Armored Core Eastern War   作:ちょっとだけ別口

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 時間的には魔理沙が太陽の畑にサルベージしに行って、無事新たなACを組み立てられた後のお話です。
 主人公はACVシリーズのプレイヤーです。


古い鴉

 

 強い風が吹き、砂塵の舞う荒野に2機のACが鎮座していた。一人は歴戦の傭兵、もう一人はそれに匹敵する実力を持つ傭兵。霊夢、そして魔理沙の二人だった。

 

「ようやく戻ってこれたか…。 この戦場に」

「随分と遅かったじゃないの」

「悪い悪い。幽香との約束が思ったよりも長引いてな」

「あら、そう」

 

 魔理沙の話を適当にあしらう霊夢。よりにもよってここは戦場だ。一瞬の油断が命取りになりかねないこの場所で言い訳をする器量のある魔理沙に、霊夢は呆れていた。

 

「ほら、3時方向から敵よ」

 

 霊夢が魔理沙に敵の存在を教えるが、そんな事はとっくのとうに知っていると言わんばかりにガトリングを向け、一斉射する。

 

「わかってるって、ほらな?」

 

 適当な話を続けながらも敵を認識し撃破する魔理沙。戦車の燃料タンクに弾丸が食い込みでもしたか、大きな爆煙を上げて戦車が二両、火炎に包まれる。その方向を見ながらゆっくりと銃を構える霊夢のACには、銃弾や小型ミサイルによっていくらかの損傷は見られる。

 だが、そのどれも致命的な一撃には至っていない。並み居るACや機動兵器部隊も、彼女達のタッグのどちらか一方にも致命傷を与える事が出来ずにいた。

 

「ほい、一丁上がりだぜ。これで二部隊落とした」

 

 振り向きざまの射撃で、遮蔽物から身を出した戦車に弾丸が直撃する。魔理沙の放ったガトリングの弾丸によって戦車が三両、一瞬で破壊され、続けて接近してきていた防御用ACに対して、ブーストチャージによって突撃隊する。

 重量のあるブーストチャージは、とてつもないパワーを持って防御用を破壊する。また一つ、墓標が出来上がった。

 

「霊夢、後ろ」

「言われなくとも」

 

 後ろから砲を撃ち込もうとした高機動型の視界から、霊夢の『ハーモナイザー』が姿を消す。それは逆関節機体である特性を活かして高く跳躍し、瞬時に背後に回るというものだった。それに高機動型が気付く事はなく、ハンガーユニットに搭載されていたショットガンによって、機体中に穴を開けられて墜落した。

 

「ね、言ったでしょ?」

「相変わらず頭のおかしい戦法だぜ」

「そう?魔理沙も大概よ」

 

 霊夢を頭のおかしいと形容した魔理沙の付近にもまた、幾つかの機動兵器を破壊した残骸が転がっている。霊夢と魔理沙は、互いに拮抗した戦闘能力を持っている、敵である所属不明部隊の隊員が見ても、それは明らかだった。

 

『くそっ、敵は強すぎる!』

『撤退しましょう!これ以上の損害を認める訳には!』

 

 ACのうち一機が後方を飛ぶ重装甲ヘリに向き直り、撤退を求める。しばらく応答がなかったが、苦渋の決断の末、指揮官だろう男が部下や他の部隊へ通達する。

 

『…………わかった、撤退だ!だが、これで勝った気でいるなよ、博麗霊夢、霧雨魔理沙!必ずお前達を打ち倒し、我らの名を轟かせてやる!』

 

 そう吐き捨てると射程圏外にいたMTやACは全員が退却していく。砂埃の先に皆消えていき、広大な戦場に残されたのは数多の屍と、それを築きあげた二人の傭兵、そして二機のACだけとなった。白黒の機体と紅白の機体のコンビは今のところ、幻想郷最強のタッグとまことしやかに囁かれていた。

 

「フン、あれじゃあ私達を倒せないな」

「……まあ、そうね。私達を下したいならそれこそ文字通り要塞一個丸でも々ぶつけなきゃ、お話にもならないわね」

 

 そう言って霊夢が戦場に踵を返して去っていく。魔理沙もその先を歩いて去っていった。荒野ばかりが広がる戦場にACの駆動音が響いていたが、やがて何も聞こえなくなり、そして誰もいなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『クソ、あれ程の戦力をぶつけても博麗と霧雨の二人組には勝てんか!せめて腕の一本でも持って行ければ良かったのだが、バケモノめ…』

『隊長、前方にACの反応が。一機だけのようですが』

『構わん、進め。邪魔をするようなら踏み潰せ』

『はっ!』

 

 レーダーによる所だと、もうそろそろ斥候部隊が例の反応に接触する頃だ。生きている者でなおかつ敵対心を持つものなら、大軍を持って潰す。協力心があるのなら引き入れる。死んでいて、機体だけが生きているのなら回収し再利用。こうして彼らの傭兵組織『バロン』は数多の傭兵を潰し、戦力を拡大してきたのだ。

