Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

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 霊夢と魔理沙のコンビが、様々な誰かと共闘して戦いを求める傭兵達と戦うお話です。第一話。

(名前の間違いが)大きすぎる......修正が必要だ


Mechanized being 1《Again》

 博麗神社の地下、博麗ガレージにてAC用のライフルを改造する者がいた。霧雨魔理沙という青年は、界隈では紅白の巫女と並び恐れられるAC乗りとして有名であった。

 

「霊夢ぅ〜。こんなもんで良いか?」

「知らないわよ。魔理沙の塩梅で決めて」

「なんじゃそりゃ!適当な事言ってたら友達無くしちゃうぜ。ただでさえ世知辛い世の中なんだから」

「うーん......じゃあそんな感じでいいんじゃない?」

「じゃあってなんだ、じゃあって」

 

 そう言いながらも魔理沙の表情は満足気だった。さっきまでやっていたのは武装の改造。ライフルを昇華させ、『ガトリングの速射性能とライフルの汎用性を合わせた銃』を作っていた。武器を改造するなど初めての試みだったが、その出来は素晴らしいものだと確信していた。

 

「ほら、出来たぜ。ガトリングライフル、とでも言えば良いのか?」

 

 作業用MTから降りてきた魔理沙がその武器の出来栄えに満足している。霊夢もそれを見ると、思わず感嘆の声が漏れた。複数の銃口と長い銃身によってガトリングに比べ連射速度を犠牲に高い精度を得た新生ライフル。その誕生に立ち会った霊夢も魔理沙と同じく期待を胸に膨らませていた。

 

「構造としてはバレルを回転させて冷却しながら撃ち続ける、リボルバーのような形式を取ったぜ。これでガトリングよりは遅いけど、ライフル並みの威力と精度で連射できると思う」

「凄いわね......あんた本当に銃技師目指せるんじゃない?」

「勘弁してくれ、私はあくまでも傭兵。改造は副業だぜ」

 

 そんな事を言い合っていると、向こうの二番ガレージでも続いていた作業が終わったのだろう。ドアの向こうから見知った顔が覗いていた。

 

「二人とも!こっちは終わったよ〜。...........って、なーんだ、魔理沙も終わってたのかい?」

「にとり。そっちも終わったようね」

「終わったよ。私の自信作だから見て欲しいな」

「じゃ、行こうぜ。にとりの自信作が気になる」

 

 一番ガレージを出て二番ガレージに入る。そこで二人が目にした物は巨大な鉄の板。正確には、性質の違う金属板を幾つも繋ぎ合わせた、防弾性能の高いAC用のシールドだ。

 

「これがAC用の盾?随分と大きいわね」

「人サイズじゃないからね」

 

 そう言い終わってからにとりはそのまま水筒の中を飲み干した。喉を鳴らして飲み切るのを見て、二人も喉が渇いてきたようで、三人で地上に出ようとする。廊下に出てハシゴを昇る。ハッチを開けた先は、博麗神社の倉庫の中だ。

 

「相変わらず埃塗れだぜ......ゲホッゲホッ!」

「そうね。いつか掃除しようかしら」

「いつかと言わず今やれよ......」

 

 小言を吐く魔理沙を後目に霊夢が倉庫の扉を開ける。外の空気は美味かった。特にここ博麗神社は、荒廃した幻想郷において珍しく自然の残る土地である為に。

 

「うぅ......ん!あぁ、やっぱり作業の後の背伸びは気分が良いわね!なんというか気持ち良いというか......」

「お前だけだぜ、作業してないの...........」

 

 魔理沙がため息がちにツッコミを入れるが、霊夢は全く聞いていない様子だった。最後に戸締りを終わらせたにとりが外に出てきた。にとりも顔についた油汚れを手袋で拭ったり汗を裾で拭いたりしている。夜通しの作業だった為に空気が非常に美味い上、冷たい風が地下に籠っていた三人の暖まった身体をちょうどよく冷ましてくれる。皆が皆、最高の気分の中で外を満喫していた。

 

「そろそろ入ろうぜ。あんまし冷えたら風邪引いちゃうぜ」

「そうね、にとりはどうする?」

「私も行くよ、特に外でする事も無いし」

 

 そう言って三人が続いて神社に入ると、ちゃぶ台の上に封の切られていない封筒が一枚、乗っていた。

 

「あら、誰のかしら?」

「私のじゃないぜ」

「私のでも」

 

 魔理沙が否定し、にとりも首を振る。それじゃあこの封筒は一体誰のだろう?と、そこまで考えてから答えがわかった。

 

