さて、今回でいよいよ原作ではありえなかった二人の初邂逅です。
癖の強い二人なので、すんなりいくかは……God only Knows?
「やあ、初めましてだな? もう一人の弟君。君のお姉ちゃんのカガリ・ユラ・アスハだ」
その少年の顔を見たとき、最初に口から出たセリフがそれだった。
もうちょっと捻りを入れた方がよかったか?
☆☆☆
カナード、カナード・パルス。
それが、「妙に動きのいいジン」を動かしていた
思わず、カナード・
その正体は、何のことはない。
「姉……?」
一瞬、聞いたことのない単語を聞いた時のような顔をされ、
「何を言ってるんだお前っ!! 俺に兄弟姉妹などいない!」
「いるんだな。これが」
(姉も弟も)
尋問椅子に拘束服姿で固定されているという、かなりアレな姿で対面してる黒髪ロングの少年……
無論、こうなってる理由もわかる。
(目を覚ました途端、暴れて脱走しようとしたらしいからな)
攻撃性を前面に押し出し、犬歯を剥き出しにして吠えられる様を見ると、
(猟犬タイプ男子……)
差し詰め、黒毛のボルゾイとかサルーキあたりだろうか?
ちなみにワタシ的に男性好感度No1の”
(懐かせるのはそれなりに苦労しそうだが、)
まあ、そういうのも嫌いじゃないぞ?
まず真っ先にやるべき事は、
「拘束を外してやれ」
椅子に括り付けて話し合いもクソもないしな。
「しかし、カガリ様っ!?」
そう驚いてくれるのは、カナードを取り押さえた一人と思われる、装甲服がチャーミングな我がオーブが誇る宇宙海兵隊の猛者だ。
ヘリオポリスの崩壊事後処理で合流した彼らだが、今回は大活躍をしてくれた。
ソキウス・セブンとイレブンのコンビニコンビが操るオーブジンが武装/エンジン/通信・索敵設備を文字通り叩き潰した”国籍マークを消したアガメムノン級”に乗り込み、乗員を捕縛してきたのは彼らだ。
「構わんさ。この誰にでも噛みつきそうな狂犬小僧と最初から穏やかな話し合いができるなんて期待していない」
むしろカナードが最初からそんなしおらしい態度だったら、裏があるんじゃないかと疑うくらいだ。
「多分コイツは、やんちゃなぐらいで丁度いい」
☆☆☆
「貴様……俺の何を知ってる?」
拘束服の固定具を外されたカナードは、言い回しからワタシがある程度の事情を知ってることに気付いたのか、睨み付けてくるが……
(まだまだだなぁ)
圧倒的に殺気が足りない。
「大したことは知らんよ。お前さんがメンデルで
「キサマァッ!!」
他愛ないちょっとした挑発に激昂し、弾かれた様に飛び掛かってくるが……
「甘ぇよ」
”パンっ!”
「かはっ!?」
何をやったかって?
カナードの死角から、最小のモーションで顎先を打ち抜いただけだぞ? 掌底のカウンターで。
加減したので顎を砕くほどの威力はないはずだが、いい感じに入ったから程よく脳も揺れた事だろう。
いくらコーディネイターだと言ったところで、脳みそが本当に筋肉で出来てるわけでもなければ、人間の急所を克服できた訳でもない。
”カクン”
案の定、膝から崩れ落ちたか。
「一応これでも
蛇足ながら言えば、最近はイスラエル式軍隊格闘術の”クラヴ・マガ”にもハマってる。
実はクラヴ・マガ、日本の法的執行機関に取り入れられた歴史があり、その流れでオーブのその手の機関でも継続採用されている。
なのでオーブ国内でも使い手や愛好家は多く、教官に不自由はしない。
原作のカガリは、公式で「趣味:体力づくり」だったと思うが、ワタシとしてはその体力を有効利用する方向性を示したいものだ。
日本人なりの勿体無い精神の表れと思ってくれればいい。
いいのだが……
(勿体無いといえば、
床にごっつんこしてる
(まあ、製造過程から考えれば、コイツの方が先に生まれたんだろうが……)
だが、やっぱり雰囲気的にも相性的にも兄には見えんし思えん。
(やっぱ弟だ。ワタシがそう決めた。文句は言わさん)
ならば、ここは”腹違い(?)の姉”としては、何とかしてやらんとな。
(どこぞの喫茶店のウエイトレスなら、「お姉ちゃんにまかせなさーい!」とか言うところだろうが……)
流石にキャラ的にワタシには無理だな。
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さっきは中途半端になってしまったが……
カナード・パルスとは何者なのか?を転生者としての視点も入れて語ってみようと思う。
まず、この少年はアニメには登場せず、出典は外伝の一つ漫画”機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY”に登場する『二人の主人公のうちの一人』だ。
作品の立ち位置としては、キラよりアスランの方が近いだろう。
主人公に対するライバルキャラ的な感じか?
