Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

1 / 19

 もしも幻想郷にアーマードコアが幻想入りしたら。

 そう思って思いのままに筆を走らせたので至らない所はあるかもしれませんが、お読み頂けると嬉しい限りです。




Chapter 1 『The beginning』
東の地の歩行兵器


 

 

 時代は変わった、と言わざるを得ない。

 

 

 『妖怪』が生身で猛威を振るう時代はとうの昔に過ぎ去り、いつからかこの地に流れてきた()()()()()()()()()()()()()()()()が散見されるようになった。

 

 曰く、『アーマード・コア』というその鉄の塊は、遠目で見てもわかるほどに巨大だった。5mという大きさの鉄塊は、誰がどう見てもこの世界にそぐわない、異質なものだった。それに、その機械は酷く錆臭い。金属の腐ったものとも取れる酷い悪臭は鼻を突いた。

 

 長らく手入れも整備もされていなかったのであろう機械は、しかし人々や妖怪達のその手に渡り、やがて各々の信念の為に彼らは戦いを望み始めた。人里が、間欠泉管理センターが、妖怪の山が、無縁墓地が、博麗の一派が。

 並み居る名高い土地のあちこちで互いの理念が為に撃ち合うその様はまるで幻想郷が創られる前の戦場そのものだった。......いや、今は技術は無いものの、外の世界の文明を壊した兵器がすぐそこを横行する時代なのだから、それよりもたちが悪かった。

 

 やがて利害関係が一致したり、手を組んだり、力を合わせようと幾人かのAC乗りが一つの目的の元にグループを形成すると、それらは『組織』と呼ばれるようになった。

 

 『組織』は理念の元に破壊と支配を始め、ACを持たない弱小な妖怪の勢力は『組織』の元に膝を着いていった。

 

 『組織』が出来るという事は、それとは全く別に『対抗する組織』が出来上がる訳でもある。支配を免れたAC乗りが組織に対抗する為に新たな『組織』を作り上げ、その組織同士の間は常に戦場と化す。

 

 そしてその2つの組織は、自然とそうなったのか、はたまた必然だったのか、それとも必要に駆られてか。

 

 

 組織の中で更に分裂が起きると、それらは今ある有名な地名の名を冠して、それを自らの『組織の名』とした。

 

 幻想郷のパワーバランスは奇しくも、各人が能力に頼らず、人と妖怪が対等に戦えるようになる『AC(アーマードコア)』のおかげで均衡の取れた形となっていた。

 

 そんな中、どこにも属さない『個人』で活動する者達がいた。『組織』の依頼を受け、あるいは自分の倫理観や価値観に従って、仕事を受けて『組織』と相対する者達。

 

 彼らを、人はこう呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

『雇われ。あるいは、《渡り鳥(ミグラント)》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『システム、通常モード起動』

 

 一機のACが上空を飛ぶ輸送ヘリから放たれ、ブーストを吹かしながら荒れ果てた大地へと着陸した。

 

『巫女殿、今日も頼ンます。無線通信を依頼元に繋ぎますぜ』

 

 そう言って通信が一瞬途絶える。直ぐに復帰したと思うと、先程まで話していたヘリパイロットではなく、一人の『巫女』と呼ばれた雇われに依頼した、天狗の男が通信を引き継いだ。

 

『あー、あー。マイクテス……聞こえているな。久しぶりだな、博麗の巫女。今回の仕事は『力を伸ばしつつある人里への制裁行為』だ。ACが一機確認できている。恐らく雇った者だろう。これを倒せば今回の契約は終了だ。お前がやられるとも思えんが、油断だけはするなよ』

 

『………わかった』

 

 一言、返事だけして通信を切り、周囲を警戒する。

 かつて人里と呼ばれたその地に最早見る影はなく、外の世界の技術の流用によって地下に建造された、巨大地下都市『クレーター』と呼ばれる巨大な町があるばかりだった。

 

 『システム、スキャンモード』

 

 辺りを見渡す動作を見せるそのACは、左右にそれぞれカスタムされたライフル(AM/RFA-222)スナイパーライフル(AM/SRA-217)を持ち、左右のハンガーにはショットガン(AM/SGA-204)レーザーブレード(AM/LBA-251)を装備していた。肩部には数十発のミサイル(SAZANAMI mdl.2)が内蔵されており、その機体は化学エネルギー(CE)兵器に高い耐性を誇る。白と赤という、平野でも森林でも暗闇でも、どこでも目立つ色鮮やかなカラーリングが施されていた。

 逆関節型のその機体は全体的に鋭角な印象を抱かせ、人型兵器としてはややアンバランスながら、脚部構造の都合上高い安定性能を確保していた。

 

 パイロット本人によって名付けられたその機体名は、調和者を意味する『ハーモナイザー』と呼ばれており、その色合いからも、間違いなく幻想郷の象徴たる博麗の巫女『博麗霊夢』が駆るACだった。

 

