セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 誤字報告ありがとうございます。

 評価☆9が2ゲージ目入るの初めて見ました。重ね重ねありがとうございます。


33話 リテイク

 シャドーマンのアジーナスクエア襲撃が中断された後、入り口エリアからリンクを通じてオフィシャルの精鋭部隊がなだれ込んだ。なだれ込んだといっても整然としていて、やってきたナビたちは次々に陣を形成していった。

 周囲を警戒する彼らの中心、最も守られている立ち位置に、1体、図抜けて大柄なナビがいた。アジーナ国王のネットナビ、クックマンだ。ずんぐりむっくりした体型の上に、カイゼル髭の小さな顔とコック帽が載っている。

 クックマンはかつて電脳料理人として世界を旅したということもあって、自身もアジーナ指折りの実力者だ。一大事となればお供を付けて自ら駆けつけ、解決に動くというのも、よくある話だった。そのため一般ナビとの距離が近く、国民からの信望も厚い。

 

 アジーナにおいてもネット犯罪はもちろん存在するが、アジーナスクエアが襲撃されるなどというケースは、これまでになかった。だからクックマンも出張ってきたのだが、既に襲撃者の姿はない。

 襲撃者はおらずとも、襲撃があったことは事実で、それは無人になったスクエアが示していた。陣を崩さず通路を進み、部隊のリーダー格のナビの指示で班分けが行われ、スクエア中にオフィシャルのナビが散らばった。

 

 配置についたナビたちは、一般のナビも襲撃者の手の者もいないことを確認してから、現場検証や通報内容の整理を開始していた。

 方々でネット商人の露店が無造作に打ち捨てられ、ネットナビのための娯楽施設やオープンテラスも同様。倒れた椅子やテーブルが散乱してはいるものの、破壊の痕はなく、スクエアそのものが受けた被害は小さいだろうというのが、ひとまずの見解だった。

 

「やはり、今回もゴスペルの仕業なんだろうか」

 

 調査を続けながら、クックマンを囲む一団のひとりが呟いた。クックマンも含めて、全員がそう感じていた。

 WWWに輪をかけて過激で、示威目的で引き起したと思われる事件が多いのが、ゴスペルという組織だ。ニホンでいえば、中断されはしたが、ダム破壊などもそれに分類され、単純な被害のペースだけでいえば、WWWを上回っていた。

 アジーナスクエアを壊滅させれば、確かにアジーナは打撃を受ける。受けるが、一方で下手人はほとんど何も得られない。大規模の被害を出し、混乱や恐怖を振りまくこと。それが目的としか考えられないやり口は、まさにゴスペルのものと思われた。

 

 アジーナスクエアは、とにかく広い。調査にも時間がかかっていた。

 危険もなくオフィシャルのナビに気の緩みが生まれようとした頃、封鎖したはずの入り口リンクから、またもナビの集団が現れた。

 オフィシャルが設置した警報プログラムはその存在を検知し、スクエア中にサイレンを鳴り響かせた。少なくともオフィシャルの予備人員ではないことが、すぐにわかった。

 オフィシャルナビたちの対応は早かった。リンクに近いナビは通路を塞ぎに向かい、そうでないナビが応援を要請する。そのうちの前者のナビが見たのは、宙を泳ぐ、腕よりも長い銀色の鋏だった。

 

「なんだあれは!?」

 

 すぐにメガキャノンで破壊を試みたが、砲撃を受けても鋏は壊れるどころか、刃の歪みすらも一切なかった。シャキシャキと開閉しながら泳ぐスピードにも変わりはない。

 ブレイク性能を持ったチップならあるいは、と当たりをつけたが、該当するバトルチップを使用することはついぞなかった。刃を鳴らす鋏とは別の一回り小さい鋏が、認識の外から飛来し、頭部に深々と突き刺さった。回転していたその鋏の勢いが移って体を揺らされ、体勢を崩したところを、泳ぐ鋏が食い千切った。

 デリートされたナビの後ろから他のオフィシャルナビも続いて現れるが、威嚇するように泳ぐ鋏の切れ味を目の当たりにして、近づくのを躊躇ってしまった。それをいいことに、侵入者たちが次々と通路を抜けてスクエアの中へ散っていった。

 

「し、侵入者が中へ!」

「王様をお守りしろ!」

 

 通路を塞ごうとするオフィシャルをすり抜けていった中に、1体、小柄なナビがいた。全身オレンジ色で、両手を常にチョキの形にしている。

 頭部から生えた鋏は、先ほどデリートされたナビの頭部に投擲したものだった。その1体を除けば、全てヒールナビだった。

 オレンジのナビがスクエアの奥へ行くと、リンク付近でオフィシャルを寄せ付けなかった鋏が消えた。スクエアの奥へ行かずに残っていた侵入者の一部と、通路を塞ぎに来たナビたちが向かい合う。数にして、互いに20体程だった。

 

「お前たちは何者だ!」

 

 これ以上は通さないと立ち塞がるオフィシャルナビの1体が、侵入者に向かって誰何した。

 

「俺たちゃゴスペル! テメーらを1体でも多くデリートして、王様もデリートする、そいつが仕事よ!」

「やはりゴスペルか!」

 

 オフィシャルにとってはそれだけ聞ければ充分で、ゴスペルにとってはそれだけ言っておけば充分だった。後は敵を殲滅し、同胞や王を守り抜くか、恐怖の存在としてまたひとつ名を上げるかのみ。

 全員がチップデータをロードした。剣が、砲口が、手投げ弾が、鬨の声とともに互いに向けられ、ぶつけられる。情けない悲鳴や無念の呻き声とともに、新たにアジーナスクエアの空へジャンクデータの霧が浮かんでいった。

 

 オフィシャルナビに1体、射撃系チップを主力にしている者で、最後衛から援護射撃に徹している者がいた。彼はその位置から戦況を把握し、この線が破られれば後退するつもりでいた。

 

(互角……互角!? このチームで互角なんてことが、あるのか!?)