「...........紫ね」

 

 封を切る。中にはやはりと言うべきか手紙が入っており、それはやはり八雲紫からの手紙だった。

 

 

 

 

『霊夢へ。最近になって各地の傭兵や組織の戦力を潰し回っている八人組のAC乗りが、巷で噂になっているらしいわ。その八人はとんでもない強さで、四人がかりで臨んでも敵わなかった相手なのだそう。しかも彼らは特定の相手を狙う訳でもなく無差別に攻撃を仕掛けることから、()()だけが目的と考えられるわ。幻想郷にとっても由々しき事態よ。これの討滅を依頼します。八雲紫』

 

 

 

 

「霊夢、中身は?」

「そうね................八人切り、ってところね」

「実戦か!じゃあガトリングライフルとシールドを装備していけよ。私は私で新作を用意してるから」

 

 そう言って魔理沙は魔法の森に帰っていく。

 

「にとりは?」

「私は操縦適性がないから待ってるよ。霊夢の強さは知ってるし、新しい武装の設計でも考えとくよ」

 

 そう言ってにとりはまたガレージ内に戻っていった。霊夢だけがここに残される。ACを取りに行く為に、にとりの後に続いてガレージ内に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巫女が動いた」

 

 暗がりで何者かが話している。

 

「巫女か......俺が出よう」

「皐月か。我らの大望を果たす為、頼むぞ」

「任せろ」

 

 皐月と呼ばれた男は暗がりで赤い双眸を光らせ、その奥へと消えていった。彼の背を見送った男もまた、闇の中へ姿を眩ませる。誰もいなくなった部屋に、新たに四人が入ってくる。

 

「僕こそ巫女を殺すのに相応しいと思ったのだがな」

「そう言わないでください、如月さん。貴方にも役割があるのですから」

 

 そう言われて如月と呼ばれた青年は残念そうに項垂れる。その表情は、しかし笑っていた。

 

「その通り、弥生も言っているように、僕にはやるべき事がある」

「フン......如月、貴様も私と同じ()()の癖に」

「うるさいぞ文月。お前と僕とじゃ格が違う」

 

 二人がいがみ合うのをただため息をつきながら見つめている弥生ともう一人。月の名を冠する彼らを束ねる立場にあるのか、そのもう一人の男が口を開いた。

 

「お楽しみの所悪いんだけどさぁ、喧嘩はちょっとやめてくれる?キサラギ君、フミヅキ君」

「っ...........睦月」

 

 文月が警戒するような口振りでその名を呼ぶ。睦月と呼ばれた男は鋭い眼光を二人に向け、黙らせた。

 

「そ、大人しくしてれば良いんだよ。んじゃ、作戦会議!三人は巫女と戦うサツキ君、どうなると思う?」

「さぁな。奴が負けたら僕が出るだけだ。その時は二人で挑む事になるな」

 

 睦月の発言に如月が曖昧な返答で返す。仲間意識の低い発言に、文月が少し諌める。

 

「おい、私達は仲間だ。とどのつまり同じ存在なのだから、皐月の無事を祈るのが当然だろう」

「そうですよ、如月さん。八人で一つの私達なんですから」

 

「ふん......僕は群れるのは嫌いなんだ」

 

 困ったな、という顔をする弥生と文月。睦月はそんな協調性の無い空間に居合わせた事が面白かったのか、小刻みに肩を揺らしながら笑う。

 

「ハハハハッ!まあ皐月なら丁度いいんじゃないかな、巫女の相手にはさぁ。負ける事も無いだろうし!ハハッ!」

「僕はそこまで言っていないが......」

 

 如月が呆れ返ったような口調で睦月の方を見やる。その目は笑っておらず、口だけが笑い声を紡いでいた。その不気味さに、睦月を見た三人は固唾を呑む。

 

「...........と、とにかく僕は妖怪の山に行く!すべき事があるからな。弥生、君も来るか?」

「はい。私も行きましょう、如月さん」

 

そう言って二人がその部屋から出ていく。

 

「睦月殿。卯月と水無月と長月の三人は今何を?」

「あの三人?あの子たちはねぇ、今は...........おっ、『クレーター』と殴り合ってるらしいよ?」

 

 睦月は「じゃあ後でねー」とだけ言い残して部屋を出ていった。部屋に残ったのは文月だけになった。文月は誰かに電話をかけている。回線が繋がるやいなや、その名を呼んだ。

 

