セキュリティ絶対突破するマン.EXE   作:エターナルマン.EXE

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※カラードマンはオペレータが逮捕されたため、ただのお出かけ回になります


6話 凡ミス

ニホンオフィシャル。

現実の日本でいう全国の警察に自衛隊を足したような組織であり、ニホンにおいては、ここに採用された職員のことをオフィシャルネットバトラーと呼ぶ。

旧来の警察や軍隊が解体された折に組織されたこのニホンオフィシャルは、科学省と密に連携することで最先端の技術を真っ先に実用化しており、国家が持つ現実世界・電脳世界両方での最高戦力である。

 

デンサンシティ、ニホンオフィシャルセンター。

ここは、そんなニホンオフィシャルの中枢であり、全国に分散している拠点のうち、デンサンシティを管轄とするひとつでもある。

なんだかんだ警察組織としての側面が強く、一般人の出入りも多い。

 

断水事件翌日、日曜日の午後。

そんなニホンオフィシャルセンターの地下の一室で、不毛な取り調べが行われていた。

 

「だーかーらー! ワタシはいきなり背中から襲われて、その後のことは何にもわかんなかったんだってば!」

 

対象は、昨日の午後、デンサンシティの断水事件についての通報がなされた際、"見るからにWWWなので、巻いてトイレに入れておいた"と言われた女、色綾まどいである。

逮捕の名分がないため当初は保護扱いとなる予定だったが、拘束を解いたところ逃走を図ったため、公務執行妨害の名目で逮捕。一晩留置所に収容された後、この取り調べで洗いざらい吐いてしまっていた。

しかし、それに対面している年配の職員の顔にも、疲労の色が浮かんでいる。それもそのはず、この取り調べは朝に開始され、昼食を挟んで既に4時間が経過していた。

 

「何かあるだろう、声とか、背丈とか。男か女かくらいわからないもんかね」

「わかんないわよ! そいつ、うんともすんとも言わなかったしぃ」

「水道局のアクアプログラムを奪ったオペレータについても、心当たりはないんだな?」

「知らなーい! ワタシがやる予定だったのに、手柄取られちゃってサイアクよ!」

「捕まってんのに、よくそんなことが言えるな」

(手柄、といえば。伊集院くんも災難だったな)

 

事件当日、炎山の指示で氷川・アイスマンによる水道の復旧は速やかに行われた。

が、実はその事件自体が、本命の作戦を遂行するためのダミーだったことが後になって判明した。

オフィシャルが気付いた頃には、4つの究極のプログラムの1つであるアクアプログラムを、WWWのナビが持ち去るところだった(アクアプログラムについては水道局の職員もその詳細を知らず、"それがあるとなぜかおいしい水ができる"という認識しかない)。

 

一般オペレータに遅れを取り、過ぎた独断行動についても関係者証言で露見。伊集院炎山に下された実際の処分はごく軽いものであったが、WWWの真の狙いに気付けなかったこともあって、プライドにつけられた傷は深かった。

 

年配の職員が、報告を上げていた時の炎山のイライラっぷりを思い出していると、取調室のドアがノックされた。

 

「おう、入れ」

「失礼します!」

 

入ってきたのは、威勢の良さそうな若い職員。年配の職員は、パイプ椅子に座ったまま顔だけを斜め後ろに向ける。

 

「本件受け持ちの在梨(ありなし)さん名指しで、先方からメッセージが届いています」

「おれにか。なんて?」

「"無理を言ってすまなかった"と。あれだけゴリ押ししといて、とんだお客様ですね。誰だかしらないけど、何様のつもりなんだか」

「なんだっていいけど、そういうの、思うだけにしとけよ」

(お客様、か。まあ、他国政府ともなれば、おれたちにとってもデカいクライアントか。振り回してくれやがる)

 

年配の職員――在梨は、断水事件に関する捜査責任者であった。そのため、通報者の素性も知っていた。

 

「失礼しました。それと、そのメッセージを受けて、確保対象の捜索は取りやめだと上から」

「だろうな。よかったなお嬢ちゃん。この取り調べ、終わっていいってよ」

「はー、やっと自由ってわけね」

「フッ、んなわけねえだろ、この後WWW全般の受け持ちが来て別の取り調べだよ」

「えーーっ!?」

「WWW構成員なら、叩けばホコリと情報がまだまだ出るかもしれんからな。おまえ、楽に裁判所まで行けると思うなよ」

 

