セキュリティ絶対突破するマン.EXE 作:エターナルマン.EXE
原作ストーリーは開始しますが、実質説明回です。
ナンバリング変わって新しい用語が増えるとこういうことになるんでしょうか……
27話 勇気も希望もない
ネットワークのアップグレードから数週間後。
秋原小学校、夏の終業式の日。
渡はこの日を事前に調べ、生徒でもないのにPETのカレンダー機能に記録していた。WWWの次となる脅威、ネットマフィア"ゴスペル"が事件を起こし始める日だからだ。
起床後、出かける支度をしてから降りた渡を見て、鏡子が首を傾げた。平日は出かけること自体が少なく、午前ともなれば勤務のために更に少ないためであった。
「朝から出かけるなんて珍しいわね」
「うん。ちょっと買い物して、それから遊びに行ってくる。昼も外で食うわ」
「そう。わかりました」
2人でテーブルを囲んで朝食を済ませた後、渡は自転車でメトロの駅へ。向かう先はデンサンシティの電気街。
今日事件が起きるタイミングは昼過ぎ、場所は秋原町。なので、まずはほどよく近い場所で時間を潰し、ついでに必要なものを買って、それから秋原町に合流するつもりだった。
(いつまでもベータと一緒の所に入れとってもかわいそうやし、まずはPET買おか)
ジョーモン電気に入店し、PETのコーナーへ。PETだけで棚2つが埋まっているところを右から左へ流し見て、品揃えをチェックする。
陳列されているうちの大半が、ニホンで圧倒的シェアを誇る
価格はピンキリだが、最安値も最高値もIPCブランド。価格競争でさえ、他の企業のものは見事に埋もれているように見えるが、それでも生き残っているのは、ニッチな需要を満たしているからである。
(どこもこんなもんか)
初めてPETを買いに翔と家電量販店へ行った際も似たような並びだったことを思い出す。IPCモデルで無難に高性能なものを選んで、それから一度も買い換えていない。なんとなくそのPETと同じものを探してみるが、見つからなかった。
(そら、何年も前のが店頭にあるわけないわな)
ふっと笑い、アイリスを入れておくためのPETを吟味する。
渡はこれから最長で一年、アイリスを外へ出さず隠し通すつもりでいる。WWWに存在・所在を知られるリスクを避けるには必要と考えてのことだった。
よって最優先の要件は物理的な故障耐性、他は二の次となる。前者は耐衝撃・耐振動・耐水圧・防塵防水などといった性能になるが、それらはおまけ扱いされるのが常で、それら自体を追求したモデルは非常に少なく、IPCからは販売されていない。
(すると、これか)
モックの一つを手に取る。黒くゴツゴツしたラバーで側面背面が覆われ、PETのサイズ自体が大きく、分厚くなってしまっている。
(見かける度に思うけど、ちゃんと在庫はけるんかこれ。いやまあ自分は買うんやけどな?)
"ラギッドターミナル"シリーズ。
ニホンで白物家電の企業として生まれ、ネットワーク社会化の際にPCへ進出、さらにその後、科学省よりPETの製造・販売認可を得た、
アメロッパ軍の定めた耐久性規格をベースに設計されていて、実際にアメロッパ軍の備品として納入されてもいる。
PETとしての性能が特段高いわけでもなく、一般人でこのモデルが好きだという者がいれば、軍事オタクかネタにしている者くらいである。
(軍事利用させへんために軍が採用するPET買うんも変な話やな……えーっと、後はイヤホンとカメラと――)
……
渡が買い物を済ませ、デンサンタウンの蕎麦屋で出汁の効いたカツとじ丼に舌鼓を打っていると、メールが届いた。デカオからだった。
『オレたちは終業式だったから、昼から休みで、市民ネットバトラーのことをオフィシャルスクエアまで聞きに行くんだけどよ、お前も暇してたら来ねぇか?』
"市民ネットバトラー"に"スクエア"。いずれも、今回のネットワークアップグレード以降に生まれ、広がった単語である。
端的に言えば、"市民ネットバトラー"は資格制度、"スクエア"は電脳世界に作られた町を指す。
WWWが壊滅しても、ネットワーク犯罪がなくなったわけではない。
むしろ、WWWがいかに恐ろしい存在だったかが人々の間に伝わっていくにつれ、防犯意識は高まっていった。
