セキュリティ絶対突破するマン.EXE 作:エターナルマン.EXE
導入部分が思いつかなかったのは内緒です。
もう少しすれば夏休み……という時期には、"テスト"や"ツーチヒョー"などという怪物が口を開けて待っているもので、その事情は秋原小学校においても例外ではない。
"今回に限っては、世界を救ったのだから、大目に見てもらえるだろう"などと考えていた熱斗の頬をメイルがぐにぐに引っ張ったりした結果、どっちを向いても住宅街の秋原町の中にでんと置かれた洋館――綾小路宅にて、勉強会が開かれることになった。
メンバーは熱斗、メイル、デカオ、家主のやいとの他、熱斗が道連れにする気持ちも込めて渡を呼び出したため、総勢5名となった。
綾小路家においてもやいとの両親は普段家にいないことが多く、この勉強会に際しても、昼過ぎから夕方にかけて子供たちによる貸し切り状態となる。
突如呼び出されたため遅れて到着した渡がインターホンを鳴らすと、やいとの執事役を務める持ちナビ・グライドが解錠して迎え入れ、渡はエントランスに足を踏み入れた。
エントランスの時点で既に、内装は"豪勢"とか"上品"としか表現できない有様で、渡は同じ金持ちの家の生まれながら、方向性の違いを感じていた。同じ美術品を並べるのでも、ただ集めている父親とは違い、組み合わせや配置も考えられているように思えた。
10秒ほど待ってようやく、やいとが1階奥から姿を現した。歩くのが遅いのは所作が優雅とかそういうわけではなく、単に体格の問題に見えた。
やいとは2学年の飛び級生であり、8歳で小学5年生である。成長期で2つ歳が違えば、当然一回り背が低い。やいとの場合はそれを差し引いてなお低い。髪も後ろできつく縛っていて、"むしろ低く見える努力をしているのでは"という邪推が脳裏をよぎったこともある。
幸いにして、その邪推を気取られたことは今の所ない。
「こんにちは、七代くん。あなたも災難ね」
「こんにちは、綾小路さん。まあ、貴重な友達の頼みですから」
「そんないい子ちゃんだから、光くんにいいように使われるんじゃない? たまにはビシっと言った方があいつのためよ」
「そうでもありませんよ」
(あんま甘やかして
「そう? ……ま、どっちでもいいわね。じゃ、行きましょ」
自分から振っておいて心底どうでもよさそうに話を切り上げたやいとの後について、勉強会会場たるサロンへ向かう。廊下に並べられた調度品や綾小路一族の像を横目に歩いていくうち、話し声が聞こえて……来なかった。
見れば席についている熱斗とデカオはうとうとしていて、メイルが隣の熱斗の肩を叩いている。
しかも、テーブルに置かれたグラスの中で男子二人の分だけ氷までなくなっていた。渡は表情を変えないまま頭を掻く。
「予想以上ですね」
(これはこれでええな)
「同じクラスメートとして恥ずかしいわね……2人とも!」
やいとが机をコンコンと叩くが、熱斗とデカオの反応は鈍い。
「どうしたもんかしら……」
「目覚ましに楽しい話でもしましょうか」
「なによ、紙芝居でもやるつもり?」
「それでもいいんですが、どうせならためになる話で。……光くん?」
「んー……?」
呼びかけに応じる声にも力が入っておらず、既に1度世界を救った英雄とは思えない体たらくだった。メイルが頬をつねった。熱斗が飛び起き、椅子がガタンと鳴る。驚いてデカオも飛び起きた。
「いって! なにすんだよ!」
「人の話はちゃんと聞く!」
「……へいへい。それで、なんだって?」
熱斗がため息をつき、それから渡に聞き返した。
「ネットバトルにおいて最も強力な攻撃手段はなんだと思いますか?」
「攻撃って……バトルチップだろ?」
「ふんっ、甘いわね……」
渡の横でやいとが腰に手を当て、鼻で笑ったので、熱斗はむっとした顔でそちらを見た。
「なんでお前がえらそうなんだよ」
「渡くん、その講義、あたしが引き継いで構わないわね?」
「えっ? ええ、どうぞ」
(……説明したかったけど、まあ、ええか)
少し残念に思いつつも、やいとに先を促す。やいとは満足そうに頷き、続ける。
「あんたは忘れてるかもしれないけど、前にメールで話したことあんのよ。キャノンを3枚転送したら別のチップになった、ってやつ」
「……ごめん、覚えてない」
(渡が言うような強力な攻撃手段なら、忘れるはずないんだけどなぁ……)
熱斗は首を傾げたが、どんな話しかより、なぜ忘れてしまったかが疑問だった。
「でしょうね。だから、このやいとちゃんが一から解説してやろうってわけよ。まず、キャノンを3枚転送したら別のチップになった、みたいな現象と、それでできたチップのことを、
「その、P.A.って強いのか?」
「そりゃもうスゴかったわよ。正直あたしはあんまりウイルスバスティングも得意じゃないから、よくわかんない内に終わってたけどね」
「なんだよ、そんな話じゃ強いかどうかわかんねーじゃん」
頬杖をつく熱斗を見て、渡がフォローを入れる。
