Armored Core Eastern War 作:ちょっとだけ別口
英雄は黙して語らず。
魔理沙が霊夢に敗れ、博麗神社に住み着く事になってからは、アリスがこの広大な森の主となっていた。
どうにかして 守りを固めないと。
あれこれ思案を巡らせるうちに、一人では手が足りない事に気が付いた。愛すべき上海や蓬莱たちはまだACを操縦出来る程の自律人形として完成していない。それに守るのでは受動的になってしまう。ならどうするべきなのか。
『ユーナック』。そう。確か香霖堂の店主はあの巨大な人形を『UNAC』と呼び、使役していた。ならば、霖之助からUNACの一部を貸し出してもらい、三機ほど守りに当たらせれば良いのだろうか。
「……それで行きましょう」
考えは纏まった。ならば、それを実行に移すだけだ。人形たちに家の守りを任せて家を出、空を飛んで香霖堂に向かうと。念の為にどんな取引でも構わないよう、金銭や魔導書のような類は持ち歩くことにしよう。念の為に上海人形だけは連れていく。もっとも、今幻想郷を騒がせているACに襲われてしまったら、ACどころかMTさえ持たないアリスは粉微塵になってしまうのだが、それを考えている暇はない。一刻も早く香霖堂に向かおうと外に出て、飛ぶ。
「
飛んでいる最中、アリスはその事ばかりを考えていた。
「いらっしゃ……おや、アリス。珍しいね」
香霖堂に着いたアリスは即座に扉を開ける。そこに座っていた香霖堂の店主、森近霖之助を見据える。
「早速だけどお願いがあるの」
「ふむ、訂正しよう、もっと珍しい。んんはは、揶揄うのはやめよう。て、どんな頼み事があってここに来たんだい? ふむ、まぁ。もしかしなくとも………UNACかな?」
店主にピタリと言い当てられた事に驚きを隠せなかった。どうして。そう聞く前に霖之助はアリスに人差し指を指し、そしてその指の先はまっすぐアリスの
「あれは……あれもUNACなの?」
「妖夢だ。決してUNACでは無い。UNACは向こうだ」
「妖夢が………? 妖夢もACに乗っているのね。でも妖夢が傭兵だった噂なんて一度も……」
そう考え込もうとしたアリスの思考を遮るように、霖之助が答えを教えた。
「冥界の剣士。 そんな感じの、仰々しい通り名が妖夢のものだよ。中身を知らない人は多いかもしれないけどね」
「妖夢が…?」
コクリ、と頷く霖之助の反応を見て、アリスは驚きを隠せないでいた。旧知の仲とは言え、AC乗りとしての活動を聞かなかった事から、妖夢はACに搭乗しておらず、冥界に彼女の主と共に籠り切っているのではないかとまで考えていた。実際は、無縁墓地でありとあらゆる敵を打ち砕いた、異名を持つ正体不明のAC乗りこそが妖夢だったらしい。
そんな驚くアリスを後目に霖之助はコンピュータを二機、机の上にだす。そのまま言葉を続けた。
「UNAC、特別にタダであげよう」
「......ええ、そうね。とりあえずお金や本を...........え?」
予想外の答えを受けたアリスは二度驚いた。蒐集癖を持って、商いが好きで、商品の扱いにはがめつい彼が、タダで受け渡してくれる、なんて思ってもいなかったのだから、当然の反応である。
「……なんだい、その目は。僕が無償で何かをするという事がとても珍しい、とでも言いたげだね」
「………あ、ううん。ごめんなさい、てっきり何かしらの対価を要求してくるものかと思ってしまったから」
そうアリスが答えると、霖之助は肩を竦めてため息を着く。
「まあ、今までの僕のイメージとしてはそうかもしれないね。でも僕は、ACに関するものを扱った店を畳もうかと思っているんだ」
「貴方が店を?」
「んんんまあ、僕だって死にたい訳では無いからね」
その言い方は、まるで仕方なく引き払おうとしているように聞こえる。やはりパーツなどの売買は儲かるのだろう。
しかし、霖之助の考えもわからないではない。幾ら私達が妖怪や魔女であるとはいえ、やはり生身は生身。機関砲で撃たれればミンチにもなるし、パルスガンでも受ければ黒焦げを通り越して蒸発するというものだ。