 そしてハーモナイザーを静かに狙う一機のAC。右腕にスナイパーキャノン(YAKUMO mdl.2)、左腕にガトリング(AM/GGA-206)、左右それぞれのハンガーにパルスマシンガン(AU44 Kaleidoscope)プラズマガン(FUJINAMI mdl.1)を携えたその機体は、ハーモナイザーのように目立つ塗装でありながら、白と黒というモノクロの、ハーモナイザーとは正反対の色合いだった。

 その脚部は熱エネルギー(TE)兵器に高い耐性を保持しつつも、全体的に高い防御力を誇る、重量型の二脚である。

 

 機体名は『鋭さ』を意味する『ギムレット』であり、こちらも人里と長期雇用契約を結んでいる傭兵『霧雨魔理沙』の愛機だ。

 

 ロックオンサイトから遠く離れたハーモナイザーの立つ場と、ギムレットの陣取る荒地のその距離は、肉眼では殆ど視認できないだろうという距離である。長距離狙撃を行うべくスナイパーキャノンを構え、引き金を引く。

 

 引き金を引いたのとほぼ同時に、独特の銃声を伴って巨大な弾丸が、ハーモナイザーを穿たんとばかりに砂煙を払いながら標的の元へ突き進んでいく。

 

『……!』

 

 しかし、流石は巫女の勘と言うべきか、野生の勘とでも言うべきか。弾丸はハーモナイザーがブースターを吹かしたおかげで外れてしまった。今ので位置を補足したのか、魔理沙の居る位置にリコンが飛来し、機体の付近に突き刺さる。スキャンモードで位置を気取られたか、サイトスコープ越しに紅白のACがこちらに急速接近してきているのがよく見えた。

 

『チッ……この程度じゃあ、当てる事もままならないか』

 

 独り言を呟きながらスナイパーキャノンをパージする。重々しい音と共に接合部が外れ、武装が解かれる。右のハンガーが起動し、空いた右腕にプラズマガン、左のハンガーも作動し、ガトリングと入れ替わる形でバルスマシンガンを装備する。

 

『さて、これも仕事だ。悪いけど引いてもらわないと、こちらの報酬もかかってるからなっ!』

 

 グライドブーストを強めて迫り来るハーモナイザーを正面に見据え、ギムレットも両手の銃器を構えて邀撃の用意に移る。

 

 遮蔽物の無い平原での戦いだ。先に先手を打ったのは狙撃銃を所持しているハーモナイザーだった。ロックオンされていないものの、距離を無視した目視による狙撃を、左方向に強いブーストをかける事で機体をずらし、回避する。

 

 二発、三発と、火薬によって赤熱した弾丸が放たれ、続けて同じ方向に回避する。ギムレットのジェネレータ内部コンデンサが、エネルギーが切れそうだと魔理沙に警告を促した。

 

『システム、スキャンモード』

 

 スキャンモードでは腕部や武装、FCSなど攻撃に使われるEN(エネルギー)をカットし、その文余ったENを回避に回しつつ敵機に接近する事や、その逆に守りを捨てて逃げに徹する事も可能である。

 その特性を生かし、回避に専念しつつ攻撃用のENを保持したまま、着実に両機は接近していた。

 

 牽制は冷静に対処され無意味だと判断したか、ハーモナイザーは武装を近接に切り替え、より早くギムレットに迫る。魔理沙はそのプレッシャーを興奮に置換する。所謂武者震いというやつだ。

 

『お前の機体を倒すためだけの機体だ。さぁ来い、コンデンサーの中身を全部喰らわせてやるとも』

 

 

 至近距離に迫ったハーモナイザーを迎え撃つ為にパルスマシンガンによる弾幕とプラズマガンによる電磁波の壁を形成する。

 その弾道は尽くを読まれており、パルスマシンガンが時折数発当たるという程度で、後は殆ど回避され、或いは当たっていなかった。

 

『……!』

 

 霊夢は戦闘中は決して口を開かない、とされている。或いは話しているのかもしれないが、広域通信を起動する事は決してない。魔理沙にとってのかつての親友の声は、しかしACが()()()()してからは一度たりとも聞いていない。

 

 再度狙いを定めて引き金を引く。20発程パルスマシンガンが連射され、だがハーモナイザーはまたもや軽々と弾幕を避ける。無駄の無い動きで、最低限のブーストエネルギーだけを使って、数発程度の被弾に抑えた。

 反撃とばかりにハーモナイザーが4発、威力の高いライフルで射撃する。射撃体勢から回避行動に移るのが遅かった為に3発ほどフレームに受けてしまう。

 

『チィッ!』

 

 舌打ちしながらも次弾を回避つつ、狙いはハーモナイザーからは一度たりとも逸らさない。

 

《ピッ》

 

 アラーム音がなった。FSCによるロックオンが終了したのだ。ギムレットはプラズマガンを構え、ハーモナイザーに照準を合わせる。ハーモナイザーのブレードの射程でもあった。次が決着だ、そう思った時だ。

 

『……これは』

 

