Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

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Hell has come to

 雨に打たれる重量二脚型のACを駆るのは、姿無き博麗霊夢と並ぶ実力を持つ傭兵、霧雨魔理沙だ。その少し後ろを焦げ茶色の中量二脚機体が飛行している。操縦者はRD。レイ=ドミネイト(R=D)という青年は、魔理沙の友であり、霊夢亡き今、魔理沙の新たな相棒でもある。

 

『今日はヤケに雨が酷いな』

「これじゃ、前も見えないっすよ...」

 

 COMに提示された道のりによれば人里まで残り数千メートルといった所らしいが、それらしき影は全く見えていない。交戦の可能性を極限まで避けるため、にとりが小型ドローンを先遣し偵察させた上でのルートを通っているから、それも当たり前ではあるのだが。

 

『ちょっと余裕が無いから、かなり迂回することになっちゃった。悪いね』

 

 オペレーターを務める河城にとりが、魔理沙に謝る。

 

『良いんだよ、どの道私達が歩いた事に変わりはない』

 

 そう言いながら魔理沙がACを勢いよく前進させ、RDもそれに続く。目標エリアまで、残り3000メートル。3キロを切った所だった。雨の音に紛れて激しい銃声が聞こえてくる。人里の防衛部隊は守りこそ堅牢だが、人里の表組織の性質ゆえに攻勢を苦手とする。そのため、攻めのきっかけを作るために傭兵を雇うのだ。

 

『準備はいいか、RD?』

「いつでもいけるっすよ」

『私から離れるなよ!』

 

 魔理沙のギムレットが一瞬前のめりに傾き、そのまま高スピードを出すグライドブーストで目標地点との彼我の距離を一挙に詰めた。それに続いてRDもグライドブーストを起動し、先に離れた魔理沙に追いつく為グライドブースト中にハイブーストを使って魔理沙との距離を縮めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態は、僅か40分前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 メールに一着の依頼文が届いているのを見て、新たな依頼だと張り切って本文を読もうとメールを開いた魔理沙は、その内容に少しばかり顔を顰めた。送り主自体に問題がある訳ではなく、その態度が気になったのだ。

 

 

『送り主:人里統括本部代表一同

 件名:魔理沙さんへ。

 

 お久しぶりです魔理沙さん。阿求です。今回のメールは私が執筆を務めています。霊夢さんの件は、本当に辛い思いをされているものと存じています。彼女は非常に強く、そして使命感に溢れた優しき人でした。

 

 ...........辛い状況ではありますが、一つ頼みたい事があります。近々、人里を侵攻せんと南部で動きがありました。私達はこれを迎え撃ち、出来るなら撃退及び討滅を図っています。魔理沙さんには、これへの切り込み役を担っていただきたいのです。これを成功させる事が出来れば、報酬は前回の倍額をお支払いします。

 

 言わばこれは、人里の存亡がかかった重大な作戦です。こちらでは既に小競り合いのような状況が続いており、既に戦況は危機的状況の半歩手前まで差し掛かっています。

 

 尚このメールは規定に乗っ取り、既読から三分が経過した時点で削除します。

 

 ...........良いお返事を頂けるものと、期待しています』

 

 

「阿求も辛い状況、か」

「何のメールだったんすか?」

 

 魔理沙の後ろからRDが端末を覗いている。急に話しかけられて魔理沙は驚いてしまった。

 

「わっ!......お、お前なぁ!乙女のメールは覗くもんじゃないっての!」

「乙女って言うほどお淑やかじゃ......何でもないっす」

「聞こえてたぞ。..........依頼だよ」

 

 RDのとても小さい声量の小言を捉えつつも、メールを送り返す為に返信する。

 

『送り主:霧雨魔理沙

 件名:依頼を承諾する。

 

 その依頼を引き受ける。すぐさま出発で良いか?私達を投入する主戦場は、そちらで決めてもらっても構わない。今すぐ出るから、少し耐えてくれ』

 

「......っと、送信」

「受けるんすか?」

「だから覗くなって!...........まあ、昔人里で住んでた時に色々世話になったからな。その借りを返すための、傭兵稼業になりつつあるというのは少し癪だが」

 

