機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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書きあがったらとりあえずアップするスタイル(^^

前回の後書き予告通り、青い人とか出てきます。




第011話:”カガリと中々切れないトカゲのしっぽ、そしてささやかな夢”

 

 

 

「船団護衛任務、遂行ご苦労様だな。評判にたがわず見事な手際だったな? 改めて感謝を」

 

『これも契約の内。労いも礼も無用だ』

 

そう通信機越しにクールに、あるいは感情の読めぬ表情で返してくるサングラス姿の青年……傭兵集団”サーペントテール”のリーダー、叢雲劾(ムラクモ・ガイ)はワタシの予想とそう違わぬ返事を返してきた。

 

前に少し話したかもしれないが、サーペントテールにはザフトの襲撃が終わるまでヘリオポリスから安全圏に退避させていた民間の輸送船や旅客船……現在は、オーブ軍が緊急徴用し臨時の救助船団となっているが、それの護衛を依頼してもらっていた。

 

まあ、臨時船団もちょっとした()()()()があり、『不思議なことに』ザフト、クルーゼ隊がヘリオポリスを襲撃した際に各港に停泊していたオーブ船籍の船のほとんどがオーブ軍の払い下げの船やその類型であり、船長の大多数がオーブ軍の退役軍人だったり予備役軍人だったりする。

 

まあ、ヘリオポリスの崩壊は避けられなかったとはいえ、次善策の「打てる手」の一つだと思ってくれ。

 

「謝意くらい述べさせてくれ」

 

『契約さえ守ってくれれば問題はない』

 

うーむ。これはワタシの知る前世知識(チート)にある、『叢雲劾は依頼者に裏切られてロウ・ギュールと共闘、結果としてブルーフレームを入手する』ってイベントに対する皮肉か何かか?

 

「まあ、それはこっちも同じだな。MBF-P03(ブルーフレーム)を渡してハイ終了って契約じゃないし」

 

サーペントテールに報酬は金銭もだが、何度か出てきてるかもしれないが、オーブの試作MS”MBF-P03 アストレイ・ブルーフレーム”の譲渡もそこに含まれている。

 

だが、ロウ・ギュールとの契約と同じく「渡して終了」って類のものじゃない。

ロウに継続依頼しているのが「ナチュラル用OSの開発協力」なのに対し、

 

「資材や装備の都合やら便宜やらは可能な限り払うよ」

 

実は連合が極秘裏に開発していた戦闘用コーディネーターという過去、つまりはソキウス達のお兄さんのような存在の劾には、『新しい追加装備やオプションの実戦における効果測定』を継続依頼として出している。

 

ブルーフレームは元々原作同様に『オプション装備のスペック検証用テストベッド』というコンセプトで生まれた機体だ。

原作との違いは、

 

オーブ軍で研究するのも、そりゃあ良いかもしれないが、傭兵という仕事柄様々な想定や状況の戦場を渡り歩く叢雲劾は、よりバリエーションに富んだフィードバック……オーブ軍だけではサンプリングできないようなデータを返して来てくれるだろう。

 

まあ、ロウに対してもジャンク屋って職業上の理由から「戦闘以外の動作パターンやモーション・サンプリング」を大いに期待するところだ。

アークエンジェル・サイドが原作とそう大きく違わない展開なら、おそらくナチュラル用OSは”うちの弟(キラ・ヤマト)”が現在進行形で育ててる物が叩き台になるのだろうが……

 

(戦闘以外のモーションデータってほとんど無さそうだもんな~)

 

まあ、例外的にユニウスセブンの残骸で物資回収したり、どこぞのピンクのお嬢様拾ってきたりってモーションはあるだろうけど、まあほとんどは戦闘関連だろう。

 

確かに現状、MSは国防目的、兵器としての使用が最優先であり最需要だ。

だが、ワタシはMSを『ただの人型戦術兵器』で終わらせる気なんて毛頭ない。

 

残念ながらどんな形であれ戦争は永遠に続かないし、いつかは終わる。

そしてまがいなりにも国防委員の一人、広義な意味で政治家であるワタシは当然、戦後のことまで頭を回す必要がある。

 

