Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

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Mechanized being 2-2《Again》

『我々に雇われてくれえ助かった。君達が来てくれた事で戦力に余裕が生まれたよ、本当にありがたい』

 

『いいっていいって。今日はアンタんとこで鍋でも突っつこうぜ?...もちろん具は朱鷺だ』

 

「魔理沙さん、そんなに食べたら腹壊すっすよ」

『問題ない。私は胃だけは頑丈にできてるからな』

 

 RDが心配して魔理沙に声をかけるが、魔理沙はいつもの調子で問題は無いと答えていた。変わらない反応に苦笑いしつつもコクピットの操縦桿を握りしめ、バッティの指示を待つ。

 バッティの方を見遣ると、近くにいたACがバッティのAC『ヴェンデッタ』に報告していた。

 

『リーダー!AC部隊、第二分隊から第八分隊まで、UNAC部隊が三分隊、それぞれ有人AC21機、UNAC9機が集結しました!いつでも行けます!!』

『よし......みな聞け!作戦の最終確認だ!』

 

 報告を受けてバッティが呼びかける。バッティのモニターとリンクし、そこには現在位置と敵の予測位置、そして交戦予測地域が表示されている。HUDにポインタされた場所がズームされ、その場所はおそらく敵と戦うことになる廃ビル群だった。

 

『まずUNAC部隊を引き連れた軽量二脚の斥候AC部隊が突入、敵を隈無く探し出す!リコンやスキャナーで敵をマークしたら、残ったタンクと各二脚のACが突入、ACを撃破しろ!タンクはオートキャノンを使って弾幕を形成、中量二脚はタンクの直庵またはタンクが逃した敵の撃破だ!最後に四脚は後方から部隊の援護!...........各員、問題ないな!?』

 

『はい!』

『問題ありません!』

 

 バッティの作戦指示が終わったと同時に各パイロットから続々と通信が入る。『ミグラント』所属のACが31機、魔理沙とRDも加えて実に33機のACが戦場に集結している。

 

『壮観だぜ......これだけのACが集まってるんだ、ここまで濃密な戦場は史上最初になるだろうな』

 

 魔理沙が漏らした言葉にRDが続ける。

 

「みんな恐れていないように見えるっすね」

『まぁ、数で勝ればそのまま叩き潰せるとでも思っているんだ...........バッティ!私たちは何をするんだぜ?』

 

 魔理沙がRDに答えたあと、バッティに指示を仰ぐ。バッティは傭兵である彼女らのポテンシャルを最大限引き出すための指令を出した。

 

『君たちには軽量二脚、UNAC混合部隊に同行し、可能な限り敵を傷付けてくれ。負傷した場合は撤退しても構わん。ただし、もしも敵を撃破できた場合は追加報酬を約束する』

 

 追加報酬という単語を耳にした途端、魔理沙は目の色を変える。金に目が眩む訳では無いが、金が増えるという事は欲しいパーツが購入できるということでもあった。

 

『男に二言はない、だぜ。バッティ』

『ああ、約束しよう』

 

 そう言って魔理沙のAC『ドリズル』が前傾姿勢に入る。ブースターの出力が上昇し、点火まで秒読みだ。バッティもその様子を見て戦闘の始まりを確信し、部隊全員に突撃命令を下す。

 

 

 

『各員!生きて帰れ!!突撃せよ!!!』

 

 バッティが叫んだ。

 

『こちらランガー!突撃する!』

『ベスだ!行くぜ!!』

『こちらはアッシュだ、俺達が先行する!』

 

 軽量二脚の三人組が、UNAC機を引き連れて突撃を敢行する。タンクや重量二脚、逆関節機や四脚のAC達は軽量よりも遅いため、軽量二脚達は実質的な当て馬である。だが彼らがリーダー、バッティの指示を疑問に持たず従うのは、ひとえに彼への信頼の表れである。

 

『ドリズル、出るぜ!RD、ついてこいよ!』

「わかってるっすよ!」

 

 魔理沙とRDのACも軽量二脚の高速移動に合わせてついて行く。軽量二脚、重量二脚、中量二脚の中では軽量の脚部が最も早い為、即座に戦闘になるのは三人の尖兵である彼らだ。次いでRD、最後にUNAC機と魔理沙が戦場に到着する事になる。

 

 戦場で起こる波乱の予感、そして思っていたよりも早いタイミングで霊夢の仇を、再び自らの手で執行できる喜びに、魔理沙は震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらアッシュ、敵影は確認できない」

 

 戦場に到着した三人の軽量二脚型ACは、しかしその廃ビルの群れの中には何も確認できなかった。

 

 アッシュと名乗った青と黄色のACを駆る青年が、敵が見えない事を告げる。彼の仲間である二人のACも、アッシュと同じように敵が見当たらないと言っていた。

 

『こちらランガー、同じくです』

『ベスだ。俺の方にも敵は確認できない。どうなってるんだ......皆、警戒しろよ』

 

 三人は固まらないように、リコンを設置しながら偵察している。怪しいと思った場所にリコンを射出し、丁寧にクリアリングを行っている。

 

『周囲に敵影は無い、このまま前進する。アッシュ、ベス、前進しよう、少しずつな』

 

「了解。ベス、警戒しろ」

『......』

 

 アッシュが警告するがベスからの返事がない。

 

「...........ベス?ベス!?」

 

 名前を叫ぶが何も聞こえなかった。

 

『おいベス!どうした応答しろ!!』

「クソ、通信だ!リーダーに伝えろ!一人やられた!」

 

 アッシュの叫びに反応して、ランガーは咄嗟に無線通信をオンにする。

 

『リーダー!リーダー、応答願います!ベスがやられました!後衛部隊の到着を急がせてください!』

 

 ランガーの焦りが伝わってくる。

 

