ、母親が病気なら見舞い、亡くなっているなら墓参りに行くはずです。「3」のチサオ関連でも母親の話が出て来ない以上、離婚と見る他ないでしょう。

 ではなぜデカオ一人でニホンにいるのか? というと、デカオの「秋原小を~」という発言が本気と捉えるしかありません。その根拠として、デカオの主体性と勇気が並外れていることが挙げられます。
 メイルややいとと共に、シリーズ通して度々熱斗の手助けをしてくれるのはもちろんですが、「1」のスクールジャック事件では、動こうとした熱斗を押しのけてまで、自分とガッツマンだけが行くことにこだわっています。ガッツマンのデリートというリスクを承知でそうするのは、見栄を張る気持ちだけではできないことで、この点が他の2人より抜きん出ています。
 後々秋原町の町長になる人間ですし、他者を先導するというか、他者の前に立つという気持ちが強いのは間違いありません。
 乱暴なところがないとも言えませんが、本人の言うように、実に男らしい性格です。情に厚く、感動して涙を流すシーンもありますし。
 チサオが来た件を考えると、父親に無理を言ってニホンに残っているのでしょう。小学生とは思えないメンタルです。将棋好きだし渋い男です。

 以上、考察でした。後書きはまだ続きます。

②「すべて」の杜撰さ
 「すべて」に書いてある歴史がめちゃくちゃなのに気付きました。
 ロックマンが生まれた後にプロトの反乱が起きてるとか、もうどうやっても信用できませんねこの本……

③日常回書けない問題
 日常回って難しい……何書けばいいかわからない……
 と思っていたんですが、調べてる内に「ファンディスク」という単語に行き当たり、「あ、テイルズオブのドラマCDみたいなのにすればいいのか」ということに気付きました。
 どのみちどんな話にするか思いつく必要はあって苦労するのですが、ある程度助けになりました。今回はリアルの近況をネタにしました。
 日常回やらなきゃ、ということだけに囚われていたので、日常回とはどういうものか、まで頭が回っていなかったんですね。ひとつ成長した気がします。

(24話)次回以降の内容(票数多い順に消化?)

  • 今更聞けない?やいとが教えるPAの不思議
  • NWがグレードアップするとどうなるの?
  • ウラの彼方に躍る影
  • みゆきと埋め合わせ
  • 白の爆発
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