Armored Core Eastern War 作:ちょっとだけ別口
天才と呼ばれた男は、例外に敗れ、そして死ぬ。
そのはずだった。
今も感じる。
いつからだろうか、オレは恐れを
でも、あの人だけは違った。
オレが幾度となく警告しても、あの人は全てを跳ね返していく。自分には関係ないんだとばかりに、道を阻む者は全て斬り、突き、撃ち、殺していった。だからこそ、オレはあの人に恐怖した。今までに感じたどんな恐怖よりも、強い恐怖を。同郷の人間には何度も『臆病者』と罵られてきたし、姐さんに意気地無しとも言われてきた。それでも生き残ってきたのは、オレが臆病で、でも誰よりも生に貪欲だったから。
でも、オレがACで戦える事を知るなんて。それはいつだったか『恐れを見る
《主任》に唆されたオレは、気が強くなって、レジスタンスから逃げた先に1機のACを譲り受けた。赤い鴉のエンブレムが塗装されたその焦げ茶色のACは、名前をヴェンジェンスと言い、主任曰く「君に似合うと思うよ!」とオレに送ってきたものだった。
オレがぶつけた、あまりにも強い殺意をものともせず、あの傭兵は幾度もオレを退け、何度も立ちはだかったのにその都度ピンピンしていた。
レジスタンスが撤退するという時になって、オレは姐さんのヘリを落とせという指示を、主任が擁するキャロルだとかって名前の女オペレーターから受け取った。
そこがターニングポイントだったのかもしれない。
主任の奴が、オレを特別だなんて呼ばなきゃ。
『何故、外したのです ACを狙えと指示したはず』
「向こうが避けたんだ。 さすが、姐さんだよ。 ………まぁ、自分が死んだら意味無いけど! ハハハッ!」
スナイパーキャノンをパージする。キャノンはすぐに自重で落下していき、廃ビル群に隠れて見えなくなるが、がちゃんと激しく地面に叩きつけられる音がする。
『いいでしょう 結果が同じなら、問題はありません』
ACを跳躍させ、ブースターを点火して前進する。
『ACを排除しなさい』
ブースターの燃焼効率が最大になり、速度がどんどん加速していく。廃ビルから飛び降りて向かう先はただ一点だった。 ACを排除する。あの傭兵が搭乗している、姐さんの運んでいた、ただひたすら勝ち続けたあの傭兵を。
どすんと線路の上に着地し、持て余した右手にグラインドブレードを装着する。その時に左の
「オレからは逃げられないって、知ってるはずでしょ?」
グラインドブレードのチャージを開始する。右腕部を後ろ手に回し、ブレード回転部がエネルギーを充填し、ブレードの破壊力を高める為に回転を行っている。
「……死んでもらう。今度こそ」
「無理よ」
お前には出来ない。そう断定するような強い口振りの、女の声だった。キャロルとは違うが、この声は何度も聞いていた。レジスタンスのリーダーを継いだ女、フランのものだ。
「………あ?」
「あなたなんかには、そのACを倒すことはできない」
「私にはわかる」
何を知ったような口を。何を決めつけたような事を。怒りで目の前が歪む。本当にそれが怒りだけで出来ていたかはもう覚えてないが、とにかく怒りで我を失っていた。
「……ふざけんな」
ふざけるなふざけるな、ふざけるな! 倒せない? 勝てない? そんな事あるはずがないんだ。 だってオレは何度もあいつと戦って生き残った。 あいつと戦ったやつはみんなやられた。 だけどオレは!オレだけは生きてる! あの主任だって、一度あいつと対峙していた時は正面から蹴り飛ばされていたんだ!
