Armored Core Eastern War 作:ちょっとだけ別口
『バカね。私は死なないわよ。魔理沙も死なないし』
『そうだな、私達がやられる訳ないもんな』
つい先日に霊夢と繰り広げた他愛ない会話が想起されて離れない。霊夢が愛機と運命を共にしてから既に数十時間。彼女は一日中、縁側に座ってぼおっとしていた。時刻は既に夕方に差し掛かるだろうという所だった。
「魔理沙さん、大丈夫すか」
「...........あ...あぁ、RD。私は大丈夫だぜ」
そういって縁側から遥か景色の向こうを眺めている魔理沙。RDが隣に座って魔理沙の顔を見ると、何度も泣いたのだろう、涙のあとが鮮明に見える。RDは言葉を詰まらせた。
「................なんだよ。私の顔、何かついてるのか?」
「あ......えっと...........そうっすね......魔理沙さんみたいな強い人も泣くんだな......って思ってたっす」
「そうか...........私、泣いてたか」
自覚のない涙を流すほどに、霊夢という存在は、魔理沙の無意識下にまで浸透しているのだろう。
「その......オレ、大切な人が死んでいった事は無いんで、励ましたりは出来ないっすけど。...........そんなに泣いて貰えるなら、霊夢さんも喜んでると思うっすよ」
「...........そうかな」
「きっとそうっす」
そう言葉をかけた後、魔理沙はしばらく項垂れる。次に顔を上げた時には彼女はもう泣いていなかった。
「よし、RD!私に少し付き合え!」
「付き合えって...........良いすけど、何をするんすか?」
すくりと立ち上がった魔理沙がRDに向き直る。涙のあとを拭い去った彼女の顔は復讐に燃え、しかし怒りを表には出さずに笑っていた。RDが質問すると、魔理沙はいっそうその笑みを深めた。
「もちろん、霊夢の仇討ちに決まってるだろ?」
そう言って魔理沙は、RDに向かって地下のガレージに着いてくるよう促す。RDもそれに従って魔理沙について行った。倉庫の中には新たに4つ目のガレージが増設され、そこには魔理沙の『ギムレット』、RDの『ヴェンジェンス』、そして空きが二つある。
「仇討ち......それ自体は良い案だと思うっす。でも誰が霊夢さんをやったのか、わかってるんすか?」
「目処は着いてる。アイツの機体には『伍』って描かれてた。『機械化八人衆』は月を象っていると聞いた事がある。一月から数えていけば『伍』は皐月にあたる。だから私達は機械化八人衆って奴らを狙えばいいんだぜ」
RDが、聞いたことがないと言うかのような表情を見せる。
「ん.....聞いた事ないのか?...それもそうか。ここに来てまだ一週間も経ってないしな。教えてやるぜ、ついて来てくれ。歩きながら話そう」
地下道を歩きながら魔理沙が話す。
「機械化八人衆ってのはな、人狩りの集まりだ。一人一人が理不尽に強くて、しかもそれが八人もいる。───ああ、今は私達が一人殺したから、正確には七人もいる。噂では十機のACを相手にたった一機で向かって殲滅したとも言われてるな、現実は定かじゃないが」
そう言って魔理沙が肩を竦める。RDはその話を聞いて肩を震わせた。
「そんな化け物がいるんすか......ここに」
「出てきたのはつい最近らしい。だから戦う時は出来るだけ囮と本命が欲しい。そこで、『ミグラント』って連中に依頼しようと思って。金はあるからな」
「『ミグラント』?........つまり、傭兵ってことすか」
RDが確認するように聞く。
「そ。自称『腕利きの集まり』。アイツら大した事ないんだけど、数だけは多いからな」
「数だけは......まるでオレが元々いた場所みたいすね」
「じゃ、行こうぜ」
魔理沙の言葉と同時にACに乗り込む。ブースターを吹かすと、周囲が地下特有の埃に包まれ、埃の煙の中から一閃の光が差す。ガレージ側面の射出口が開いたのだ。
『カタパルト用意良し。RD!私から離れるなよ!』
「わ、わかったっす!」
カタパルトがACの飛行を後押しする。射出口から白黒のACと赤茶色のACが姿を見せる。
一人は霊夢の相棒だった傭兵、霧雨魔理沙。もう一人は外の世界の住人にしてAC乗りである、RD。
魔理沙の駆るACはギムレット。重量二脚の中距離射撃タイプで、TE耐性が高めのバランス型機体である。武装もパルスマシンガンやバトルライフル、ガトリングといった基本的な装備で固めている。
