機動戦士ガンダム進藤   作:ドロップ&キック

30 / 60
ミナ様……ではなく皆様、お待たせ致しました。
別に狙ってたわけでは無いですが、記念すべき30話にて、『作中に登場する全キャラの中で、一二を争う厄介な娘』の登場です。

はっきり言って、原作の弟君(キラ)との出会いのような、爽やかさみたいな何かはないです。

多分、甘酸っぱさとかもないです。

それでもよろしければ……お楽しみください?w




第030話:”愉悦 エンカウント・オブ・ダーク・ピンク・フラワー&ザ・イノベイター”

 

 

 

その時、無機質あるいは無機的と表現するにも無骨すぎるイズモの格納庫に、

 

「うふふ。初めましてですわね?」

 

ふわりと一輪の花が咲いた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「あら? ここはザフトの船じゃありませんの?」

 

救難ポッドから飛び出してきたピンクの少女の手を取りながら、

 

「あんなモラルもへったくれもない、宇宙一下品な連中と一緒にしないでくれ」

 

いや、一緒に飛び出てきたガンダムシリーズ全体のマスコットでイメージアイコン、球体ロボットの”ハロ(小)”もマトリクス・キャッチするけど、

 

(なんか、数増えてね?)

 

原作ではこの時点のお供はピンク1体の筈だが、今は色違い……赤と黄色も加えた都合三体を、空いた片手で抱えてるんだが?

 

「あらまあ?」

 

どうやらそういうザフト評は聞きなれてないのか、きょとんとする彼女に、

 

「失礼だが、”プラントの歌姫”ことラクス・クライン嬢で間違いないか?」

 

「ええ。間違いありませんわ♪」

 

演技か本気かはワタシには分からないが、

 

(なんで割と楽しそうなんだ?)

 

もうちょっと緊張感持とうぜ。

そりゃあ、アニメみたいに銃を突き付けられている状況じゃないけど……

 

(いや、違う。そうじゃない……)

 

嗚呼、なんということだ。

こうして意図せずに手を握ってしまったからか、本能的に感じる。感じてしまう。

微かに皮膚が泡立ち、神経が()()()()ような感覚は……

 

この娘()()()()()()()()んだな……

 

 

 

「ラクス・()()()()? もしや、プラント最高評議会、議長”シーゲル・クライン”の……」

 

「替え玉とかじゃなければ……」

 

「オリジナルですわ」

 

プンと心外のような顔をするラクスだが、

 

「そうかい。なら、間違いなく”プラントの歌姫”ってあっちじゃ呼ばれてる、”10億殺しのクライン”の一人娘だよ。ギナ()()

 

ギナ兄の先を制すように台詞を被せるが、その実、ラクスを刺激して反応を見たかったんだが……

 

「お父様は、地球ではそのように呼ばれているのですね?」

 

一見、哀しそうな顔をするラクスだったが、

 

(コイツ……)

 

ワタシは気づいてしまう。コイツ、ラクス・クラインは哀しそうな顔を()()()()()だ。

別にかけらほども、()()()()()()()()()

 

「少なくとも”()()()()()”だ。ああ、この船はオーブの軍艦だ。運がよかったな? ラクス・クライン」

 

「あら? どうしてですの?」

 

「地球連合の船に拾われたわけじゃないからだ。特にヤクザな東アジア共和国やユーラシア連邦と違って我が国は、建前的には()()()。例えクラインの娘だとしても、いきなり無体な真似はせんよ」

 

「確かにそれは幸運ですわね♪」

 

「もっとも、先日、その中立国である我が国コロニーは襲撃され、崩壊したがね……ザフトの手で」

 

ワタシはまたも探ってみる。

ああ、なるほど……どうやらワタシは興味を持ってしまったらしいな。

我ながら厄介なことだ。

 

「それは……ご愁傷様ですわね」

 

「ははっ」

 

気がついたら乾いた笑い声が出ていた。

ああ、ワタシは確信したよ。

 

(コイツにとっては所詮、全て()()()なんだ)

 

ヘリオポリス崩壊で大量の死者が出たのも、NJで地球で10億の死体が積み重なったのも。

そして、おそらく……

 

