セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 シナリオ上避けられない説明回です。飛ばすと後がよく分からなくなる類の話です。
 サブタイを「オフィシャルネットバトラー会議」と「レスラー会見」で絡められないかと思いましたが無理でした。


45話 その名は

 熱斗や渡も席に着き、全員が聞く姿勢に入ったことを確認して、ブラックボード前の男が口を開いた。

 

「世界を代表するネットバトラーの皆様、ようこそ! ただいまより、オフィシャルネットバトラー会議を開催します。私はジュード、本会議の司会進行を務める、アメロッパのオフィシャルネットバトラーです。それではまず、輝けるネットバトラーである皆様の紹介を――」

「そんなのもう自分たちでやっちゃったよ。それより、早く本題に入ろうよ」

 

 一番後ろの席から、ジェニファーがひらひらと手を振った。

 

「盛り沢山抱えてる事件をほっぽり出して来たんだからさ」

「わたくしもそう思います。ゴスペルに関する重大な情報、それを伝えるためにわたくしたちを呼び出したのでしょう?」

「は、はい。それでは、ゴスペルに関する重大な情報の内容について説明します」

 

 続けてプライドからも口を挟まれ、ジュードは苦笑いして後頭部を掻いてみせた。が、合図でもあったかのように、一瞬にして表情を引き締めた。

 

「ゴスペルは恐ろしいことに、究極のナビを開発しています。それは、全てにおいて完全なナビです。そして、ゴスペルはそれを使って、いよいよ本格的に、現実と電脳、両方の世界を制服しようとしているのです。究極のナビが完成されれば、理論上、それをデリートすることは不可能です」

 

 国際会議の司会進行を任されるだけあり、ジュードはプレゼンテーションには慣れたもので、視線は広い会議場をまんべんなく、かつ自然に見渡していて、同様に自然な手振りが聞く者の関心を離すまいとしていた。

 

「我々はなんとしてでも、その開発を阻止せねばなりません。そして、そのための重大な情報を、本部では入手しました。それでは、前方のスクリーンをご覧下さい」

 

 黒一色のブラックボードが一面白地になり、資料が表示される。向かって左側には1体のネットナビの正面画があり、右側にはそのナビについての記述が箇条書きされていた。

 

 そのナビは黒と金色を中心とした人型で、頭部メットからはは蝙蝠の羽のような、あるいは獣の耳のようなものが生えていた。メットは額や頬までを覆っているが、ノーマルナビと異なり顔は人間のものだった。

 また、胸にはナビマークを置くような低い台状のパーツが乗っているが、そこには何も描かれていなかった。

 

(オフィシャルもこの時点でそこまで掴んどったんやな)

 

 感心しつつ、渡はペットボトル入りの水を一口飲んだ。

 

「ご存知の方もいらっしゃるでしょう。このナビの名前は”フォルテ”。世界初の自律型ネットナビであり、20年近く前にニホンで起きたインターネット大破壊事件、”プロトの反乱”において、当初、犯人と考えられていたナビです。その根拠となっていたのが、このナビの持つ”ゲット・アビリティ・プログラム”です」

 

 画面が切り替わって次に表示されたのは、プロトの反乱に関する記述だった。

 

「実際の犯人は事件名にもなっている通り、蓄積したバグによって自我を得た初期型インターネットそのものでしたが、それに気付いたのは、フォルテを容疑者として追撃し、その行方がわからなくなってからのことでした。そしてその追撃作戦において、従事したオフィシャルナビ部隊はいずれも甚大な損害を被っています。フォルテという1体のナビの手によって、です」

 

 連日行われたフォルテへの攻撃、その経過の記述が、画面上で強調された。見るからに、投入された戦力は尽く1体のナビを相手取るには過剰で、そして例外なく全滅していた。

 

「この強さこそ、他のネットナビやウイルスの能力を取り込み、自己強化を行うプログラム、ゲット・アビリティ・プログラムによるものです。これはフォルテを開発したコサック氏が組み込んだプログラムですが、現在はコサック氏自身も行方不明となっており、我々の技術による再現や対策は不可能と考えられています。しかし、ゴスペルの開発しようとしている究極のナビこそが、まさにこのフォルテなのです。もしゴスペルがフォルテの開発に成功した場合、我々には有効な対抗手段がないのです。では、そのようなナビをゴスペルがどうやって開発するのか?」

 

 再度画面が切り替わった。右側に、中身のないフォルテの輪郭に緑色でグリッドが引かれ、一部分だけ着色された、未完成を意味するであろう図が表示された。

 そのフォルテに向かって左から矢印が伸びていて、矢印の根本、つまり左側には、紫色の物体が積み上げられていた。

 

 物体は未精錬の鉱石のような質感で、紫色の中に一部赤みがかっていたり、黄色から黄緑色の範囲の光を放つ粒が混じっていた。

 

 熱斗はこの物体に見覚えがあった。電脳世界の目立たない所に時折落ちている、バグの欠片と呼ばれるものだった。最近コトブキスクエアに回収・処分を行う業者が出来、これが危険物らしいともそこで聞かされていた。

 

「バグの欠片からフォルテを、ネットナビを生み出す。あまりに荒唐無稽ですが、これは、各国オフィシャルの手でゴスペルの事件から断片的に得られた情報を集積し、整理した結果、そうとしか考えられないと判断されたことです」

 

 情報の正当性を説明する部分では特に、ジュードの声と身振りに力が籠っていた。

 

