Armored Core Eastern War 作:ちょっとだけ別口
『こちら魔理沙、あと5分以内に作戦区域に到着するぜ。おい、聞こえてるのか?』
RDの遥か後方で魔理沙が先行部隊に無線通信を試みていた。が、その反応から察するにあまり良い状況とは言えなさそうだった。魔理沙が舌打ちして無線のスイッチを切る音がノイズに交じって聞こえてくる。
「どうすか、繋がったっすか?」
RDが魔理沙に聞くが、彼女から返ってきた返答はやはりと言うべきか、予想通り良いものとは言えなかった。
『ダメ、繋がらないぜ。どうなってんだ?』
「とにかく油断しないように行きましょうよ。何かオレ、さっきから嫌な予感がするんす」
そう言って身震いする。先程から悪寒が汗となって背筋を伝うのだ。今が冬場という事も相まって、冷や汗が体温を奪っていく。その原因は遠くの廃れた街にあった。
前方に見えるビル群の中央部を覆い尽くしている、
『お前が言うのなら、そうした方がいいかな』
魔理沙が言いながらため息をつき、言葉を続けた。
『だがまぁ、やばかろうとやばくなかろうと、
「手伝うっすよ。最後まで、ね」
RDが危険を顧みない魔理沙の様子をかつての存在に重ね、苦笑いを浮かべながら言う。魔理沙は笑いながらRDのその言葉に返した。
『良く言った。それでこそ私が右腕に認めた男だぜ』
魔理沙がRDの隣にいれば手のひらを使って背中をバシンと叩くような、そんな印象の声音だった。
「右腕って......まあ、いいっすけど」
RDが返す。その会話は復讐というテーマでなければ至極、平和なワンシーンだろうか。だがそれも、バッティから警告が入るまでのごく短い間だけだった。
『各部隊へ通達。先行部隊の戦力が低下している。最精鋭を破った奴らだ、交戦時には常に敵を意識しろ』
バッティの物言いにRDは驚いた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!それじゃあまさか、前にいた人らはやられたんすか!?」
『恐らくは。......待て、何だこの反応は!』
彼が叫ぶ。バッティが言うよりも前に咄嗟にレーダーを見やると、ビル群の中央が白い反応で覆われていた。これでは内部の様子が掴めない。
『全員レーダーを確認するんだ!高濃度のジャミング装置か?......兎に角警戒しないに越した事はあるまい。RD、君に斥候を任せる事になる。行けるか?』
バッティがRDに聞く。RDは冷や汗を流しながら答えた。
「やってみるっすよ......!」
そう言葉を捻り出したRDが、その乗機『ヴェンジェンス』のブースト全てを起動し、
「な......なんすか、これ......魔理沙さん!バッティさん!聞こえるっすか?応答してください!」
ヴェンジェンスのカメラアイが異常な反応を見せていた。スキャンモードになっているはずのヴェンジェンスが、何故か戦闘モードに変えられていて、そのままスキャンモードに変更する事が出来なくなっている。システムエラーだった。
それだけではない。味方が無線に応答しないばかりか、前方にはACの残骸が転がっている。それはまだ黒煙を吹いており、つい先程破壊された印象をRDに与えた。
「アレ......まさか味方機すか?」
RDが恐る恐る近付く。武装や腕部、脚部などに大穴が空いている事から狙撃されたのだろうとわかるが、なんとコア部はまだ無事だったらしく、パイロットがしきりに何かを言っている。
『死神......死神......俺達を殺しに来たのか...........死神......』
「あ、アンタ!しっかりしてくださいよ!なにが......一体ここで、何が起こってるんすか!?」
RDが叫ぶように言い聞かせるとパイロットは正気を取り戻したのか、RDの機体を視認できるように頭部をこちらに向けた。カメラアイがヴェンジェンスを見つめている。
『あ...........お前は......死神じゃないのか......?』
「落ち着いて、ここには敵は居ないっすよ」
安心させるような物腰でRDが宥める。
『気を......付けろ...........死神は......機械の人間...........そうか...........そうだったのか......』
パイロットは一人で何かを完結させてしまったのか、その独り言にRDが口を挟む余地は無かった。だが、今はひとつでも情報が欲しい。RDは無理やり言葉を捩じ込んだ。
「なんすか、機械人間って......アンタは何を知ってるんすか?教えてください」
『俺.......は......ベス......そこに転がってる......アッシュ.......』
「......え?」
RDが後ろを振り向いた。ベスの指し示す先には、無残にもコアを貫かれたACが転がっていた。恐らくは即死なのだろう。RDは構わずベスから続けて何かを聞き出そうとする。
「......で、一体ここで何が起こったんすか...........?」
『俺達......敵を倒そうと、偵察してた......でも、ここ自体が罠だった......隊長は死んで、俺も仇を討とうと突っ込んだ...........けど勝てねぇ......アイツら、人を辞めてる................』
そう言ってベスは咳き込む。そしてRDの方に向き直り、威圧するような声を発した。
『
「...........えっ?」
急にベスが重々しい声を上げて、RDは困惑していた。
『おい......
