セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 39話ですが、時差の考慮を忘れていました。
 ワールドマップ(「4」の国移動UIで表示される世界地図。モルワイデ図法の様子)を見ると、北アメロッパは日本からプラス7~8時間くらいの位置。
 1日目のイベントの多さから、到着が日の高い内であるということは決めていたので、出発19時、移動と時差でプラス18時間、到着が午後1時、くらいとしました。
 19時は夕方過ぎと言うには遅く感じるかもしれませんが、これはバリバリ夏休み中故に日の入りがすごく遅いためです。


40話 突撃!隣の裏通り

 機内食では足りないと言う熱斗に合わせ、目についた店で軽く食事を取った後。

 ホテルで着替えなどを置いて荷物を軽くしていざ観光となり、行きたいところがあると言って渡が先導した先は、とある日の当たらない裏通りだった。

 

 建物の壁に囲まれ、たまに出入り口があったと思って見れば古びたマンション。ちらほら見かける現地人には表通りに比べて有色人種が目立ち、近くを通る2人を見る目つきは、そのひとりひとりのいずれも、少なくとも友好的ではなかった。

 連れ込まれた熱斗も、能天気さか度胸からか、そう怯えるようなことはなかったが、明らかに観光で来るところではないと困惑していた。

 

「こんなところに何があるんだよ。てゆーか、めちゃくちゃ見られてるし」

 

 ドラム缶に支えられたラジカセから垂れ流される重低音もどこ吹く風の渡に、熱斗は声の調子を落として苦言を呈した。渡は、まあまあ、とだけ返して、足を止めなかった。

 

 そう広くない幅の道で踊る男女を壁際に沿って躱していくと、いっとう背が高い男がいた。肌は浅黒く、険しい顔つきの男は、通行止めフェンスに取り付けられたバスケットゴールの下で、見張るように立っていた。

 男もまた、真っ直ぐ近付いてくる2人を見ていた。会話の距離になるとすぐ、挨拶もなしに口を開いた。

 

「ここは観光客の来るところではない。早く出ていった方がいい」

「こんにちは、ラウルさん。僕たちは明日の会議に呼ばれたネットバトラーで、こちらが光熱斗くん、僕が七代渡です。折角ホテルが近くなので、一足先に挨拶しておこうと思いまして」

 

 ラウルの顔が一層険しくなった。

 

「私のことを知っているのなら、私たちのことも知っているのだろうな?」

「ここの皆さんでなくても、流石に初対面の余所者を信用しないのは当たり前だと思います。そこはこちらの光くんが実力で証明するということで」

「そこでオレなの!? ちょっと渡、何の話してるのかさっぱりなんだけど!?」

「だそうだが」

「仕方ないですね」

「何が仕方ないんだよ……」

 

 わざとらしい言い様に熱斗が呆れるのを見て、渡は小さく笑った。

 

「この裏通りはルーツとなった土地を失った少数民族の方が主に集まっている場所で、同様の事情を持つラウルさんが取り仕切っています。利益とか欲望を共有しているチンピラ集団とは何もかも違いますから、ここまで睨まれはしても絡まれはしなかったわけです」

「明日の会議に出るならオフィシャルの人なんじゃないのかよ? この人がアメロッパ代表ってこと?」

「もちろんオフィシャルネットバトラーですが、さっき言った少数民族系を代表されてる方ですね。アメロッパ代表とは別の枠です」

「ふーん?」

「とはいえ、逆に僕たちが参加者という証拠はメールくらいしかありませんから、挨拶ついでにひとつネットバトルでもと」

「いや、何でそこでオレになるんだよ!」

「クイックマンの件でテレビに出たり、直近でもカットマンを倒した実績があったりするのを買われて来ただろう光くんと違って、多分僕はおまけみたいなものですから。それに、外国のオフィシャルネットバトラーと対戦できる機会は貴重ですよ? やりたいかやりたくないかで言えばやりたいですよね?」

 

 言われて、熱斗はハッとした。元々ネットバトルが好きで毎日のようにやっている熱斗としては、国際会議に出席するような外国の実力者が気にならないはずがなかった。

 

「そ、そりゃー……」

「というわけでお願いします」

 

 渡がそこまで言ってラウルに視線を移すと、いくらか険が取れていたが、話す前の状態に戻った程度だった。

 

「お前は戦わないのか?」

「いえ、間接的に参戦します。熱斗くん、フォルダはホテルで貸したやつに切り替えておいて下さい」

「えー? 折角なら自分のフォルダでやりたいんだけど」

「まあまあ。ああいうのを使えるようになってこそですよ。今日のランチ奢ったでしょう」

「しょーがないなー、勝手なことばっか言ってくれちゃって」

 

 熱斗がPETの画面に向かっている間、ラウルが再度渡の方を向いた。

 

