セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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あけましておめでとうございます。とうとう年が明けてしまいました。
こう見えて意外と死んでいません。6どうなるかを決めた以上書きたいのでそれまでは……

随分遅いお祝いになりましたが、RXDにエグゼキャラも実装されましたね。めでたい。
エックスサーバーでそうとわかる名前を使っておりますので、見かけた時はよろしくお願いします。


35話 ロック・ビーツ・シザース

「青いやつのオペレーターはよーく覚えて、負けて帰ったらちゃんと宣伝してよね」

 

 敵意が自分ひとりに収束するのを感じ、ロックマンは左右に素早く目配せしてから、カットマンを見据えて口を開いた。

 

「あいつはボクたちが抑えます! 皆さんは王様と他の人たちを!」

「すまない、任せた!」

 

 すぐ隣の1人が即答して動き出すと、他のオフィシャルナビもそれに続いた。カットマンが鋏を投擲しようと自分の頭に手をやったが、ロックマンがその動作に反応して、足元を狙ってヒートショットを撃ち込んだ。

 カットマンは回避しようとして攻撃を中断してしまっただけでなく、結局地を短く這った爆風に追いつかれてダメージを負い、小さく息を漏らした。口をへの字に曲げ、今度こそ本当に、ロックマンと戦うことだけに意識を集中し始めた。

 

 散ったナビたちは、言われた通り、クックマンや交戦中の仲間を助けに向かった。その先でクックマン共々泳ぐ鋏の対処に追われたり、ゴスペルのナビやウイルスと武器を向け合い、押し引きし始めた。

 電脳世界の国宝が展示された"国宝の間"に向かう道だけは一際密度と熱気が大きいが、戦う者たちは広い空間に散らばっていて、ロックマンとカットマンの戦いに手助けする余裕は、そのいずれにもなかった。

 単純な一対一の形ができていた。

 

「ロックマン、あいつを止めるぞ!」

 

 熱斗はあえて、分かりきったことを確認した。意思をひとつにすることがナビとの繋がりを強め、ナビとの繋がりが強くなる程に自分たちの感覚が研ぎ澄まされていくことを、父の教えと実践で知っていたからだった。

 

「うん!」

 

 ロックマンが力強く頷き、明確な目的が熱斗とロックマンを結びつけると、2人の意識のシンクロ率がじわじわと高まった。かつてドリームウイルスと戦った時のような現象は起きなかったが、2人は、五感がクリアになったように感じた。

 

 カットマンは鋏の投擲でも間合いの調節でもなく、ストレートな接近を選択し、先ほどまでクックマンを翻弄していたのと同じスピードで動き出した。

 ロックマンがエレキソードをロードしても、カットマンは足を止めなかった。頭部の鋏を掴む様子もないまま、あと数歩分まで踏み込んだところで、カットマンが突然上体を倒した。

 

「跳べ!」

 

 カットマンが地面に手をつくまでの間で、カットマンの頭部の鋏がにわかに大きくなり、開かれた。刃渡りはエレキソードより長く、反撃は届かない。

 熱斗がロックマンに向かって叫んだのは、鋏に起きる変化について事前に察知したわけではなかった。カットマンの動きそのものは見えていたので、わけがわからないなりに危険を感じ、咄嗟に勘で指示を出していた。

 それでもロックマンは信じ、跳んだ。鋏がパチンと閉じ、ロックマンは着地しながらカットマンの頭にエレキソードを叩きつけた。甲高い声で短く鳴いて、カットマンは転がり、手のひらで地面を押して、勢いのまま起き上がった。

 まだまだ余力はある。チョキの手を構えて、ロックマンとじっとにらみ合い始めた。ロックマンとしても、その一撃で一本取ったとは思っていなかった。一方でカットマンは、言葉として出こそせずとも、心中穏やかでなかった。

 

(なんだよ、なんだよ。こいつ……強いじゃないか!)

