機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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なんとなく書きあがったので、第2話投稿です。
今回は、サブタイ通りにウズミアンチな内容です。




第002話:”親父殿は政治家としては落第だな”

 

 

 

転生者と書いてカガリと読む、カガリ・ユラ・アスハのお通りだぞいっと。

ああっ、おかしなテンションで申し訳ない。

身体は一応女だが、中身は性別不詳のカガリ・ユラ・アスハだ。

 

唐突ではあるが、これでもワタシは割と用意周到な方だと思ってる。

根回しとか割と好きだしな。

そういうわけで、育ての親であるウズミ・ナラ・アスハや養叔父のホムラより、体型的な意味も含めて”オーブの誇る狸オヤジ”ことウナト・エマ・セイランの方が実は話が合うんだ。これが。

 

勿論、ワタシ自身がロクデナシだって自覚はあるぞ?

理想より現実を、理念より実利をとるのがワタシだからな。

なので最近は、親父殿との喧嘩が絶えないな。

 

一応、言っておくけど父としては、少なくとも嫌っていないぞ?

漢気とやらも感じられるし、基本的には善人であるとも思う。

だが、一政治家として考えると……評価は一変する。

 

親父殿には悪いが、前世のアニメの中でも今生でのリアルの中でも、政治家としては最悪の部類だと思う。

 

前世が20~21世紀に生きた日本人の価値観が魂の奥底にしみついてることを前提に話させてもらうが……

 

「国民の生命や財産より、国家の理念を優先する」

 

……バカじゃないだろうか?

悪いね。おそらくワタシは前世から口が悪い。どうやら、ワタシの口の悪さは一度死んだくらいでどうにかなるものじゃないらしい。

だが、偽らざる本音だ。

そもそも人間ってのは一人で生きるよりはまとまって生きる方が生存率高いから、村が生まれ街が生まれ、やがて国になったんだ。

んで、国が軍隊を持つのは本質的には国土防衛、自分たちに政治が及ぶ範囲の土地、そこに住む民を守るために軍隊がいるんだ。

そして国民は、いざという時、自分達の生命と財産を守ってくれるからこそ、自分達が納める税金が国防費に割かれる事を納得するんだ。

 

それが、国家に対する信用って奴だ。

敵対勢力が自分たちの存在を脅かしたとき、守ってくれると信じてるからこそ、軍隊ってのが基本的に利益も生まなければ生産性もない組織……破壊と殺戮をその本質とする、『国営暴力装置』とわかっていても積極的に受け入れる。

 

ついでに言えば、この世界のオーブの住人は、「再構築戦争で日本という国が歴史用語になった」経緯、というかそのトラウマのせいで国防意識が高い。

 

だが、今生ではまだ確定未来ではないが……少なくとも、ガンダムSEEDってアニメでは、ウズミ・ナラ・アスハはその国民の信用をこれ以上ない形で、完膚なきまでに裏切った。

 

よりによって、国民に「自分たちも死ぬからお前たちもオーブの理念のために死んでくれ」と行動したのだ!

 

 

 

ワタシは、国家の理念なんてものは「国家を維持発展させてゆくための方便」としか思っていない。

国家の体裁を成すのに理念が必要なら、存分に使えばいい。

 

だが、逆に言えばそれだけのものだ。正義や理念や理想なんてものは、所詮は概念であり、時代や価値観とともに変遷してゆく……言ってしまえば、極めて流動的で不安定なものだ。

間違っても永遠なんかじゃない。

 

そんなもののために大事な納税者に死ねと?

冗談じゃない。

確かにオーブは旧日本から引き継いだ「国民の三大義務」はあるさ。

教育、勤労、納税の三つだが、そこに「理念に焼かれて爆死する」なんてものは入っていない。

武田信玄の名言、”人は城、人は石垣、人は堀”じゃないが、どんな政治体制であろうと国民あっての国だ。その逆はありえない。

 

当たり前だが、だだっ広い土地に一人で住んでいても国とは呼ばない。土地に国民が住み、そしてそれが一つのコミュニティーとして機能してこそ初めて国家の資格を得る。

具体的に言えば、領域(領土/領空/領海)と国民と権力だ。

 

この権力、主権も大雑把に言えば対外主権、対内主権、最高意思決定となるのだが……そこに理念なんてものは入ってこないのだ。

 

 

 

結局、アニメにおけるウズミ・ナラ・アスハの行動は、「国民や国家を巻き込んだ自己満足の果ての壮大な自殺」にしか見えないのだ。

 

大体、まともな国防計画の策定もできてない状態で、理想を叫んでイキれば、そりゃ叩きのめされるだろうさ。

なにせ、相手はガチに戦争真っただ中の「戦時下の国家」だ。

 

まあ、確かに「ウズミはあの時すでに代表首長ではなかった」だの「ウズミだけではなくサハク家にも責任がある」とか、「あの時の地球連合はほぼブルーコスモスだったので、仮に戦わなくとも進駐されればコーディネイター系住民の虐殺が起きていた」だのと弁護するコメントもあったようだが、ワタシに言わせれば何の弁明にもなってない。

