チート転生者の異世界戦線   作:サンダーボルト

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転生したら世界が滅びかけた件

 異世界転生したらチートで好き放題したい。

 

 クソのような現実から解放され、2度目の人生を歩むチャンスが訪れたなら、こう考えてしまっても無理は無いのではなかろうか。

 

 しがないオタクのサラリーマン。金も才能も彼女も無い。

 ナイナイ尽くしの俺は転生特典を選べるだけ選んで転生した。担当の天使っぽい人の顔が引きつっていたが、かまうものか。

 

 誰もが羨むスーパーイケメンとなり美人の母と妹と豪邸で3人暮らし。

 学校一の金持ちで文武両道の天才。取り巻きの女の子にはキャーキャー言われチヤホヤされる毎日を過ごしていた。

 

 

 そんな桃源郷のような人生の高校受験の日。

 

 突如宇宙から巨大な飛行物体が飛来し、巨大なアリを投下して街を蹂躙した。

 混乱の最中、何者かに突き飛ばされた俺は横転したトラックの中のパワードスーツ的な何かに触れた。

 後にインフィニット・ストラトスと呼ばれるコイツを起動してしまった事が、俺の平和な人生の終了を意味していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官、巨大生物の巣の破壊作戦、成功しました!こちらの損害は軽微。文句なしの勝利です!」

「おーし良くやった。補給を済ませたら別の任務があるからヘリを向かわせておいてくれな」

「司令、市街地に大型のテレポーションシップが出現しました!」

「近場の歩兵隊とメーサー部隊で対処。念のためにウイングダイバーを2部隊送って、A級以上のヒーローにも援護要請しておいて」

「司令官!太平洋上で中規模のギャオスの群れが確認されたとの報告が!」

「予測される進路は?………そう。なら轟天号を主力にした量産型スーパーXの部隊を出撃させるか。奴等を町まで通したらそれで終わりだと思えよ?」

「ハッ!!」

 

 

 矢継ぎ早に報告される敵襲と戦果報告に内心ゲンナリしながら指示を飛ばし続ける。あの頃学生だった俺は今、『Earth Defence Force』通称『EDF』…地球防衛軍の司令官となっていた。

 この階級は一番上の役職である総司令官の一個下、他にも司令官クラスはいるが実質のナンバー2の位置づけだ。

 

あの日、街を襲ったアリ共をISで蹴散らした俺は駆け付けたEDFに事情聴取の為に連行され、当時は謎のパワードスーツ扱いだったISを持つ俺は危険視されていた。

 母と妹が来て必死に俺を解放してもらうようEDFに訴えている最中、今度は飛行ドローンと輸送船が巨大アリを投下して基地を襲撃してきた。家族を守るため、母の制止を振り切ってISを装着しEDFの武器を担いで出撃した俺はチート持ちなのが幸いして侵略者を退ける事が出来た。

 居合わせたEDF隊員の証言もあって一応の信頼をもぎ取る事が出来た俺は、EDFに入隊する事で自分と家族の立場を確立させることに成功した。母と妹は行かないでと泣いていたが、このままだと危険人物として全員拘束されるかもしれない。心苦しいがどうにか受け入れてもらった。

 

 あの巨大アリや飛行ドローンを投下した異星からの侵略者はフォーリナーと呼称された。そいつら相手に戦場でもチート全開で暴れまくった結果、異例の早さで出世しまくっていた俺の元にある人物から連絡が入る。

 その名は篠ノ之束博士といい、なんとISの開発者だというではないか。あの日に俺を突き飛ばしたのも篠ノ之博士で、その目的はISの有用さを世界に示すためだったという。

 礼を言おうとしたら遮られ、いいからお前はISを世界に広めろという要求をしてきた篠ノ之博士。その時すでにEDFで高い地位に就いていたのを見越して連絡してきたのだろう。事実、俺の活躍はISによるところも大きい。俺は篠ノ之博士に多大な借りがあると言ってもいいだろう。

