セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 誤字脱字報告ありがとうございます。「1」編にもまだ結構残っているようです。

 ミリオネアの帽子とバッグの名前を調べましたがわかりませんでした。誰か助けて下さい。
 服とか髪型とかも調べるの地味にしんどいところ……


41話 熱斗は置いてけぼり

「よしっ!」

 

 最後のフミコミザンが決まったのを見て、熱斗は、その快哉を静かな一息と小さなガッツポーズに留めた。

 

 一撃一撃の重い勝負の光景に振り回された裏通りの住民やそのナビたちは、暫しサンダーマンの敗北に動揺していたが、それは観戦に集中していたことによる疲れや、打倒したネットバトラーがニホン人の子供だという事実への驚きへと変わっていった。

 電脳世界・現実世界の両方で、当事者たちには届かない程度に、ぽつぽつとギャラリーの囁き声がした。

 

「……強いな」

 

 斬られた胴を片手で押さえながら、サンダーマンが初めて言葉を発した。ロックマンはマスクを解除し、構えを解いて、それから小さくかぶりを振った。

 

「ボクもずっと気が抜けなかった」

 

 返答の話し出しは吐息混じりだった。

 

「ああ。2枚目のフミコミザンが別のチップだったら、オレも突破口を見つけられなかったかも知れないし。いい勝負だったぜ」

 

 後の2枚は被ったクサムラステージでどうしようもなかったし――とまでは、熱斗は言わなかった。

 

 アクアカスタムスタイルの、”カスタム”要素。スタイルチェンジというパワーアップでロックマンに上乗せされるはずの力が、ロックマン自身ではなく、PETの強化へと向けられて生まれた能力。

 PET上におけるフォルダからのバトルチップの読み込みを、ロックマンのリソースを貸し出して補助することで、PETがフォルダから一度に読み込むチップデータが7枚となり、本来ならば選択肢にすらなかったはずのフミコミザンを武器にできていたのだった。

 

 ネットバトルは終わった。ラジカセから、全てのナビがプラグアウトした。自分のナビをプラグアウトさせた住民たちは、こぞって、ラウルと2人の少年へ注目した。

 

「いい戦いだった。認めよう、光……熱斗、そしてロックマン。そして、一足先に出会えたこと、戦えたことに感謝する」

 

 ラウルが熱斗へ右手を差し出した。渡や熱斗からは、ラウルの表情は変わったように見えなかったが、熱斗は汗ばんだ手のひらを逆の袖で軽く拭ってから、その握手に応じた。

 日陰に吹く緩やかで乾いた風が涼しい中、熱斗はラウルの手の力強さと血の熱さを感じた。

 

「渡に連れて来られた時はどうなっちゃうかと思ったけど……オレも、ネットバトルできて楽しかった。次があっても負けないぜ!」

 

 そして、ラウルに合わせるように力を込め、握られた2人の手が縦に揺れた。ようやく、ラウルが微かな笑みを見せた。

 

(ずーっと気い張ってて無表情以上にならんとかかと思ったけど、そんなわけでもないねんな。しかしまあ、予想以上の成果や)

 

 いいものが見られたと渡が満足していると、手を離したラウルがそちらを向いた。

 

「すまないが、そちらの名前も聞かせてくれないだろうか?」

「あ、はい。七代渡です」

「渡か。ニホンにはいつ戻る?」

「明後日の朝ですね」

「では、明日。会議の終了後にネットバトルを申し込みたい」

「えっ明日」

 

 渡はやるとすれば今だろうと思っていたが、ラウルは、熱斗の実力を見た今、渡のそれも同等であろうと見積もり、対決の前に調整しておきたいと考えていた。

 

(んー……会議場でやり合って出席者に見学されたら、その内の誰かに妙な目の付けられ方するかも知れへんよな。かといって対戦自体はコミュの一環としてやっときたいし……)

 

 徹底的に隠しているわけではなく、なるべく注目されるのを避けるようにしているだけなので、渡の実力とベータの性質などがネームド級ネットバトラーやその関係者の間で広まることについてはいずれ起こると分かっていた。