 

 だが。

 

『……?な、なんだ………?』

 

 不意に嫌な予感がして、総指揮官は身を震わせる。

 

『報告!斥候部隊から救援要請! ……黒い鳥? 1番機、何のことだ? ………おい、どうした!?……馬鹿な…………救援要請からたった10分しか経ってないんだぞ!? ………た、隊長!斥候部隊が殲滅させられました!敵勢力は………恐らくA()C()()()です!!』

『なんだと!?』

 

 突如上がった斥候兵全滅の報せに、中央の部隊を率いるパイロット達は困惑せざるを得なかった─────

 

 

 

 

 

「これも、違うな……腕、左腕を………」

 

 その黒いACは、しきりに何かを探している。呟いている言葉の通りならば左腕を探しているようで、ACの左腕を見てみると確かに肩部から先が無くなっている。

 

 しかし、それ以上に異常な物が背中に背負われている。数多のパーツが幾らも組み込まれ、その様相はあまりにも凄まじい。刃のような物が見えるが、それは3×2の、合計六本搭載されており、二列に畳まれている。

 

『発見した。レーダーに映ったACだと思われる』

『ありゃ、もうゴミだな。潰しちまうか』

 

 突如として声が響き、濃い砂塵の中に影が見える。この砂塵のせいでレーダーは上手く機能しないが、この反応を信じるならば、数は17機。その全てがACだった。

 

「……また雑兵か。数は8」

 

『ふん、この数を相手に何分持つかな!?』

 

 そう目の前のACが嘯くと、その黒いACに襲いかかる。それはまだ一機だけだが、周囲には数機のACが様子を伺っており、更に遠方から何機もの反応が迫ってきている。その数、ACが合計11機。勝ち目などない、その筈なのに。

 

「その言葉、返そう...........何()持つか、見物だな」

『ッ!?......ほざけッ!』

 

 挑発が効いたのか、目の前のACがガトリングとバトルライフルを乱射しながら近付いてくる。ロックオンされ、移動先に的確に打ち込んでくるが、遅い弾速という事もあってかそれを全て予測するかのように細かく左右移動を繰り返し、弾丸を避ける。さすがにガトリングは避けられずに何発か掠めるが、全て跳弾しており、今ひとつ決定打に欠けるようだった。

 

『くそ、ちょこまかと!』

 

 焦って接近した所に、味方機が叫んだ。

 

『バカ、罠だ!深追いするな!』

『────な』

 

 そのACが最後に見た光景は右手をこちらに突き出す、黒いAC。そして、その手に握られたヒートパイルだった。

 

『くそっ、2番機撃沈!』

『こちらB分隊、到着した!』

『3、4、6、番機!敵を沈黙させろ!』

『了解!』

 

 四機のACが砂煙の中から各々の得物を黒いACに向ける。四方から発砲されては、如何に強敵とて無傷ではいられない。そう思っての挟撃だった。だが、その数的優位を一瞬で覆される出来事が起きた。

 

『なにっ!? ……ぐあああああッ!!!』

 

 残された最後の一発をより有効にぶつけるべく、CE耐性に優れないだろう機体を一瞬で見分け、それに突撃。パイルを直撃させたのだ。右腕を敵ACのコアから引き抜くと、パイルバンカーに装填されていたCE弾の薬莢が排出され、銃身が煙を吹き始めた。

 

『《パージします》』

 

 右腕のパイルを捨てると、目をつけていた敵ACの武器を手に取る。奪ったのである。

 

『4番機沈黙!』

「そうだ、もっと来い」

『っ、くっ……!舐めやがってぇぇぇ!!!』

 

 4機目沈黙の報告と共に黒いACが発した挑発に乗って、3番機が突撃する。だが、それすらも彼は手札のひとつに変えていた。武器を奪った4番機をそのまま盾にして突進する。味方を撃つことも厭わない3番機の銃弾は尽く4番機に命中し、全くもって黒いACには損害を与えられなかった。それどころか、4番機を使った物理的な攻撃によって、3番機は衝撃を受けて吹き飛ばされる。直ぐに起き上がって体勢を立て直そうと、ブースターを吹かして上体を起こした───

 

───ところに黒いACの足が激突する。コクピットを直接潰された事で、3番機も起き上がる事はなかった。

 

『そ、そんな......たった20秒で3機を……化け物だ………』

『……〜〜〜ッ!怯むな!数で押し潰せェッ!!』

 

 1番機。つまり、この隊の指揮官が突撃命令を降す。それによって現地にいる4機が彼に襲いかかった。ブレードを持つ者が斬りかかり、それを避けた所をスナイパーキャノンが撃ち抜こうとする。それを避けた黒いACを蜂の巣にすべく、2機が追撃とばかりにパルスマシンガンやライフルを撃ち続ける。砂塵に姿を眩ませることで被弾を5、6発程度に抑えたその黒いACは、その背中に無理矢理取り付けられた武器を右手に取る。