まただ、また彼は不明な言動を......。
「何言ってるんすか!?オレは味方っすよ!?」
RDが意図の読めない発言に───。
『ッ...........危ねぇ!!!!』
「なんっ......!?......うわっ!!」
突然、ヴェンジェンスがベスに吹き飛ばされる。ブーストチャージのような威力はないが、ブーストさせて放つ蹴りはヴェンジェンスをノーダメージで吹き飛ばすにはちょうど良い威力でもあった。
急に吹き飛ばされたRDは理解が追いつかなかった。
「......な、何するんすかアン......タ...........ッ!?」
体勢を立て直したRDがベスに向く。しかし、そこに居たのはベスではなく、コクピットを貫かれて即死していた鉄の塊だけだった。アッシュ、そしてベス。彼らはこの地に躯となって横たわっている。
「まさか...........狙撃!?どこから!?」
RDが周囲を見渡すが、敵の姿は確認できない。長距離からの狙撃なら、仕方ない事だ。そうしてベスに向き直って、ようやくなぜ彼がRDを突き飛ばしたのかわかった。頭の理解が追いついたのである。
「まさか、ベス......アンタ、オレを庇ったんすか...........?」
RDが呆然としていると後ろから不意に悪寒が走った。咄嗟にハイブーストして避けると、狙撃された弾がヴェンジェンスのいた場所を通り抜け、ベスの亡骸に撃ち込まれた。唯一無事だったらしいジェネレーターも完全に機能を停止したようで、機体から駆動音が消えた。
『ほう......なかなか、勘の良い』
そして聞こえる、女の声。機械的なその音声は、話に聞いた『機械化八人衆』なのだろう。霧に隠れていて見えないが、姿は補足されているだろう。
「アンタが......アンタらが、霊夢さんを......?」
『霊夢?......はて、そんな奴いたか......』
女が挑発したような発言を取る。RDはその言動に、何より命の恩人を倒した奴が、ここまでの人間だったことに憤った。
『......もし居たとして、弱い事には違いない』
「...........あ?」
そう言うと女の声は消え、周囲を恐怖が包み込んだ。RDが身構える。ヴェンジェンスも前傾姿勢になり、いつでも高速移動できる体勢に入った。操縦桿を握る手に力を込める。
『そのようなことに構っているぐらいなら、お前も戦うがいい!私は貴様を倒し、生きる!』
RDはその発言を聞いて、遂に怒りが沸点を超えた。
「......ああ!?やってみろよ!」
一瞬ヴェンジェンスが更に姿勢を落とし、そこから足で地面を蹴り、高速のブースト移動によって中量二脚でありながら軽量機並の速度を出すに至る。遠心力からかかるGのせいで視界がブラックアウトしかかるが、どうにか耐え、ただ一点に突き進み続ける。RDが常に嫌な感じを覚える地点、つまりは
スナイパーキャノンの大口径弾が飛んでくる
『なっ......!?』
「......口先ばかりで、大したことない」
『っ......クッ、どういう事だ......?』
次弾が放たれるが、それも直感によって回避する。敵の照準は未だにこちらを捉えているようだが、当たらないと思える。それはあの主任から教えられた勘の使い方によるものだった。
『何故だ、当たらん!?』
「アンタ、正直すぎる。だから当たらないんだ。狙いは正確かもしれないけど、イレギュラーに対応できない......そういう事でしょ!」
そう言いながらスナイパーキャノンの弾丸を避け、進む。目標まで残り1kmを切ると、狙撃が止んだ。恐らく中距離戦に対応するためにスナイパーキャノンをパージしたのだろう。
「霧に紛れても無駄だってわかってるでしょ?......アンタは俺からは逃けられないって!」