 プラズマガンの発射タイミングを完全に読んでいたのか。

 脚部の追加ブースターによって飛翔したハーモナイザーを捉えきれず、そのままの勢いで脚を叩きつける《ブーストチャージ》に直撃してしまい、耐性を崩した所を。

 

『しまっ───』

 

 ギムレットのジェネレーター機関部をハーモナイザーのレーザーブレードが正確に捉え、斬り払った。爆発によってギムレットが、腕部、脚部と分解していく。

 

 残った左腕のプラズマガンをパージし、空いたその手を伸ばした。しかし、その伸ばした腕はハーモナイザーに届く事は無く、ジェネレーターが止まったことでギムレットは動力源を失い、無力化された。

 

『システム、通常モードに移行します』

 

 

 

 

 

 

 

 任務が完了したとシステムが判断し、戦闘モードを解除する。無線通信を繋げた。通信先は先程会話した天狗ではない。霊夢の住む博麗神社に度々立ち寄り、霊夢の身を案じてくれる一人の大妖怪、八雲(やくも) (ゆかり)その人だ。

 

『霊夢、お疲れ様。貴女はAC乗りとしても一流ね。……貴女はどう思うかしら。人と妖怪が直接争う世界を。ルールを忘れ、互いを激しく憎みあって壊し合う、そんな幻想郷を』

 

『私に、ルールなんてものはとっくの昔に無いよ。今はただ、人と妖怪の力を均等に保つ事、それだけが私の使命。ACも、それをする為の道具に過ぎないから』

 

『…そうね。貴女は雇われ。紅白に塗られた渡り鳥。自身の信条の為だけに力を振るい、幻想郷を調和する。それこそが貴女の、博麗の名を持つものとしての役目だものね』

 

『切るわ。また』

 

『ええ、また』

 

 通信を切って輸送ヘリを呼ぶ。位置情報ビーコンによってACから絶え間なく輸送ヘリに居場所が送られてくる。

 

 ヘリのハンガーにACが掛けられ、ヘリに引っ張られてふわりと浮き上がる。一人で空を飛べないというのは不便だが、それを補って余りある()であるから、多少の不便は耐えるべきだ。それに。

 

 

『へっへへ、毎度どうも、巫女殿。人間共も、これで少しゃあ大人しくなるでしょうよぉ』

 

 この小煩い鴉の男の口を黙らせたくて、私は私の力を利用して、一つ言ってやった。

 

『……一つ良いかしら。私は幻想郷の『調和者』なのは勿論知っているわよね』

 

『ええ、ええ。もちろんですわ。今回の仕事は巫女殿のおかげで成り立ってるようなもんです』

 

『……なら、ひとつ警告よ。お前達が出過ぎた真似をすれば、『調和者』はお前達にも牙を向く。……お前の上司にでも進言しておきなさい』

 

『! ……わ、わかりやした…』

 

 それ以降、鴉は黙って操縦を続けた。これで、仕事終わりは静かに過ごせそうだ。

 

 

 

 

 そう考えながら去り行くハーモナイザーの後ろ姿を見送ったのは、人里に雇われた雇われ、霧雨魔理沙だった。

 

「生き残っただけ、御の字か……いや、あいつに生かされたって言うべきか。何れにせよ、もう私の機体は動かせそうにないな」

 

 魔理沙は去りゆく霊夢を見て、そう思わざるを得なかった。或いは、そうでなくば自身を律せないからそう考えたのかも知れない。が、それは魔理沙の心の内を覗かない限り、何人も知り得る事はない。

 

 






 AC、ハーモナイザー
 パイロット、博麗霊夢

 速度に優れる軽量タイプの重量逆関節《TAKEKAWA mdl.2》と高出力ながらエネルギー消費が比較的軽いブースター《Bo-C-H11》、そして低いEN容量を補う程高いEN出力を備えた、軽量型ジェネレータ《SUZUMUSHI mdl.1》によって、速度を充分に確保した重量逆関節機体。

 コアにシールドを装備した運動エネルギー(KE)耐性の高い《CA-215》を採用し、それを中心にAPが高くも軽量のTE型腕部《AGEMAKI mdl.5》と、カメラ性能とある程度の演算性能を備えたKE頭部《HF-227》をチョイス。
 TE装甲は低めだが、代わりに高い機動力を損なうこと無く、中程度の威力を持つライフルやバトルライフル等の武装を跳弾できる装甲を得た。

 武装はレーザーブレードを除き全てがKE属性で、タンクや重量二脚のようなKEに耐性のない脚部に対し高い制圧力を発揮できる。また左手と左ハンガーにスナイパーライフル、ショットガンを装備する事で、右腕部ライフルとのシナジーを最大限引き出している。
 レーザーブレードは、射程こそ短いがレーザーが収束され高い攻撃力を誇り、四脚へ対する決定打に成り得る。同じ理由で重量逆関節へ対しても決定的な一撃を与えられる。

 しかし、機体コンセプトや武装の偏り具合からKE防御力の高い中量二脚、軽量で速度がある軽量二脚や、高い跳躍力を持つ軽量逆関節の相手は苦手である。

どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。