機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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フレイをブリッジに入れる許可もらうだけの話なんだけど、このシリーズ過去最高の長さに(^^
それと「ちょっと原作と事情が異なりりそうな」あの組織の話とか出てきますよっとw


第020話:”フレイとむったん、そして時々青いコスモス あるいは惨めさの回避”

 

 

 

あの小娘(フレイ・アルスター)をブリッジに常駐できるようにしろと? その理由は?」

 

イズモのブリッジより中継中のカガリ・ユラ・アスハだぞいっと。

フレイをブリッジにも(戦闘中を含め)居られるようにしてくれよ~とギナ兄ことロンド・ギナ・サハクに頼んだら、当然のように理由を聞かれましたとさ。

 

「まさか、あの娘が所在なさげで寂しそうだからとか言う理由なら、聞かんぞ?」

 

「ヲイヲイ。ギナ兄の中のワタシは、どんだけ情緒的でセンシティブな人間なんだよ?」

 

「だから”まさか”と付けただろうが?」

 

そりゃそうか。

 

「結論だけ先に言うなら、フレイ・アルスターをこの先もワタシの側近にしておきたいんだ。その為の実地訓練だとでも思ってくれれば助かる」

 

「……”()()()()()”にでもする気か? 言っておくが、我がオーブでは同性婚は……」

 

知ってるって。というかそういう話じゃなくてさ、

 

「ギナ兄、本気で言ってないだろ?」

 

目が笑ってんの隠せてないぞ?

 

「あの()が、大西洋連邦外務次官ジョージ・アルスター氏の娘だって話はしたろ? その流れで、フレイに大西洋連邦の窓口の一つ……ワタシ専属の連絡官になって欲しいのさ」

 

「それだけか?」

 

まっ、お見通しか。

 

「この先の展開やワタシの政治的行動を考えると、特に()()()()()()()西()()()()へのチャンネルは公式/非公式を問わず増やしておきたい」

 

「既にあるだろ? 人も羨むアズラエル家との……いや、ムルタ・アズラエルへの個人的で極端に太い太いパイプが」

 

太い()()()というギャグは、流石に入れてこなかったか。

因みにワタシは道具よりやっぱりナマモノ派だ。

ついでに言っておくが、ベッドの上では()()()()()スイッチが入るワタシだが、普段はそこまで性欲を持て余してる訳じゃない。

というかぶっちゃけ、あまり自慰は好きじゃない。

 

「まあ、そりゃむったんとはあるけどさ……ギナ兄の言う通り、極端なんだよ。ワタシの場合、むったんへの太いパイプが一本と、残りはパイプと呼べないような細いつながりしかない」

 

(それだけじゃ足りないだろうからなぁ)

 

ワタシはむったん……ムルタ・アズラエルをこの戦争で死なせる気はない。これは絶対だ。

個人的な好き嫌いの感情っていうのも確かにあるが、他にも色々と理由がある。

 

(とはいえ、むったんが死なないと断言できるほど、ワタシは傲慢でも楽観的でもない)

 

とどのつまり、今のワタシの手の届く範囲は、ギナ兄のサハク家やウナトのおっちゃんのセイラン家より狭く短い。そこいらの町娘と比べても、主観的に言えば大差ない。

例えば、むったんがブルーコスモスの内ゲバの煽りで暗殺されようとしても防ぐ手立てがないのだ。

 

(ならば、次善策を考えるしかない)

 

我ながら嫌な女(?)だとは思うが、むったんが何らかの理由でこの世から去ったときの保険として、打てる手は打っておきたい。

 

 

 

はっきり言おう。

ワタシは、アニメのカガリには……あんな惨めな存在にはなりたくないのだ。

言いたいことは色々あるけど……種死の時の一番の見せ場が、『強奪される花嫁役』ってなんだよ!?

しかも、弟に『カガリは今泣いてるんだっ!!』とか言われて。

 

ああ、ダメだダメだダメだ。

ワタシが心理的な両性具有なせいか、種の時のヘリオポリスから脱出してゲリラと遊んでたり敵兵(アスラン)と『青い珊瑚礁ゴッコ』やってる自覚のなさも腹が立ったが、種死あの展開は我が身に置き換えると生理的に受け付けない。

 

そもそも、『悲劇のヒロインムーブ』なんてワタシは死んでも御免だ。

言っておくが、アニメも今生(リアル)も含めて、ユウナ・ロマ・セイランが嫌いなわけじゃないぞ?

ただ、無能なお調子者……典型的な甘やかされて育ったバカボンだと思うし、故に男として見れないだけだ。

確かに身体は女だと自覚してるし、女の身体もそれなりにハイスペックで気に入ってるが……ユウナにはその肝心な女の部分がいっそ清々しいくらいに反応しないのだよ。

 

むったんが死んだ後、『政略結婚にしか価値を見出せない女』なんて評価されるのは願い下げだ。

確かにワタシはロクデナシの人でなしだが、だが自分の意思も貫けないような人生なんざクソクラエだよ。まったくな。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「つまり、あの娘を継手にして外務次官へのパイプを新設したいと?」

 

「ああ。それにアルスター次官は、ただの外務次官じゃない。ブルーコスモス穏健派の幹部入りもそう遠くないと評される構成員で、むったんの覚えもめでたいんだぞ?」

 

ブルーコスモスも人間の組織である以上、決して一枚岩ではない。

反コーディネイターという枠組みは一致していても、思想や手段などで実際には様々な派閥に分かれている。

 

ただ、大雑把に言えば”穏健派”、”中道派”、”過激派”の三つに分類できる。

それぞれ詳しく書くと長くなりすぎるから簡潔にまとめると、

 