『馬鹿な......!』
RDとヴェンジェンスの前には、焦燥に塗れた彼女の攻撃は意味を成さなかった。狙撃だけでなく、霧や建物に隠れさせた機雷でさえ突破されるのだから、たまったものではない。セントリーガン等が設置されているのか、そこかしこからガトリングやバトルライフルに撃たれるが、建物の高さを利用して巧妙に射程外や射線の外へ逃れていく。
「(魔理沙さん、まだっすか......!?)」
まだ到着する見込みの薄い魔理沙に思いを馳せる。斥候だけのはずが、先遣部隊がほぼ全滅しているとなると、かなり辛いものがあった。最悪一人で数機を相手にしないといけない可能性すらあった。だが諦めることはしない。死への恐れを取り払えた今は傭兵としての戦いに余計な感情を持ち出さずに済むからだ。
『今だっ!』
「えっ......うわっ!?」
突如背後に悪寒を感じ取って右方向に高速移動するが、悪寒の方が一歩早かったらしい。左腕が切り落とされ、パルスマシンガンが霧の積もったアスファルトの上に落ちる。切られた断面からはケーブルが飛び出していた。
「エネルギーの剣じゃない......叢雲っすか......!?」
『身体を狙ったつもりだったが。そうか、卯月がこうまで押されるわけだ。......貴様は、大きすぎる。わかるか』
振り返った先には、黒と灰の塗装の中量二脚AC。ムラクモとバトルライフルを構え、その背部には二基のパルスガンを装備している。昔、傭兵たちの間で有名だった武装と似通っている。
「はッ...........わかんねぇっすよ。大きいとかなんとか、要はアンタらは俺より弱いんすよ」
対峙するACは指一本動かさずにRDの言葉に傾聴している。卯月と呼ばれた女も、その行動を理解してか言葉を挟もうとしない。RDは続ける。
「アンタらの目的は知らない。興味もないっすから。でもね、霊夢さんって弱くないんすよ。それこそ、アンタらみたいな死にたがり屋より余程強い」
『そうだ。私は死にたがり屋。身体を捧げ、肉体はおろか神経すら血肉を削がれ、失敗作とすら呼ばれて、それでもなお戦いに身を投じる。確かに死にたがりだった......私はな!!』
男の言葉が荒くなる。怒りを孕んでいた。
『私はそうだ!だがな、卯月は...その子は違う!その子は私とは違う!私のような奴と、一緒にするな!』
『水無月!』
『死ねぇぇぇッ!!』
尋常ならざる測度でこちらに突進してくる、水無月と呼ばれたAC。RDは急いで後ろに引き下がろうとするが、恐らくこの場から離れたら遮蔽物から身を晒し、狙撃される。かと言ってここに留まっていてもムラクモの餌食になるだけだ。万事休すか。RDがそう考えたその瞬間だった。
『喰らえっ!!!』
『なっ......ぐあっ......!?』
勢いの籠った何者かの突進で、水無月の搭乗するACが吹き飛ぶ。吹き飛ばしたその人は、RDが待ち望んだ霧雨魔理沙と、その乗機ギムレットだった。ギムレットはACを勢いよく蹴り飛ばす。速さが乗った重量二脚型ACのブーストチャージは文字通り桁違いの威力を誇る。装甲強度に優れる程度の中量二脚では到底耐えられない。
『どーだ、この野郎!RD!無事だったか、急に通信が途絶えたから急いで来たんだ!正解だったぜ!』
『バ...カな.....ソリッドブレードの装甲を......一撃、で...』
機体ダメージが大きかったのか、中の人間自体にダメージが及んだのか、途切れ途切れの言葉が聞こえてくる。それを後目に魔理沙が止まって、RDに向き直る。損傷は左腕だけだが、主武装がライフル一丁だけになってしまったのは心細い。だが、最悪
『そこの動けないACは潰すぞ。念の為──』
『待ってくれ、彼は殺すな!』