 

 

 とはいえ、看過できないものだってある。地位にはそれ相応の責任というものが付いて回るものなのだ。

 

 

「ISを世界に広めたいなら、女しか使えないなんて欠点を直してからにしてください」

 

 

 使われている技術は舌を巻く程であったのだが、兵器としては問題があった。適性云々の話の前に、まず女しか使えない。俺が問題なく使えているのだから、扱えるのが女だけというのは篠ノ之博士が意図的に組み込んだものとしか思えないのだ。もしかしたら俺のチートが関係してるのかもしれないが…。

 それにISの中核であるコアがブラックボックス扱いなのも怪しすぎる。これでは破損した時に現場で修理する事もできやしない。俺一人が使うならまだしも、現場の兵士達に配るのは無理だ。

 

 という理由でお断りすると伝えると、篠ノ之博士は罵詈雑言を吐いて通信を切ってしまった。うんまあ、ISのおかげで成り上がったくせにと言われれば返す言葉も無いが、無理なもんは無理なのだ。

 

 その後しばらく篠ノ之博士には悪いことをしてしまったという罪悪感に蝕まれたが、そんなもの吹っ飛んでしまう程の大事件をアイツは引き起こしやがった。

 

 EDF本部に響くエマージェンシーコール。その内容は2341発のミサイルが何者かにハッキングされ、その全てが日本に飛んでくるという衝撃的なものだった。フォーリナーの対処の為に各地に戦力を分散しているEDFが、このミサイル全てを撃ち落とすには時間が足りない。断腸の思いでコース予測から計算された着弾位置の被害で優先順位を付けていたところ、一機の白いISが現れてミサイルを落としていった。

 

 このISの登場でこの事件の黒幕が誰か予想がついてしまい、思わず頭を抱える。これは世界規模のデモンストレーション。ISを世界に認めさせるためのショーなのだと。

 

 あの女は紛れもない天才だった。それは断言できる。

 

 

 だがあの女は世界を甘く見ていた。自分と同等の天才や、遥かに超える怪物がいるなど思いもしていなかったんだ。

 

 

 部下から連絡が入る。こちらが予想していたコースから外れるミサイルが出始めたと。モニターを見れば白騎士がミサイルを落とすペースが遅くなっているようにも見える。

 嫌な予感がしてミサイルの着弾点を再計算するよう部下に伝え、何故か棒立ちで事態を見守っていた幹部連中の尻を叩いて仕事を再開させた。

 稼働しているミサイル迎撃システムやすぐに飛ばせる戦闘機の確認などが慌ただしく行われる中、先程の部下が血相を変えて戻ってきた。

 

 コースを外れたミサイルの目標地点を見て、血の気が引くのを感じる。

 

 

 

 

 ――――――――”原子力発電所”

 

 

 

 

 優先順位を引き上げて対応を急がせるが、いかんせん状況が悪すぎる。健闘むなしく数発のミサイルが落ちてしまった。

 

 世界各国で放射線汚染が進み、環境バランスが崩れた事で太古の文明が造り出した超遺伝子獣"ギャオス"が各地に出現。

 更に追い討ちをかけるように、秘密結社モナークからの情報提供で放射能物質を餌にしている巨大怪獣"MUTO"が現れた事を知る。皮肉な事にMUTOが放射能物質を食べ尽くしたので放射能汚染は落ち着いたが、その代わりとして強大な敵が一つ増える事になった。

 

 篠ノ之束は失踪し、白いISの操縦者だった織斑千冬はEDFに投降。償いとしてISの情報開示と自身が兵士として戦う事を望んだ。

 織斑千冬の持ち込んだインフィニット・ストラトスはEDFの機動兵器としての研究を進め、俺の管理下で部隊運用する事になった。

 使えるものは何でも使う。

 そうでなければ、地球を守る事などできないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで?エキスポでドンパチやらかして社長秘書と結ばれた感想はいかが?」