「お前のフォルダで、光熱斗とやらが戦うということか?」

「そういうことです。折角の機会ですから、光くんにはサンダーマンの手の内を知らない状態で戦って欲しいんですよ。もちろん、終わった後でご希望なら僕も対戦しますが」

「考えがあってのことというわけだな。わかった、子供相手と油断はしない」

 

 サンダーマンという言葉が横から聞こえ、熱斗は嫌な予感がした。

 

 

……

 

 

 道中で見かけたラジカセ、その電脳。

 ラウルが余所者とネットバトルをするということで、そこには裏通りの住人たちのナビまでもが見物にやってきていた。

 電脳世界の様子をモニタできる機器がないため、プラグインしてPETの画面で見るしかないからという事情もあった。

 

 当然、そのナビたちの視線の先、空間の中心に立っているのは、方やラウルのナビ、サンダーマン。球電を雷神像の太鼓のように背負い、長身のその頭から更に長い避雷針を生やした姿だった。

 そしてもう片方はロックマン……だが、その全身はかつてのような青色ではなく、水色。また、バックパックは上部の2本の突起物を中心に大型化しており、グローブやブーツ、ボディスーツにも細かな変化があった。

 

 カットマンの一件から2週間の間に光祐一朗博士が完成させた、新パワーアッププログラムの賜物。

 ロックマンの強化形態、アクアカスタムスタイルの姿だった。

 

「やっぱりっていうか、どう見ても電気属性のナビだよな……」

 

 電脳世界でネットナビ同士が対面してみて、熱斗は相手ナビの姿に警戒心を抱いていた。

 アクアカスタムスタイルとなったロックマンは、その名の通り水属性。効果を失うアクアアーマーとも異なり、純粋に受けるダメージが倍増してしまうからだった。

 

「承知の上です。自分のナビと相性の悪い相手、普段と違うフォルダですが、光くんとロックマンならやれますよ」

「……お前なー。まあ、言いたいことはわかったよ。ロックマン、やるぞ!」

「OK! 熱斗くん、くれぐれもチップ選びは慎重にね!」

 

 熱斗たちが気合を入れている一方で、サンダーマンは無言で佇んでいた。

 

「準備ができたなら、そちらからかかって来い」

「上等!」

 

 ラウルの言葉に返し、同時にチップデータを転送。ロックマンの足下から緑の円が広がり行き、それは端で観戦しているナビたちの許まで及んだ。

 クサムラステージという名そのままの、地形変更系バトルチップの効果だった。

 

「木属性のナビやウイルスは草生した大地から活力を得るが……そうではないようだな。そして」

 

 サンダーマンもまた、直接攻撃の構えを取っていなかった。ロックマンから離れるように移動しながら、地表スレスレに浮く人間大の黒雲3つを出現させると、それらはロックマンを囲むように広がり、三方向からゆっくりと滑っていった。

 そのうち1つに向かって、ロックマンが反射的にバスターを撃ち込むが、雲は攻撃をすり抜けさせるでもなく、ただ傷つかなかった。

 

「スカスカでもなくて、硬いわけでもない……のか!? なら、これだ!」

 

 次のチップデータを受け取ると、黒雲との距離を維持しようと後退するロックマンの足元を中心に、今度は黄色の粉塵――胞子(バッドスパイス3)が噴き出した。

 花粉の発生そのものが草の上で波紋のように広がり、黄色の円の縁が黒雲に触れた時、黒雲の放電が胞子を焼くのをロックマンと熱斗は見た。また、胞子を浴びたサンダーマンはそのHPを急激に減らした。

 

「バッドスパイス……! 実戦用のフォルダに入っているのか!」

 

 電気属性のナビであるサンダーマンに、木属性のバッドスパイス系は効果倍増。これらは元々の威力が高い傾向にあり、2の時点であらゆる電気属性ウイルスを一撃でデリートせしめる。

 攻撃範囲も広く、ストーンキューブなどを盾にしてもそれを無視して足元へ到達する。

 

 ただし、このバトルチップを使用して胞子が発生するのは、草が生えている部分のみ。

 

 よって単体では役に立たないケースがほとんどで、直接敵に何かするわけではないクサムラステージと組み合わせてまで使おうとするネットバトラーはいない。電気属性のウイルスやナビは多くないし、別段バッドスパイスを使わなくてもそれらと戦えるからである。

 いくら高威力といえども、その使いづらさには到底見合わない程度に留まっている。

 

「やっぱり触っちゃダメなやつか! ロックマン、雲に囲まれないように動くんだ!」

「了解!」

「逃がさん! サンダーマン、サンダースパーク! そして、サンダーボルト!」

 

 サンダーマンが両手を掲げ、黒雲から球電(サンダースパーク)が生まれる。ロックマンを囲む3方向からサンダースパークが連続して撃ち出され、その裏拍を取るようにして、真上からは落雷(サンダーボルト)が襲った。

 

「避けるのに集中して! さっきのもっかい送る!」

 