「オレが負けるはずないんだ! アンタにはわからない! オレは生きてる!戦って生きてる!」
「死ぬのは、あなたよ」
「あぁ!? やってみろよ!!」
ACが目の前に現れる。あの傭兵だ。すぐにオレはチャージしていたグラインドブレードの出力を最大化し、そのまま目の前のあいつにぶつけようとする。それを間一髪で回避し、あいつはライフルとバトルライフルを撃ち込んでくる。
それらをハイブーストやジャンプ、ビルを駆使したブーストドライブでどうにか回避するが、しかし着実に当ててくる。ハイブーストとハイブーストの合間に生まれる僅かな隙を、こいつは確実に射抜いてくるんだ。
「なんで……」
墜落したヘリの隣に、重々しいヘルメットを被った女が立っていることに気付いた。ヘルメットを外したその人は、やはりオレが姐さんと呼んだロザリィその人だと気付いてしまった。
「なんで生きて……」
「よそ見をするんですか?」
フランのセリフでオレは我に返る。既にチャージは完了しているが、グラインドブレードから伝わる膨大な熱が、コアを蝕んでいる。左腕が破損した際の爆発や、バトルライフルによるダメージが確実に蓄積していた。
《機体ダメージが増大しています。回避してください》
「そんな事はわかってる!」
避けられないんだ。その言葉が喉から出る前に、機体が徐々に言う事を聞かなくなってきている事に気付いてしまった。
「なんでなんだよ!」
「ロザリィさん、彼は…」
オレの叫びに被さるように、フランは姐さんに聞いた。奴の言う彼とは、間違いなくオレの事なんだろう。姐さんが何を言うかは知らないが、目の前のこいつを殺さない限りオレは死から逃げられない。
……なのに、反則じゃ
「いい? 帰ったら説教だかんね! できるだけ殺さないで連れ帰って!いいわね!?」
「姐さん………」
反則はダメっすよね。
オレはアンタが好きだった。嫌な奴だって、初めて会った時は思ったよ。だけど、なんだかんだ傍で相方として置いてくれた。使い方は荒かったっすけど。
だから未練が生まれるんすよ。
「アンタを殺さないと、オレは生き残れないんす。姐さん」
「RD……!」
「アンタもミグラントなんだから、わかってるはずでしょ。ソイツはいつ裏切るかわからない。 オレはこいつに殺されかけてる。すげぇ怖いんすよ」
独白のようにロザリィに語りかける。
「だから殺す! じゃないと、怖くてたまらなくなるから!」
2発目のチャージを終え、すぐにハイブーストで近くに接近して、グラインドブレードをあいつにぶつける。熱気で隠れて見えなかったから当たったと思ってたのに、あいつは既のところでハイブーストを後ろ側に出力して、ギリギリで回避していたらしい。
そのまま隙だらけの俺を蹴り飛ばした。 オレは滅茶苦茶にデカい衝撃を受けて、機体ごと後ろにのけぞったような嫌な感触を覚えた。
コクピットに表示されているメインカメラの映像は、もはや赤く明滅している警報のせいで何も見えない。 問題は、視界が不明瞭だという所ではなく、赤い警報が明滅しているという事。
それはつまり、機体耐久力、APの完全消滅。もうすぐ自壊することを表していた。
「なんでなんすか………」
オレを見るあいつの視線は冷たく刺さった。
「話が………話が、違うっすよ………」
フランは何も答えない。
「オレは………特別だって…………」
姐さんの荒い息が聞こえた気がした。
「死にたくない………」
機体のカメラにノイズが走り、ACの爆発がコクピットの中のオレを揺さぶり、頭を強打して意識が薄くなっていく。
なにも意識出来なくなっていく最中、オレはフランの言葉が唯一生きていた広域無線通信機から聞こえてきていた。
『あなたは、恐ろしい人ね。何もかもを黒く焼き尽くす、黒い鳥。でも、着いてきてもらうわ。私たちがあなたを雇い続ける限り』
その言葉を聞いた途端、今までの恐怖の理由に納得した。ああ、オレは、ずっと勝てない勝負をしていたのか、と。そして、そのすぐ後に身体が冷えていくのを感じた。
これが死なんすね? 今まで無謀な戦いを続けたオレの。
やがて眠たくなって、オレは瞼を閉じた。
すみません、姐さん。
混濁としていた意識が明確に覚めていくのを感じる。まるで何者かがオレに「起きろ」と言っているような感覚だ。肉体に、徐々に温もりが戻っていくのを実感する。
しかし、自分は既に死んでいる。どうして起き上がれる道理があろうか。だが同時に、今なら起きられるのではないか、とも思える。目を開く前に、良く考える。本当に今起きていいのか。起きてしまえば、そこは悪夢の国なのでは無いのか?