・穏健派→C.E55年に採択され、地球上ほぼ全ての国家が批准した「トリノ議定書」を根拠に、地球上での新規遺伝子調整者(=第一世代コーディネイター)の製造の原則として禁止を徹底させ、コーディネイターの生殖能力の低さ(=コーディネイター同士の交配だと、体外受精技術を使っても第三世代以降が極めて生まれにくい)を論拠にコーディネイターとナチュラルの交配と混血化を促進し、『コーディネイターのナチュラルへの自然回帰による消滅』を目指す勢力。

 

・中道派→これは雑多でどっちつかずな考えを持つものが多い。生粋の中道は少数派で、穏健派寄り中道派と過激派寄り中道派が主流で、主張がこじれてよく内部対立(内ゲバ)を起こす。何気にブルーコスモスで最もカオスな集団。

 

・過激派→現実的な方策とか経済性とか無視して、『如何なる犠牲を払っても、コーディネイターのこの世からの直接的根絶』を第一義とする集団。コーディネイター相手によくテロを起こす連中だと思われてるが、間違ってはいない物のその手の些末的なテロを起こしてるのは、本流でなく統制の利いてない末端の末端。

 

 

 

意外というか当然というか、むったん……ムルタ・アズラエルはブルーコスモス盟主というだけでなく、”穏健派の首領(ドン)だ。

いや、違うな。順番が逆だ。

穏健派の首領だからこそ、ブルコスの盟主に祀り上げられたと言った方が、より真実に近い。

そして、ここまで書けばわかると思うが……実は、今のブルーコスモスの主流は穏健派が掌握しているのだ。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

あえて原作に準じてアズラエルと呼ぶ(むったんと言い続けると私情が入りすぎるからな)けど、アズラエルが穏健派なのは確かにワタシという存在は無視できないだろう。

だが、勿論それだけじゃない。

 

アズラエルの本業は、国防産業連合理事

要するに地球上の軍事に関わる企業/研究所/大学の殆どがリストに名を連ねる『軍需産業複合体の()()、突き詰めてしまえばビジネスマンだ。

 

だから、穏健=『最も金がかからずリスクの低い方法』を選ぶのは当然といえた。

確かに『ナチュラルへの回帰』は時間がかかり即効性はない。

だが、第一世代コーディネイターの製造をきっちり抑制できれば、安全性が高い堅実な方法でもある。

 

余談ながら……実は穏健派の方法は、シーゲル・クラインの思惑と一致しているのだが……今は、それは深くは追求すまい。

 

ともかく、その「穏健派のやり方」のメリットが伝播/拡散したからこそ主流になったと言っていい。

 

(対して過激派ってのは感情論が多いからな。論理的に攻めていくと、どこかで論理破綻を起こしたりするし)

 

実は”エイプリルフール・クライシス”直後はプラントへの嫌悪や憎悪から過激派が急増したが、予想に反して戦争が膠着し出すと厭戦(えんせん)気分の台頭と『より現実的な解決方法』の模索から穏健派が息を吹き返した経緯がある。

 

一応、ワタシもその流れを作るべくそれなりに努力も苦労もしたんだぞ?

あの時期は、アズラエル家のコネを使ってあちこちの大西洋連邦のパーティーをはしごしたからな。

多分、フレイがワタシを見かけたのも、そのパーティーのどれかだと思う。

 

ワタシが動いた成果がどれほどあったか知らないが、大西洋連邦内では、穏健派と穏健派寄り中道を合わせれば過半どころか圧倒的多数派と言っていい。

 

ついでに説明すると穏健派寄りの中道は、『穏健派の考えは理解するがNJで10億殺したコーディネイターは、やはり心情的に許し難い』という輩が多く、過激派寄りの中道は『無茶無謀なのは理解してるが、即効性のあるやり方も捨てがたい』という考えが多い。

 

 

 

「ブルーコスモス内で、『即座のコーディネーター排除』を主張しない穏健派へのコネやパイプをなるだけ沢山用意しておくのは悪い話じゃないだろ? コーディネーターの国民を多く持つ我が国としてはさ」

 

更に追記しておくと、ジョージ・アルスターは大西洋連邦の各国に「一見するとコーディネーターの排斥」を促しているように見えて、その実……

 

(オーブへのコーディネーター系住民の移住を促してるからな)

 

我が国にもしっかり貢献してもらってる、持ちつ持たれつの関係な訳だ。

 

「違いないな……まあいい。そういう事なら許可しよう」

 

「やったぜ! そうこなくっちゃな♪」

 

「やれやれ。現金な奴だ」

 

 

 

 

 

カガリ・ユラ・アスハ、気を引き締め直せよ。

先はまだまだ長いんだからな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




青いコスモスは、結構内部でも色々意見対決があるみたいっすよ?(挨拶

カガリが最後の方でチラッと触れてますが、オーブの親大西洋連邦派(要するにカガリ達)と、大西洋連邦では主流のブルコス穏健派が仲いいのは、需要と供給のバランスが良いからでもあるんですよ。
大雑把に描くと。

ブルコス穏健派:「コーディネイターは排斥したいけど、殺したくはねーなー」

カガリとゆかいな仲間たち:「うちはコーディネイターの移民受け入れ融和政策的にやってんよ~。それに頭脳労働にも使える労働力欲スイ。国力増強国力増強♪」

ってな感じです(^^
その仲介役の一人がフレイパパ(主にコーディネイターを追い出す方の役目)で、その流れでカガリは知ってたみたいなんですが……フレイの存在は、エンカウントするまで忘れてた模様(笑

ブルコス過激派も「プラントに人的資源持ってかれるよりはマシ」って考え方が多く、ウズミ達の反(?)大西洋連邦グループも人道的見地から反対できない罠w

まあ、一千万人規模の命がかかった案件ですし。









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