 ロックマンは言われた通り、サンダーマンから視線を外し、バスターを含めた武器攻撃を断念して回避に専念。その間に2枚めのバッドスパイス3が発動し、胞子の波紋がサンダーマンに到達する。

 

「ぐふっ……」

 

 無言を貫いていたサンダーマンが苦悶の声を漏らし、怯んだ。呼応するように、続いていた落雷の連打が止んだ。ロックマンが最後のサンダースパークを後ろに見送り、サンダーマンへ視線を戻して構える。

 この時、落雷が止んだ理由が本体へのショックだと踏んでいたのは、熱斗も同じだった。ラウルとサンダーマンも、ロックマンが真っ直ぐ向かってくるであろうと読んだ。

 

「ロックマン、チャンスだ! ど真ん中をダッシュ!」

 

 ロックマンは距離を詰めて来ていた黒雲2つの間へ突っ込み、体で黒雲を押しのけた。放電のダメージを受けて一瞬硬直したが、一歩一歩力を込めて踏み出し、強引に通り抜けた。そこから、バスターをチャージしながら、サンダーマン目掛けて走り出した。

 

 ここまでの動きはラウルの読み通りだった。サンダーマンに拳が届く程の距離まで20歩程というところで、チャージが完了したのも見えていた。

 ロックマンが立ち止まって狙いをつけて、アクアのチャージショット――バブルショットを放った。

 

 バトルチップのそれと同じ瞬速の弾丸はしかし、2人の間に並べられた黒雲にかき消された。ロックマンの背後にあった黒雲は消えていた。サンダーマンの手による再配置だった。

 バブルショットで発生した泡が消えると、さながら巣をつつかれた蜂のように、黒雲たちからサンダースパークが顔を覗かせた。

 

「撃て!」

 

 一斉射され、サンダースパークの放電音が重なって大きくなった。

 ロックマンにとって避けられない攻撃の密度ではないが、ここで攻めなければサンダーマンに逃げられる。しかし、進んで弱点の放電を浴びて来た今、もう一度耐えながら前進するのは危険で、チャージショットがまた防がれない保障もない。

 

 最初に熱斗のPETに読み込まれたバトルチップは、クサムラステージ2枚、バッドスパイス2枚の後、5枚目はフミコミザン。

 エリアスチールとソード系を連続発動したように、一定距離を瞬間移動して斬りつけるチップ。バッドスパイスとは打って変わって、距離感やタイミングに慣れられれば攻防一体となる逸品として評価されているものだ。しかも、既に熱斗とロックマンはこれを扱い慣れ始めていた。

 

 フミコミザンが送信され、ロックマンの姿が消えた。

 サンダースパークを越え、黒雲をも越え、踏み込んだ位置でソードを振り抜いたが、そこにサンダーマンはいなかった。単純な距離不足だった。

 

「今度こそ逃がさん! サンダーマン!」

 

 好機を逃さず、攻めて仕留めに行く判断だった。サンダーマンが両手を上げ、黒雲がロックマンを囲むように陣取った。再度の連続攻撃を開始し、ラウルはロックマンの動きを見逃すまいと攻撃の中心を、ロックマンを凝視した。

 

 ふと、その目元が目についた。目測を誤ってのフミコミザンの無駄遣いがあったのに、ロックマンの目に失敗への動揺や後悔が全く浮かんでいない……ラウルはそう評価して、より気を引き締めた。

 

 攻撃開始から間もなく、ロックマンの姿が消えた。続いて、サンダーマンのデリート判定ブザーが鳴った。黒雲が霧散し、サンダーマンを斬りつけたソードが元の腕に戻った。サンダーマンの目と鼻の先で、ロックマンが腕を振り抜いた姿勢で立っていた。




①スタイルチェンジ
 スタイルチェンジのプログラムは元々開発されてたので、シャドーマン危機での緊急国宝窃盗とは関係なく完成しました。
 熱斗を使いに出さなかったのを加味しても遅れは数日ほど。なんせ光祐一朗博士なので……
 この世界ではアジーナ王に貸しがあることも大きそうです。

 公式イラストがあること、一番なりやすくてかつバランスが取れていることから、ロックマンはアクアカスタムになりました。
 ノーマルとの背中合わせのイラストがあるヒートガッツもより特別な位置にあって有力候補でしたが、バトルチップで戦うゲームであること、割と重めのデメリットがあることからコンペ落ちしました。

②サンダーマン戦での初手

内訳:
クサムラステージ
バッドスパイス
クサムラステージ
バッドスパイス
フミコミザン
クサムラステージ
フミコミザン

 初手は30枚から抜いていく形でダイス振って決めました。
 見事に偏りました。

③ラウルの一人称
 どうして「2」では「オレ」、「4」では「ワタシ」となっているんでしょうか。「2」では口調が安定していないことも加味し、ここでは「4」に合わせています。
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