Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

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 妖夢ちゃんがACでも剣士を目指すようです。



剣士

 あるところに、西行寺幽々子と呼ばれる冥界の住人がおりました。彼女の隣には、幽々子に忠を誓った剣士であり、また幽々子の従者でもある半人半霊の少女が、日夜修行を続けていました。

 

 そして7年前のちょうど今日、巨大な人型機械が幻想郷にやって来ました。それらは、数多の人たちを傷付け、殺し、滅ぼしてきた、人類の作った中で最も最悪の兵器でした。

 それらが主に牙を剥くと考えた少女は、今までの修行全てを無に帰して同じAC乗りになる道を選び、そして『冥界の剣士』と呼ばれるようになったのです。ですが、それは今ではありません。もう少し後のお話です。

 

 

 

 

 

 

 

『幽々子様………御屋敷には、誰も、近付けさせはしません……』

 

 誰かに向けた、少女の声がこだましている。多数のACや防御用AC、高機動型ACの残骸が散らばる無縁墓地の中央で、一人立つAC『ソウルストレングス』を駆る西行寺の庭師、魂魄妖夢はただただ敵が来ないように見張り続けているだけだった。

 

 周囲を森に囲まれた無縁墓地は、防衛するには守り辛く、攻めるには手軽すぎた。それでも妖夢がここを、そして冥界への入口を守り続けていられるのは、彼女の鋭い勘と、彼女自身の天性のACパイロットとしての才能が開花したからこそのものだった。

 

 武装は左右の腕にライフル(AM/RFB-219)を二門、両ハンガーには見慣れない形の、月の様な形にも見える何かを装備している。見たところは何かの発生装置にも見えるが、その二つがどんなものかはわかっていない。彼女は今までその二つのハンガーユニットを抜いていない為だ。

 

 ふと、メインカメラに白い何かが付着するのが見えた。それは機体の熱に溶かされ、瞬時に水と化す。その一連の様子を眺めていて、ようやく雪が降っているのだと理解した。

 

『雪……? もう、冬ですか』

 

 妖夢が冥界に戻らなくなって久しい。それは彼女の主を守るために他ならない。彼女の主は、かつて大食らいで知られていたが、妖夢が食事を作られなくなってからは少食となってしまっている。

 

 それに妖夢は心を痛めない訳は無いのだが、主を、そして冥界を守らなければならないが為に、仕方なく冥界の入り口から中に入ろうとしないのだ。それに、理由はもう一つある。何故ここまでして守ろうとするのか。もちろん、算段がない訳じゃない。幽々子が冥界の入り口を()()()為の準備期間中、妖夢がここを守り抜かなければならないのだ。

 閉じさえすれば、幽々子にはもう危険はない。だからこそ、主の為にここに立っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖夢が監視を始めるようになってから既に4年。襲撃者ばかりだったこの無縁墓地に、一人の男が近付いてきていた。その男は、妖夢とどこか似たような半人半妖の男だった。

 

 集音マイクが足音を捉える。きっと生身の足音なのだろうが、そんな小さな音は久しぶりに聞いた。なぜなら無縁墓地は彼岸花に囲まれ、魔力の澱んだこの魔法の森の東部に位置する特異な場所。冥界という領土を目当てに足を踏み入れる愚か者達の動かすアーマードコアの重厚な駆動音や銃声しか、その耳には届いていなかったのだから。

 

 だが、今はどうだろう?

 

 襲撃者も無く、ここ最近はやってくる敵の数も落ち着きを見せているように思える。この足音が、不思議とあらゆる悪意を持ったもの達の足音の様には到底思えなかった。緩やかで、しかし確固たる目的を持って、無縁墓地の土を踏んでいた。妖夢にはそう思えたのだ。

 

「そこに誰かいるのか?」

 

 マイクが男性の声を拾った。奴らの汚らしい罵声や叫び声なんかじゃあない。この世界がこうなる前に、色々な表の道具を購入させて貰っていた、あの道具屋の店主の声だった。その言葉に、もはや聞き間違いはありえなかった。

 

『霖之助さん……ですか?』

「そう、森近霖之助だ。その声はもしかして妖夢か?」

 

 やはりそうだ、と胸が高鳴る思いを秘めつつも、恐る恐る肯定する。『自分は魂魄妖夢本人である』と。それを聞いて警戒心を解いたのだろう、木々の間から霖之助がその姿を見せた。

 本人で間違いなかった。得意先であり、同時に旧友でもあった彼の姿を見て、思わず両手を握って握手したくなった。だが、ここがいつ襲われるかはわからない。だからこそ、旧友との再会とはいえACを降りる訳にはいかなかった。隙を突いてパイロットが殺されれば、冥界を守る唯一のACは破壊されたも同然になってしまうのだから。