RDが乗るACの名はヴェンジェンス。中量二脚の近中距離射撃タイプで、こちらは全てのパーツがKE耐性を重視している。武装はパルスマシンガンとスナイパーキャノン、CEロケット。目玉は右肩に装着されている巨大イレギュラー兵器『グラインドブレード』である。
傭兵達が、汚染された大気を切り裂くように空を飛び、そのブースターから青い炎が吹き上がる。安定して飛行可能になった所で魔理沙がRDに話しかけた。
「そういや、その機体はどんなコンセプトでアセンブルしたんだ?ずっと気になってたんだけど」
「これは...........わかんないっす。オレのじゃないんで」
RDがそう返すと、魔理沙は不思議そうにもう一度問いかけた。
「うーん......どうしてだ?ACに乗ってるって事は、つまりお前のACってことだろ?」
「えーっと...........その、凄い言いにくい話なんすけど。コレって元々オレの機体じゃないんすよね......ほら、ACってパーツ自体が貴重品じゃないっすか。だからオレの居た世界ではパーツは余さず回収するんすよ。コイツも企業の連中が拾ってきた物を譲り受けただけなんで......」
「企業?って、どんな奴なんだ?」
「そうっすね......ヒトコトで言うなら『最低野郎の集まり』すね。アイツらの正体はわかんなかったんすけど、兎に角窓口のヤツからしてもうヤな奴らでしたよ」
そう言ってRDはため息を吐いた。
「じゃあ、それは元々は誰のなんだ?」
「...........昔。って言っても、体感ではまだ半年も行ってないんすけど。オレたちはレジスタンス組織に加担してたんす。オレの姐さんがね。その時のレジスタンスのリーダーが考えた作戦で敵は殆ど殲滅できてたし、勝利も目前だった。でもその時現れたんす。...........あの人が」
「あの人?」魔理沙が聞いた。
「企業の人間でもない、シティの人間でもない。ただの傭兵。でも多分、オレが知る中で最強の傭兵っす」
そんなに言うほどの存在なのか、と魔理沙が息を飲む。それからのRDの言葉に彼女はすっかり聞き入ってしまった。
彼はたった一人で無数のACを撃破し、損傷を受けた状態から無傷で生還を果たし、五分以内に数多の飛行兵器を撃ち落とし......果てには自分との一騎討ちを制したと。そのRDが見、実際に受けたその腕前はまさに最強と呼ぶに相応しいものだったという。
「...........と、こんなとこっすかね。とにかくあの人は絶対に負けないんすよ。どんなに危険だって感じる戦場でも、絶対に死なない。装甲列車を倒せる傭兵なんてあの人くらいだし......」
「ACにも勝てない相手がいるのか?」
「装甲列車の事すね。アレをACにやらせる人は正直まともじゃないっすよ。無理無理、アレに勝てる人なんてあの人以外にはいないっす」
魔理沙がその存在を想像する。とてつもなく強い相手、一体どのような人間なのだろうか。それは若しかすると機械化八人衆にも勝てるのかもしれない。
そんな事を考えているうちに、もうじき人里近くの寺、命蓮寺に辿り着く頃合いになっていた。
「お、おいRD。もうそろそろ着くぜ」
「あれ、もうっすか?案外早いっすね」
ただし、寺と言っても寺自体に用事がある訳では無い。隣にある『ミグラント』の集会場が目的地である。
ACが近付いて来たのを見て、入口に立っていた警備隊のACが銃を向ける。男の声で警告してくる。
『止まれ!それ以上の接近は敵と見なすぞ!』
「撃つな!私は依頼に来たんだぜ!」
魔理沙のその声を聞いて、その警備ACは銃の構えを解いた。
「......もしかして魔理沙か?」
『いかにもそうだけど......誰?』
そう言うと男はコアのコクピットを開き、顔を見せる。
『俺だよ!俺!ジャック・ゴールディング!お前のライバルにして同い年の傭兵!忘れたか?』
魔理沙にとって、かつて何度も顔を合わせた事のある傭兵が姿を見せた。よく見ればその機体も、CE耐性の高いパーツを多く使っているAC『フレイムフライ』だった。
「ん......あ、ああっ!お前、あのジャックか?お前フリーランスでやってくんじゃなかったのか?なんでミグラントなんかに所属してんだよ?」
『実は俺さ、魔理沙が里からいなくなったあとに気付いたんだよ。お前の存在が、皆の支えになってたってよぉ。だから俺様がお前の後を継いでやろうかなってな!悪くねぇ考えだろ?』
笑いながらそう言うジャック。思わぬ旧友との再会に、魔理沙は思わず笑みを零す。
「生意気言ってコノヤロー......それに、ミグラントに属してる理由にはなってないぜ」