卯月の声が魔理沙の言葉を遮る。霧の奥から卯月のACが姿を現した。四脚狙撃特化型のACだった。
『───この通り、だ』
卯月のACは目の前まで出てきたかと思うと、なんと左手のレーザーライフルを捨て背部セントリーガン射出機も取り外し、遠くに放った。魔理沙がその右手に持った異形のガトリングライフルを卯月に向ける。
『どういう事だ、お前。なんで武器を捨てるんだ?そんなにこいつが大切なのか?』
『...........そうだ。水無月は......命の恩人だからだ』
『...........チッ、敵討ちのつもりが、情けをかける羽目になるとは思ってもなかったぜ。でも......卯月だったか、お前はどうするんだぜ?他に仲間がいるんなら、これって裏切り行為ってやつだろ。その───お前の上司は許してくれるのか?』
『───しないだろうな。あれは、そういう人だ』
RDはその言葉を聞いた魔理沙が武器を下ろしたのを見た。魔理沙が言葉を慎重に紡いでいく。
『......ここは──もう一人の、そうだな。こいつも連れてどこかに逃げな。ミグラントには私が言い訳しておくぜ。...........早く行けよ。もうじきUNAC機も来る。逃げ切れなくなるぞ』
『...........この恩は、いつか必ず。行こう水無月』
『ああ...........すまん......』
魔理沙が言葉を発し終わる。二機のACが離れていき、霧にまみれて何も見えなくなった頃に、RDが魔理沙に聞いた。
「...良いんすか?霊夢さんの仇っすよ。逃がして...........逃がして、後悔はしないんすか?」
『実の所、直接霊夢を倒したやつは私が潰してる。これは弔い合戦ってやつだ......悪かったな、RD。私、お前に嘘ついてまで戦わせようとしてた』
魔理沙が落ち着いた口調でRDに告げた。RDは彼女に宥めるように返した。
「俺、言ったでしょ。付き合うって。今更謝るなんて魔理沙さんらしくもない。謝るんじゃなくて、礼を言いましょうよ。最後まで一緒に戦った霊夢さんに。この戦いが終わったら、ね」
『RD......そうだな、ありがとう』
RDに礼を言って、魔理沙は操縦桿を握り直す。ギムレットがガトリングライフルとレーザーブレードを握りしめた。RDも右手のライフルの調子を確認し、戦闘態勢を整え終わる。
そして気が付いた。視界が明瞭になってきている事に。
「魔理沙さん、霧が!」
『晴れてる......お前らか、卯月!感謝するぜ......!』
魔理沙が聞こえるか分からない感謝の言葉を叫ぶ。前傾体勢に入ってグラインドブーストを起動した魔理沙とRD。ブースターの点火が完了し、高エネルギーを代償に高い機動力を以て敵のいると思われる最後の地へ向かう。そこは、高層ビルがあったであろう、広場。軒並みビルが崩れていて、瓦礫がなければもはや平地ですらあった。鉄筋やコンクリートの残骸がそこらじゅうを埋めつくしており、足場が悪い。
そしてその奥に、奴はいた。
『《水無月も卯月も死んだか、さもなきゃ逃げたか。何れにせよ、俺が見つかったという事はお前らはあの二人を降したという事だ。それだけは褒めてやるよ》』
男の声を発するそのACは重量逆関節の機動型機体だった。何よりその機体の武装構成に魔理沙は見覚えがあった。紅白の塗装、装備の詳細から武装の細部に至るまで、あの機体に瓜二つだった。
『...........《ハーモナイザー》...........お前、霊夢を!』
ハーモナイザー。博麗霊夢の乗機であり、今はこの男の乗機でもある。友人の遺品を憎き相手に使われているその事実が魔理沙を憤らせた。
『お前ッ!お前は霊夢の遺志を侮辱した!』
「...........なんすか、アレ!?魔理沙さん!罠っす!」