 

『なぜ、ここにいるんですか』

「それは僕の台詞だと思うよ。ここは無縁墓地だ。少なくとも妖夢、君には()がない場所じゃないのかな?」

 

『ここは冥界の入り口と直接繋がっています。幽々子様がここを塞いでくださるまで、私はここを守り通さなければなりませんから。ですから私はここから動けません。いつ来るかわかりませんが、どこかからか嗅ぎつけた汚物共が、この辺りを彷徨くので、霖之助さんもきっと危険ですよ』

 

 そういうと、霖之助は眉を顰めた。なにか考え事をしている様子だ。ううん、と唸っていたが、何かしら名案が浮かんだのだろうか、顔を上げ、妖夢に話しはじめた。

 

「なあ、もし良ければ、僕も君に協力したいんだ。もちろんタダじゃない、君にも手伝ってもらう事はあるんだけどね。どうだい、悪い条件じゃないだろう?」

 

 霖之助のその発言に妖夢は少し考えた。こちらの手伝いとは?彼の言う手伝ってもらいたい事とは一体なんなのだろうか?その疑問は本人に聞くべきだと、ACの装甲越しに会話を続ける。

 

『メリットとデメリットを教えて頂けますか?』

 

「ふむ、まずデメリットだ。僕の手伝い......といっても、君ならきっと簡単な仕事だろう。僕の店に来る野蛮な輩を追い払って欲しいと思ってね。次にメリット。君の代わりに冥界の扉を守る番人を設置する」

 

『番人?』

 

「その様子だと『UNAC』の存在を知らないのか。君の戦闘技術や、それを元にした行動チップを入力したコンピュータ、いわば式神にACを使役させるような物だね。彼らと、それと自動攻撃銃を設置しよう。パルスガンなら弾薬を用いないから点検するのは少なくても良いし、何より()()のコピーUNAC二機の守りを突破できるAC乗りは少ない」

 

 そこまで言うと、霖之助はニヤッと笑う。不敵の笑みを浮かべて妖夢に歩み寄る。

 

「いやあ、我ながら久しぶりに商いができて嬉しくなってしまう。さあ妖夢、君はどうするんだい?」

『………わかりました。でも先にここを守らせて欲しいです。留守中に幽々子様に危険が迫ったら、お爺様に顔向けできませんから』

「交渉成立だね、今ACとセントリーガンを運んでくるよ」

 

 そう言って彼は姿を消す。久しぶりに、まともな人間と話した気さえした。いや、実際その通りだったのだろう。彼と話すまでは、喉は嗄れ、掠れた声しか出なくなってしまっていた。気合いを発する為に雄叫びを上げたり、ため息をついたり舌打ちをしたりと、そういう意味では幾らか話したりする事はあったのだろうか。

 

 しばらく待っても、霖之助は帰って来なかった。不穏な空気を携えて、コクピットのクーラーが外の空気を運んでくる。なぜか分からないが冷や汗が頬を伝った。もう既に二時間は経っている。無縁墓地から魔法の森を抜けて香霖堂を訪ねるのに、30分も掛からない事を考えると、一つの考えが脳裏をよぎった。

 

『(まさか、霖之助さんは誰かに攻撃されて......?)』

 

 少しの間守りが疎かになってしまう事を心の中で主に謝罪しながらも、空間の裂け目に背を向けて香霖堂へ急いだ。ジェネレーターを最大まで稼働して最高速度を維持したまま低空飛行を続けていれば、きっと数分も掛からないからだ。

 

 

 

 

 

 

 そこに着いた妖夢を迎えたのは、二機のACと、無数の高機動型や防御用がぶつかり合う戦場だった。異常なスピードで平地を駆け回りながらライフルで高機動型機を正確に撃ち抜き、高速で接近しブレードを使って防御用の装甲を切り裂くその姿は、妖夢には未だ至らない境地にある者から少しばかり力を借りた、とでも形容すべきか。

 戦場は、たった二機のUNAC機に完全に撹乱されていた。

 

 圧倒。まさにそんな言葉が似合うその戦場にあって、妖夢は身体の疼きが抑えられなかった。もはや今は剣士でこそ無いにすれ、志しこそ()剣士の妖夢は、小規模ながら濃密な戦いに胸を躍らせた。

 

『今だけ使う!』

 

 妖夢はライフルをパージした。ライフルを捨てた事で空いた手には、ハンガーに吊り下げられた二振りの()が握られる。やがてソウルストレングスの存在に気が付いた六機の防御用ACが妖夢に襲いかかる。その体格を駆使して体当たりを仕掛けるのだ。残る四機は仕留め損なった時の為に機関銃やヒートキャノン、ヒートハウザーを構えているのが見える。