 

「あー……」

 

 しかし、いくらゲーム上で固有グラフィックが用意されていなかろうと、いや、ゲーム上で固有グラフィックが用意されていないくらい情報が少ないからこそ、ONB会議に出るような立場の人間たちに見学された場合の影響は予想できず、受け入れ難かった。

 

「すみません、夕食後……というか暗くなった時間帯でも大丈夫でしょうか? ちょっとやることがあって」

「ああ、構わない。連絡先を渡しておこう」

 

 熱斗も含めて連絡先を交換し、軽く挨拶をしてから2人は表通りへと出ていった。

 来た時に比べると熱斗の足取りはやや軽く、2人へ向けられる住民たちの眼差しは見知らぬ余所者へのそれではなくなっていた。

 

 

……

 

 

 自販機で買った飲み物で喉を潤しつつダウンタウンの表通りを歩き、次に渡が熱斗を連れ込んだ先は宝石店だった。ツッコミを飲み込んだのか、路地裏に比べればまともだと思ったのか、熱斗は呆れつつも何も言わなかった。

 

 実際、ここはアメロッパで最も有名な宝石店であり、そこで売られている宝石を見るために来る観光客も一定数存在するため、観光名所と呼べなくもない。ゲームとの内装の違いから辺りを見回す渡の目にも、明らかに日本人観光客であろう女性がちらほらと目に入った。

 

 渡は話ができそうな手隙の店員を探したが、カウンターの外にいる店員はいずれも客と話していた。仕方なくカウンターに近づくと、ふとショーケース内の宝石やアクセサリの値札が目に入った。

 

(いや宝石のブランドとか全然知らんけどたっっっか。欲しがる気持ちが理解できへん。って、用もないのに見とったらあかんな)

「何かご用でしょうか?」

 

 カウンターに立つ女性店員から先に声をかけられつつもPETを取り出し、つい最近受信したメールを開き、それを見せた。

 

「すみません、この話通ってます? 連絡入れたの昨日なんですけど」

「はい、七代様ですね。そちらの方はお連れ様でよろしいでしょうか?」

(子供2人なん(であるの)にもうちょっと驚いてくれてもええと思うんやけど。プロやなあ)

「そうです」

「かしこまりました。ご案内いたします」

 

 カウンター端の跳ね上げを通って出てきた店員に丁寧に誘導され、奥の階段を上がる。またも妙な雲行きになり、熱斗も耐えかねて渡の肩をつついた。

 

「今度は何?」

「すぐ分かりますよ」

 

 小声の会話を他所に、店員が1つのドアの前で止まった。ドア脇には大柄な白人の男が立っていた。スーツ姿で、ジャケットのボタンは外していた。ボディガードだった。

 その男と店員が、PETのマイクが拾わず翻訳されない程度の声で二言三言話すと、男はドアから1歩離れ、店員がドアを3回ノックした。

 

「失礼いたします。七代様とお連れ様をご案内しました」

「ええ、どうぞ」

 

 部屋の中から女性の声が了承すると、店員が片手でハンドルをゆっくりと引き、もう片方の手で部屋の中を指し、小さく頭を下げた。渡が率先して部屋に入り、熱斗とボディガードがそれに続くと、背後で扉の閉まる音が小さく鳴った。

 

 渡と熱斗が部屋に抱いた感想は”やいとの家にありそう”で共通していた。金持ちの屋敷にあるような調度品や美術品で構成され、この店のものかどうか分からないアクセサリ数点が飾られていた。2人にとってそこそこ見慣れた光景だった。

 ボディガードは部屋に入ってすぐ、壁際に立った。

 

 2人の正面では、白人の女性がウッドソファに座っていた。茶鼠色の髪の上に帽子を乗せ、レンズの小さい眼鏡を低めにかけていて、薄い紫のアイシャドウと口紅が目立っていた。