 コクピットの映像は大きく乱れ、しきりに警告が耳を劈くようなノイズと共に発せられている。

 

『警告。不明なユニットが接続されました。システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を停止してください。警告。不明なユニットが───』

 

「さて………これで終わらせよう」

 

 砂塵の中で、赤い光が一際大きく煌めいた。

 

 

 

 瞬間、何かが目の前を素通りする。散開する間もなく、何かの爆発音、そして一瞬遅れて甲高くおぞましい音が辺り一体を支配する。その後、静寂が辺りを包んだが、()()()()()11番機が辺りを見渡すと、直線上に並ぶように4機が破壊されている。それは、左に逸れている者は右半分がごっそり消え去っており、右に逸れている者は左半分がごっそり消滅し、その中央にいた者達は、上半身が全くそのまま消えている。

 

 隊列から偶然逸れていた11番機だけは、どうにか無事で済んだようだった。だが、一瞬で斥候部隊主力が全滅したその状況を見て、何も行動できなかった。恐怖で動けなかったのだ。周囲の呼び掛けも聞こえないほどに。

 

『おい、イレブン!レーダーを見ろ!また来るぞ!』

『……駄目だ………みんなやられる……死ぬんだぁ……』

『応答しろ11番機!しっかりしろ死ぬぞ!』

 

 周辺から続々と到着した最後のAC部隊が到着し、11番機を援護する為に残り3機のACが合流する。

 

『13、無事か!?』

『来るぞ、回避行動を取れ!』

『なんだと!?早……!!』

 

 3機のうち2機が回避するが、11番機を助け起こそうとしていた9番機と11番機はその恐ろしい程の力を持った6本のチェーンソーを携えた『オーバードウェポン(グラインドブレード)』によって粉々に砕かれる。

 

『ジェフ!アロー!!………くそっ!仇を取れ!殺すんだ!』

 

 残る1番機が5、8、10、11番機に命令を出し、徹底抗戦を続ける。残った5機の連携は密に取り合っているようで、さしもの黒いACも中々に近付けなかった。だが、先程奪われたライフルによる射撃で少しずつ装甲を削られていっていた。

 

『くそっ、駄目だ!ジリ貧だぞ!』

『応援は呼んである!耐えろ!』

『…っ!?隊長危な───』

 

『──────え?』

 

 その一瞬で、まるで時が止まったかのように錯覚する程の時間が経過したように思えた。一瞬の隙を突いて、残骸からレーザーブレードを抜き取り、持ち替えたそのACが、レーザーブレードをまるでギロチンの様に振るい、隊長である1番機を庇った2機が一瞬にして破壊された。1番機もコア後部のジェネレータが破壊され、機体が思うように動かせなくなっていた。

 

『……馬鹿な!馬鹿な、馬鹿な!馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!! 有り得ん!たった1機のACが、戦況を覆すなんて!!!そんな事、あって良い訳がない!有り得ない!………ひっ!』

 

「…………」

 

 銃を向けて抵抗しようとするその姿はまるで来るなと言っているようで、しかし拒否するとばかりに近付き、殺意の強さをその行動で示す。

 

『来るな!来るな!来るんじゃない!下がれ!』

 

「………」

 

 聞く耳を持たない。

 

『来るな…………貴様は……! っ…そうか、お前がっ……黒い鳥……!!』

 

 黒いACをレイヴンと呼ぶ男が乗る一番機の、その右手に着目する。それはコストパフォーマンスが著しく低いが、絶大な威力を誇るレーザーライフルだ。

 

「………X000 KARASAWAか。弾切れしているようだが、まだ使える。...........貰うぞ」

 

 レーザーブレードをコクピットのある位置に突き立て、刺し、引き抜く。躊躇いの無い一撃で、1番機は完全に沈黙した。レーザーブレードを捨てKARASAWAを手に取る。

 

「......良い、頂いていこう」

 

 そう言い残して、レイヴンは砂塵の中に消えた。

 

 

 

 

 

 彼らはすっかり失念していたのだ。いや、信じてなかったと言ってもいい。一軍団を壊滅させる程の力を持ったACの存在を。いるわけが無い。いたとして、この大軍に勝てるものかと。

 しかし、実情は残酷である。11機、すなわち三個小隊ものAC部隊が10分も持たずに灰と化した事は事実。彼らはそのACの存在、黒い鳥を信じざるを得なかった。そして、噂は瞬く間に広がる事になる。スカヴェンジャー(墓荒らし)の存在を。黒い鳥と呼ばれる、人々の意識の根底に恐怖という傷を付ける程の恐ろしき存在を。

 

『全てを焼き尽くす、死を告げる黒い鳥』と謳われた存在を。

 

 

 

 





どの話を優先的に完結させるべきか?

  • 射命丸文編(アリーナ編)
  • 霊夢・魔理沙編(機械化八人衆編)
  • メインストーリー(オムニバス)
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