 

『白楼剣、楼観剣!』

 

 今まさに攻撃を受けんとしていた妖夢は、だがニヤリと微笑み、その両手を左右に振り抜く。

 

 瞬間、目の前を埋め尽くす程の巨大な光刃が防御用AC達を覆い尽くした。それは、とても綺麗で美しく、青く光り輝く刃。それに包まれた敵機は全てが溶けたかのような傷跡を残して破壊された。

 その様子を見た四機の防御用ACはソウルストレングスに向かって多量の弾幕をばらまく。が、消えたと錯覚するほどの高速機動で弾幕を避けられ、気が付いた時には既に背後からの熱で全てを察し、死を受け入れた。

 

『なんだあのACは!?アレは人間なのか!?』

 

 敵の一人が叫ぶ。そうリアクションを取っている間にも一人二人と防御用が轟沈していく。

 

『《白楼》と《楼観》によって切り結ばれる太刀筋は、誰にも、何物にも止められない。例え鋼鉄の壁だろうと、例外なく。あなた達は、私には勝てない』

『くっ……面妖な……()()なんてものを振り回して喜ぶか!』

 

『逃げないのなら、すり潰す!』

 

 そうして突進してきたソウルストレングスに対応出来ず、重みとスピードを乗せた蹴りが炸裂して防御用が一機破壊される。その様子を見てUNAC機と戦っていたACがガトリング(AM/GGA-115)バトルライフル(ARAGANE mdl.2)を連射しながら妖夢に突撃する。

 UNACは防御用ACや高機動型ACに任せ、被害の大きいこちら側へ向かう事を優先したらしい。

 

『怪物め、やらせるか!』

 

 そして、対する妖夢はガトリングの弾を一身に受けながらも致命的な貫通力を持つバトルライフルは回避しつつ、敵の接近を待ち続ける。その両手にはしっかりと『白楼』と『楼観』が握られていた。居合切りのような構えを取り、敵ACとの間合いを測る。

 敵ACがバトルライフルをハンガーシフトし、パルスガン(Au-M-R31)の至近距離接射による即撃破を狙おうとする。

 

『死ねぇぇぇッ!』

 

 一閃。

 

 怒声を上げて交差した敵のパルスガンが、ソウルストレングスのコア表面を大きく溶かした。『やった……!』と、撃破報告を行なった。機体が止まろうとした時、そのACからの連絡は途絶した。

 

『………なっ……?』

 

 何が起こっていたかわからなかったろう。奴の腕を切り落として、勝ったのは自分。その筈だった。

 

『ば、馬鹿 な……ありえん………』

 

 機体が完全に止まってから刹那。コクピットに亀裂が入るのを見て、死を自覚する。すぐに機体からは黒煙が吹き出し、機体の反応はレーダーから消えた。パイロットの応答はないが、かろうじて生きてはいるらしかった。

 コアを焼かれながらもなお敵に向かおうとする、その鬼人の如き様相に恐れをなして、敵が逃げていく。

 

『……ひ、ひぃっ……て、撤退!逃げろぉぉッ!』

 

 その叫びを皮切りに、前線にいた兵士が次々と姿を消し、後には死屍累々の鉄だけが残った。

 

 

 

 

「妖夢、助かった。君に助けられるのは二度目かな」

『二度、ですか?』

「今日みたいに雪の降る日だったね。君に雪かきを手伝ってもらっただろう?」

 

 そう言われて、かつての光景を想起する。7年前の雪景色。人魂灯を探して香霖堂に立ち寄った時だったはずだ。それで………そう、そこの店主である霖之助から、雪かきをする事を条件に人魂灯を返してもらうと契約したのだった。

 

『………ああ、あれ。あれのせいで冷たい思いしたんですよ、まったく。風邪は引きませんけどね』

「ははは、あの時は悪かったね…………とにかく、君も見たかい?これがUNAC機。パイロットが乗っていないんだ」

 

 そう言って霖之助はコクピットを開く。そこにはパイロットが搭乗しておらず、代わりにモニターに繋げられた、いくつかのチップが挿入されたコンピュータが接続されている。恐らくそれが、『UNAC』なのだろう。

 

『………本当ですね。誰のデータを使っているんですか?』

 

「霊夢さ」

 

『……!霊夢さん、無事だったんですね』

「ああ、元気にやってるよ」

 