そんな世界で生きていくには、UNAC二機しか防衛戦力を持たない香霖堂は、やはりと言うべきか少し苦しすぎるのだろう。
「………なら貰って行くわね。本当にいいの?」
「何度も確認を取らないでくれ。僕はいいと言ったらいいんだ。気が変わらない内に持って行くといい」
そう言うと霖之助は店の奥に入っていく。
「ありがとう、それじゃあ元気でね」
彼にそう言い残して、アリスは店を後にする。彼女の上海人形がコクリとお辞儀をしてから店の外に出ていく。外でUNAC機が二機、飛んでいく音が聞こえた。これで中に残されたのは霖之助だけになった。そこに、緑色のACソウルストレングスに搭乗するパイロット、魂魄妖夢が店の中に入ってくる。
「霖之助さん。お店、畳むんですか?」
「まあ、そういう事だよ。これで君も、晴れて自由の身という訳だ。君のご主人の元に帰るもよし、残って傭兵に身をやつすのもまた一興。どの選択をしようと妖夢、君の自由だ」
彼が店を畳むことで、妖夢がここにいる意味は無くなった。だから、妖夢はどこに行こうと彼女自身の自由である。自由であるはずなのだが。
「では、私は帰ります。また来ます」
いつもハキハキと話す妖夢にしては珍しく歯切れの悪い物言いに、察することが出来ず霖之助は首を傾げた。
この三年間、彼女が戦士としての生活が板に付いてきていたとは夢にも思わなかったのだから、それも仕方ないと言える。細かい考え事を吐き捨てて、片付けを始めた。
妖夢もアリスも姿を消したこの香霖堂に、一人の男がやってきた。
「いらっしゃい。残念だけど、香霖堂は今日をもって店仕舞いだよ。もうここじゃあパーツは買えない」
「わかっている。だが、そのパーツはどうする?持っていても、きっとそれらを狙う者に襲われるぞ」
「ふむ、今それを考えていたところだよ」
目の前の黒い男に警戒心を向ける。彼は武器を持っているようには見えないが、警戒はする。
「良ければ、欲しいものを渡す。その代わりに余剰パーツを全ていただきたい。よろしいか?」
「................わかった。なら、君の好きな本を一冊、僕にくれないか。それで手打ちとしよう」
「フ、奇特な奴だ。分かった、私のいつも読む作品だ」
そう言って黒い男は懐から一冊の本を取り出す。『そして誰もいなくなった』と銘打たれたその本は、自分にも読めるように日本語を介していた。
「これは......珍しいものだね」
「アガサ・クリスティだよ。読んだことはあるか?ミステリアスな物語さ」
「ふうむ、面白そうだ。わかった、これでパーツは全て君のものだ。
「では、いただいていくぞ」
「ああ、そうだ」
帰ろうとする男を少しの間引き止める。
「君の名前を教えて貰ってもいいかな?」
「私は...........私を言い伝える者は私を『黒い鳥』と呼んでいた。名前は覚えていない」
「...........わかった。またいつか、縁があれば会おう」
そう言って、黒鴉は出ていった。色々(と言ってもパーツだろう)なものを積み込んでいる音がまだ聞こえていたが、やがて静かになる。トラックを走らせる音が何回も続いていたが、その内に何も聞こえなくなった。
その日、香霖堂はその看板を下ろし、新たに『新・香霖堂』と名を改め、新たに日常品の販売店を始めた。
AC、----
パイロット、----
詳細不明。
本人曰く黒い鳥と呼ばれていたらしい。
どの話を優先的に完結させるべきか?
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射命丸文編(アリーナ編)
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霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
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メインストーリー(オムニバス)