セキュリティ絶対突破するマン.EXE 作:エターナルマン.EXE
何がいけないんだろう。タイトルとあらすじと展開と文体が悪いのかな?
熱斗がメイルにメールの返事を出した後、待ち合わせの時間に結局メイルは駅に現れなかったため、先に行こうということになった。
メトロに揺られること、ほんの数分。デンサンタウン駅の出口階段を上がると、大通りの交差点に出る。
デンサンタウンはその名の通り、デンサンシティの中心となる街である。地図上では"田"の字をいくつもくっつけたような形をしていて、交差点が多い。
なお、デンサンの"デン"は"田"ではない。
道路沿いにはオフィスビルや飲食店、その他様々な店が並んでいる。ほとんどが住宅地の秋原町とは活気がまるで違い、都会という言葉がしっくり来る。
水道も復旧し、今日が日曜日ということもあって、多くの車や人が行き交っている。そんな街の様子を見て、渡は内心戦慄した。
(ゲームとは全然人口密度ちゃうやん! 赤信号んところには車も人もようけ溜まっとる。もしあいつを野放しにしとったら……死人が何百でもきかんかったかもしれん)
本来デンサンタウンで起きるはずだった、自動運転システムを利用した大規模テロ。
"信号を全て青にすることで車両を停止させず、それら全てを交通事故に追いやる"というそれが実現していれば、死者多数は必定。
水道局の事件が起こった日、事前準備までして渡が積極的に介入したのは、それを防ぐためという理由も大きかった。
「ったく、こっちの駅にもいないのかよ。ロックマン、さっき来たメールなんだった?」
「急用で遅れるから、先にお店探しといて、って。ロールちゃんの新しいナビチップが添付されてるよ」
「もうバージョンアップしたのか? まあ、一応フォルダに入れとこうかな……」
ウイルスを制するためのバトルチップの多くは、ウイルスのデータを元に作られる。数は少ないが、ネットナビのデータをベースにしたものも存在し、それらの多くはナビチップという分類に属する。
使用すると、そのナビのごく短い戦闘記録を再生する。要するに、ファンタジーなRPGによくある感じの召喚魔法である。
「要点は説明したけど、メールの内容、確認しといてね」
「ん」
熱斗がPETを操作し、メールに目を通す。
そこには、出先からメトロではなくバスに乗ったため到着が遅くなること、やいとが最近骨董品を集めていて、プレゼントもそれが望ましいだろうということが書かれていた。
「ったく、自分から誘っといてこんなのないよなー」
「急用じゃ仕方ないって。それより、お店探そうよ」
「骨董品のお店なー……ぜんぜんキョーミないから、あるかどうかもわかんないや。渡、なんか知らない?」
(……大まかな場所は知っとるけど、知っとる理由付けができへんのよな)
渡はその思考を顔に出さず、まさか、と否定のジェスチャーをする。
「デンサンタウンの土地勘は絶無ですよ。というか、コートシティに住んでる僕がここの地理に明るいわけないでしょう」
「いやー、渡なら知っててもおかしくないかなー、って」
「僕を便利な何かと勘違いしてません? ……まあ、人に聞いてみましょう。よくこの辺りを通る人なら、知っているかもしれませんから」
「やっぱ聞き込みしかないかぁ。メイルは1丁目のバス停で降りるって言ってたから、そっち方面に行こーぜ」
駅のあるデンサン3丁目から北へ歩くこと、およそ10分。
1丁目と3丁目の間であるデンサン中央に入り、聞き込みを続けていると、ひとりの老人がこう証言した。
「ちょうどわしも、骨董品屋に行くところなんじゃ。2丁目に新しくできたらしいんじゃが、歩き疲れてしもうてな……」
「詳しい場所も知ってるの?」
熱斗にそう問われると、老人はゆっくりと上着のポケットに手を入れ、丁寧に折りたたまれたチラシを取り出す。
「知り合いから貰ったチラシがあるから、これをやろう。わしゃもう道を覚えたからの」
「やたっ! ありがと、おじいさん!」
「お役に立ててなによりじゃ」
(こんなコッテコテの老人言葉、生で聞いたん初めてやわ)
「あとは写真をメールで送っとけば、あいつもまっすぐ来れるよな。渡、先に行ってやいとのプレゼント選ぼうぜ!」
……
デンサン2丁目。大通りに面したすぐ目につくところに、その骨董品屋はあった。
庇の上にかけられた古木の看板にも、はっきりと"骨董屋"と(だけ)書かれている。
(改めて考えると、えらい金かかりそうな好立地やな。それで骨董品屋って、子供の入れる店なんやろか?)
熱斗が引き戸を開けて入り、渡もそれに続く。
入って左右には赤い漆塗りの平箪笥が並べられ、その上に商品らしき皿や刀などの骨董品が陳列されている。
壁にかけられた山水画の掛け軸や、地面に直接置かれた大きな壺も含め、どれも値札がついていない。
(……やっぱあかんのとちゃう?)