二人が広場の中心まで踏み込んでいったその瞬間、RDの勘が働いた。が、少しだけ遅かったのだろう、RDが気付いたその時には既に敵の術中に嵌っていた。
瓦礫のあいだあいだに隠れていたACが、続々と姿を現したのだ。
『《阿呆が......敵討ちに躍起になって、盲目のまま敵陣に飛び込むとは。死ぬ事だな、凡夫が。貴様にはせいぜい戦闘データの収集に役立ってもらおう》』
ハーモナイザーが笑いながらそう吐き捨て、遠くのビルの向こうに姿を消す。機体の反応が消失したので、恐らくはUNACに任せて戦場を去ったのだろう。
『UNAC機──8機もいるのか......ッ!』
「魔理沙さん、今は生き残らないと!」
『わかってる!私が盾、お前はそのデカブツでUNACを潰して回れ!』
魔理沙の焦燥感を隠しきれない指示に従い、RDは残った左腕もパージして右肩に取り付けられた異形の兵器、グラインドブレードを接続する。グラインドブレードに内蔵されたハッキングシステムがヴェンジェンスのジェネレーターに不正アクセスし、普段は使う事すら出来ないエネルギー容量とその回復力を確保、カメラアイからの映像にノイズが走り、視界が不良になる。
『《不明なユニットが接続されました》』
ブレードを回す、耳障りな音が広場にいる全員の耳に響く。その6本のチェーンソウ1本1本が死を告げる刃なのである。そしてチャージが完了した。いつでも行けると目配せする。
『《システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を停止してください》』
システムボイスの無機質な警告が、RDを焦らせた。
「わかってる、そんな事!魔理沙さん!行くっすよ!」
『行けぇぇぇぇ!!』
魔理沙の叫びが戦場にこだまし、魔理沙を狙うUNACにヴェンジェンスが飛びかかる。六基のチェーンソウに粉々に砕かれ、ACは大破する。その足元には炎の軌跡が刻まれており、さながらその様は古いSF映画に搭乗する車、デロリアンのようだった。
「一機!囮を!」
『任せろ!』
次のチャージに入る。ギムレットがガトリングライフルを乱射し、注意を集めつつ逃げ回る。巧みなハイブーストによって被弾数を軽減しつつ、敵に的確にダメージを蓄積させていく。
「溜まった...........これで!」
武器のチャージが完了し、ドリズルの周囲を取り巻くUNACへ向かう。ギムレットと、7機のUNACが肉薄していた戦場に、チェーンソウの悍ましい駆動音が響いた。
「魔理沙さん!飛んで!」
その言葉に反応し、UNACを飛び越えるように飛ぶ。ハイブーストもプラスする事でなんとか攻撃範囲外から逃げ切る。
刹那、グラインドブレードの甲高い起動音。
ぶつかったような音、装甲が削れる音、刃の金属部と装甲内部の配線が触れ合い、ショートする音。全てがグラインドブレードから発せられる破壊音にかき消された。
「二機!...........ダメだ、動けない......限界っす.....」
『クソ!私から離れろ、壊れ人形!纒わり付くな、このっ!このぉ!』
RDのグラインドブレードが機能を停止し、再び右肩に仕舞われて鎮座する。同時にエネルギーが底を尽いて膝を着く。魔理沙のギムレットも、敵の多さに限界が見えていた。
魔理沙から外れたUNAC機が、RDを捉えた。
「もう...........ここで終わりっすか......」
頭を垂れて、絶望に押し潰されそうになっていた。
『《こちら『アグレッサー』。よく持ちこたえた》』
RDの目の前には黒と赤の、中量二脚型ACが立っていた。UNACはバトルライフルの総火力を受け、あっという間に破壊される。ノイズの混じって聞き取りにくいその声は、高さから辛うじて女性だとわかった。
『《RD、立てる?》』
