機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

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今回は、割と筆者が原作見てた時に「なぜ、そうしなかったんだ?」と思ったことに対する、自分なりの回答みたいなエピソードが混入しとります(^^




第025話:”秘宝ではなく悲報! そして、一見すると親子喧嘩に見えなくもないが、本質的には根深い話”

 

 

 

……

………

…………悲報。フレイのパイロット適性が、ワタシより高かったでござる。

 

 

 

ああ、カガリ・ユラ・アスハだ。うん。

元気がない? 

Ha-Ha-Ha、そりゃワタシだってたまには凹むさ。

 

試しに作りかけのチュートリアル・シミュレーションモードで、球体型(オーブ)コックピットを起動させたんだけど、フレイさんってば、原作のアサギ達(オーブ三人娘)より器用にMS動かしたでござる。

というか、シミュレーション上とはいえ普通に「こいつ動くぞ……!(ガンダム、大地に立つ)」をやらかしたでござる。

 

『お姉様、MSって意外と簡単に動かせますわね♪』

 

と通信機越しのフレイ in The ORB(オーブ)

って、んなわけあるかい。

確かに従来型コックピットよりは桁違いに操縦(入力)しやすくなってるし、感覚的に扱えるだろうが……操縦難易度は、今のところオーブジンと大差ない筈だぞ?

 

ほら見ろ。

アスカ主任とユンが顔を見合わせた後、珍獣を見る目でフレイ内蔵の巨大球体を見てるじゃないか。

 

 

 

あっ、そうそう。言うの忘れていた。

ワタシは今から身もふたもないこと言うが、構わないか?

 

実は……オーブ、大西洋連邦よりはずっとナチュラル用MS-OSの必要性は低い。

 

というのも、オーブはそもそもコーディネイターの人口比率が他国とも比べて高かった。

そりゃそうだ。なんせ、国策で「コーディネイターとナチュラルの融和と共存」を掲げてる、今時地球全体規模で珍しい国家だ。

 

加えて”エイプリルフール・クライシス”以降、プラントやザフトのNJ(やらかし)のせいで、住処を無くした……今までの生活を維持できなくなったコーディネイター達が、大西洋連邦を中心に大挙して押し寄せているのだ。

 

オーブは原作より国土が遥かに巨大なうえに、元々「コーディネイターの駆け込み寺」的な国家指針と、かつての祖国が滅んだ時の反省と経験から、いざという時に備えて「国民(2億人想定)が3年間輸出入を立たれても餓死の発生しない食糧/医療品/生活物資の備蓄」を持っていたし、食料自給率も(21世紀の日本に比べれば)高い。

ぶっちゃけ、ここ数年の国策のせいもあり、現在は同時期のフランスやアメリカ並み(127%と130%。38%の日本の3倍以上)だ。

だから、もう1000万人を超えた流入人口、増大する難民化したコーディネイターを受け入れられる訳だが……

 

ジョージ・アルスター氏が仕事のし(追い出し)過ぎな件はいいとして……最終的には、3000万人を超えるとされてる流入コーディネイター全てを「オーブ国民として受け入れる」かは、また別問題だ。

 

そして現在、オーブは国防委員会と軍部が音頭をとって、「将来のオーブ国民」を選別すべく、大きな(ふるい)をかけていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

まあ、元ネタはベトナム戦争当時のアメリカだと思うのだが……オーブ国防軍に志願入隊し一定の期間(標準兵役の2年間)従軍すれば、国家に貢献したご褒美として難しい審査なく『永住権(グリーンカード)』が得られるのだ。

 

エイプリルフール・クライシス以降、地球全域規模で非常事態だから、人道的見地と融和と共存を目指す国是に則り、「命の危険が高いため緊急を要する」コーディネイターが「オーブに来る」までの手続きは大幅に簡略化されてるが……本来、オーブへの移民は日本の伝統を引き継ぎ、「大変に()()()なのだ。

 

実際、今も避難してきたコーディネイター達は、親族がオーブに住んでるなどのコネがない場合は、急増された難民キャンプ住まいだ。

といっても戦地に見るような(あるいは荒廃したスラムのような)悲惨なものではなく、ここも日本からの継承かもしれないが……東日本大震災やその他の大規模災害で大活躍した仮設住宅が大量建造され、それが疑似的なマンモス団地を形成してると思ってくれればいい。

技術の進歩というのは大した物で、ワタシも試しに少しの間住んだことがあるが……前世の安アパートよりよっぽど快適だったぞ?

 

そして、その難民キャンプで希望者は()()()()を行い(今回は特例的処置、しかも時限立法であるだけで、原則としてオーブは戦争難民を含む難民の受入れは行っていない)、その後に身元調査や言語や一般常識のテスト、能力/職業適性検査を行い、本申請を行えるか判断され……そしてようやく最初に申請できるのが、『永住権』だ。

 

永住権というのは、要するに「国に住み続けられる権利」のことで、必ずしもオーブ国民である()()()()()

例えば、10年ごとの更新手続きが必要だし、国籍は元の国のまま(オーブは二重国籍や多重国籍を認めていない)だ。

そして、納税の義務はあるしそれに見合ったある程度の公共サービスは受けられるが、参政権はない。つまり、選挙の投票権はない。

 

また、詳細は色々根深いので省くが、オーブは日本での運用に問題がありすぎた「特別永住許可」は制度として存在しない。

あくまでも今回のような特殊事例による難民受け入れが不可避な場合は、時限立法(法の適応期間に時間制限がある)による特例処置として行うことが、法的に定められている。

 

つまり、ナチュラル/コーディネイターを問わず外国籍の人間がオーブ国民となるには、『永住権』だけでは不十分で、その後に定住し国民の三大義務をこなしつつ、国家への貢献が認められれば、参政権が付与し職業選択の幅が広がる=公務員も選択職種に入る(オーブは外国籍者を原則公務員として受け入れない)『市民権』(シチズンシップ)の獲得へと駒を進めることができる。

誤解のないように言っておくが、外国人がオーブ国内で働く『就労ビザ』はそのシステムや概念が全く別口だから、条件さえ満たせば普通に発行されるぞ?

