セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 前回一瞬で感想がついてびっくりしたとともに、気長にお気に入りに入れて待って下さっている方がまだいらっしゃったということで、感謝の念にたえません。
 ありがとうございます。

 あと、アンケート一覧見たら4桁突入してるのがあってこれもびっくりすると同時に、こんなに数字が増えたと感じるまで放置してしまったのだと心が痛みました。


49話 リバーシ

「マグネットマン。デリートして差し上げなさい」

「仰せのままに!」

 

 戦闘開始と同時、マグネットマンの足元からロックマンに向かって青い光のラインが走った。幅1メートル程の着色された直線は引き合う磁力を帯び、その上に立つロックマンは僅かに体が重くなるのを感じた。

 このマグネットパネルと呼称される引き寄せる磁力を帯びた地形は、今、飛行機の電脳でそこかしこに発生しているものであり、それは既知の感覚だった。

 

「熱斗くん!」

「おう!」

 

 ロックマンの足元から広がる草原が、青い光の線を覆い隠していった。同時に胞子も噴き出し、緑と黄色の波紋が広がる。

 

「マグミサイル!」

 

 マグネットマンの足元に、一抱えほどの紅白のU字磁石が連続して2つ生成され、両極をロックマンに向けて地上を滑り、その2つともが胞子の波にぶつかって爆ぜ、それに穴を開けた。

 

「爆弾か!」

「そんなバトルチップで……!」

 

 この時、熱斗とガウスは互いに"攻撃を防がれた"と思っていた。

 

「マグネットライン!」

 

 マグネットマン側でロードされたバトルチップによって、草原の一直線上の草が溶けるようにして消え、その部分が代わりに青い光を放ち始めた。

 バトルチップ等で地形に付与された性質は重複せず、ただちに上書きされる。元来マグネットパネルを前提に戦術を組み立てているガウスは、相手による上書きも考慮して、マグネットラインをフォルダにフル投入していた。

 

 熱斗は続けてもう1枚のバッドスパイス3を送信しようとしていたが、草むらではなくマグネットパネルに立つマグネットマンに対しては胞子が届かない。

 チップデータが送信されないなりにロックマンが自己判断でバスターを連射し始めるが、マグネットマンは怯まずに受け止めながら両手をボールを持つようにして構えた。

 

 初めこそ手の中には何もなかったが、小さく黒い球体が現れ、紫電を纏いながら成長し、バスケットボール大にまで膨れ上がった。

 マグネットマンが片手を振ってそれを投じると、空中をふわふわと浮いて緩やかにロックマンのいる方へと向かい始めた。

 

 熱斗とロックマンは、これに似たものを見たことがあった。マグニッカーのマグネットボムの炸裂が、同じような黒と紫の球体状だった。

 戦いのみならず道中でも磁力に散々手を焼かされた2人には、ゆっくり迫ってくるそれに触れればどうなるか、大体想像がついた。

 

 ロックバスターが球体を傷つけずすり抜けるのを見て、熱斗は対処を即決した。

 

「ロックマン、ギリギリまで引きつけてから避けるんだ!」

「うん!」

 

 マグネットマンは、磁力の球体(マグボール)を放ったままの姿勢で、バスターでHPを削られるがままだが、ロックマンを見据えて微動だにしなかった。

 

「今だ!」

 

 ロックマンがバスターの構えを解き、真下のマグネットパネルが放つ磁力を強引に振り切りながら脚を動かして、マグボールを一歩横に回避しようとした、その時、マグネットマンがニヤリと笑った。

 

「かかったな!」

 

 突如マグボールが軌道を変え、ロックマンに向かって追尾し始めた。

 

「曲がった!?」

「欲をかいたな、光熱斗!」

 

 ガウスは、唸るように低く、快哉を叫んだ。

 マグボールそのもののスピードは依然変わらないものの、一度至近距離まで引きつけてしまい、かつマグネットパネルに引かれてスピードを出しきれない今、誰の目にも回避は不可能と思われた。

 

「くっ!」

 

 ちらと振り向いたロックマンの視界の端で大きくなるマグボールがロックマンに追いつき、弾けるように稲光が散らばった。

 

 そして、ロックマンの姿がマグネットマンの視界から消え、ロックマンのいた場所には、デフォルメされたロックマン人形が放り出された。

 

「何っ!?」

 

 熱斗がクサムラステージよりも前に仕込んだトラップ系バトルチップ、カワリミが作動したのだった。ガウスやマグネットマンが状況を理解するより早く、見上げるような高さで、ロックマンの手から手裏剣がリリースされた。