 そう言いながら、UNACデータを弄る霖之助。それを妖夢の乗っていたソウルストレングスのシステムにリンクする。そうすると、UNACデータがシステムデータから妖夢の戦闘経験を情報として処理し、自身のデータに結合させた。

 

「よし、これでいい。これでこのUNACは妖夢、君の代わりに守ってくれるようになるよ」

 

 そして、そのデータが挿入されたUNAC機は、ブーストを強く吹かして無縁墓地の方向へ飛び去っていく。その様子を見て、ようやく妖夢もコクピットから降りた。

 

「恩に着ます、霖之助さん。お陰で少しばかり楽になれそうです。では、約束通り無縁墓地の守りを頼みます」

「ああ。任せておいてくれ。妖夢と霊夢のタッグを突破できる敵はそう居ないだろうね」

 

 狙撃から牽制、隙があればブレード攻撃を狙うオールマイティな霊夢のUNACと、ライフルで牽制しつつ二振りのレーザーブレードで高火力な近接戦闘を務める妖夢のUNAC。

 確かに、この二人の守りを崩せる相手は居ないかもしれない。そう考えると、今回の霖之助からの依頼はあながち悪いものではなかったのだろうか。妖夢は人知れずクスッと微笑んだ。それは、きっと彼女にとって久しぶりの笑顔だった。なにせ、この4年間妖夢が笑った事はなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 そして三年が経ち、冥界へ繋がる時空の裂け目が縫われた事によって、誰も冥界へ行くことは出来なくなった。ただ一人、魂魄妖夢を除いては。

 妖夢は冥界へ帰り、しかしACに乗って時折幻想郷へ戻って来ていた。

 

 その後妖夢はパイロットとして、雇われとして傭兵稼業を始めたのだという。彼女の隣には、常に二振りのムーンライトがあったそうだ。それぞれ妖夢の愛刀『白楼剣』『楼観剣』を意識された『白楼』『楼観』の月光二刀は、立ち塞がるもの全てを切り捨てた。

 

 鬼神の如き彼女を、人は『冥界の剣士』と呼び畏れた。

 

 






 AC、ソウルストレングス
 パイロット、魂魄妖夢

 射撃戦に対応できるよう、両腕にライフル《AM/RFB-219》を装備し、ロック速度の高さと機体速度の高さを活かした撹乱戦闘を得意とする。

 CE耐性の高い軽量型コア《CC-121》を中心に、カメラ性能などを捨て装甲に特化させた低燃費の重装甲型TE頭部《Hd-H-E34》、ある程度の射撃安定性を持ちながら装甲面にも優れるTE型腕部《AGEMAKI mdl.1》をチョイス。
 脚部は旋回性能の高い中量二脚《Le2M-D-F24》を採用し、速度と旋回能力を活用した近距離での射撃戦に対応している。

 スピードを確保する為、EN回復率は低いが容量に優れるジェネレーター《MAKIBASHIRA mdl.1》と、ハイブースト時の燃費や速度性能に特化しているブースター《BA-309》を装備。威力の低い射撃兵器を弾く防御性、そして機動力によって高い生存率を実現させた。

 ハンガーユニットには同じ型のレーザーブレード《X100 MOONLIGHT》が搭載されており、右ハンガーには白楼剣を意識した白と緑のカラーリングの『白楼』、左ハンガーには『白楼』と正反対のカラーリングの『楼観』を装備している。肩部にはTE属性武器の威力を上げるエネルギーアンプリファイア《YAMASUGE mdl.2》が装備されており、威力の増大を助けている。





 AC、グライドブライヴ
 パイロット、VERTEX

 右腕部ガトリング《AM/GGA-115》、左腕部バトルライフル《ARAGANE mdl.2》を装備し、左ハンガーにパルスガン《Au-M-R31》を搭載。ショルダーユニットにサブコンピュータ《MONONOFU mdl.2》を接続する事で、射撃戦において優位を確保した、軽量二脚型AC。

 ガトリングによって敵の装甲を削りながら、バトルライフルによる中距離射撃戦でのダメージレース、パルスガンによる近距離戦闘での優位性を確保する、近、中距離射撃型。

 速度と装甲が両立している軽量二脚《L2LA-142》を中心に、装甲を極限まで削いだKEコア《CB-402》、射撃安定性が非常に高いCE腕部《AC-202L》、カメラ性能と装甲のバランスに優れるCE頭部《Hd-U-C23》によって、スピードの速さを損なうこと無く射撃戦を行えるよう、調整されている。

 しかし、KE、CE装甲は低威力のミサイルを防ぎうるレベルに達してはいるが、TE装甲は最低以下の水準であり、パルスマシンガンを装備したACの相手は非常に不利という弱点を持つ。

どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)
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