『こちらバッティ!了解だ、行軍ペースを上げる!UNACの到着まで耐えろ、いいな?』

 

 無線が切れる。また静寂が訪れた。

 

「どこから来やがる......?」

『来るなら来い......返り討ちだ......!!』

 

 二人が警戒するが、二人のうちどちらの方にも敵は現れなかった。警戒を解かずに膠着して、早くも20分。カメラアイに何かが付着した。灰のように見えたそれは、あっという間に視界を覆う勢いで降り注いだ。

 

『なんだ......?隊長、灰です!灰が霧のように!』

 

 ランガーが叫ぶ。

 

「こちらでも確認できている。クソッ、警戒しろ!有視界戦闘はまず無理だ、FCSとカメラアイの補助機能を最大限まで活用するんだ!」

 

 そう言いながらアッシュはシステムをスキャンモードに変更する。ソナーが反射し、反応のあった場所がカメラモニタに投影される事で擬似的な現実空間を作り出した。

 

しかし、すぐに異変は起こった。

 

『隊ちょ......これ.......応答願いま......チャフ......混ざ..........』

 

 ランガーの途切れ途切れの通信が入り、辛うじて聞き取れた単語は『チャフ』*1の一言だけだった。

 

「チャフだと!?...........クッ、ダメだ、繋がらん!」

 

 チャフは無線を妨害するための金属片を多量に散布する機構であり、これの影響を受けた通信機は無線機の間に通る周波が妨害され、通信が途絶されるのである。

 

「数での不利を悟って、咄嗟にチャフ装置を展開したか......人形どもめ、中々頭のキレる......!」

 

『ククク......また貴様か、傭兵』

『哀れな、ここで果てる事になるとは』

 

 アッシュの耳に聞こえた声は間違いようがなかった。

 

 若い二人の男女の声だが、しかしノイズが走っていて時折聞き取りずらい印象を与えさせる。不気味な雰囲気の声だ。それは『機械化八人衆』のうち二人、卯月と水無月の二人だろう。

 

「チィッ...........こんな時に来やがるか、人形!」

 

『可哀想に、頼みのUNACはまだ来んか』

『後腐れなく死なせてやろう、喜ぶといい』

 

 UNACは来ないと男が、死なせてやると女が言う。

 

「くそ.................ランガー、無事でいろよ.....!」

 

 アッシュのその心配は、しかしジャマーのせいかランガーに繋がることはなく、安否確認の取れぬまま、最悪の戦闘が開戦されてしまった。

 

 アッシュが地面を強く蹴り上げ、一瞬にして高く舞い上がる。廃ビル群という地形をフルに活かした逆関節機体ならではの戦い方だ。飛翔しきった所でレーザーブレードを起動する。1メートルほどのレンジの高熱の刀身が、触れた建物を切り裂く。

 

 その勢いで壁を蹴り、ブレードを前に突き出して霧を払うようにチャフを焼いた。ブレードの超高熱によって切り裂かれた大気は消え、一瞬視界が鮮明になる。遥か遠くの距離に見えた敵は、じっと狙撃砲を構え続けて、彼が姿を現す時を待っていた。

 

「クッ!」

 

 咄嗟にハイブーストし、射線を切ろうと斜め後ろに回避する。

 

 一発の弾丸が飛来して、アッシュの装甲を簡単に引き裂いていく。高速で回避した為に致命傷こそ避けられたものの、ダメージは深刻だった。

 

「なっ......こちらの姿が見えているとでも言うのか...?何れにせよ、もう一発コアに当たれば即死か......!」

 

『どうした?仲間はもう呼べないのか、傭兵?』

 

「クソッ......!」

 

 アッシュが更に後方まで下がる。戦場にたった一人で残され、友軍との合流も暫く望めない。戦況は絶望的、どうするべきかとアッシュがその思考を巡らせる。

 

(例の三人だと言うなら恐らくはあの狙撃機はブラフ......囲んでくるか、さもなくば()()()()が後に控えてるか......何にせよ迂闊に攻めるとまずいな)

 

 そう考えながら霧の中を進み続ける。幾ら進んでも霧は全く晴れず、寧ろ一層その濃さを深めているように思えた。このままではいけないと、アッシュは歩みを止めずにリコンをばらまいた。

 

(引っかかってくれ......!)

 

 その思いも虚しく、アッシュはスナイパーキャノンによって穿たれ、コアには巨大な穴が空いた。機体が転がり続け爆炎に包まれるその様は、まるで操縦者を失ったようだった。

 

 彼にとって幸いだったのは、即死ではなかったが為に一瞬だけ思考の時間を与えさせてくれた事だけだ。どちらにせよ彼が戦いの末を見届けることはない。

 

「(狙撃......か.....わかっていた......事だと言うに......)」

 

 迂闊に行動してしまった事を悔いる。

 

「(魔理沙......後は.....頼......む...........)」

 

 その場にいない傭兵に後を託して、アッシュは息を引き取った。その死に顔は、眠るように穏やかだった。

 

 

 

 

 

*1
金属粉を多量に散布し電波を反射させることで、その周辺一帯に目標物が存在するかのように見せかける事ができる装置。また、電波を反射させるという特性を活かして無線通信を遮断することも可能。今回のチャフは霧のようであり、視界不良となるほどの濃度であるから、暫定的に『チャフ・コリダー(チャフ装置の回廊)』と呼べるだろう。




 アッシュ

 本名、M.D。26歳。
 イニシャルだけを名乗り、本名は決して教えようとしなかった。外の世界で一度死んだ身であり、幻想郷の姿を資料だけでしか知らなかった彼は、平和の為に傭兵組織『ミグラント』へと加入、ジャック・バッティの元で、その腕を存分に奮った。

どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)
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