「いえ、強いですよ。P.A.には様々な種類がありますが、どれも強力です。そこは最初に話した通りで、大抵のバトルチップでは足元にも及びません」
「そうなの!?」
「そうなのよ! なんたって、科学省やオフィシャルが真面目に研究してるくらいなんだから」
「じゃあ、なんでみんな使わないんだよ? キャノン3枚入れたら使えるんじゃ……あっ」
言って、熱斗は思い出した。やいとのメールを受け取った後に、何度もキャノンを3枚揃えて状況を再現しようとしたこと。そして、できなかったことを。
つまり、自分で使えなかったために存在を忘れていたのだった。
「思い出した! それ、オレも試したんだよ! でも何回やっても、別のチップになんて変わらなかったぜ?」
「まさにそれが問題なのよね。みんなが使わない理由であり、科学省やオフィシャルが知恵を絞っても解決しない問題。トリガーとなるチップの組み合わせは噂や証言で明らかになってるのに、誰が何回やっても中々姿を現さないってわけよ」
やいとがやれやれと肩をすくめ、熱斗は口を尖らせる。
「えーー、使えないと意味ないじゃんか」
「それが使えるようになれば、というのが理想なんですが……成果は全くと言っていいほど挙がっていないそうです」
(自分も散々試してダメやったし、まさかP.A.フォルダがゴミになるとは思わんかったわ)
まだウラを見つけてもいなかった頃を思い出し、窓の外を見る渡。
「それで、話ってそれで終わり?」
「このやいとちゃんを舐めてもらっちゃ困るわね。人づてに聞いたネットバトラー耳寄りな話があんのよ。なんでも、偶然データを取れたP.A.を部分的に再現するバトルチップが開発中らしくてね」
「マジかよ! それがあればオレもP.A.を使えるのか!?」
「僕も初耳です」
P.A.を部分的に再現するバトルチップ、というものに、原作知識含めて心当たりのない渡は、素直に驚いていたし、好奇心を刺激されていた。その目の輝きを見て、やいとがしたり顔をする。
「"ベータソード"って呼ばれてるP.A.を元に作られてて、1枚のチップでも使う度に違う攻撃ができるんですって。名前はまだ決まってないみたいだけど」
(バリアブルやんけ! そんな関係があったんか……)
"ベータソード"は複数種類のソード系チップを内臓したようなP.A.で、使用後はそれらのチップの効果を合計6回使用できる。後に生まれる"バリアブルソード"は、使用時のコマンド入力で攻撃範囲や回数が変化するチップである。
「ベータソードかぁ……渡のベータと関係あるのかな?」
「流石に偶然でしょう」
まさか、と手を小さく振る。
「あと、デカオが好きそうなP.A.のもあったわね。"ビッグストレート"ってP.A.がベースで、遠くまで飛ぶパンチができるとか」
「おおっ!? それは聞き捨てならねぇな」
「ふふん、そうでしょ」
(今度はフィスト系……か? 「3」のガッツパンチかもしれんけど、それやと遠いから、多分フィストやんな。なんか、普通にためになる話やなあ……)
頭の中で答え合わせをしながら頷く渡。
"ブロンズ"、"シルバー"、"ゴールド"の枕詞を持つフィスト系チップは、コマンド入力でパンチを飛ばすことができる。チップによって3方向を攻撃したり、1方向を連続で攻撃したりといった差はあるが、パンチが飛ぶという点では共通している。
「P.A.を元にしたチップかあ……使ってみたいなー」
「じゃ、目も覚めてきたみたいだし、勉強を再開しましょうか。七代くんここまで待たせっぱなしだし」
「えー! もっとバトルの話しよーぜ!」
「趣旨違うでしょーが! はい、七代くんもそっち座んなさい」
抗議する熱斗を一言で黙らせ、場を仕切るやいと。
(自分ももうちょっと聞きたかったわ……キャノン系の威力上がったのとパワードキャノンが関係してるとかありそうで気になるやん……)
渡もそれに従いつつ、内心では話の続きを聞きたいと思っていた。
その後、勉強会は粛々と行われ、結局、渡が帰るまで、P.A.に関するマル秘情報の続きは公開されなかった。
今回もアンケートがあります。
もったいない精神で毎回何かしらのアンケートを設置していますが、アンケートのネタに困るのは何か本末転倒な気がします。いや今回はそこそこ重要なアンケートですが。
書くだけ書いて掲載するのを忘れていたので、渡の設定まとめを。
~キャラの話 七代渡&ベータ~
「主人公のことがわからないからダメ」という話があって慌てて情報を吐いたので、大方のことは明らかになりましたが、元々はいろんな設定が隠されたまま話が進む予定でした。明らかにして正解だったと思います。感想を下さる方々には頭が上がりません。
渡はロックマンエグゼシリーズに明るい転生者で、転生後、生まれた時から自我がはっきりしてました。体が自由に動かせるようになるまではさぞ辛かったことでしょう。