『そいつは...........ほら、日本語で『強いものには巻かれろ』って言うだろ?それだよ』
「なるほどな......見栄っ張りのジャックにしては懸命だ」
『うるせぇ、ほっとけ!』
二人が笑い合っているところに入りづらい空気を出すRD。魔理沙もそれに気付いたようで、ジャックにRDの事を紹介する。
「そうだ、今の相方を紹介するよ。ほら、RD」
『あ、アンタが新しい魔理沙のパートナー?』
魔理沙とジャックが、RDに視線を向けてくる。RDは魔理沙に目配せした後、ジャックに向かって名前を言った。
「オレはRDっす。よろしく」
『おう、RDか!よろし...........ん!?』
RDの機体に目を向けたジャックは驚いたような声を上げた。RDにはその原因がわからなかった。
『................そ、そのエンブレム......間違いねぇ、あの黒い鳥だ!あんたがあのレジスタンスと組んでたっていうACなのか?』
ジャックが一人で焦っている。
RDには本当に何が理由で彼が焦っているのかまったくわからない。エンブレムは元々他人のものだし、その他人も傭兵ではないので彼の言っている事は正しくないと、RDはそこまで考えてやめた。いや、やめさせられた。
「自分から話振っといてアレだけどあんま時間とらんないんだよジャック。早くボスのとこに案内してくれ」
魔理沙の声でジャックは我に返る。
『あ......おう。悪かった。こっちだ、ついて来いよ』
そう言ってACをガレージ内に移させるために、ジャックが二人について来るよう促す。魔理沙とRDもそれに従った。ガレージの中、ACから降りながらRDが魔理沙に聞く。
「魔理沙さん......ミグラントって、いつの間に傭兵集団の名前になったんすか?」
「え?ミグラントってコイツらの事だろ?」
「えっ?」
「え?」
情報の錯誤が生じ、二人の間に疑問が生まれる。
「え......ミ、ミグラントってコイツらグループの名前だろ?なんだよ、そっちじゃ違うのか、RD?」
「とんでもない、ミグラントは概念すよ。あらゆる傭兵はミグラントって呼ばれてて、デカいグループは別の名前で呼ばれるっす。例えば『
「じゃあ、私達もそっちではミグラントって扱いか?」
「そうっすね、そうなるっす」
魔理沙が頭を抱える。
「頭が痛くなってきた......とりあえずボスのとこに行こうぜ」
「わかったっす......あの、別に気にしなくていっすよ。多分こっちの呼び方とは違う意味になってると思うっすから。行きましょうよ」
「うーん......おう、わかったぜ」
しばらく考えていた魔理沙だったが、RDの一言で納得したのかいつも通り薄笑いを浮かべた表情に戻った。
魔理沙とRDはジャックに続いて鉄扉の中に入る。重々しい扉が開いた先は厳かな雰囲気の漂う、今では珍しい大理石の内装だった。柱や床、壁に至るまで細部に金の装飾が施されており、おおよそ幻想郷の古い装いには似つかわしくない、西洋の建築物だった。
三人が一番奥の扉の前に立つ。ジャックがノックした。
「ボス、入るぜ」
『入ってくれ』
ジャックのノックに反応した『ボス』が彼に入るよう促す。ジャックはそれを聞いて笑顔になる。
「お前ら、良かったな!ボスは今日はいるみたいだぜ」
「いない事があるのか?」
「おう、よくやりすぎた奴らの粛清とかしてるからな」
「粛清...........怖いっすね、それは」
RDが身を震わせる。
「はははっ、安心しろよ!ボスは皆に優しいんだぜ。殺すのは文字通り、やり過ぎた奴だけだ。この前も二人組の傭兵を襲った連中を切り捨てたとか言ってたしよ」
「二人組、ねぇ」
魔理沙がジャックの言葉に首を捻る。
「あっと、立ち話してちゃボスの時間を潰しちまうな。入ってくれ、ボスが待ってる」
ジャックがドアを開ける。
部屋には椅子と机、来客用の椅子があり、机に向かうように『ボス』が座っている。彼は茶色の短髪をしていてサングラスをかけている。吸っているタバコを灰皿に押し付けて潰すと、ボスは魔理沙を見て話し始めた。
「君達が今回の依頼人か。要件を................いや、待て」
ボスが視線を魔理沙からRDに移した時、その異変は起こった。ボスが話を中断し、驚いたような表情を見せたのである。ボスは驚きながらもRDに質問する。
「...........そこの青年、まさか君は......」
ボスのその話し方や声にRDも感じ取るものがあったようで、彼のその問いかけをRDは促した。