設定を一言で言えば、『キラ・ヤマトと後に名付けられる事になるスーパーコーディネイターの開発過程で生まれた
その後、違法研究の証拠隠滅も兼ねて失敗作として廃棄処分されようとしたが、しかし、その前にとある研究者が憐れんで逃がし、ユーラシア連邦に拾われた……らしい。
(その辺りのエピソードは、原作のソキウス・スリーにも似てるな)
まあ、スリーは今生では元気にグリーンフレーム乗ってるが。
だが、問題なのは、腐れユーラシア連邦でのカナード・パルスの扱いだ。
我が同好の士にしてベッドの供、声が勇者王なのに涙目がよく似合う麗しの”むったん”が事実上の覇者である大西洋連邦と違い、ユーラシア連邦とついでに東アジア共和国でのコーディネイターの扱いは、とにかく悪い!
まあ、それも当たり前の話で……詳しく書く気はないが、ユーラシア連邦の礎となったロシアがソ連と名乗っていた時代、自国民に行った”大粛清”で何をしたのか?
あるいは、東アジア共和国の中核であり、皮肉を言えばオーブ建国の最大の要因となった中華人民共和国が、自国で行った文革やチベット/モンゴル/新疆ウイグルで何を行ったかを少し調べれば、納得はできるだろう。
要するに、カナードはよく言っても「貴重な被検体」、悪く言えば「スーパーコーディネイターを調べるモルモット」として扱われた。
私見ではあるが、おそらくユーラシア連邦はガンダム00に出てくる”超人機関”みたいなことをやっていたんだろう。
コーディネイターの技術を用いて超兵でも作ろうとしていたのかもしれない。
これに関しては思うところはあるが、実は責める気はない。
大西洋連邦もつい最近まで、人のことを言えない研究をやっていたからな。
(まあ、あまりに効率が悪いんで計画自体が見直しされたが……)
そして、カナードはその扱いに耐えかねて一度脱走するが、ここでまた面倒臭い出会いを経験する。
そう、逃亡途中でどこでどうカナードの事を嗅ぎつけたか……深くはこの場では追求せんが、”謎の男(一般には正体はクルーゼとされてるが、根強くデュランダル説もある。どっちも同じ穴の狢だが)”が接触し、カナードに「成功作として生まれたスーパーコーディネイター」、つまり
☆☆☆
その後、カナードはユーラシア連邦の追跡部隊に捕縛(というか、半ば自主的に投降したくさい)されるが……
(以後はキラ・ヤマトを打ち破り、『自分こそがスーパーコーディネイターの成功作である』ことを証明するために生きるようになる)
おそらく、今のカナードはこの状態だろう。
何とも面倒臭いアイデンティティの確立だとは思うが、
「それも生き方と言えば生き方だが」
だが、今のまんま……拗らせたまんまじゃ何処にも行けんだろう。
妙な願望で目を曇らせてれば、
「見える物も見えなくなる」
なら、せめて……
「自分の生き方くらい、自分の手で見つけられるようにしてやらんと」
そこ、余計なお世話とか言わない。
自覚はあるんだ。これでもな。
先ずはあいさつ代わりの掌底一発スタートでした(挨拶
そして、一撃擱座w
実を言えば、一度本気で書いてみたいキャラだったんですよね。カナードって。
アニメ本編に組み込むことがもしできるのなら、アスラン以上に輝ける(凸フラッシュ的な意味でなく)ライバルキャラになれるポテンシャルがあるんじゃなしかな~と前々から思ってました(^^
今作ではカガリが絶対に敵対なんて許さんでしょうけどね~。
兎にも角にも”チーム・カガりん”(?)のレギュラー入り候補筆頭、いや確定?のカナード君、これからも見守っていただけると嬉しいっす!