訓練や娯楽としてネットバトルを行うケースは今までにもあったが、それがさらに増加したのである。
そういった機運の中でニホンオフィシャルが制定したのが、"市民ネットバトラー"制度だった。
本来はオフィシャルでなければ禁止されているネットバトルを、試験で実力が認められた者には許可するというライセンス制度。
より困難な試験をクリアし、ライセンスのランクを上げた一線級の市民ネットバトラーともなれば、国内外を繋ぐリンクを通過できるようにもなるという、世界が認める国家資格である。
ネットナビは電脳世界上に社会を形成しているが、その活動はウイルスの存在のせいで、不便や危険を伴うものだった。
そこで、サーバーの機能をただそのエリアを維持することだけに絞り、エリアの広さも狭く限定することで、ウイルス自然発生のほとんど完全な抑止を可能とした、人工的な安全地帯、"スクエア"が考案された。
外部ネットワークとの間に、同様の安全策を施した入り口エリアをもう1つ挟むことで、スクエア内へのウイルス流入のリスクは更に低下。スクエアへ繋がるエリアを増やしたければ、スクエアではなく入り口エリアとのリンクを設置すれば問題なし。
これまでもインターネットの各所には偶然や努力でできた安全地帯があり、ナビたちはそこを憩いや商いの場としていたが、今回のネットワーク・アップグレードを機に、このスクエアの仕組みが世界中で導入され始めている。
デカオの言うオフィシャルスクエアは、そのスクエアのうち、ニホンオフィシャルが設置し、市民向けに開放しているニホンオフィシャルスクエアのことである。
始まったか、と渡は思った。
秋原小学校終業式の日、デカオの提案で熱斗たちが市民ネットバトラーサブライセンス(実ライセンスの前段階で、まだ効力がない)を受験し、入浴を理由に欠席したやいとが事件に巻き込まれてしまう、というのが今後の流れ。
事件というのは、犯人がガス湯沸かし器や換気扇をジャックして浴室内をガスで満たすというもの。
そう、人死にが出得るのである。渡が珍しく平日午前にデンサンシティへ来たのは、ここに、確実に、介入するためであった。
では、メールが来た今、渡がここで取るべき行動は何か。
(秋原町にはおらんと介入が間に合えへん。かといって今ほんまに秋原町におって、熱斗ん
デカオの質問にYESと答えても、NOと答えても、不都合がある。正道は進めない。
(デカオ、すまん)
なので渡は、メールを無視して駅へ向かった。
①26話の設定の今後
案の定、ベータの防御力の設定に無理が出てきました。ドリームウイルスの攻撃に耐えた後、Dアーマー外したとはいえメットールに吹っ飛ばされて転がるのはおかしいですね。最弱相手なんだから本来の倍のダメージとかでもそこまでは行かないはずですし。
おそらく26話(のメットール)を修正すると思います。詳細が決まり次第、また後書きでお知らせします。混乱させてしまいすみません。
②初期の誤記の修正
今更ですが、プライドに対する誤った「女王」表記を全て修正しました。両親の代わりを努めていると付記したくらいで、話の流れは変わっていません。
③PETの意外な機能
会話はもちろん、外の様子が見えていたりもするPETですが、「2」を改めて復習すると、なんとにおいもわかるようです。
ガスチェックができる辺り、そこまで無理のある話でもなさそうなので、一旦は採用しますが、何かの拍子に存在を消すかもしれません。
④買ったPET関連
モデルはノートパソコンのTOUGHBOOKです。TOUGHをRUGGED、BOOKをTERMINALに置き換えました。
出しているのがパナソニックなので、社名は本部がある大阪府"門真"市から"GATETRUE"、縮めて"GATRUE"としました。
タフブックが米国の軍や警察で実際に採用されているモデルなので、このような設定になりました。
⑤風吹アラシの生死
「GP」にも登場するアラシですが、爆発のシーン、GPという作品の立ち位置、爆発に関してGPで説明がないことから、死亡するものとします。エアーマンと一蓮托生。
⑥サブタイ
サブライセンスの試験で求められる「ゆうきのデータ」「きぼうのデータ」より。試験に出ないため。