そして、『市民権』まで得られれば、国籍ゲットまであと一歩だ。

 

 

 

これまた長くなったが、基本的に外国人がオーブ人になるには、まず永住権を手に入れる所から始めなばならず、そこに目を付けた国防委員会と軍部が手っ取り早く戦力を確保する……MSパイロットを確保する為に、永住権をエサにしたのだ。

 

汚い手だと思うか?

そう思ってくれて結構。

実際、親父殿……ウズミ一派(後はどこの国が資金源になってるかわからない左派や市民団体とかね)は猛烈に反対したが、それは理詰めの論戦と、国民への周知で味方につけてねじ伏せたった。

具体的には公開討論に引っ張り出して、

 

親父殿:『救いを求めて我が国の門戸を叩いた者を、戦場に送り出すというかっ!!』

 

ワタシ:『戦う意思があり、戦場に立てる能力があるならば、それでいいじゃないですか? それともウズミ殿は、同じ土地に住むのにオーブ国民にだけ戦えと? 選抜徴兵の準備をせざるをえなくなってる昨今、それを言いますか?』

 

ちなみオーブは原則、国家非常時に議会の承認がなければ徴兵はできない(制度として徴兵あるが、平時は原則凍結されている)。

 

親父殿:『そもそもコーディネイターは人の可能性の追求だ! 断じて戦争の道具などではないっ!!』

 

ワタシ:『そういうのは、コーディネイター自身で民兵組織作って、あちこちで好き勝手にナチュラルがいるってだけで殺しまわってるプラントやザフトに言ってください。少なくとも、ここで議論すべき内容じゃない』

 

親父殿:『その愚かさを我らが真似る必要は、断じてない!』

 

ワタシ:『あのなぁ……相手は25万に満たない死者の報復で10億殺して、「核を使ってないから俺たちの方が人道的」とか平気で言う連中ですよ? 無論、その死者の中にはコーディネイターだって含まれる。まさか、地球のコーディネーターは戦う権利も、復讐を胸に秘める権利もないんですか?』

 

親父殿:『復讐の場を与えるために戦場に出すとでもいうのか! 答えろカガリ・ユラ・アスハ!!』

 

ワタシ:『そんな怒鳴らなくたってちゃんと答えますよ。復讐を大義名分に戦争するのは、現代国家としちゃあ流石にNGですけどね、個人がそういう思いを持つのは”思想の自由”の範疇だと思いますよ? 彼ら彼女らが、どうしてオーブに来る羽目になったのか? その根本原因を作ったのは誰なのか……それを思えば、どんな暗い思いを持とうが、否定なんて絶対にできないのさ』

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

(ワタシはそこまで傲慢な人間になんて、なりたくないからな……)

 

復讐心を持つことすら許さないような、そんな人間にはな。

とにかく、万事こんな感じだった。

 

(親父殿も悪い人じゃないんだけどな~)

 

だが、あの人は政治家というより思想家の類だと思うんだ。

 

何度か話に出てきたが、オーブには主に鹵獲品などで入手した改造型(オーブ)ジンがあるが、それを戦力化できてなかったのは事実だ。

そこで、この「MSパイロット外国籍者志願制度」で篩にかけた永住権希望者たちを投入、本国ではようやく訓練が始まったばかりだ。

 

無論、オーブ籍のMSパイロットはいるが、いかんせん養成が始まったのがやはり最近(本格化したのがエイプリルフール・クライシス以降)であり、まだ実戦で投入できるものは数が少ない。

ならば、とにかく数を用意するのが基本だと、某傷顔のザビさんも言ってることだし、大々的に募集を行おうということになったのだ。

 

 

 

おそらく、オーブ最初の『正式なMS部隊』はコーディネイターが主となるだろう。

絶対多数がナチュラルだから、その開発優先度や必然は薄くも小さくもないが、かといって大西洋連邦ほどは逼迫していない。

 

(しかし、扱いやすくなってるはずとはいえ、こうもあっさり操縦されるとはなぁー)

 

フレイ・アルスター……想像以上にとんでもない拾い物だったか?

とりあえず、しばらくはこの操縦システムの開発を手伝ってもらうとして、

 

「アスカ主任、球体型(オーブ)コックピットをすぐに組み込めるMSってあったっけ?」

 

これもフレイの個性といいうのなら、生かす方法を考えるとしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




地球上にはエイプリルフール・クライシス前は5億人もいたってのに、作中に登場する地球産コーディネイター、少なすぎね?(多分、挨拶

という訳で、カガリには「難民化したコーディネイターの軍事転用も含めた積極利用」を行ってもらいました。
まあ、カガリが言いたいのは、「駆け込み寺やってやるから、国家に貢献しろ。厳しい時代だ。当然だよな? 食わせる飯だってタダじゃない。元はといえば血税だ」みたいな感じです(^^

本人、無自覚なツンデレっぽいとこも微妙にあるんで、口では時たま悪ぶってるんですが、結構国民も可愛がってるんですよ?

ただ、「国民を甘やかす」のは好きじゃないみたいです。フレイはうんと甘やかしとりますがw

どちらかと言えば……「ともに苦難の時代を乗り越えたい」かな?


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