しかし、そういったモノへの恐怖は感じない。
大丈夫だろう、と目を開けた。
『深刻なダメージを受けています』
短い間だが聞き慣れた声色の声が聞こえる。それはAC『ヴェンジェンス』のCOMボイスだった。
身体の無事を確かめる。怪我はない、と安堵する。
そして機体の...押すことは無いと思っていた緊急離脱装置の起動ボタンを押す。コクピット部が重々しい音を立てて開き、外の風景を肉眼で見ることが出来た。
「この荒廃ぶりは………どう見ても天国じゃなさそうっすね」
そこは最後にRDが居た場所とは違うベクトルで荒れすさんでいた。向こうは汚染だとか、そういったもので荒れているような具合だったが、ここではAC同士、兵器同士の争いによって荒廃したように見受けられ、その証拠に無数の機械の残骸が転がっていた。その残骸からは煙が吹き荒れ、埃のような風を感じさせた。脳裏にあの
「………っ! ヤバい…!?」
突如として悪寒が走った。恐らく何者かに狙われているのだろうか。こんな争いがあった場所に、まだ敵がいると想定しているのか。敵の残党でも処理する目的だったのだろうか。
RDはACのコクピットに逃げ込む。しかし、肝心のヴェンジェンスはボロボロ、左腕もグラインドのせいで吹き飛んでおり、右腕部の装備はそもそも使い捨てのスナイパーキャノンだったため、攻撃手段はもはや無い。RDは逃げ込んだことを後悔した。どうしたらいいのか必死に頭を捻っていると、突然に無線通信から声が聞こえてきた。
『────聞こえる?』
RDに語り掛けた声は、優しく若い女性の声だった。
「……誰っすか? なんでオレを狙うんすか」
『狙ってなんて……まさか、そこに誰かいるの?』
「知らないっすよ。 ………アンタじゃないんすか?」
彼は焦りを隠さず話す。未だに脳の危険信号はこの場に留まるべきではないと告げている。
「とにかく、助けが要るんす。 ……オレ、なんでか知らないっすけど、今狙われてるんす」
『そこから動かないで。今行くわ』
「急いでくださいよ………オレの方でも何かやってみるっすけど……」
無線は切れ、通信も途絶する。脳内の危険信号は未だ止まらず第六感が警鐘を鳴らし続けている。狙われている。COMもずっと警告を発し続けている。RDとそう変わらない。
そして砂塵の中から三機の防御用ACが姿を見せた。
『おい、ありゃまだ無事だぞ』
『へへっ、良いねぇ。俺らで奪っちまうか!』
『よし、誰もいねぇし、行くぞ!』
3人分の防御用がヴェンジェンスへと近付いてくる。それを肌で感じ取った彼は、いよいよもって顕になった恐怖に立ち向かおうと立ち上がる。
「やれる、いや、やるしかないんだ、生きるには」
ACの操縦桿を握る。まだ動いてくれるらしい。
『くそ、動いたぞ!』
ACがまだ動くとわかって防御用たちは接近を止める。機銃を構え、じっと待つ。
「オレはやる......生き抜いてやる!」
敵に向かって歩き出し、ブースターに点火する。幸いジェネレータもブースターもまだ無事だった。
相手の攻撃を避ける様にジャンプする。スキャンモードはしっかりと働いてくれており、防御用AC達の武装もはっきりと分かる。ガトリングが二門に、ヒートキャノンが一門。ヒートキャノンタイプは盾を構えていない。
『こいつ、まだ動きやがるのか!?』
『落ち着け!相手はおんぼろだ、撃ちまくれ!』
ガトリングが何十発とヴェンジェンスに撃ち込まれるが、全て跳弾し、決定的なダメージには至らない。とはいえ既に致命的な損傷を受けているACに対してのそれだ。あまり悠長にしていられなかった。
「教えてやる、アンタらじゃ俺には勝てないって!」
左へ、撃たれると直感したら右へ飛び、弾丸を躱しながらヴェンジェンスは敵機のコクピットへと確実に近付いていく。前線に立っていた防御用ACはヴェンジェンスの強力なブーストチャージを受けて、煙を吹き爆煙に包まる。通信機越しに絶叫が聞こえてきた。
『う、うわっ、わああああ!!!』
『クソッ!』
防御用ACが爆発し、それを見た残りの二機が叫ぶ。
『撃ちまくれ!近付けるな!』
そう言いながらこちらに向けて乱射してくるガトリングガンも当たらず、当たっても跳弾してほぼ無傷。蹴りを繰り出せばどうにかして避けようとするが、機動力が足りずに直撃。盾は割れ、酷い損傷の機体が顕になる。
その姿が酷く滑稽で、しかしそれはかつて死んだ彼自身にそっくりだった。その様子を見て、RDは悟った。
「ああ、俺もこうだったんすね、姐さん」
RDが、もはや遠い存在に思いを馳せつつも、残った防御用ACを処理する為に前進する。ボロボロでも尚突撃してくるそのACに恐怖したのか、一機は必死になって応戦し、もう一機はキャタピラーを動かして緩慢とした動きで逃げようとしていた。