 魔理沙の物言いに、RDは首を傾げた。

 

「...........?...何で癪なんすか?」

「いやな......ほら、ここに『人里統括本部代表』って書いてあるだろ?」

 

 そう言って魔理沙はRDに端末の一番上の送り主の名前を見せる。確かに一言一句違わず書かれているその名前は、けれどその時点でRDには、魔理沙がどうしてこの名を出すのかわからなかった。

 

「この『代表』ってのが大体10人の集まりなんだけど、その10人ってのが色んな部門で成果を上げて、その躍進が認められた奴だけがなれる役なんだよ。んで、私の親父......が、その......ムカつくけど代表の一人ってわけだぜ」

 

「ムカつく?......まぁ、触れないでおきますけど。とにかく受けはするんすよね?オレも準備した方がいいっすか?」

「お前も来るならACを出してこい。私は先に準備してるぜ」

「ソレって答えになってない......いやまあ行くっすけど」

 

 ガレージを降りていく魔理沙を見ながら、自分も乗機ヴェンジェンスを起動すべくガレージへと向かった。

 

 

 

「あ、にとりさん」

「あれっ?魔理沙といい君といい、揃って仕事か。精が出るねぇ」

 

 素っ頓狂な声を上げながら、ヴェンジェンスのコクピットから工具箱を引っ提げて出てきたのは、青いツインテールが特徴的な妖怪である、河城にとり。とは言ってもその外見からは彼女が妖怪とは想像することも出来ないほど、人間的だ。にとりはACから降りて背伸びをすると、工具箱を机の上に置いて入口に立っているRDの近くに歩いてくる。

 

「お疲れ様っす。また整備してくれたんすか?」

「まぁね。君たちは私の...というか、私達の生命線でもあるワケだからさ。サボって撃墜されちゃったら、目も当てられんでしょうし」

「確かに、それもそうっすね。魔理沙さんとはもう話しました?」

「話したよ。阿求って人からメールが来たそうでさぁ、先にギムレットを整備しておいて正解だったよ」

 

 そう言ってにとりは帽子を取って頭を軽く掻く。うーん、と唸りながらヴェンジェンスを見遣るのを見て、RDはどうしたのだろうかと気にかかった。

 

「いやなに、まだヴェンジェンス君の整備が完全に終わったわけじゃないからさ。殆ど無事ではあるんだけど、ブースター周りだけは繊細だからまだ見てやれてなくてね。問題ないとは思うけど、どこか気にかかるんだよねぇ」

「その程度なら、問題ないっすよ。いつもありがとうございます」

 

 そう言ってヴェンジェンスに乗り込むRD。ガレージ正面の大扉が開くと、そこにはホワイトとブラックのカラーリングが施されたAC、ギムレットが立っていた。

 

『終わったか、RD?行こうぜ』

「OKす、魔理沙さん。行きましょう」

「二人とも、今日も頑張ってきなよ!魔理沙、あんたの好きな茶菓子、香霖堂に寄って用意してもらうからね!」

 

 ギムレットの左手が上がる。武器ごと持ち上がった手を握りしめ、静かな意志を以てにとりのその言葉に答えた。RDも一瞥した後に一言置いて、ギムレットとヴェンジェンスは高速で移動するべくブースターを吹かした。

 

「じゃあ、行ってくるっす」

「おー、行ってきなよ!いつも通り、オペレーターは私が務めるから!」

 

 その言葉を聞いて、RDは強くペダルを踏み込んだ。

 

 

 

 

 目標まで僅か1kmを切ったところだった。不意に視界に映りこんだそれは、下にあったMTを全て破壊し、対空砲を相手取るところだった。

 

「魔理沙さん、アレ!」

『あれは......ガンシップ?...いや、それにしてはデカすぎる!あれは一体なんなんだ......!?』

 