「葉月、聞こえるか?全くあの方にも困ったものだよ。準備はどうだい?」

「...........」

「そうか。私も今から行く所だよ。君は?」

「...........」

「はは、そうだったか。それなら一緒に向かおう。何時出るか決めたら言ってくれ。その時間に合わせる」

「...........」

「ああ。じゃあまた後で」

 

 通話を切って扉のノブに手をかける。文月が部屋を出ていったことで、その場に残る者はいなくなり、暗闇をまた静寂が支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神々の古戦場。そう渾名された平原には数多の残骸が転がっている。何の動きも見られない機体があれば、煙を噴出していることからも最近壊されたと分かる機体もある。

 死屍累々の地獄の中、3機のACが睨み合っていた。一方は紅白と白黒の二人組、博麗霊夢と霧雨魔理沙。もう一方は所属不明のAC。月を象り、その円環の中に数字が刻まれている。『伍』と表記されているその機体は角張った形が特徴的な、軽量逆関節機体だった。カラーリングは濃い深紅と灰色だ。

 

「お前が巫女か」

「そうなら何?私は貴方に用はない、退いて」

「俺にはある。死んでもらおう」

 

 そう行った『伍』の男が、高機動型ACに使われるようなブースターを過剰動作させて左右へ高速移動を繰り返し、ターゲットを絞らせない動き方をする。その動きを見て魔理沙が叫んだ。

 

「なんだ!?霊夢、あいつの動きを見ろ!」

「人外ね......あれじゃ()()が無事じゃいられないわ」

「どうなってんだ...........!?」

 

 魔理沙の声色に焦りが伺える。人を辞めたその動きは、例え霊夢でもそうおいそれと出せるものでは無い。それを圧倒的な頻度で繰り返している『伍』の男は正しく『人外』と呼ぶに相応しかった。

 

「霊夢!やるなら挟み撃ちだ!あんな動きの奴を個々に相手してちゃ、幾ら何でも無謀だぜ!」

「そうね!これはちょっと焦らされるわね......」

 

 霊夢の機体『ハーモナイザー』が敵を捉えるために接近し、魔理沙の『ギムレット』がスナイパーキャノンを構える。ギャァァァン......と、鋭い銃声が戦場に響く。しかし当たらず、弾は『伍』のギリギリ真横を通っていった。

 

「ダメだ、避けられる!」

『落ち着いて狙って!私が引き受けるから!』

 

 霊夢の叫ぶような返答に、この男が相手では余裕が無いのだということを認識させられる。あの百戦錬磨、常勝無敗の紅白の悪魔が『余裕が無い』だなんて、相手は相当な化け物か。そう思わずにはいられなかった。

 二発目を撃つ。確かにACを捉えていたそれは、しかし超人的な反応によって避けられ、二発目もまた外れてしまった。何発撃っても避けられる、そう感じる。

 

「霊夢、ダメだ!当たらない!」

『狙い続けて!』

 

 激励され、魔理沙は三発目を狙う。

 

 霊夢もまた、目の前の強敵に冷や汗を流しながら応じていた。右に動けば左に避けられる。銃弾を撃ち込めばあまりにも急すぎる方向転換によって尽くが当たらずに抜けてゆく。

 

「......ったく、本当に化け物ね...........」

『巫女、お前は強者だ...........久しく味わっていなかったぞ、この感覚』

「うるさい、とっとと潰れた方が身のためよ」

 

 そう返しながらも、その表情からは平静さが消えている。焦りこそしないものの、あまり長い間戦ってはいられないと本能的に察していた。『このままじゃ負ける』と。だからこそ、冷静に、平静さを持って臨む。死地において焦りはすなわち死。それを霊夢は誰よりも良くわかっていた。

 

『ふ...........巫女、お前こそ俺のコレクションにふさわしい。お前を死出の行に加えてやろう!』

 

「なっ...........!?」

 

 霊夢は絶句する。この男()()()()()()のか!?