この世界がアニメの中のフィクションなら、終戦が最終話となってそこで物語はお終いかもしれない。

だが、生憎とワタシ達は、『このどうしようもないクソッタレな世界』をリアルとして生きているんだ。

 

確かに戦死すればそこで個人としてはENDだろうが、生き残ってしまえば戦後の生活が待っている。

その戦後世界、今度は『()()()()()()()()()』を生き抜く……ある意味、戦争より遥かに過酷で長い道のりになるだろうクソッタレな戦いの中で、鋼鉄の巨人であるMSは力強い人類のパートナーになるだろう。

 

(まっ、要するに”レイバー”としての活用だな)

 

前世知識でいうところの『機動警察パトレイバー』に出てくる一連のアレだ。

後に作られた漫画版(げんさく)の十数年後の未来を描いた実写版では、バビロンプロジェクトの終結やらコストの問題やらで下火になったみたいだが、日本とは違う意味で大和火山と森林が多い、つまり通常の重機が入れられない場所が多いオーブには、二足歩行の重機や建機は無限といっていい活躍の場がありそうだ。

 

加えて宇宙開発……今でこそ戦場になっているが、戦後に情勢が安定すれば早期再開が確実視されてる宇宙開発事業にとり、これまでにない『最高水準の強化外骨格式宇宙服』であるMSは間違いなく福音となるだろう。

 

(建前的には『プラントやザフトが生み出した大量破壊兵器、殺人ゴーレムの平和利用』とかって国民が好みそうな見出しを付ければ、直ぐに民需転用の予算編成できそうだしな)

 

夢みたいな話に聞こえるかもしれないが、ワタシにとっては近い将来の現実だ。

 

 

 

(戦後、本腰入れてMSの技術を応用した人型建機の開発、ガチにレイバーの研究初めてみるかな? ”むったん”とか誘ったら食いつきそうだし)

 

我が同好の士にして盟友(とも)のむったん、ムルタ・アズラエルは趣味的に考えてサムズアップで一発OKしそうだし、民需の新しく生まれるだろう市場への参入は、アズラエル家としても悪い話じゃないはずだ。

なんならウォーカーマシンっぽいのでも可。ウォーカーもレイバーも、どっちも『労働者』を示す言葉には違いないし。

 

『? どうした? 急に黙り込んで?』

 

「いや、近い未来のことについて考えていた。具体的には戦後政策とかだな」

 

するとジンの改造機のコックピットの中で劾は一瞬だけ虚を突かれたような顔をして、

 

『未来? 戦後? ここ最近、聞いた覚えのない単語だな』

 

「ま、今は戦時下だからな」

 

だけどな、叢雲劾さんよ。

 

「だが歴史上、永遠に降り続いた雨が一度もないのと同じで、永遠に続いた戦争もないのさ」

 

『だが、戦いが無くなった(ため)しもない。だから傭兵は最古の職業の一つとして語られ、食いはぐれることもない』

 

如何にも劾らしいクレバーな返しだな?

 

「闘争っていうのは、人が人である所以(ゆえん)みたいな所があるからな」

 

だがな、

 

「平時に戦時を考え、戦時に戦後と平時を考えるのも、同じ最古の職業である政治家の仕事だ」

 

『フッ……違いないな』

 

おや?

今、もしかして笑ったのか?

 

(なんだ普通に笑えるじゃないか)

 

「ところで叢雲劾、サーペントテールに追加依頼を出したいんだが……」

 

『俺の一存では決められんが、話ぐらいは聞いてやろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




叢雲さん家の劾くんの口調が中々難しい(挨拶

”らしさ”が出てればいいな~。

このシリーズのカガリ、言動は間違いなく脳筋(マッチョ)の類ですが、本当に脳みその中身や骨の髄まで脳筋ってわけじゃありません(^^

目指せ”知性派マッチョ”?w

ところで次回、そろそろダイジェスト&三人称視点でアークエンジェル・サイドのエピソードとか入れようかな~とか思ってるんですが、どうでしょう?(^^




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