 魔理沙が驚いたのは、とても巨大な兵器がそこにあったからだ。というのも、ただ大きい訳ではない。実に奇妙な原理で空を飛んでいるからだった。

 推進器もない、ローターすらない見た目だったうえ、その大きさは優に30メートルを超えるだろう大きさだ。更には全方面に武装しており、中央の巨大な砲台...恐らく主砲だろう...が放った妖しい光の砲弾は、命中した場所に青い光を散らす。クレーターすら出来上がっており、その威力が如何に規格外なのかを容易に伺わせる。

 

『バカでかいな、なんだアイツは...』

 

 人里の防衛部隊が放つ全力の対空砲火は、謎の新緑色の膜で防がれて通らない。砲火が止むと、それで終わりかとばかりに飛行兵器が前面に取り付けられている超大口径の機銃を一斉射し、その圧倒的な火力で対空砲は瞬く間に破壊されていく。

 

 それを見計らったタイミングで、狙撃型四脚ACの小隊が展開し、スナイパーキャノンやヒートキャノンなどの大破壊力を持つ火砲をぶつけ続ける。空を飛ぶ異形......仮に飛行要塞と名付けるとして、飛行要塞はキャノンの集中砲火を受けていた事で、最初の十発程は耐えていたが、緑色の膜が減衰すると、それを好機と見て全員か火勢を集中させ、一箇所を......最も装甲が薄いであろう場所たる主砲内部を撃ち続け、火を噴いて轟沈する。

 

 墜落すると、その付近を緑色の美しくも何処か悍ましい光が包み込んでいく。爆発が起き、近くにいたACが一機巻き込まれ、耐久が充分だったにも関わらずバラバラにされていた。

 

 不意に、二人の無線機に通信が入った。

 

『貴殿らは我が方の兵か!?』

 

 突然の通信に呆然としていたものの、人里を守っているキャノン装備のACが魔理沙に話しかけていると気付いて慌てて無線に応じる。

 

『あっ......そ、そうだ。私達は阿求に雇われてきた!』

『阿求どのに?......ああ、魔理沙どのか!ここは私たちが守る、それより我が隊の司令官がここより東の方角、2km先で指揮を取っておられる!救援に向かってくれ!』

『わかった!RD、行くぞ』

 

 了解すよ、とRDが踵を返して目標地点に向かうなか『しかし...』と、魔理沙がふと吐く。

 

『アレは何だったんだ......』

 

 思考があの飛行要塞の事で埋まりそうになったが、呼びかけのおかげでそうならずに済んだ。

 

「魔理沙さん!」

 

 魔理沙が独りごちている所に、RDから通信が入った。魔理沙がそれに応答すると、彼は通信機を見るように指示する。

 

「防衛部隊との回線が繋がったっす!」

『わかった、ありがとう。こちらギムレット!代表はいるか?阿求?』

 

 魔理沙が主戦場に到着する頃には、かなり切迫した状況だった。無線からは様々な人里の部隊員からの通信や叫び声が聞こえて来、それらを押しやって魔理沙の呼びかけに応じたのは、人里内の穏健派として知られる少女、稗田阿求だった。

 

『魔理沙さん!来てくれましたか!』

 

 昔の温厚さからは有り得ないほどの、切羽詰まったような呼び声が聞こえてきた。

 

『おぉ!霧雨どのか!?よく来てくださった!』

『助かった!魔理沙ちゃんが来りゃあ俺達の勝ちだ!』

 

 阿求の呼んだ名前に防衛部隊の何人かが反応し、士気を高める。それを聞いてRDが魔理沙に聞く。「信頼されているんすね」魔理沙は『まあな』と答えた。

 

『《システム、戦闘モード》』

 

 ギムレットの戦術COMが言い放ち、FCSのロックが解除される。

 

『聞こえるかい?その辺りにかなりの数のMTが確認出来るね。それだけじゃない、敵の後詰に飛行タイプの強襲機。単体じゃ大したことは無いけど、多分弾が足りなくなるかもしれない。節約しながら戦う必要があるけど、それを差し引いてもこれまでの中でもかなり危ない戦場になると思う。気をつけて!』

 

 にとりの情報を受け取って、魔理沙が叫ぶ。

 

『上等!行くぞッ!』

 