「詳細な工程や原理は未だ不明であり、恐らくこのイメージも正確ではないでしょう。しかし、これに近い事例も過去に存在しています。プロトの反乱からインターネットが復旧され、それから間もなくして突如誕生した――」

 

 フォルテと矢印が消え、バグの欠片が画面中央に移動し、青く角張った四つ足の獣に変わった。それは狼型ウイルスのガルーとも異なる姿をしていて、顔から後方へ放射状に伸びるたてがみが、体を大きく見せていた。

 

「電脳獣グレイガ。あまりの強大さにエリアごと封印されたこの存在も、当時の観測で、元は大量のバグの欠片だったことが判明しています。これと同様のバグ融合によって、フォルテを生み出そうとしているというのが、我々の見解です」

 

 グレイガがバグの欠片に戻って画面左へ寄り、矢印とフォルテが再び現れた。

 

「インターネットじゅうそこかしこに存在するバグの欠片の流れを追うのは簡単ではありませんが、我々の取れる対策は、フォルテが生み出されると思われる場所を突き止めることしかありません。よって」

 

 積み上げられたバグの欠片に大きなバツ印がかかり、中央下に現れたオフィシャルのロゴからそこへ矢印が伸びた。

 

「本部が出した結論としては、各国のオフィシャルで連携し、ゴスペルがバグの欠片をどこへ集めているかを突き止めて欲しいということです。説明は以上ですが、何か質問はありますか? はい、ジョンソンさん、どうぞ」

 

 ジュードが言い切る前に、ジョンソンがバッと手を上げていた。

 

「内容は大方俺も初耳だったが、まあ理解はできた。それで確認なんだが、こりゃ世界を挙げてのローラー作戦ってことなのか? 俺たちゃただでさえネット犯罪の収拾に追われてるんだぞ。っていうか、お前もそうなんだろ?」

「その通りです。なので、オフィシャルだけではなく、民間ネットバトル資格者……ニホンでは市民ネットバトラーという制度名ですね。そういった方々にも協力を要請することになるでしょう。例によって、詳細な方針は各国オフィシャル内で詰めて頂くことになります。例えば、ゴスペルについて調べるわけですから、一般市民の負うリスクについて考える必要もあります」

「ま、そーなるよな。OK、次行ってくれ」

「他に質問のある方は? ……ないようでしたら、次の議題に進みます」

(えっ、次?)

 

 早くも会議は終わりかと思っていた熱斗が、ジュードの宣告に目を丸くした。そう来たか、と渡は眉間を押さえた。

 

「では、各国におけるネットワーク犯罪の状況と、ゴスペルの関与している被害の分布傾向について――」

 

 その後、会議はノンストップで正午まで進行した。




①司会進行役の名前
 同じくアメロッパ所属のモブ出席者二人が「ジェニファー」「ジョンソン」なので、それにつながる形でJu始まりの英語男性名にしました。
 ついでに思いつきで調べたんですが、ジュノ(ジュノー、ユノ)は女性名で、元は女神の名前なんですね……

②プロトの反乱の時期
 プロトの反乱が原作で「十数年前」。プロトが運用され始めたのは推定23年前(熱斗の誕生日から逆算。詳細は23話あとがき参照)。
 それと現代に残る影響の小ささとタイミングから、プロトの反乱は18~19年前程度と解釈しました。電脳獣封印もプロトの反乱の直後の出来事であるため、この辺りになります。

③Q:アレをナビの「開発」って言うの? あとオフィシャル有能すぎない?
 光祐一朗曰く「究極ナビ開発計画」らしいので、そのはずです。
 原作のこのシーンにおける「重大情報」等がそもそもゴスペルの流した偽報という線も考えましたが、その場合ゴスペルによって盗まれるのはおかしいので、情報自体は本物だったはずです。
 その上で重大情報なので、実はかなりいい仕事をしていたわけです。
 プロトの反乱も電脳獣事件もオフィシャルならみんな知らないとおかしいレベルの大事件なので、これだけのヒントがあれば、バグ融合でナビを作るという発想くらいは出てくるでしょう。

④Q:でもその時の光祐一朗が「アレでナビなんて作れない」って言ってたじゃん
 性能が目標水準に達していないだけで実際に作れてはいますし、後のジャンクマンの出自のこともあるので、事実としてそうではありません。
 また、その時言われていたのが「究極のナビなんて作れやしない」であって「ナビなんて作れやしない」ではなかったことから、作れるかどうかで言えば作れるのだろうと解釈できます。
 さらに言うと、「2」攻略本でラスボスについて「ゴスペル首領が作り出した究極のナビ。(中略)融合体に変化してしまった」と書かれていたりもします。実際変化前はフォルテの形をしていたので、あの段階ではまだナビだったとも取れます。

 フォルテ開発の細かい理屈については近い内に更なる説明回で公開しますが、かなり端折った説明をすると鋳造刀ガチャです。

⑤Q:グレイガの元は厳密にはバグの欠片じゃないよね?
 上記説明回をお待ち下さい。

⑥アメロッパ城について
 モブが屋上からの眺めについて語っていたり、エンディングで屋上に登ったりしているので、行楽シーズンに日程決めて公開しているとかその辺りだと思います。
 少なくとも、オフィシャルの秘密基地という側面を隠した建物である以上、常時公開はリスクが高くてできないはずです。

⑦初期炎山を見ていて思ったこと
 語尾に「~ぜ」とかついている部分でふと思ったのですが、もしかしてファースト(無印ロックマンシリーズ)のブルースがベースなのでは?
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