 

 バックアップの利くネットナビでも、デリート――死への恐怖は、ある。オフィシャルナビはそれを抑えている場合が多く、中にはオペレーターの反対を押し切って自爆戦法を取る者もいる。

 しかし、オフィシャルナビといえど、個性がないわけではない。よって、そのように覚悟を決められない者も、少数派ながら、いる。彼もそのひとりだった。

 味方との合流とか、逃げ回ることで敵の目を引きつけるとか、言い訳のしようもあるが、逃げたいという気持ちが確かにあった。

 とはいえ、電脳世界の国防では世界屈指を誇るアジーナオフィシャル、その精鋭部隊に抜擢されるだけあり、能力は確かだった。

 

「おっと、危ねえ!」

 

 ゴスペルのナビに向かって、身の丈よりも大きなストーンキューブがエアホッケーのパックのように滑った。回避された後に地面との摩擦で減速して停止し、ゴスペル側の陣地に穴を開ける。彼の空気砲(エアシュート)で押し込まれたものだった。

 続けて、手投げ弾が飛来する。たった今キューブを避けたナビを越えるコースだが、それは爆風が十字型に広がるクロスボム。見て種類がわかるわけではないが、オフィシャルの使うものならそれだろうと、ゴスペルのナビも経験からすぐに予想がついた。

 前進による回避を決め、フレイムソードをロードしたのと、彼が前線のナビに呼びかけたのは同時だった。

 

「ビジャリー、10時っ!」

 

 壮年の男――彼のオペレーターに、上ずった声で"ビジャリー"と呼ばれたオフィシャルのナビが、言われた通りの向きに体を向け、チップデータをロードする。

 右前腕を剣に変化させ、居合の構えを取った。ビジャリーに、居合の心得はない。構える動作までが、このイアイフォームというバトルチップの仕様の一部だった。

 構えから斬る動作までが高速化され、剣自体の威力も高い。しかし一度構えたが最後、振り抜くか放棄するかの二択となり、それ以外の行動は指一本動かすことすらできない。構える動作そのものも、小さけれど確かな隙となる。

 "どの方向から"、"いつ"、敵が来るかがわからなければ使えない。使えば、構え続けるかどうかの判断に迫られ続ける。いくつかある玄人向けソード系チップの一端。

 ビジャリーを含む一部のメンバーは、これを集団戦用フォルダにだけ投入している。

 

「だりゃああ!」

「……」

 

 ゴスペルのナビが間合いまで近付いてフレイムソードを振りかぶるより早く、ビジャリーは攻撃を終えていた。2人のうち1人だけが早回しになったかのように、横一閃に振り抜いた。

 攻撃に使われなかったフレイムソードが消えないまま、ゴスペルのナビは前に倒れ込んで、それからようやくデリートされたことに気付いたかのように、ジャンクデータに還り始めた。

 

 ストーンキューブをエアシュートで押し込んで敵の動きを制限し、クロスボムでさらに絞り込み、そこを前衛の味方が仕留める。

 一連のセットプレイを可能にした、彼自身の精密動作と、その時点でトドメ役をやれるのが誰なのかを見切った、彼のオペレーターの判断力。この2つが、彼らのオフィシャル精鋭たるゆえんであり、同僚たちがフォルダを編集してまで信頼している点だった。

 

(いや、互角なんかじゃない……いける、いけるぞ!)

 

 最初に互角と判断したのも彼らで、それは正しい評価だった。押せば押し返されるのが戦いというもの。手応えを感じた次の瞬間には、ビジャリーの頭上に巨大な金色の分銅が()()()湧いていた。

 雪だるまよろしく手をつけてマジックで顔を書いたような分銅は、小さな手投げ弾から変化したものだった。彼は他のオフィシャルナビ同様に口元はマスクで隠れているが、そうでなければぽっかりと開けているところだった。

 他の戦闘音にも劣らぬ重く響く音と、爆発音がした。分銅はビジャリーを押し潰し、その下の床まで砕き、クロスボムと同じ周囲を巻き込む爆風が床の残骸を巻き上げた。

 前衛として戦っていたビジャリーには、それに耐えるだけのHPがなかった。分銅とビジャリーの両方が消えた後に、電脳世界の自己修復作用で塞がろうとする穴だけが残った。

 

 他のナビたちはビジャリーのデリートされる瞬間を見た見ていないに関わらず、変わらず戦いを続けている。一方で、彼の心がまた揺れた。怖い、助けてくれ、と思った。その恐れが、狙いをつける腕をぶれさせた。

 

 ぶれた先で、炎や爆風やゴスペルのナビたちの隙間越しに、彼は青い子供型ナビの姿を見つけた。




①カットマン編の処遇
 ロックマンが来てカットマンをデリートしました(だいたい1500字)、で終わらせようかと思ってやめました。原作と違う話になるならきちんと書かなければ……

②ナビマーク
 ナビマークの意味が書籍に書かれてなくて困っています。マジックマンやミストマン辺りわかりません。ナイトマンは国旗……?
 ファラオマンは没デザ見てようやく目だと理解できました。ナビマークって難しい。

③攻略本
 公式ガイドブック買ったら新情報出てきました。ヒノケンとかケロはともかくミリオネアとかラウルまで紹介がないのがひどい。メインシナリオで必須戦闘なのに。

④ビジャリー
 適当現地語命名シリーズです。"雷"をヒンディー語翻訳しました。
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