『間違いがあるな。ペッパーは既にスターク・インダストリーズの社長になった後だ』

「そこはどっちだって良いよ。まあおめでとうと言っておくよ」

『君も良い加減に身を固めたらどうかな?聞けばオーブのお姫様から熱烈なラブコールを受けているんだろう?その他にもデートのお誘いは山盛りみたいじゃないか』

「プレイボーイにそんな事言われるとはね…というかどこから聞いたんだコラァ」

 

 

 モニターに映る超大金持ちは高そうなワインを見せつけるように飲み始める。こっちがろくに酒飲めないのを知っててこの野郎。

 

 

『それにしても酷い顔だな。寝てないのか?』

「毎日アラート鳴りまくりだよ。最後に寝たのがいつかも覚えてない」

『睡眠時間が少ないのは天才の証拠だ。良かったな』

「何も良くないわい」

 

 

 寝不足でもチートな体のおかげで耐えてしまえる。チート貰って良かったのか悪かったのか…。

 

 

『それで?あの謎のエージェントからの計画の話はどうなった?』

「ああ…アベンジャーズ計画の話か。世界各国から超人を集めてチームを結成する…今の世の中、超人なんて珍しいものでもないけどな」

『言えてるな』

 

 

 突然変異で産まれた特別な力を持つ人間。ミュータント、個性保持者、NEXT…呼び方は多々あるが、この世界では超人的な力を持つ人間は珍しくない。

 

 

「主にアメリカで活動する事になるみたいだぞ。トニー・スタークの名前もちゃんとある」

『ほう。返事は少し考えさせてもらおうかな』

「お前は強制参加だアイアンマン」

『えっ』

 

 

 コイツが自分の設計した兵器を使ってるテロリストを退治してた時、ローズ中佐に相談されてアイアンマンの正体を何とか隠そうと、謎のエージェントことニック・フューリーと裏工作してたんだが、自分からバラして全部台無しにしやがったからな。

 「私がアイアンマンだ(キリッ」じゃねえよほんとに。

 

 

「それとこれ、追加の兵器の発注依頼。送っておくから頼むよ」

『そういうのはペッパーに…はあ、分かったよ。まったく、もう兵器なんか作りたくないというのに』

「だから二度とテロリストなんかの手に渡らないように、徹底的に怪しい奴を駆除しただろう」

『分かってるよ。色々と手を尽くしている事は感謝してる』

「悪いな」

 

 

 モニターの電源を切って、背もたれに寄りかかって大きな伸びをする。

 規模が大きすぎて分からない敵と戦い続けるのは精神にくる。トニー・スタークは勿論、他にも大勢の人が力を合わせて立ち向かっているから戦えるのだ。

 

 

 さて、少し時間が出来たし寝るか。

 

 

「司令官!!グアム沖の海底に次元の裂け目が発生!!巨大怪獣が出現した模様です!急ぎ指令室まで!!」

 

 

 俺の安眠はいつ来るのだろうか。




・主人公
 チートマシマシで転生した結果、それ相応の世界に飛ばされてしまった男。転生した世界はありとあらゆる可能性がごちゃ混ぜになり、常に地球滅亡の危機に脅かされているカオスな状況。
 チートな肉体と頭脳を貰っているが、指パッチンで世界を救えるような規格外の能力を貰ってないのは本来の気の弱さか。


・主人公の家族
 母親と妹の三人暮らし。父親は妹が幼い頃に他界してしまっている。妹はヒーロー好きであるのだが、まさか兄がヒーローみたいになるとは思わなかった。
 兄を亡くしてしまうのを恐れてEDF入隊には反対だったものの、他ならぬ主人公に説得されて泣く泣く送り出した。
 主人公は面倒事に巻き込まれたくないと思っているのだが、どうやらその願いは叶わないようで…?

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