 

 実際に戦いが始まり、初めて見せた攻撃にも対応されたカットマンは、確かにこいつは強力な助っ人に違いないと納得した。そして既に、自身がピンチであるというところまで考えが及んでいた。

 

 戦闘力が極めて高いナビのほとんどが、自身だけで戦う術をある程度備えている。ブルースの剣やナイトマンの鉄球のような武器であったり、エレキマンやエアーマンの電気や空気を操る能力もそれに該当する。

 そういったナビのオペレーターは、それらの武器・能力を一時的に強化して行使したり、活きるように補助するための、そのナビ専用のバトルチップを独自に持っている。

 一般のナビやロックマンの構築するフォルダに比べれば戦術や対応範囲の幅は狭まるが、特化することで得意分野は飛び抜けて伸びる方法である。

 

 一方で、カットマンのような自立型ナビは、バトルチップを使えない。

 それでもアジーナスクエア攻略部隊隊長という大任を――繰り上がりの臨時だが――任されるだけあり、そのハンデが気にならないだけの実力があり、武器である銀色の鋏がそれを支えている。

 しかし今は、味方を支援し、敵の動きを抑制するため、2つしかない鋏のうち1つ、泳ぐ鋏(ローリングカッター)を手放している。

 

 カットマンの本来の戦闘スタイルは、ローリングカッターと2方向から敵を追い詰め、頭部の鋏の投擲(カットブーメラン)直接切断(サプライズチョッキン)で仕留めるというもの。

 高性能かつ戦い慣れしているカットマンにとって、大抵のオフィシャルナビは有象無象であり、クックマンも相手になりこそすれ格下という認識だった。だから、自身とローリングカッターで別々の敵を相手取り、そして狩っていく……という手順も成り立っていた。

 

 それが、全く想定外の助っ人が現れたことで、破綻してしまった。ここから本来の力を発揮してロックマンと互角以上に切り結ぼうと思えば、ローリングカッターを呼び戻さなければならない。が、それはできなかった。

 ロックマンに助けられ、ロックマンと共にやってきたオフィシャルナビたちの分だけ、全体の戦力でも押し返されているからだった。それをカバーするためには、ローリングカッターを他所で泳がせておかなければならなくなる。

 呼び戻せば味方がやられ、余裕のできたオフィシャルナビたちがロックマンに加勢する。

 

 あちらを立てればこちらが立たず。どうしても埋まらない穴が1つ、カットマンの計画に空けられていた。

 

 カットマンの精神が見た目通り全くの子供であれば、失敗に向かって流れていく状況への思考を、目の前に立つ敵に悟られずにやりきることは、できなかった。

 互角以上の敵と戦う機会はこれまでに少なく、恐怖も確かにあるが、それは(デリート)に対するものではなかった。任務への失敗や、自らに役割を与えた組織、ゴスペルに対して悔やむ気持ちだった。

 

 カットマンは戦闘継続を決定した。冷静な判断のもとで、やけではなかった。今度こそ頭部の鋏を人差し指と中指に挟み取り、ロックマンに向かって投擲した。

 その動作も、熱斗やロックマンにははっきり見えていた。あえて何か口にする必要はなく、ただ躱した。動きながらでも、ロックマンはチャージショットを正確に命中させた。送信されたヒートショットを続けて撃ち込み、カットマンが爆炎に覆われた。

 小さく悪態をついてロックマンから見て横に走り出したカットマンに、間を空けて2度、さらに撃ち込んだ。攻撃を避けようと折り返したり、蛇行したりしたが、1発が命中した。

 

 逃がさず、近づけさせず、攻撃用バトルチップに間合いを合わせ、攻撃する。なまじカットマンの動きがいいために、ロックマンや熱斗は一切油断せず、それを仕損じなかった。

 ローリングカッターを失ったカットマンは、エアーマンよりも攻め手が薄く、クイックマンのように他の一芸があるわけでもない。どんなに探したところで、反撃の機会は見つからなかった。

 

 ゴスペル側の最善の成果はもはや、カットマンがロックマンを抑えていることで、どれだけアジーナオフィシャルに打撃を与えられるか、というレベルにまで落ちていた。それも、自分たちが全滅するまでに、というゴールの設定の上でのことだった。

 それでもカットマンは、泣き言を漏らしたり、癇癪を起こしたりしなかった。

 身の丈ほどの時限爆弾(カウントボム1)が現れれば爆発前にカットブーメランで破壊し、落ちてきたアースクエイク1の陰からカットブーメランを放ち、ラットン1の追跡を振り切った。それでも、そうする度に、バスターでの追撃を受けた。

 