 

「ぐっ、おおお!」

 

 マグボールの反動で動けなかったマグネットマンに、3枚の手裏剣が立て続けに突き刺さった。ロックバスターの連射を浴びて顔色ひとつ変えなかったマグネットマンも、これには苦悶の声を漏らした。

 

 着地したロックマンは、この隙に、更にマグネットパネルの線から離れ、磁力の影響を感じない場所まで移動した。

 

「逃がすな、マグネットマン!」

「マグネットライン! マグミサイル!」

 

 再びマグネットマンから青い光の線がロックマンへ向かって伸び、草原をその中に溶かし込んでいき、続けてマグミサイルも追いかけるように放たれた。

 

「ロックマン、もう一度草むらの中に!」

「! OK!」

 

 マグミサイルに向かってバスターを構えかけたロックマンだったが、指示を聞いてマグネットパネルから草むらへと移動した。

 マグボールのみならずマグミサイルもまた、今度はラットンのようにはっきりカクッと、向きを変えた。

 そして、これまたふたたび広がり来た胞子の波にぶつかって爆発した。2枚目のバッドスパイス3だった。

 

「おのれ、またしてもそのチップか!」

「よっし、大成功! ロックマン、突撃だ!」

「迎え撃て、マグネットマン!」

 

 バスターを連射しながらロックマンが走り出し、マグネットマンはどっしりとマグボール生成の構えを取った。

 

「図に乗るな! わざわざ距離を縮めて、これを避けられるつもりか!」

 

 マグネットマンの手からマグボールが放たれた。

 

「怯むなロックマン! ギリギリまで引きつけるんだ!」

「うん!」

 

 ロックマンはまだ、直進をやめなかった。熱斗の目測で7メートル、5メートル……僅か1メートル先にまで迫ってきたところで、ロックマンは新たなチップデータを知覚した。

 衝突の瞬間、自分からぶつかって行く形だったロックマンがまたしても消え、しかし今度はマグネットマンの視界を塞ぐようにして、目と鼻の先に現れた。

 そこから振り抜かれた光の斬撃(フミコミザン)が、無防備なマグネットマンの胸をひと薙ぎした。

 

「がああっ! このっ!」

 

 マグネットマンが痛みに耐えながら苦し紛れに腕を振るい、ロックマンが飛び退いてかわした。そこへ、三度(みたび)マグネットラインが展開された。

 

「かわしたな? この間合いだ!」

 

 マグネットライン上のロックマンに対し、マグネットマンは肩から肘にかけてを突き出して、浮遊して突進を始めた。

 同時に、ロックマンを挟んで全く逆の位置に赤ではなく青のマグネットマンが現れ、鏡写しの構えで突進を始めた。

 

「な、なんだ!?」

「NSタックル!!」

 

 熱斗が判断を下す間もなく、2人のマグネットマンの声が重なった。

 

「うわああっ!?」

「ロックマン!!」

 

 ロックマンは咄嗟にかわそうとしたものの、マグネットパネルがそれを許さなかった。2人のマグネットマンによって挟み込むようにして繰り出されたショルダータックルをまともに喰らった。

 これはただでさえ高威力の攻撃だが、アクアカスタムスタイルのロックマンに、電気属性の攻撃はダメージが倍加する。よって、たった一撃で、ロックマンはデリート直前まで追い詰められた。

 

「くうっ……」

 

 足元に働き続ける磁力のせいで吹き飛ぶこともなく、ロックマンはマグネットマンの目の前で蹲るばかりだった。

 青いマグネットマンは消滅し、赤いマグネットマンが"どうだ"と拳を見せて笑みを浮かべてみせた。

 

「こんなのもう一発くらったら……! ロックマン、しっかりしろ!」

 

 マグネットマンがもう一度助走距離を空けて構えを取り、発進し、そして再度青いマグネットマンが出現した。

 

「NSタックル!!」

「ロックマン、真横に跳べ!!」

「っ!」

 

 新たに草原が広がり、2人のマグネットマンは胞子の波をもろに被ったが、それが弱点属性の高威力バトルチップであるにも拘らず、真っ直ぐブレなく衝突した。

 ロックマンはかろうじて、磁力から解放されたことで回避に成功していた。といっても転がり出るような形であり、マグネットマンに有利な状況が続いていた。

 

 ここまでの戦いでなんとなく感じてはいたものの、マグネットマンの頑強さをこれだけ見せつけられて、熱斗は舌を巻いた。

 

「なんてタフなんだ!?」

(いや、かなりのダメージを与えてるはずだ! 落ち着かなきゃ!)

