セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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 やっと帰国、終盤に差し掛かりました。早くタグに「進捗:ゴスペル死亡」って書きたい気持ちです。
 マグネットマン編(「2」6話)がエレキマン編(「1」6話)相当なのを考えると、あちらが15話終了、こちらが(「2」のみで数えて)24話終了と、かなり開きがあります。原作5話(アメロッパ編)だけで8話も使ってるのがやっぱりおかしい……


50話 漸く憩う

 ニホン時間にして午前8時半前、デンサン空港の待合スペース。

 浅く腰掛け背もたれに体を預けてぐったりしている熱斗の姿を見つけた渡は、ゆっくりと息を吐いてから近づき、声をかけ、熱斗の汗が滲んだ顔を見て眉をひそめた。

 

「光くん……大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫大丈夫。よっ、と」

 

 熱斗は、肘置きに手をついて立ち上がり、リュックサックを背負って、目線で先を促した。

 

「ほら、行こうぜ」

 

 列に並んで入国手続きを順繰りに済ませながら、渡は、機内で何があったのかを、熱斗から聞き出した。

 機内で昆虫学者と話したり、ミュージシャンに頼み込んで機内サービスのウイスキーを譲ってもらったこと、それを使って毒蜘蛛騒ぎを解決したこと、そしてマグネットマンのこと。

 何も問題はなさそうだと聞き流していたところ、マグネットマンとの戦いでロックマンがピンチに陥ったと聞かされて、今度は渡が肝を冷やす番だった。

 

「そうだ、これ」

 

 話の流れで思い出したと、熱斗がリュックからチップフォルダを取り出して差し出した。渡が対サンダーマン用にという名目で貸し出した、対マグネットマン用に構築したフォルダだった。

 空港を出る時まで、渡が返せと催促しなかったのは、これが熱斗の勝率を詰めるためのキーだからだった。

 

「これがなきゃどうなってたか……ホント、ありがとな」

 

 感慨深そうに手の中のフォルダをしげしげと眺めてから、熱斗はそれを手渡した。

 

「いえいえ。なんであれお役に立てたようで何よりです」

 

 一見いつものように返事をしながらも、渡の心中は、真冬に窓を割られて寒風がごうと吹き込むかのようだった。

 

(……マジで? アクアスタイルやった(だった)から? 保証されてるのは勝つことであって、楽勝かどうかは関係ないとか? いや)

 

 要因整理やメタ思考による考察を行おうとした自分に気付いた渡は、それを振り払い、歩きながら、フォルダを自分の肩掛け鞄にしまった。

 

(今考えることやないな。そういうこともあるってだけ覚えとこ)

 

 渡は機内であまり眠れなかったための眠気をこらえ、親指の関節で眉間を押した。

 

「それで、ハイパワープログラムはどうなったんですか?」

「さあ……PETもオフィシャルの人が持っていったみたいだし、オフィシャルが返すんじゃない?」

「なるほど。なら心配は要らなさそうですね。光くんは秋原町のみんなにお土産を渡して帰るんでしたっけ」

「ああ。渡は……あれ、お土産買ってたっけ?」

「いや、何も。レストランで貰った分だけですね。家族で食べます」

「そっか。じゃあ駅までだな」

「そうですね」

 

 空港出口すぐのメトロライン駅で、2人は別れることになった。

 

「じゃ、また。寝過ごすんじゃねーぞ」

「ええ、また。熱斗くんも、ゆっくり休んでくださいね」

 

 

……

 

 

 夏休み真っ盛りとはいえ、午前8時過ぎ9時前となるとメトロラインはそれなりに社会人が座っているものだった。

 デンサン空港から乗り換えを繰り返した渡は、やはり座って寝るわけにもいかず、やっとの思いで、自転車で自宅まで乗り付けた。

 

「ただいまー」

「おかえりなさーい」

 

 母の声がしたリビングを横切って自分の部屋へ着替えを取りに行き、戻ってはレストランの土産を冷蔵庫に、洗濯物を洗濯カゴに放り込んで、浴室の扉を開けた。

 

「朝ご飯もう食べた?」

「んーん、めっちゃ眠いからいらん」

「はーい」

 

 シャワーで汗を流し、日課の浴室内トレーニングもせずにすぐに出て、渡は自室のベッドの上に倒れ込んだ。

 ベッドの上でのたくって頭を枕のある方へ向けたところで、机の上に出した黒いPETがピピッと鳴った。

 

「……」

 