「いらっしゃい……でも、今は開店準備中……」
店の奥、一段上がった畳敷きにはカウンターがあり、さらにその奥には古書が何十冊と積まれている。
声の主――カウンターに座っている少女の他に、従業員らしき人物はいない。
「準備中? こんな時間にですか?」
「そう、こんな時間に……」
(理由を言わんかい理由を)
渡が心の中でツッコみを入れている横で、熱斗が平箪笥の上を物色する。
「熱斗くん、触っちゃダメだからね!」
「そんくらいわかってるって! ……うーん、やっぱどれもただのガラクタにしか見えねーなー」
「……そちらのあなた、ちょっといいかしら」
「ん? オレ?」
「わたしは黒井みゆき。ここの全ての物には、魂が宿っている……あなたには見える?」
「……? いや、見えないけど」
呼ばれて振り向いた熱斗は、意味がわからないという風に答えた。
「わたしには、見える……あなたのナビに宿る、一際輝く魂が……」
(ほんとのこと
店主はそう言いながらPETを取り出し、カウンターに置かれた虫眼鏡にプラグインした。
熱斗はそれを呆然として見ている。
「さ、魂を交わしましょう……」
「……なあロックマン、何言ってるかわかる?」
「えーっと……ひょっとして、"ネットバトルしましょう"ってこと……かな?」
ロックマンが絞り出した解釈を肯定も否定もせず、じっと熱斗を見つめる店主。
「えーっと……」
「……」
「……ぷ、プラグイン! ロックマン.EXE、トランスミッション!」
圧に負けた熱斗は、虫眼鏡へロックマンをプラグインした。
……
電脳世界へ送り込まれたロックマンを待ち構えていたのは、頭部が髑髏のネットナビ。
手足は骨だけかのように細く角ばっていて、両肩にも白い髑髏の肩当てをしている。
「……」
髑髏のナビは膝も背中も曲げ、両腕をだらりと垂らしているが、その顔だけがロックマンの方を向いていた。
目付きの悪い髑髏の視線に、ロックマンが身構える。
「さあ、スカルマン。おもてなしをっ」
「!」
「熱斗くん、来るよ!」
髑髏のナビ・スカルマンが、脱力した姿勢から肘を曲げて腕をわずかに上げ、戦闘態勢を取り。
顎が外れんばかりに口を開き、そこから青白い火球――鬼火を発射した。
「ひ、人魂!? ロックマン、避けろ!」
「ふっ!」
ロックマンは、真っ直ぐ飛んで来る鬼火を難なく回避する。
続いてスカルマンが、回避した先に手刀を向けると、その肘から先が分離。プロペラのように高速回転し、ロックマンへ向かって飛ぶ。
「い!? ロックマン、左だ!」
「わっ!」
さらにもう片方の腕も自切。追加の前腕ブーメランとなって飛び、ロックマンが躱す。
「そっちはダメだ、後ろに!」
「えっ? うわあっ!?」
背後から戻ってきた最初の腕がロックマンを弾き飛ばす。床を転がったロックマンは、受け身を取ってすぐ立ち上がる。
「飛んでくる腕が、2本!」
「よそ見はだめ」
みゆきの言葉と同時に、鬼火が再び発射される。
ロックマンの周囲には2本の高速回転する腕が不規則に舞い、逃げ場はない。
「なら、これでどかしてやる! ハイキャノン!」
右腕を大砲に変え、腕の1本に狙いをつけ、吹き飛ばす。そうして空いた空間へ駆け込み、火球はロックマンがいなくなったコースをそのまま通過して消えた。
「行ける!」
「だめって言ったのに……」
「? あっ!」
体勢制を整えたロックマンが、みゆきの言葉の意味を図りかねつつスカルマンの方を見ると、頭部の髑髏が消えていた。残った首から下は、何かを真上に放り投げたような姿勢を取っている。
「間に合わないわ。シャレコーベイ、直撃コース……!」
ロックマンの体より一回りほど大きい、巨大化した髑髏が、ロックマンを押し潰さんと頭上から迫る。それは、見るからに受け止められない一撃。
そして周囲にはやはり、2本の腕がロックマンを挟んで向かい合って飛び回り、隙を作らない。攻撃を当てて軌道を逸らすだけの猶予もない。
(
「熱斗くん!」
「ロックマン、6時方向にダッシュだ!」
「うん! うおおお!」
包囲網の外側、スカルマンのいない方へ駆け出したロックマンの前に、左右から回転する2本の腕が迫る。
「くっ……うわああ!」
走りながら身を捩るも避けきれず、回転する腕のひとつがロックマンを打ち据え、吹っ飛ばす。そして、その先の上には
(弱い攻撃をあえて受けて、強い攻撃から逃れる。セオリーのひとつやけど、相手はそれも織り込み済みでコンボを作っとるか)
「そこからは逃げられないわ……」
「いいや、振り切るさ! ダッシュアタック、送信!」
ダッシュアタックのチップデータが送信され、ロックマンの右腕が、紙飛行機と鳥の合の子のような姿のウイルス・キオルシンの形状に変化。
「飛べ、ロックマン!」
キオルシンの尾の部分で、白いアフターファイアが噴き出し、右腕を突き出したロックマンは倒れた姿勢のまま飛ぶ。
手を伸ばした先は、先ほど腕の一撃を受けたのとは逆、スカルマンの真正面。
ロックマンに起き上がる猶予がないのと同様に、一度ロックマンを迎撃した2本の腕も、今のロックマンには追いつけない。
そして――
「投げ上げた姿勢のままってことは――」
「――頭を外したキミは動けないってことだ!」
無防備なスカルマンの胴体にダッシュアタックが衝突。きりもみ回転しながら吹っ飛ばされたスカルマンは、ダメージが許容範囲を超え、強制プラグアウトした。
現実世界で熱斗がガッツポーズする。
「見たか! これが、"肉を切らせて骨を断つ"ってやつだぜ!」
タイトルでお察しの方も多かったことでしょう。
事件は起こりませんがネットバトルはありました。
この話だけ見ると渡がマジでモブですね……