 崩落した防壁を越えながらガトリング砲を乱射してきたMT数機を、スナイパーライフルと機関砲で迎え撃つ。15発ほどのガトリング弾と、1発の大口径弾が撃ち込まれ、一機のMTが爆散する。

 

『まず一機!』

 

 続いてギムレットを挟むようにして展開するMTのうち、後ろ側にある敵機を蹴り飛ばす。重量二脚の衝撃力は、非常に高い。速度の乗らないブーストチャージとはいえ、瞬間的な加速とギムレットの自重から繰り出される蹴りは並大抵の汎用兵器は即死、軽量、中量二脚ACは言わずもがな重量級のACでさえ瀕死だ。そしてそんな重さの蹴りを受けたMTがどうなったかは、見なくとも想像にかたくない。

 不相応な差の火力を叩きつけられたMTが破壊されたのを後ろ目に、FCSがロックした敵機に向かってライフルとミサイルを撃ち込む。各属性の兵器を撃ち込まれたMTごときが耐えられようはずも無く、その機体もただ熱を発する爆発と共に消えた。

 

『RD、そっちは!』

「今......終わりっす!」

 

 魔理沙の仕留め損なった側面の二機を、RDのヴェンジェンスがライフルとパルスマシンガンの二つで集中砲火し、MT二機は両方とも耐え切れず爆発する。

 

「もちろんこれだけじゃないんすよね!?」

『みたいだぜ!ほら、また来るぞ!』

 

 高機動型と呼ぶ、空を飛ぶ兵器が幾らかやってくる。スキャンした所、武装はCE砲弾を装弾したヒートキャノンのようだ。

 

「喰らったらタダじゃ済まないっすね、オレも、魔理沙さんも」

『わーってる!お前も気をつけるんだぜ!!』

 

 まだ無事な壁を蹴りつけて空に浮かび上がり、真正面から突っ込んでくる高機動型を撃って、落とす。魔理沙は重量二脚機体であるが、武装の交戦範囲が広いおかげで飛ぶ必要も無い。弾を避ける為に時折左右にハイブーストするくらいで、中距離狙撃型であるギムレットの前には、近距離でなくば当たらないほどの弾速のヒートキャノンなどかすりもしない。

 魔理沙が3機落とした頃、RDの方に流れた高機動型も彼によって撃ち落とされる。

 

『またやった、これで6機だ』

「気をつけてください、まだ来るっすよ!」

『結構数が多い、油断するなよ!!』

 

 魔理沙がどんどん敵の防御型を落としていき、RDもそれに則るように機動力を活かして高機動型の飛行強襲機を撃墜する。

 

『また一機!』

「増援!またっすよ!」

『くそっ、キリが無い!』

 

 再度飛来してくる飛行型を撃ち落としながら魔理沙は悪態をつく。既に手持ちの火器の装弾数も心許なくなってきているというのに、敵の増援が収まる気配は全く感じられなかった。

 

「にとりさん!味方は来ないんすか!?」

『待って、前方からAC、一機!』

 

 にとりの叫ぶような警告と共に、前方へ振り向く。遠くから確かにACが接近してきており、周囲の敵がACを確認して撤退していく。対AC戦はやり慣れている、だがこのACは何かが違った。それは─────

 

 

『《U1、オペレーションを開始します。敵AC確認、重量二脚、及び中量二脚。コジマ・パーティクル最大出力。プライマル・アーマー、起動》』

 

 

───────奴の機体が、新緑色の膜のようなものに覆われている事だった。

 

 




コジマ・パーティクル

 かつてその重金属粒子を発見した博士の名で呼ばれる物質。軍事転用の可能性を模索するうち、コジマ・パーティクルを用いたひとつの兵器が開発される。それは政府を打ち壊し、新たな世界と、新たな火種を生み出した。後に一人の英雄と、一人の殺戮者が生まれ、コジマ・パーティクルを使った技術の悉くが、殺戮者の手によって人々の命と共に抹消された。
 また、コジマ・パーティクルによって多くの人や土地が汚染され消えていったのもまた事実であり、即ちコジマ・パーティクルとは存在してはいけない、禁じられた物質でもあるはすだった。

どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)
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