(ユニウスセブンで()()()25万人死んだのも』、この女にとっては心底どうでもいい事象なんだ)

 

愉悦……そう、これが”愉悦という感情”か。

始めて知ったよ。まあ、別に知りたいわけじゃなかったけどさ。

 

「面白い女だな……ラクス・クライン」

 

「うふふ♪ 光栄な評価ですわ。”オーブの仔獅子(リトル・ライオン)”、()()()()()()()()()()様♪ それとも、一部の者が呼んでるように……」

 

ラクス・クラインは、嘘を感じない微笑みを浮かべ、

 

オーブの変革者(ザ・イノベイター)とお呼びした方がよろしいですか?」

 

「随分と詳しいじゃないか?」

 

仔獅子はともかく”変革者”なんて、本当に一部の連中しか言ってないぞ?

 

「これでも最高評議会議長の娘ですから、各国要人のデータくらいは、頭の中に叩き込んでいますわよ?」

 

はん。益々面白い。

 

「”ザ・イノベイター”ってのは勘弁してくれ」

 

「人の未来と希望を示すような、善い二つ名だと思いますけど?」

 

ああっ、なるほど。

 

(如何にも”マルキオ導師の道友(ターミナル)”に繋がる者らしい物言いだな)

 

「何かその二つ名で呼ばれると、流体金属系異星人と融合する未来が来そうな気がするんだ」

 

転生物のお約束で、この世界に”ガンダム”に(まつ)わる全てがない。

だから、このネタは通じないだろうが……

 

「……例えば、”T-1000”のような?」

 

なんか微妙に通じてね?

 

「あれより酷いというか、凄いというか……というか、古い映画にまで詳しいのか?」

 

少なく見積もっても、シュワちゃんのあれは1世紀は前なんだが。

 

「そっちは趣味ですわ♪」

 

さよでっか。

 

 

 

「ギナ兄、いや()()()()()()()()()()殿()、この女はワタシが尋問……いや、事情聴取する。プラント最高評議会議長の娘で歌姫、オーブ連合首長国代表首長の娘で国防委員。つり合いは取れると思いますが?」

 

「ふん。気に入ったのか?」

 

「まあ、そうなる」

 

「お、お姉様っ!?」

 

なんか悲鳴じみた声を上げるフレイだったが、

 

「丁度いい。フレイ、お前も同席しろ」

 

「はえっ?」

 

「プラントのコーディネイターがどういう連中か知るのに、良い機会だぞ?」

 

「お姉様がそうおっしゃるなら……」

 

「好きにしろ。場所は、お前の部屋か?」

 

「ああ。言っておくが、捕虜ではなく、救助した()()だ。そのつもりで対応を徹底してくれ」

 

「いいだろう。だが、室内監視カメラはオンにしておけよ?」

 

「わかった。ただ、進言させてもらうけど……聞くのはギナ兄だけにした方がいいと思う」

 

まあ、多分そういう話も出るだろうしな。

 

「随分と愉快な談話になりそうだな?」

 

「ただの女子会だ。どこにでもある、つまらないな」

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「ああ。そうそう……」

 

これを伝え忘れると後が大変だった。

 

「ギナ兄に生け捕りにしてもらったパイロット、尋問にはワタシも立ち会うから」

 

だって、ワタシは『関係者』だしな~。

 

(これも逃げきれないし、避けることもできない”(カルマ)”って奴なのかな……)

 

あえて誰のとは言わんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ラクス書いてると不思議と普段の倍疲れる気がする(挨拶

はい。ご想像してた皆々様もいらっしゃるでしょうが、間違っても『綺麗なラクス様』じゃあございません(^^

むしろ、悪女と表現したくなるのですが……でも、男を誑かして金品巻き上げたり、あるいは国傾けたりなんて分かりやすい一般的なタイプじゃないです。
なお厄介なのは、「魅力チート」なんですよねw ラクスは。

果たして地上の劇物と宇宙(そら)の劇物が邂逅した(出会った)時、物語はどう歪み狂っていくんでしょうかね~。

それは、筆者にも謎です(ヲイ




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。