「......な、なんすか.......?」
「お前は...........いや、君は......君の名前は、恐らく間違っていなければ......」
ボスが言い淀む。
「オレに聞かせてください、オレがなんなんすか...?」
「...........お前は、ロザリィの子分のRDか?............レイ・ドミネイト、それがお前の名前じゃないのか?」
「......っ!まさか、アンタ...........」
「間違いない、という事だな。その反応から察するに。我々は一度、
そう言ってボスはサングラスを外す。その目付きは鋭いながらも穏やかさを感じさせ、それはRDが協力し、裏切った組織のリーダー『フランシス・B・カーチス』のものにそっくりであり、そして同時にRDが見た事のある目付きでもあった。
「アンタまさか『ジャック・バッティ』!?あの時にやられた、レジスタンスのリーダー......!?」
「なんだ、お前ら知り合いか」
RDの叫びのような驚嘆の声に魔理沙は反応する。『ジャック・バッティ』は眉間のしわを少し深めながら、RDに向き直った。
「やはりそういう事か......まあ、良い。今は仕事の話だ。RD、君には私から端末を渡しておこう。後日君と話したい事がある。受け取ってくれるな?」
「あ......は、はい......分かったっす」
前の世界で普及していた携帯端末を投げられ、それをキャッチするRD。端末を懐にしまうと、RDは話の続きを促す。ボス......もといバッティは話を続けた。
「さて......霧雨魔理沙だったか。君の噂は聞き及んでいるぞ。あの博麗の巫女と実力を競い合う程の腕前とな。そこで私から君たちに依頼がある。恐らく君と私の利害は一致しているだろう。すなわち──」
「機械化八人衆。......そういう事だよな」
魔理沙が聞くと、バッティは頷いた。
「ヤツらには散々煮え湯を飲まされてきた。君を雇う事であの黒いACを駆る集団へ一撃を喰らわせよう、と私は計画している。無論その時には私も出るつもりだ」
「アンタ、強いのか?私からしたら50近いオッサンだぜ、アンタ。私たちに任せと───ムグッ!」
話していた魔理沙の口を塞ぐRD。
「何言ってんすか魔理沙さん!この人は滅茶苦茶に強いんすよ、下手すればアンタくらいに!」
「そ、そうだったのか!?そういう風には見えないけどな」
「俺は一回この人の強さを見てるっすからね...........たった一人で9機のACを作戦中に撃破してるっす」
「9機......へぇ、なかなか強そうじゃないか。いつか刃を交えるのが楽しみだぜ」
魔理沙がそう言いながら舌なめずりする。その様子を見たバッティは苦笑いしながら続けた。
「......まぁ、今はその事はいい。問題は君が依頼を受けて尚且つ部下と協働して敵へ攻撃してくれるか、という事なんだ。君に戦うつもりはあるか?霧雨魔理沙」
「...........あるぜ。親友をやられたんだ、黙ってるワケにはいかないぜ。なあRD?」
「え?......そうっすね。霊夢さんの仇討ちもしなきゃいけないし、何よりオレとしては不安は取り除きたいクチなんで......オレもACに乗れる人間っすから」
そう言ってRDも、魔理沙の隣に立って頷いた。バッティはそれを見て口元を緩ませ、口角を上げて言った。
「では、君達に依頼する」
「ミッション概要は、最近無差別に傭兵組織やACを襲撃している、機械化八人衆の撃破だ───」
ジャック・バッティ
齢50という壮年ながら傭兵組織『ミグラント』のリーダーを務め、同時に熟練のパイロットでもある歴戦の戦士。乗機は明かされていない。
次あたりにキャラクターとその搭乗機を纏めたもの出そうかな、と考えています。
P.S.換気扇の音が定期的にKARASAWAに聞こえる。
ピーピーピーボボボボ
どの話を優先的に完結させるべきか?
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射命丸文編(アリーナ編)
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霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
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メインストーリー(オムニバス)