前世の記憶がある状態で若い体を手に入れたので、初期経験値と吸収力の相乗効果でえらいことになっています。アクションカードゲームの経験をリアルタイムのネットバトルに活かせるのもありますが、強いのは単純に超スピードで上達しただけ、という部分が大きいです。その土台にエグゼシリーズのプレイ経験と知識があるので、原作の人物は誰も追いつけません。
ただしそれはコントローラーでナビを操作している場合に限った話で、例えばこの世界で渡がロックマンを口頭オペレートすると格段に戦闘力が落ちます。
金持ちの家の生まれになったのは、当初は登場ネームドナビ全員と戦う予定があった名残です。スカルマンと戦う理由を作ろうとして、「骨董品蒐集の趣味を持つ親がいることにしよう。それなら金持ちになるしかない」という経緯がありました。骨董品だけ集めている人間だと露骨すぎるので、美術品全般ということになりました。
その後にベータの設定の都合で骨董趣味設定が活きたりした後、渡の性格から、省くところは省く方針となって現状に至ります。サロマやマサは断水事件に介入する前後でついでに戦う予定だったので、専用の設定はありません。そして2人して省かれました。
名前や性格はとにかく「普通の人」をイメージしています。探せばいそうな名前。ロックマンエグゼシリーズが「6」までなので、「七」の字を入れることは最初に決めていました。深い意味はありませんが。
父親が「翔」で祖父が「昇」なのは渡の名前に合わせて似たような名前にしています。鏡子は嫁入りしてきた立場なので全く違う感じの名前をテキトーに考えた結果で、元絵描きの設定は翔側の設定と名前の「鏡」の部分からついでに思いつきました。
住んでいる所がデンサンシティから離れているのは、ロックマンエグゼの世界に生まれてかつデンサンシティに、というのは都合がよすぎる、リアリティがなさすぎる、というなんとなくからです。
それでついでに方言キャラにしようと思ったのですが、方言に詳しいわけでもなく、書けそうなのが関西弁くらいだったので、関西かつアキンドじゃないところとしてコートシティを考えました。「コート」は「古都」と「京都」を混ぜています。わかりやすい。
ナビの「ベータ」という名前はβ版ネットナビという意味からつけましたが、他に気取ってなくてそれらしい名前が思いつかなかったというのもあります。気取った名前をつけると呼ぶ時恥ずかしくなるので。アイロニーは恥ずかしいと思います。
タイトルの「人格破壊済みマン.EXE」は勿論ベータのこと……になる予定だったのですが、原作ストーリー見直すと昔のナビには人格がないという話があったので、そこから思いつきでいろいろ設定を変更しました。
当初は「人格に割くリソースを全部戦闘力に割り振ることで、ノーマルナビでありながらハイエンドにも食らいつける。戦いに勝つためだけの非道なカスタムであり、周囲には白い目で見られている」みたいな設定でした。それが昔のナビということになり、昔のナビだから不具合があるということになり……気付けば面白いことに。
そういう意味ではアイロニーは旧ベータともいえます。(オペレータが)兄という点もあわせるとロックマンに対するブルースみたいで、やっぱり面白い。
後にスタイルチェンジやソウルユニゾン、クロス、獣化を会得し、ナビカスも使えるロックマンに対し、外付け強化パーツをつけようと考え、思いついたのがDアーマーで、敵由来のそれを獲得するイベントとして考えたのが二階堂との戦いでした。
今のところはこんな感じですが、未開示の設定や迷ってる設定などまだあります。明らかにならないままエタらないように頑張ります。
~アンケート項目~
試験的にアンケート項目を外側に出してみます。
①オリジナル要素のために原作を捻じ曲げるようなことさえなければ、いくらキャラを増やしたり新しい用語を作ったりしてもよい
②原作で出番少ないキャラをより活用することを優先しろ、そのためなら新しい話を作ってもよい
③原作の裏話程度ならともかく原作にない大規模な事件とかは許せない
④渡と二階堂の存在だけでも堪忍袋の緒が切れそうなくらいだからもうやめろ
⑤その他orアンケ結果見せろ(その他として選択した場合、感想欄で詳細をお願いいたします)
(X4話)ストーリーの完全オリジナル要素について(キャラ、世界観設定、チップ等)
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①※アンケート欄の上に
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②※項目の詳細があります
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③※そちらをご参照の上
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④※対応する番号へ
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⑤※投票をお願いします