「アンタ......は...........」
黒と赤のACはRDを助けて消えた。彼女が何者なのか、その真意を掴めないまま、RDの無線に声が聞こえた。
『UNAC部隊、及びミグラント本隊、到着した!魔理沙、RD!生きてるか?』
ジャック・バッティだった。彼が、本隊を引き連れて広場へと姿を見せたのだ!希望が二人に舞い戻る。
「遅かったじゃないっすか...........動けないっす......」
『おいおい、助かったぜ、バッティ!』
RDは疲れ果てたような、魔理沙は歓喜に塗れた声をあげる。どちらにしろ絶体絶命の危地を救われた事に違いはない。広場に味方のUNACが続々となだれ込んでくる。
『《U1、敵影補足。オペレーティングシステム起動》』
『《U2、敵補足。システム、パターン2》』
やがてヴェンジェンスの目にも輝きが戻ってくる。ACにエネルギーが充填されていくのを、デバイスに映されたパラメーターで確認する。動けるようになって、右手のライフルをUNACに向かって構えた。魔理沙が注意の逸れたUNACを蹴り、吹き飛ばす。
『はっ......はっ......はあ......やっと死んだか』
味方が来ても尚魔理沙に纒わり付いていた最後のUNACが破壊された事で、ようやく一息つけた。魔理沙がRDの近くまで走る。ちょうど良いタイミングでバッティも到着したようだった。
『魔理沙、RD、良く無事だったな』
『おう、私もRDも何とか生きてるぜ。...........ところで、先遣部隊はどうだったんだ?』
「その......全滅してました。少なくとも二人は即死、最後の一人とは会えてないっす」
RDが申し訳なさそうに伝えると、バッティは絶句していた。やがて口を開くと、そこにはRDの知る猛者たるバッティが話しているだけだった。感情を直ぐに調伏させられる、優秀な戦士たる証だった。
『そうか......アッシュもベスも、ランガーまでやられたか。あれは俺達の中でも上位クラスの実力者だったが、認識を改めねばな。機械化八人衆は潰すべきだ。敵討ち云々でなく、後世のために』
バッティが痛々しく呟いた。
『まあ......とにかく生き残ったんだ。あの三人の事は、気にするな。お前らも傭兵なんだからな』
『......わかった。行こう、RD』
「え...あ、はい。わかったっす」
(あの人は......オレを助けたあれは、一体誰だったんすか......?霊夢さん、アンタなら目処が着くんすか...?)
魔理沙について行く傍ら、RDはそればかりを考えていた。あと黒と赤のACは、直接は戦ってはいないものの確実に強いと直感できる。あの振る舞い、正確無比な照準。どれをとっても一級品なのだろう。正体の掴めぬまま、二人は帰路についた。
遅れてしまって、本当に申し訳ない(メタルマン)
生活が忙しいと手が回らなくて......でも気ままに続けていくので、読んでいただけると嬉しいです。
チャプター1『The beginning』は今回で最終話です。チャプター1時点での登場人物名鑑と、簡単な話を書いた後に、チャプター2に移行します。お楽しみに。
どの話を優先的に完結させるべきか?
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射命丸文編(アリーナ編)
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霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
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メインストーリー(オムニバス)