 何と返事をしようか迷ったが、渡は、血行がよくなってすぐには寝付けそうにないと感じたので、充電ケーブルを挿したままPETを取り、再び寝転んだ。

 

「寝るまでの少しだけですよ。余裕があれば喜んで長話するんですけど、流石に疲れているので」

 

 画面の中では、アイリスが薄紅色調のベッドに腰掛けていた。自分の目を見る渡をそっと、いつものような伏し目気味の表情で見返して、それから口を開いた。

 

「あなたは……大丈夫?」

「それなりに疲れてますね」

「……ううん」

 

 考えるのも面倒だとばかりにノータイムで返答した渡だったが、アイリスはふるふると静かに首を横に振った。

 

「空港で、話していたこと。"心配"じゃ……なかったの?」

「あー……そうですね。そこはあんまり大丈夫じゃなかったですね」

「……」

 

 得心の行った渡が返答すると、アイリスは押し黙った。

 

「どうしてそんなことを?」

「ホテルで、話した時と……様子が違ったから」

「違った? どんな風に?」

「あの時も疲れていたけれど……なんとなく、今と違って見えたの。それで、光くんと関係あるのかと思って……」

「関係はありますね」

 

 気だるさから無表情のまま、渡が寝返りを打った。

 

「僕が現場にいれば、直接助けることだってできたはずで、それができずに光くんに任せっきりだったわけで、歯がゆかったというか」

「"歯がゆかった"……?」

「ああ、えーと……」

 

 渡は、その感情をどう説明したものかと、疲労の重しで蓋をされた頭で思案した。

 

「そうだ。もしも光くんが力及ばず、ガウス・マグネッツに負けていたら。飛行機は落ちて、光くんを含めて、大勢の人が死んだでしょう。で、僕がいて手伝うことができれば、それは避けられたかもしれないわけです」

 

 目を閉じて空想して語る渡を、アイリスが見ていた。

 

「でも、実際にはそうじゃなかったから、死んだんだと。そうしたら、僕はきっとものすごく嫌な思いをしたでしょう。"どうして僕はあそこにいなかったんだ"とか、"僕さえいればみんな助かったのに"とか」

「……うん」

 

 言い切り、渡の目の奥の奥が揺れるのを感じたところで、アイリスが返事をした。

 

(おーっと、疲れすぎか?)

 

 渡は、空港でしたように、親指を曲げて骨で眉間をぐりぐりと押さえた。

 

「やりたいことがあるのに、できない。手が届かない。"歯がゆい"というのはそういう気持ちです。こうして考えると、心配するのとは密接な関係にある概念ですね」

「じゃあ……それも、"優しさ"なの……?」

「……!」

 

 ぼうっと半目を開けるのがリアクションとして限界だったが、渡は確かに驚いていた。関心したことを伝えようと、頭を上下に動かした。

 

「確かに、そうですね」

「"優しさ"は、他の誰かに向けるもの。誰かを助けたいと思うこと……」

「そう、いつだったかにそんな風に言いましたっけ。よく覚えてましたね」

「……」

 

 もはや渡は眠気が限界に達し、自分では表情筋の変化を知覚できていなかったが、目を閉じたまま、口元を緩めていた。

 そして、それを見たアイリスが戸惑うように瞳を揺らしたのも、渡の目が閉ざされているのに無意識に顔を僅かにそらしたのも、見えていなかった。

 

「すみません、いい感じに眠くなってきたので、そろそろ勘弁してください」

「……うん。おやすみなさい、渡……くん」

「はい、おやすみなさい、アイリスさん」

 

 渡は、PETのディスプレイ電源を切って机の上に伏せて置き、自身もまた、スイッチを切るようにして布団の中で意識を手放した。




 今回はアンケートを設置していますが、漏れ確認や統計取りの意味合いであり、決定版ではありません。「このキャラに入れたいんだけどいなくない?」と思った場合は感想でのご指摘をお願いします。
 ※今回、秋原町組・大園姉妹・ミリオネア・チロルは除外となります。除外基準に関しては14話あとがきをご参照ください。

 2人きりならとりあえず余った字数に差し込めるアイリスパートの便利さを噛み締めています。

(50話)渡に接点ができて欲しいキャラ(リサーチ用です)

  • サロマ
  • 緑川ケロ
  • アネッタ
  • 城戸舟子
  • 白泉たま子
  • 都輪マリィ
  • ジャスミン
  • パクチー・ファラン
  • その他(感想欄へお願いします)
  • 結果だけ見たい人用
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