 化粧のせいか、どの程度の年齢なのかが判然としない顔立ちだった。その中で、緩やかな吊り目と自然に上がった口角が、余裕や優雅などといった言葉の似合う表情を作っていた。

 

(まあどんなに若くても20代後半って感じやけど、声は若いんよなあ)

「初めまして、でいいのかしらね。七代渡」

「こんにちは、でいいんじゃないでしょうか。こちらが、何度か話に出た光熱斗くんです。光くん、この人はミリオネアさん、世界長者番付に名を連ねてる人です」

「貴方がそうなのね。お話は彼からかねがね聞いているわ。今日はよろしく」

 

 知らない所でどんな話が進んでいたというのかと、熱斗は後ろ頭を掻いた。

 

「はあ。よろしくったって、そんな人にオレが何か関係あるの? っていうか、渡もなんで知り合いなの?」

「ミリオネアさんは有り体に言うと暇人で、娯楽に飢えてるんですよ。財産を守るために作らせたナビがきっかけでネットバトルを初めて、それが結構な腕になったもので、今では強い対戦相手を探されてるんですね。報酬も出るので、今夜はそれで美味しいものでも食べに行きましょう」

「ふーん。それはいいけどさ、お前食い物で誤魔化そうとしてない?」

「例によって秘密なので」

「うわー出たよ久々」

 

 こうして”秘密です”で疑問点を流されるのに懐かしさを感じ、熱斗は苦笑した。渡は()()()と笑った。

 渡が狩りで得たバトルチップの卸先のひとつがミリオネアであるというのが事実だったが、そもそも狩りをしていることなども共有していないため、伝える気にならなかった。

 

「そういえば、渡はやんないの? 強いじゃん」

「1回やったら”面白くないからもういい”って言われました。それから二度と対戦してません」

「ええー……」

(飽きっぽいのか大差がついたのか知らないけど、随分勝手だなー)

 

 会話を真正面に見ているミリオネアの表情に動きはなく、ただ寛いで2人を見ていた。横目でそれを見た熱斗は、何を考えているのか分からず、小さくため息を吐いた。それからPETを取り出し、画面に視線を落とした。

 

「ま、どんな相手か知らないけど、勝負なら受けて立つ。だよな、ロックマン!」

「うん、いつでも行けるよ!」

 

 意思を確認したミリオネアがボディガードに目をやると、ボディガードはソファに置かれたこれまた高そうなバッグ――ブランドものにしてはいやに大きい――を持ち上げ、ソファの前のローテーブルに置いた。

 それを前に、ミリオネアが自分のPETを取り出した。

 

「それじゃ、始めましょうか」




①カスタムスタイルのカスタムX能力
 ADDだのカスタムゲージだのの存在を考えると、ロックマンではなくPETが強化されてるとしか理屈がつけられませんでした。
 本来のPETとナビを繋ぐ線とは別にロックマンがもう一本線を出してて、それを通してPETに力を分け与えてるようなイメージです。

②空港のイベント
 アメロッパ空港降り口にケロがいるのをすっかり忘れていました。
 渡の到着が遅かったのでどの道エンカウントはさせなかったと思いますが……
 あと日暮も出ません。

③ミリオネアの年齢周辺
 不明で通すことにしました。「声が若い」に関してはアニメより。担当声優の方が他に演じられてるキャラも割と若い傾向にあるようで、結構わけがわかりません。
 基本的にアニメの設定は持ち込みませんが、声は5DSとかのゲームと共通してるのでギリギリアリということにしました。ミリオネアのケースが特殊なだけで、今後使わない気がしますが……

④修正
 39話ですが、2泊3日の間違いでした。会議前に一泊、ナイトマン戦後の飛行機の時間が午前なのでその前に一泊です。
 また、ONB会議出席者は音頭を取っていた人を含め7名、つまり10名足らずでした。内2名がニホン人って……

⑤アンケ機能
 今更ですが、アンケート機能で出せる項目数がすごい増えててびっくりしました。
 キャラ指定アンケの際に感想欄を使う必要がなくなりそうで何よりです。
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