くっくっくっ、と笑う在梨とは対照的に、まどいは顔を青ざめさせた。

 

 

……

 

 

この世界では、ネットナビをウイルスと戦わせることを、ウイルスバスティングと呼ぶ。

そして、ネットナビ同士を戦わせることを、ネットバトルと呼ぶ。

 

このネットバトルは、人格を有する存在同士の戦闘行為であることのほか、様々な理由から厳密には違法となっている。

が、娯楽性と訓練としての効果が高いことから、巷ではむしろ半ば積極的に行われ、近い将来にスポーツの一種として認められるに至ることになる。

 

断水事件翌日、日曜日の正午過ぎ。

熱斗のPCの電脳世界で、ロックマンとベータが対峙していた。現実世界の熱斗の部屋にも、熱斗と渡がいて、それぞれPETの画面を睨んでいる。

無傷のロックマンに対し、ベータは多少の傷を負っている状態。見た目では、ロックマンがややリードといった具合である。

 

「もう時間がない! ロックマン、頑張って後ろを取れ!」

「おおおおっ!」

 

右腕をリーチの長い"ロングソード"に変化させて突撃、ベータの後ろへ回り込もうとする。

すると突如ベータが地面に寝転び、仰向けになった。戸惑いつつも、視線を下に向けるロックマン。

 

「えっ?」

「はい、メットガード」

「あーーっ!?」

 

仰向けになったベータを、すっぽりと黄色の半球が覆い、攻撃を差し込む隙間がなくなる。予想外の一手に、熱斗が叫んだ。

ロックマンが戸惑っていると、熱斗と渡のPETに表示されたタイマーが時間切れを示し、アラームが鳴動する。両人がPETを操作し、アラームの動作を止めた。

 

「これで0勝1敗11分ですね。流石は光くんとロックくんといったところです」

「お前1回も攻撃してねーじゃねーか!」

「いかに隙を探し、作り、守りを切り崩すか、というのも大事ですよ。恐らく今の僕や光くんでは、あの伊集院炎山には10戦やっても1勝もできませんからね。切磋琢磨していきましょう」

「答えになってねー!」

「はははは」

 

熱斗はネットバトルにおいて、クラスでは負け知らずであり、ファイアマンやストーンマンといったWWW幹部のナビも倒した実績がある、紛うことなき実力者である。

それを承知の上で渡が、

 

「あのブルースというナビ、すごく強かったですね。光くんでも勝てないんじゃないでしょうか」

 

と言ったのが、この連続ネットバトルの発端だった。

簡単に乗せられた熱斗が渡に挑み、いつもあと一歩のところで攻撃を捌かれ、ムキになってリトライを繰り返していると、気付けば2桁回に達していた。

 

「しかし、疲れましたね。何かゲームでもしましょうか」

「渡くん、疲れてやることがゲームなんだ……」

「これは対人戦特有の気疲れですから。まだ目と指は平気ですよ」

 

渡がPETからゲームコントローラを外してケーブルを巻いていると、熱斗のPETからメールの受信音がした。

 

「熱斗くん、メイルちゃんからメールだよ!」

「急に冷えてきましたね」

「いっつもそれ言ってるよな、おまえ……」

「読むよ? "もうすぐやいとちゃんの誕生日だね。というわけで、これから一緒にプレゼント買いに行こうよ。待ち合わせは、メトロラインの駅の前。いいでしょ? じゃ、返事、ちょうだいね"……だって」

「あっ」

「ん? どした?」

 

渡は水道局で色綾まどいを留置所送りにすることで、今日本来起こるはずの事件を未然に防いだ。

事件を未然に防ぐということばかり考えていたせいで、事件の他にあるイベントを見落としてしまっていた。

それを、ロックマンが読み上げた内容で思い出したのだった。

 

(自分、こんままここにおったら貴重なおデートの邪魔になるんとちゃうか……? 鈍感主人公がヒロインに接近するほんまに貴重なチャンスなんやぞ……? そんなこと許されるか……?)

「何か用事でも思い出したのか?」

「ええ、まあ、できることなら思い出したいですね……」

「? よくわかんないけど、何もないんだったら渡も一緒に行こーぜ! せっかくこっちまで来てるんだしさ」

(どないしよ……いや、発想の転換や。メイルが事件に巻き込まれての吊橋効果がなくなった分を取り戻したるチャンスかもしれん。攻める方向で考えるんや!)

どないしよか……

  • 終始からかってお互いを意識させる
  • 途中でこっそり抜けてメイルを応援する
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