 

「(ダメだ......だめ、負ける!)」

 

 負ける、つまり殺されるという焦りがミスを産む。それがわかっていて尚、霊夢は直感的に敗北を悟ってしまった。

 

『ふん、さらばだ巫女...........ぬうっ!?』

 

 戦場に鋭い銃声が()()響き渡る。それは魔理沙の的確な射撃。当たらなかった『伍』に、唯一寸分の狂いもなく当てられるタイミングを、伺っていたのだ。親友の危地という状況すら狙撃の為の足がかりにして。

 

 スナイパーキャノンの大口径弾は正確に『参』のACの胴を撃ち抜く。コクピットは既に破壊された。

 

 

 

 だが、それでもACは止まる気配を見せなかった。

 

『嘘だろ!?パイロットは死んだ!!なんで動けんだよ、こいつ!霊夢逃げろ!正真正銘の化け物だぜ!』

「......もう遅いわ」

「...........えっ......?」

 

 霊夢がそう言葉にした途端、魔理沙がそれに反応する前にACが動いた。逃げ遅れた霊夢の『ハーモナイザー』に、()()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

『ま、さか................お、おい!嘘だろ霊夢っ......!』

 

 呼びかけるが応答は無い。砂塵で良くは見えないが、魔理沙にはわかってしまった。霊夢が()()()事を、そしてあの化け物が圧倒的すぎるという事をである。だが、それでも魔理沙は止まれない。親友を失って、おめおめと逃げ帰っては一生の後悔を産む、そう思ったからだ。

 

『お前っ......お前えぇぇッ!絶対に!許さないッ!!!』

 

 そんな激昴する魔理沙を、興味無さげに見やる『参』。

 

『ふん...........所詮は小娘か』

『うるさいっ!死ねえッ!!』

 

 四発目のキャノン弾が空間を裂きながら『伍』に迫る。......だが、先程当たった一発がまぐれだとでも思わせるような動きで避けられる。

 

『くそっ、くそおっ...........!当たれ、当たれよ!!』

 

 気が付けば目の前まで接近してきていたそのACに、魔理沙は叫ぶ。

 

『ふざけんなっ...........ふざけんなよお前ッ!!!』

『五月蝿いぞ娘。そろそろ黙っていろ』

 

二発目のヒートパイルを打ち込もうとする『伍』。

 

 

 

『─────なんてな』

 

だが、それを見越していたかのように魔理沙が動いた。スナイパーキャノンを捨ててパイルの弾頭に当てる事で爆発させ、その突き出した腕を引っ張り込んだ事で体勢を崩した『伍』の胴を二つに分断するかのように『()()()()()()()()()()()』を直接叩き込む。

 

『ほう......』

『...........終わりだぜ、バケモン』

 

 魔理沙のその一撃は精確に胴体を貫き、高出力のレーザーで真っ二つに斬り裂いた。その男の声が聞こえなくなったので、魔理沙はようやく勝ちを実感し始めた。

 

『終わった...........終わったのか、戦いが?』

 

 疑問だった勝利が確信へと変わる。本来なら勝利を喜ぶべきだったが、その喜びを分つべき親友の存在を思い出し、どうしても手放しで喜べなかった。

 

『霊夢...........』

 

 ハーモナイザーを見やる。機体の周囲には黒煙が舞っている。死んでしまった、そう思って魔理沙は帰ることにした。心の内は勝利よりも親友を失った事でいっぱいだった。

 

 

 帰途にあっても、魔理沙は未だに彼女の死が信じられないでいた。あれだけ強かった霊夢が、あんな一瞬で、しかも大多数の火力制圧のような()()()()()()()ではない。()()()()()()A()C()に敗れたのだ。それも邂逅してから30秒も経たずに。あの霊夢が。

 

 冗談だろ!?

 

 そう思っても声には出せなかった。魔理沙が信じていた霊夢の強さは、『機械化八人衆』等という組織の一人、たった一人にすら勝ち目のなかったものだった。それだけがわかっていて、しかし納得できなかった。

 並の人間が勝てない彼女が勝てない相手。そんなヤツらが居ていいのか。帰路に着く最中も、魔理沙はその事しか考えられなかった。

 

 

 にとりになんて教えればいいんだろう。

 霊夢が生まれていなかった時から博麗神社で暮らすにとりは、魔理沙にも並ぶほど霊夢の事を案じている者の一人。彼女が今、霊夢の死を知った時、どう思うだろうか。

 魔理沙はそう考えずにはいられなかったのだ。

 

 

 

 




 皐月

 月の旧暦、五月を意味する名を持つ男。
 コクピットを貫かれた筈なのに生きていたが為に隙を産んだ霊夢を倒し、魔理沙の一撃で倒れた、機械化八人衆の内の一人。全体的にCE耐性が高めの機体構成だったが二人の持つ武装にCE攻撃属性は無かった為、その装甲を活かせなかった。武装はパイルバンカーが二つ。肩部には何も積んでいない。


 河城にとり

 どうして博麗神社に住んでいるんですかね(すっとぼけ)

どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)

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