変わらず跳弾するガトリングガンをものともせずブーストを吹かして急速接近し、浮上してコクピットに勢いよく蹴りを入れた。中身は見ずとも即死だとわかる程に装甲が凹み、そして爆発した。逃げようとするもう一機も素早く近付いて後ろから蹴飛ばしてやり、ジェネレータにでも着火したかは知らないが、大きく爆発し、部品が四散する。
強者に対して果敢にも戦いを挑むその姿、怖いものから逃げてしまうその感情。それらはRDの脳裏に刻みつけられる。そしてより鮮明に、先程までの自分の愚かさを思い起こさせた。
「姐さん……オレ、今になってやっと気付きました。俺、死ぬのが怖いんじゃなかった。得体の知れないモノが……
そう言ってRDはコクピットの中で両拳を握りしめ、唇を噛む。それは自責の念から来るものだっただろうか。
「でも、それでもアンタはオレが裏切るまで仲間で居てくれた。傭兵だったアンタが、それでも姐さんとかフランのの仲間として居てくれた。ソレって、アンタが雇い主を変える事はないって意思の表明だったんすよね」
後悔しても、もう遅い。
慕う者はもはやおらず、見知らぬ果て地にただ一人。それでも彼が心折れずにいられたのは、彼自身が恐れを
突然に無線機が沈黙を破り、彼に通信が入る。
『こちらハーモナイザー、もう間も無く到着する。無事?』
「オレは大丈夫すよ」
ふぅ、よかった。と、無線越しに安堵する声が聞こえた。それと共に、ヘリが降下してくる。黒色で塗装されたそのヘリは、間違いなくハーモナイザーと名乗る彼女の乗るヘリだろう。特徴的なのはそのメインローターの多さ。ヘリは通常規格のものよりも更に大きく、追加でAC運搬用のハンガーレールが二つ、内一つには紅白の重量逆関節機体がぶら下がっていた。
『今降りるわね。にとり!』
『はいよー。そこハンガーに引っ掛けるから衝撃に備えてねー』
「わかったっす……おっ、うわっ!」
ACに乗って久しい衝撃に、思わず驚きの声をあげてしまう。
『ははははっ!悪いねー、手荒な操縦しか出来なくてさ』
「いや、大丈夫す。驚いただけっすよ」
にとりと呼ばれた女性の声に、どことなく安心感を覚える。声の質や声色が似ている訳では無いが、なんとなくだが姐さんと呼ぶあの人にそっくりだった。
「……そうっすね。生きていて、ホッとしてるすよ」
『それは良かった。じゃ、行こうか?』
『とっとと帰るわよ。こんな場所に長居していたら肺が腐っちゃうわ』
「肺が腐る、すか?それはなかなか嫌っすね」
『でしょう?……聞いてなかったわね。貴方名前は?』
名前を訊ねられたRDは答えた。
「皆からはRDって呼ばれてたっす」
『RDね…………。 わかった。私は霊夢よ、よろしく』
『私はにとり。じゃ、飛ばすよ!』
ヘリのローターが更に速く回る。出力を上げたのだろう。スピードが上がり、目的地へ向かうそのヘリは、他の勢力にとって格好の的であった。しかし狙わなかったのは、ひとえに博麗の巫女と、それに並び名の知れた『ハーモナイザー』が乗っていたからに他ならない。
AC、ヴェンジェンス
パイロット、RD
アーマードコアVに登場する気弱な青年。
パルスマシンガン《UEM-34 MODESTO》及び左腕部にバトルライフル《KO-2H4 PODENKA》を装備し、ショルダーユニットにCEミサイル《USM-13 GULBARGA》によって低CE装甲の相手に対し優位に立ち回れる他、パルスマシンガンによる軽装甲の相手もこなせる、万能型。
標準型と比べ相応に高いAPとKE防御力、最低限のTE装甲を持つKEコア《UCR-10/A》、積載量や装甲、機動力など全てが平均的に纏まっている中量二脚《ULG-10/A DENALI》をベースに、性能は平均的ながらスキャン能力の高いKE頭部《UHD-10 TRISTAN》と、同じくAPは高めながら平均的な性能KE腕部《UAM-10/A》を装備した、所謂フルKEと呼ばれる特異な機体。
無論装甲はKEに特化しており、その防御力は生半可なスナイパーライフル程度なら簡単に弾いてしまうほど。
ヴェンジェンス独自のカスタムが装甲に加えられており、軽量のCEミサイルや、高威力のパルスマシンガン程度なら難なく弾ける。標準パーツで機体を組むと、どうしても装甲面に不備が生じるが、ヴェンジェンスの装甲パーツによって弱点を埋めている。
特に、ハンガーユニットを排して搭載されたオーバードウェポン《GRIND BLADE》は、起動してから攻撃まで相応の準備時間が必要、非常に高い熱量からコアに継続的なダメージを受ける、強制的に左腕部がパージされる、一定時間しか使用できず、また左腕部は戻らないためその後の戦闘に高い支障を来すなど、非常に大きなデメリットの数々を背負うが、その威力は莫大の一言に尽き、当たりさえすればどんなものもほぼ一撃で灰燼に帰す、血戦の兵器である。
どの話を優先的に完結させるべきか?
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