 

ホムラを傀儡にし、あの時のオーブの最高権力者はウズミだったわけだし、そもそも住民虐殺なんてものが起きないように、戦う前から……いや、ほかの選択肢も視野に入れながら国家の舵取りを行うのが政治家だろうに。

どんな事情があろうと、結局理念に従い要求を突っ撥ね、結果として住民が虐殺されたのが当時のオーブだ。

 

それに国民は当たり前だとしても、同情すべきはオーブ軍もだろう。

国防軍の名を冠しておきながら、名前負けもいいとこの行動しか出来なかったのだから。

 

 

 

理想に溺れて溺死するのが、ウズミとその取り巻きだけだったら別に構わないさ。

だが、国民がそれに巻き込まれるのは看過できない。

 

だからこそ、ワタシは行動した。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

確かに親父殿は国民に人気がある。

カリスマ性っていうのか? そういうものがあるのは事実だ。

 

おそらくだが、親父殿(ウズミ)の権力とカリスマの絶頂期は、約1年前……C.E.70年2月8日の『中立宣言』だろう。

 

だが、程なくワタシは物心つく頃から付き合いのあったサハク家やセイラン家と共謀し、冷水どころか氷水を頭から被せた。

 

『中立宣言』から約3か月後の5月18日、ワタシの誕生日に合わせて『友好国との国防兵器開発に関する議定書』が議会に提出され、賛成多数で可決されたのだ。

 

友好国とは言うまでもなくスカンジナビア……ではなく、サハクやセイランが太いパイプを持つ”()西()()()()”だ。

 

 

 

どうして、親父殿相手に可決し、兵器共同開発に関する法案を可決できたのか?

なんの事はない。議会制国家の常套手段である『多数派工作』を行っただけだ。

 

実は当時、既に場は温まっていたのだ。

例えば、プラントあるいはザフトが行った代表的な非道の一つ、『エイプリルフール・クライシス』

 

諸事情があり、原子力発電に頼っていないオーブはさして影響を受けなかったが、最終的に地球の総人口の1割が死んだとされるこの悲劇……連日、エネルギー不足とパニックで誘発された飢餓や疫病、凍死や暴動で死んでゆく人々の姿が、『あらゆるメディアで、()()()()()()()()延々と流された』のだ。

 

そして、この後にプラントの正式な表明、「ユニウスセブンに核を撃ち込まれたが、理性的な我々は核報復ではなくニュートロン・ジャマーによる各動力の停止にとどめた」が発布され、その全文がオーブにも連日流布された。

 

この時、既にサハク家やセイラン家の後押しで『()()()()()()()()』に座っていたワタシも、正式なコメントを5月5日に出している。

正確には、演説を一席ぶった。

ちょっと内容を抜粋すると……

 

『プラント並びにその()()()()であるザフトは、24万人の報復に地球総人口の1割……の10億人の民を殺し、それを理性的な判断だと標榜している。そして、この悲劇で死んだ者はナチュラルだけではない』

 

『プラントに住むコーディネイターは約6000万人、地球上に在住しているコーディネイターは最新の統計で約5億人。つまり、彼らは計算上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を殺してみせた』

 

『ナチュラルとコーディネイターの共存を国是するオーブには、現在1500万人のコーディネイター系住民がいる。だが、その諸君に問いたい。果たしてプラントに住むコーディネイターを同胞(はらから)と呼べるのかと』

 

『そして誤解してはならないのは、5000万人のコーディネイターを含む10億の地球の住人を殺す決定をしたのは、地球に住んでいた5億のコーディネイターではない! プラントに住む6000万人のコーディネイターだということを!』

 

『ナチュラル、コーディネイター問わずに行われた”()()()()()”は、断じてコーディネイターの総意ではない!!』

 

『今回の虐殺を行ったのは、コーディネイターという種族ではなく、それを命じたプラントであり、それを執行したザフトである!!』

 

『諸君! 今、何が起きてるのかを見誤ってはならぬ!!』

 

 

 

かなり端折ったが、こんな感じだ。

この演説の後、行き場を失った(主に大西洋連邦からの)大量のコーディネイター移民など、決して無視できない原作乖離があったが、今回は割愛する。

 

他にもカーペンタリア湾への基地降下などがオーブ国民の危機感を煽る追い風になり、世論への干渉……好ましい方向への印象操作は、思いの外簡単にいった。

 

オーブは、正式名称”オーブ連合首長国”の名の通り、完全な民主主義国家というわけではないが、かと言って議会や民意を氏族会議が平然と無視できるような国家でもない。

 

(しかも、そのうち二氏族はワタシの味方と言っていい……)

 

 

 

そして、その成果が……ささやかとは言え、歴史の変更点がもう直ぐワタシの目の前に現れるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




このシリーズのカガリは、噓は嫌いですが印象操作とかは大好きです(挨拶

とりあえず、ドンパチまであと何マイルあるのだか(^^


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