 

 間合いは至近距離から変わらず。マグネットマンがトドメのNSタックルを繰り出そうと後退しようとし……その動きが止まった。

 

「こ、この期に及んで……」

「捕まえたぞ、マグネットマン……!」

 

 ラビリング2のチップで右腕をコイルに変えたロックマンがゆらりと起き上がり、今度は扇風機に変化させてマグネットマンに向け、羽が急速に回転を始めた。マグネットマンの目が見開かれた。

 

「それは……!!」

「いっけーー!!」

 

 木属性の竜巻(コガラシ)がマグネットマンを包み、吹き続く限りHPを削り続け、消え去ると同時にその全てを奪い取った。

 

「う、うおおおおおおお!!」

 

 この戦いで一度として膝をつくことのなかったマグネットマンは、ようやくその輪郭を失い始めた。

 

「ガウス様……申し訳ございません……ゴスペルに、光あれ!」

 

 ゴスペルへの忠誠を最期の言葉として、もはやマグネットマンは意識もなく、体の端から粒子に還元されるのみとなった。

 

「あぁ、私のマグネットマンが!」

 

 完全なデリートまでのロスタイム、残された通信状態で、ガウスの震える声が聞こえてきた。続けて、言葉にならない、怨嗟が満ちた声がした。

 

「おのれ! 私のハイジャック計画が台無しじゃないか!!」

「"私のハイジャック計画"?」

 

 ガウスのPET側から、ガウスとは別の、壮年の男の声がした。

 ガウスと同様、飛行機の中で熱斗が出会った人物、日本昆虫学会員の男だった。

 

 

……

 

 

 ビジネスクラス客室内。

 パニックに包まれた空間で、はっきりと前の席のガウスから間抜けな自白を聞いてようやく我に返った日本昆虫学会員の男は、シートベルトを素早く外して立ち上がると、席の後ろから怒りの形相を覗かせた。

 

「お前が、犯人か!?」

「し、しまったーーー!!」

 

 上を向いてそれを見てしまった驚いた拍子に、ガウスはPETを取り落とした。

 

「この野郎!! とっ捕まえてやる!!」

 

 日本昆虫学会員の男は、そのままずんずんと回り込んで詰め寄り、ガウスの胸ぐらを掴んだ。

 

「お、おいやめろっ! 私を誰だと思っているんだ!!」

 

 男は、そのままガウスを地面にうつ伏せに引き倒して背中を膝で踏みつけ、首根っこを抑えた。

 

「わっぷ!」

 

 ガウスは健康体かつ長身の白人であったが、フィールドワークにおいても現役の日本昆虫学会員の男の体力は、それをものともしなかった。

 

「犯人は捕まえた。着陸次第、オフィシャルに引き渡すよ」

 

 男は、落とされたPETに向かって声をかけながらガウスの両手首を背中側で縛ると、トイレのある機の後方へと連行を始めた。立ち上がったガウスは、すっかり顔を青ざめさせていた。

 

「こっちに来い!!」

「ひいい~」

 

 この騒動に目を引かれたビジネスクラスの乗客たちは皆、呆然としたまま、2人を見送った。




※今回はアンケートがあります。そちらだけご用の方は下へスクロールしてください。

 最初「楽勝ムードでさっと済ませるから戦闘の尺は短めになるし、後半で帰国シーンとか入れて文字数補う感じかな」とか思っていたんですが、チップ配牌のダイス振って戦闘の流れ考えた結果まさかのピンチに。アクアカスタムスタイルにしたことがめちゃくちゃ効きました。
 実際のプレイでも(特別な対策とかプリズムコンボとかしない限り)強敵なだけあって意地を見せてくれたものだと感じ入るばかりです。

~今回の考証~
・コクピットから機内放送で「ガウスを止めろ」って言えばよかったんじゃ……
→余計に混乱を招いて危険であるという判断と考えられる
・一撃でデリート寸前
→NSタックルの威力は200、この時点でロックマンのHPは500程度。他の攻撃は電気属性で威力50なのもあり、アクアスタイルだと一撃でデリート寸前。このNSタックルはV1ナビにおける最高火力で、2位がカットマンのサプライズチョッキンやブルースのワイドソード等の100ダメージであることを考えると途轍もない威力
・日本昆虫学会のおじさんが強すぎる
→一人で拘束しているのと会話の流れを考えると大体こういう感じになってしまう

(49話)渡と関わりができる原作女性キャラを「3」編で増や

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