 何度目になるかわからないチャージショットの直撃で、カットマンのHPが0になった。頭部の鋏を握ろうとして、指先の感覚が薄れていくのに気付いたことが、戦いの決着をカットマンに受け容れさせた。クックマンたちを惑わせたローリングカッターもまた、カットマンとの繋がりを失って消滅していた。

 電脳世界に存在の維持を許されず、カットマンを構成するデータは、爆発的な揮発によって塵や灰のように巻き上げられていく。

 

 倒れたカットマンには、もはやロックマンへの敵愾心を含むあらゆる関心がなくなっていた。

 心残りは、ついぞシャドーマンの身に何があったのかわからずじまいであることだったが、ゴスペルの事情を知るのはゴスペルのみであり、ロックマンやその他のナビには、ただ動けなくなっただけのように見えていた。

 ぼんやりした思考さえも途切れ、カットマンは完全に消滅した。見届けたロックマンも、体の力をようやく抜くことができた。

 

「や、やった……」

 

 

……

 

 

 それ以外の脅威への対応に追われていたオフィシャルのナビたちも、カットマンがいなくなったことで形勢は一変。

 あっという間に盛り返し、半ば恐慌状態に陥ったゴスペル側のナビを追い立てていき、アジーナスクエアの防衛が完了するのにもさほど時間はかかからなかった。

 

 一体のオフィシャルナビが、ロックマンに声をかけた。スクエア入り口付近で号令をかけていた、リーダー格のナビだった。

 ロックマンが振り返ると、他のオフィシャルナビたちが状況確認や負傷者の回復といった作業を行うのと、クックマンがプラグアウトするのが、そのナビの肩越しに見えた。

 

「ありがとう、ニホンから来た勇敢な市民ネットバトラー、そしてそのナビよ。君たちがいなければ、このアジーナスクエアの被害は食い止められなかったし、王様もデリートされていたかもしれない。これは大げさな話ではなく、オフィシャルとしての判断と評価だ」

 

 手放しで称賛されながらも、ロックマンは傷ついたオフィシャルナビたちが忙しなく動き回っていることが気になった。

 

「あの、ボクたちにまだ手伝えることは何かありますか?」

「君たちの活躍があったことを隠したりするつもりはないのだが、このような大事(おおごと)にオフィシャルでない君たちを必要以上に関わらせてはいけない決まりなんだ。気持ちだけ受け取っておく」

 

 そう言ってから、オフィシャルナビは何かを思い出したような様子で、さらに言葉を付け足す。

 

「そうそう、受け取るといえば、この件で後々お礼が贈られるだろうと思うんだが……参考までに、どういった物が嬉しいか聞かせてもらえないだろうか? 何分、外国のネットバトラーとこういう形で交流する機会というのは、滅多にないことでね」

 

 ロックマンと熱斗が、PETの画面越しに顔を見合わせた。

 熱斗がガッツポーズするのを見て、ロックマンは何を言い出すのかをすぐ理解し、もう、と苦笑いした。




①カットマンあれこれ
 カットマンは原作でロックマンに負けた後、まさに死の間際でも、泣き言はいわず、ロックマンを挑発していました。
 デフォルメな感じのデザインだったり、ポーズを取ってみたりと、見た目は子供っぽい彼ですが、そういうところに注目してみると、中々クールだと思います。オペレータのいない自立型ナビで、拠り所がゴスペルしかないから……というのもあるかもしれません。
 最初はロックマンを格上と見たところで逃げ出そうとする流れにしていたんですが、そういうところを見て、絶対に逃げ出したりしないようになりました。逃げたところで上に消されますが……

 ロックマンにあっさり負けたのは、熱斗とロックマンが強くなったのもありますが、カットマンも(ローリングカッター抜きだと)ロックマンを相手にできるほどには強くないからでした。
 原作でもローリングカッターがとても厄介なだけのキャラで、カットブーメランも強そうに描写しましたが、本当は微妙です。サプライズチョッキンは予備動作が非常に短く、油断していると大ダメージを受けますが、頭に入れておけばまず当たりません。
 設定上はそうでもありませんが、ゲーム上の性能としては単体ではクイックマンの方が強いと思います。

②サブタイトル
 ロックマンのロックとかけたタイトルです。じゃんけん。
 ただ、ロックマンのロック=ロックンロールのロックは、綴りこそ岩を意味するRockと同じですが、意味は異なるそうです。
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